北海道Tour24#12
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仁宇布→美深
(以上#12-1)
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万全を期すなら、やはり幌加内経由とするべきだ。仁宇布から幌加内方面へ向かうのは2014年以来。近年(と言っても直近で2017年)よく使う印象がある下川経由に比べ、標高差は200m少ないものの距離は20km多い。今日は5時出発の体制を組んでいるので、それぐらい全く問題は無いだろう。
問題は最高気温で、幌加内28℃、旭川31℃。ちょうどコース最大の登り区間江丹別峠とお昼の時間帯がもろ被りだ。まあコース最大とは言え所詮約300m。いざとなってもどうにでもなるし、下ってしまえば旭川には待避場所はいくらでもある。
荷造りを終え食堂に降り、夜明けのプライベート牧草地を眺めてみる。頭上には濃霧みたいな雲が垂れ込め、いつまでも薄暗い。これなら尚更延々無人の山間が続く下川方面ではなく、美深へ降りて幌加内経由で行く方がいいだろう。それでも仁宇布市街から美深の盆地まで15km位無人の森ではあるが。
この段階で、やっと今日のコースが決まった。何年か前まで去年あっちだったから今年はこっち、程度で決めていた仁宇布→旭川。近年異常気象が多発するようになり、特に豪雨の後はここに限らず慎重な検討が必要と思われるようになってしまったなと思う。
外に出ると、曇りのせいか空気がひんやりとやや重い気がする。ポロを着ると、気温については何とか行けそうだ。美深まで下ってしまえば、天気予報に近い展開があることだろう。
4:55、ファームイントント発。霧で薄暗い早朝の仁宇布を、畑や牧草地の向こうの森に熊が現れないかおそるおそる下り、交差点で5時ちょっと過ぎ。相変わらず雲は低く空は暗い。行く手の美深方面はあまり霧っぽくない気がする。もし美深で雨っぽくなったら躊躇無く行程を取り止めることはできる。そしてまだ8時過ぎのサロベツには全然間に合う。この自由さが有り難い。
天気予報を一応信じ、引き続き道道70で美深へ黙々と下り続ける。高広で一瞬辺りが明るくなり、陽が出たと思ったらまた暗くなった。しかし辺りは仁宇布より明るくなっているし、行く手の空は振り返って眺める空より何だか明るい。谷間から美深の盆地に降りると、思惑通り確実に空と辺りは陽差し成分と共に明るくなってきた。空や周りの山々のところどころはガスっぽくとろんとしているような気もするが、深刻な雨が降りそうな気配はもう感じられない。
盆地に降りてからも、意外に勢いよく下れていた。開けた周囲だけ見ていると、下っている印象は無い。確かに去年の秋もその前も、逆方向から仁宇布に向かったとき、がくっとペースが落ちて自分が情け無くなったものだった。意外に斜度があるこの道は、要注意だなと思った。
5:55、美深セイコーマート着。ファームイントントから普通に下って美深市街までほぼ1時間。いつも通りで良かった。
美深では空は全く問題無い。国道275で幌加内を目指すことに決め、ホットシェフでクロワッサンを2つ、今朝は未だ食べていないヨーグルト、そしてペットボトル羊蹄山コーヒーを仕入れておく。今は先に進もう。
6:15、美深セイコーマート発。
GPSトラックに従い市街西側を経由して国道275へ。久しぶりの美深峠区間、気持ちがぴりっとする。国道の峠とはいえ車は少ないし、途中で眺める羽幌山地裏側の大樹海が楽しみだ。
谷底から峠までの登りは、谷間を縫うというより、地形の凸凹をばんばん飛び越え突き抜け淡々と高度を上げる幅広の新道だ。路上に木陰が少ない長い道なのが難点だが、今日はまだ朝の時間帯だし、この曇り空なのであつくてたまらないということは無いだろう。ただ、山中でも谷間の農地区間でも熊は怖ろしい。そして近年益々熊が増えているというのに、私は2014年年以来10年間この道を訪れていない。
などと思いながら天塩川を渡り、美深市街対岸の田圃から狭い谷間へ。畑、牧草地の中を道は進んでゆく。谷間を南へ回り込んだ辺りから雲が切れ、青空が見え始めた。時々明るいというより鋭い陽差しが、かっと路面を照りつけ始め、また雲に隠れた。晴れに向けた天気の進行を、やっと実感できるようになってきた。今のところはまだ気温が低いのと陽差しが当たる時間が短いのが有り難くはあるものの、きっとお昼頃の幌加内とか江丹別峠は凄まじく暑いんだろうなあ、と思う。
登り始め区間は地名が玉川、もう少し奥の登り始める手前までが泉。道の看板に地名が出る毎に「ああ、そういう地名だったな」と思う。
谷底に続いていた道は、谷底の集落が終わる泉から森に突入し、谷間を登り始めた。途中大きな橋が3つなのは記憶通り。その橋が現れるのが意外に早い。しかもそういう場所では記憶通りの大樹海が見えたので、展開は憶えている通りで間違いない。最後の橋の名前は「峠橋」、旧道っぽい茂みに廃道が分岐しているのも現地に着いて思い出した。憶えている美深峠の淡々とした印象に比べ、今日は退屈しないかもしれないと思い始めた。
しかし3つの橋の先、展開はやや長く感じられた。こういうところは記憶は全くあてにならない。そんなことを他人事の様に考えられるのは、走りながら地形図「ピッシリ山」を開いていないからだ。見ていないのみならず、フロントバッグ上に開いてすらいない。そのため、久しぶりの道で風景を眺めるのに新鮮な気分で臨むことができているのだ。
7:45、美深峠着。内地の名だたる峠と違い、急峻な稜線を乗り越えるというよりなだらかな鞍部を緩っと通過する峠だ。途中で橋から眺めてきた奧羽幌に拡がる大樹海と、仁宇布手前の西尾峠を思い出す。
美深から27km。アプローチが長いという言い訳はあるものの、それなりに時間は掛かっている。しかし8時着なら順調だと思っていた。峠手前から全体的に雲が薄く、辺りが明るくなり始めているし、まずはいい感じの行程になっている。
上機嫌で、シェフ佐藤さんのおにぎりをいただくことにする。大変美味しい。10年振りの道北山中で、こんなにステキな朝を迎えられていることが有り難く嬉しい。調子に乗って、2個頂いておくことにする。ここでしっかり食べておけば、また後で快調な進行になるのだ。
2個目のおにぎりにかぶりついたまま母子里へ下り始める。緩い斜度で直線気味に下ってゆく先の真っ正面、下った先から朱鞠内湖畔へ広々漠々と拡がる大樹海の見晴らしが見事だ。道はしばらく下っていて、下ると共に大樹海の眺めは3Dで刻一刻と動きながら変わってっゆく。景色の中へ飛び込んで一体になれるような感覚に、何だか本能的に嬉しくなる。ここの下りは一気に下ってしまう印象があった。こんなに爽快な下りだったかなと思う。以前の訪問を思い出すと、前回は雨で視界が効かず、その前はいつも暑さでぼうっとしつつ、焦って通過していた印象しか無い。
8:00、盆地の拡がりに着陸するように母子里着。既知の牧場や牧草地を眺めながら、クリスタルパークは通過して母子里の交差点へ。
元北母子里駅方面の、高い木立の茂みと木陰が涼しげだ。涼しげということは、やはり陽差しが厳しいんだなと、我ながら他人事の様に思う。雲が切れて、鋭い陽差しがかっと射し始めている。まだ8時、この後幌加内や江丹別峠でどれぐらい暑くなるんだろうと心配になるものの、今のところはあまり考えないでおくことにする。でも、早出が効いてなかなかいい調子だ。まだ涼しい今のうちに脚を進めておきたい。今回気が向いたら脚を向けても良いと思っていた元北母子里駅や、交差点に面するホクレンスタンド自販機には立ち寄らず、そのまま先へ進むとする。
湖岸区間では大体湖の縁みたいな位置を、時計回りに2時ぐらいから7・8時ぐらいまで回り込んでゆく。母子里の外れから牧草地を眺めながら2回ほど丘を越えると、朱鞠内湖岸外周に取り付いてしまうのが、この道の有り難いところだ。そして農地改良で地形が変わっているのか、牧草地の眺めは昔と違うような気がするのが少し寂しいところだ。
夏色の白樺やカラマツの森に続く穏やかなアップダウンをのんびり進んでゆく。森の雰囲気は初めて訪れた1988年から変わらない。あの時は確か、まだ舗装工事が絶賛進行中だったなと思う。空には未だ雲が多いものの、もう灰色の部分は無い。雨の気配は完全に無くなった。
道が湖岸外周の南側に差し掛かると、道が朱鞠内湖の入り江を飛び越え始める。そういう場所の所々では森が切れ、湖面が現れた。ここまで来ると、湖岸も大体半分ぐらいだなと思う。今日の湖面の風景は、昨日雨だったからなのか澄んで湖岸の彼方まで身は晒しがクリアだ。向こう岸の上空は少し青空で、その明るさが眩しくすらある。
湖岸区間は去年秋に朱鞠内から母子里へ逆回りで通っている。風景全般の印象に新鮮さは無いものの、逆方向からの訪問には新たな発見が多い。何と言っても緑が夏の色だ。あまり厳しくないアップダウンの斜度も順番もボリュームもなんとなく憶えている通り、というよりこちらからだと下り基調なので、記憶より軽くすら思える。
朱鞠内へ下ってしまう手前、展望台下で残りのおにぎりをいただくことにした。展望台とはいえここも下の木々が高くなり、朱鞠内湖の眺めが効かなくなって久しい。今日午後には市街地の旭川、畑の美瑛へ行っちゃうんだなと思う。今はこの瑞々しい森に身体を置けること、森のまっただ中で朱鞠内湖を間近に美味しいおにぎりをいただけることに感謝せねば。1走2休だろうが3休だろうが、自転車ツーリングに来れて私は幸せだ。
展望台からえんじん橋へ一気に下り、9:10、朱鞠内着。湖畔の森から下った谷間の里だけあり、気温が湖岸よりちょっと上がってきた。水は十分ある、まだ行ける。自販機はもう少し先の添牛内にしよう。
国道275沿いの、わかさぎ佃煮が買えるお店や郵便局を市街そのまま通過し、トンネルを抜けて下ってゆく。今日は谷間に余計な風が吹いていない。暑いものの、のんびりゆっくり悪くない行程になっている。
しばらく雨竜川の狭い谷底に、いかにも熊が姿を隠していそうなあやしい河岸の茂みと林が続く。何となく息苦しさを感じながら、気分に負けないように心がけて通り過ぎてゆく。やがて谷底が拡がり牧草地が現れると、添牛内手前の北星だ。ステキな地名は、昔住んでいた住人の希望が込められているのかもしれない。などと、拡がる牧草地を眺めて思う。
9:40、添牛内着。引き続きなかなかいいペースだ。この分だと大村には15時台に着いちゃうかもしれない、と思う。まだ調子に乗っていい時間じゃないものの、16時台、いや、16時半までに着ければ上出来だ。今のところはあまり捕らぬ狸の皮算用をせず、引き続き着々と脚を進めてゆくべきだろう。
空は青空ベースで斑の雲が拡がる、というぐらいに雲は減っている。気温も、時間と場所なりに更に上がっているようだ。ポロを脱ぎ、こちらに来て良かったと思う。この先お昼頃の気温は心配ではあるものの、ここまで来た感じではこの先道路状況で撤退ということは無いだろう。それならお昼頃の江丹別峠さえ越えちゃえば、どうにでもなる、かもしれない。
添牛内の国道239分岐の少し先に、私的定点撮影ポイントがある。ここで久しぶりに写真を撮っておく。
羽幌山脈の裏側が右手に迫り、道端の白樺が道内でも随一の規模で続くこの場所は、私にとって国道275の中でも印象深い場所だ。2019年秋、昨年秋の訪問では、この道を逆方向から通っている。当然脚を停めて写真を撮ったのだが、秋の夕方と夏の朝では光線の向きもニュアンスも全然違う。それに今日は逆方向、朱鞠内方面からの訪問なので、ここに来るまでの気分が違う。いろいろと印象は全然違いつつも、今日この場所を、青空の下改めて訪れることができ、大変感慨深い。ツーリングを続けていればまた訪れる機会がある。自分を取り巻く状況には感謝しか無い。
国道275は、直線が続いて時々かくっと緩く曲がる北海道の田舎らしい線形で、しばらく緩い下り基調のまま南下してゆく。
羽幌山脈の裏側と白樺の森に脚を停め停めのんびり進むにつれ、山々は次第に遠くなり、森の合間に草地の拡がりが現れ断続し、連続しはじめた。羽幌山地から離れて政和に下ってゆく自分の位置を意識し、道北の旅が終わりつつあるんだなと、少しさみしくもある。しかし仁宇布から旭川に自走する感覚を実感しつつ、今日も旅まっただ中にいることが、何だか無性に嬉しくもある。
添牛内から段丘を下る場所に、政和の盆地を見下ろす広場がある。10年ぐらい前には、ここに仮設の出店が出ていたことがあった。今回はお盆時期だというのに、昨年秋と同じく砂利敷の真ん中にあずまやが建っているだけで、何も出店は無い。どなたかが何かを試してみて断念された結果なのかもしれない。ここで少し脚を停めておかねば。
とにかく暑くなりつつある。天気が順当に進んでいることを感じつつ、いちツーリストとしては、この場所が再び静かになったことはやはり嬉しい。広場の縁から政和の盆地を眺めると、夏の緑と満開のソバの花が盆地一杯に拡がって、夢見るように静かだ。それは去年秋に眺めた風景とは違う、命が溢れるような静かさであるように感じられる。時期としては1か月も違ってないというのに。北海道はこれから3週間ぐらいで、急激に気温が下がってゆくのだろう。
などと考える間にも、草むらの中でカンタンの声が鳴り響いている。
ソバ畑、白樺の森、更に遠く離れてゆく羽幌の山々を眺め、政和の盆地を下ってゆく。政和には確か蕎麦屋があったはずとは思うものの、どこだかは具体的に憶えてないし、やはり今日はまだここでは立ち寄るわけには行かない。
10:30、道の駅ほろかない着。それにしても暑い暑い。ソフトを2本食べてやっと頭が冷えてきた。いくら調子が良いと言っても、さすがに幌加内10時台は無理っぽい。そこまで調子に乗っちゃいかん。
そしてこの後江丹別峠に向け、あまり出力を上げないようにしないと、江丹別峠で干上がってしまう、江丹別峠手前の、熊牛辺りでの干上がるような暑さを思い出す。それにしてもたかだか300mぐらいのあんな登りで毎回難儀するのは、やはり暑いからだろうと思う。まあ所詮は300m、毎回引き返したり撤退したりするほどじゃないしね。
政和の盆地から幌加内の盆地の間7、8kmは谷間が狭くなり、道は山裾と雨竜川に挟まれるように続く。基本的には下り基調なのだが、川岸を越えるみたいな短い登りが時々現れる。これだけ憶えていると少し億劫ではあるものの、車は多くないし木陰は多いしそもそも距離が短い。今日は意外にすぐだね、みたいな気分と共に通り過ぎることができた。
雨煙内で盆地の田圃が一気に拡がってからが、すぐだと思っているともう一息ぐらいに長い。上幌加内では風が強く、毎回ここで悩まされる。しかも今日は照り返しと盆地特有の暑さが一気に襲いかかってきた。風の中に舞う赤トンボに囲まれ、遠くに見えてきた町営の蕎麦工場を眺め、着々と進むのがじれったく気が遠くなるような感覚すらある。
11:15、幌加内着。暑くはあるがまだまだ行ける。脚を停めるに至らない。気が急いて焦ってるんじゃなく、身体を落ちつかせずに江丹別峠を越えてしまいたいように思えた。
GPSトラックの通りにそのまま国道275を進みかけ、引き返して熊牛経由のいつものコースへ向かうことにした。昨日コースを描いたとき、確か久しぶりの20km長い幌加内経由に備え、幌加内から江丹別峠まで最短距離の国道275のショートカット経路を描いておいたんだった。今まだ11時台前半、そこそこ順調ペースだから、風景が毎回楽しみな熊牛経由で多少脚を停め停めでも大丈夫だろう。それにGPSトラックなんか無くても、去年秋にも訪れている道だし。
美深からここまで辿ってきた国道275とはここでお別れだ。国道275の行き先看板には「碧水」という地名と共に100km未満ぐらいの距離が描かれている。地名には興味を感じないでもないものの、どうせ石狩平野まっただ中とか札幌郊外の市街地なんだろうとも思う。まあそういう思いも含め、また何時の日か。
幌加内の町外れから、山裾が盆地外れのソバ畑に起伏を描き、所々に農家とポプラが散在する。お昼の陽差しの中でエゾゼミがギーギー鳴いている。真っ白に拡がるソバ畑が、真上からの強い陽差しに眩しく拡がる、幌加内ならではの風景だ。やはりこちらに脚を向けて良かったと思う。
熊牛からは田圃に続く一直線の細道が、緩やかな起伏を乗り越え南下してゆく。ここも秋の訪問と違い、ソバ畑にも田圃にも物寂しさは感じられない。まあしかし快適だった秋とは全く違い、のんびりてれてれ流しているだけで暑くて仕方無い。更に暑いであろう江丹別峠のことは、もう考えないことにする。
12:00、道道72に合流。取付の直登みたいな登りから山肌を巻いてゆく登りは木陰が少なく路面からの照り返しも加わり、やはりというか、想像以上に暑い。さすが最高気温30℃の予報だ。想像以上の度合いが想像していた以上であり、危険なレベルだと思った。例によって十分に速度を落としギヤを落とし、木陰があれば必ず待避して水を飲み、必要以上にゆっくり進んでゆく。途端にアブどもがやって来るのには閉口する。
これだけ登りで暑いのは、北海道では久しぶりな気がする。暑い登りをコースやら計画やらで何とか回避していたのに、今日はもろにお昼に最大の登りがあるのだ。ただ、山肌をトラバースしつつも時々谷間の凹みが現れ、そこでは木陰と沢の冷気が冷んやりと頭を助けてくれた。特に登り後半区間ではそういう箇所が増え、空にも少し増えて陽差しを遮ってくれたのが有り難かった。
12:55、江丹別峠。暑くてかなりペースが落ちたものの、ぎりぎり12時台に通過できてしまった。5時前出発のお陰ではあるものの、やはりツーリングにはこういう安心感が必要だ。いよいよ旭川着14時が視野に入ってきた。旭川が14時台なら、その先ペースが落ちても、いくら何でも18時の夕食には間に合うだろう。
峠部分は去年秋に眺めたとおり、山側斜面を切削した拡幅工事が完了していた。その先、去年秋は何となく拡幅工事やってるなぐらいに眺めていた道路改良工事に、今回は大きく進んだ印象があった。主に下側斜面を補強したらしく、道端の樹木が伐採されたことにより、道から下界の展望が一変していたのだ。特に最初の尾根を回り込むまで、所々で幌加内の盆地や江丹別側山奥のソバ畑を見渡すことができた。お陰で所々で脚が停まった。そこにそういう風景があることは知っていたので、それは江丹別峠を通り始めた頃何回か見たはずの風景なのだ。そしてその後、その後、森が高くなって道端を覆い隠して風景が見えなくなって、その風景はすっかり忘れていたのだ。ただ、そういう場所では道端から急斜面がすとんと落ち込んでいるため、何となくお尻がざわっと落ち着かない怖さを感じたことも確かだ。工事完成の暁には、何か対策されるかもしれない。
最初の尾根を回り込んでから拓北までの下りでも、所々で拡がるソバ畑が見事だった。2019年と昨年秋に工事していた、沢沿いの凹みみたいなカーブを飛び越えるように設けられた区間で、やはりこれまで森に遮られて見えなかった風景が拡がったのだ。その時は確か工事車両がいたためか、これらの風景をまったく意識したことは無かった。久しぶりの江丹別峠がいいご褒美をくれたのかもしれない。また、これまで淡々と登ったり一気に下りきるだけだった江丹別峠旭川側の、印象を変える大きな変化でもある。まあ木陰は確実に少なくなったので、これまで木陰が多かったこちら側も、暑い幅広新道峠に変わりつつあるのかもしれない。
13:30、江丹別中央着。蕎麦屋が美味しいことはわかっちゃあいるものの、下り途中で随分風景に足留めを食っている。蕎麦屋は去年入ったし、未だ食料に全く不足は無く、旭川まで下ってしまえば補給場所には困ることは無い。そのまま脚を先に進めてゆく。
途中緩いながらも下り基調が続く。丘ぐらいの登り返しすら無い。鷹栖へ分岐してゆく道道848は、2019年秋に雨の中を通ったことを思い出しながら見送る。道道72が近文へ向かってゆく江丹別橋では、やはり2001年での訪問を思い出して見送り、そのまま少し狭くなった気がする江丹別側の谷間を、少し細くなった気がする道道915で下ってゆく。嵐山で再び谷間が拡がり、道は道道98に合流。もう北海道縦貫自動車道の橋をくぐり、すぐに江神橋に到着だ。一連の流れを、安心して他人事の様に眺めながらのんびりと進むことができた。
14:20、江神橋着。遂に旭川に自走で到着できたことが大変嬉しい。以前は当たり前のように毎年やっていた旭川自走到達。ここ数年は天気のせいにしていて、実際その通りなのだが、できなかったことでもある。
去年トイレを借りた下水処理場の先から、石狩川自転車道の西岸へ入り込む。土手の外に旭川市街が拡がっているのは見えるとおりなのだが、土手の上には市街とは隔絶している不思議な、静かな空間が続く。土手の向こうには石狩川、更に旭川の市街地が見える。相変わらず晴れて陽差しは強く風は熱いものの、川面のお陰かこれまでの舗装路面よりだいぶ過ごしやすいようにも感じられる。
更に有り難いのは、車はいないし適度に散歩や自転車の対向車が現れること。のんびり脚を進める間に、石狩川から美瑛川が分岐して、いつの間にか対岸が丘になってこちら側の河岸も森になり、そういう変化を眺めながら旭川市街を通り過ぎてしまうことだ。
しかしのんびり何も考えずにとぼとぼ自転車道を進んでいると、美瑛川に入ってしばらく進んだら、転倒か衝突か何か事故に遭われた方がいらっしゃったようで、人が集まっている箇所があった。改めて自分も気を付けねばと思う。
また、途中でGPSトラックが切れたようだった。紀伊半島でもこれが起きていた。帰った後でPCでトラックデータを見たら、データにはちゃんと入ってたので、ETREX32側に何か原因があるんだろうと思う。ちなみに開陽→弟子屈、仁宇布→中川では起きなかったので、これも何か関係しているのかもしれない。
自転車道を辿っている間はそれでも問題無かったが、自転車道が終わるような終わらないような箇所で何となく裏道に沿って進んだつもりが、建物の敷地内っぽい場所で行き止まりになってしまった。すっかりあやしいおやじである。その後市街外周部の幹線道路交差点で、途方に暮れつつスマホ地図を眺めて場所を再確認する有様だ。その辺で国道235に移るようにトラックを描いてたなあとは思うし、幸い国道235がしばらく美瑛川沿いに続いているのでどこで移ってもあまり変わらないとも言える。しかし、GPSトラック頼みの弱さがもろに露呈してしまった。
旭川・美瑛間の国道235は、いつも間近の車が慌ただしく怖ろしくホコリっぽく、単調さが辛い。特に旭川郊外では尚更だ。交通量に疲れ、なんだかふらふらで目に入った自販機に向かって富良野線を渡る。旭川から西神楽手前まで、国道235と富良野線はほぼ並行しているのだ。
自販機が建っている駅は、地図の絵面から何となく緑が丘辺りだと思っていたら、もう一つ先の東神楽なのであった。得した気分でちょっと自販機休憩しておく。そもそも地図を眺める気持ちの余裕が無くなっているかもしれない。美瑛への分岐までもう少しあるし、確か途中にセコマか何かがあったはず。
15:15、西聖和ローソン着。コンビニはセコマじゃなくてローソンなのであった。しかし今の私には、十分に有り難い。
アイスに飲み物で身体を冷やす。まだ暑いが、大分楽になってきたと思う。ここで明日の朝食物資も仕入れておくことにする。
15:35、西聖和ローソン発。
美瑛の丘へ、登りは北側の谷間から。森の中淡々と高度を上げた後に丘の畑が拡がる、穏当な展開と経路の道だ。その間いつの間にかGPS画面にトラックが再登場していた。昨日まで今日の予定として入れておいた、下川経由のコースだ。
こちらのトラックは、宿手前が検討途上の大雑把な経路になっている。本来の幌加内経由のコースは、このコースの検討を活かしより細かく台地のアップダウンを考慮して描いているのに、表示できていない。このため、畑の中の登り下りダートや20mぐらいの丘を無駄に直登したり。美瑛手前から空に雲がもりもり現れ風雲急を告げる中、やや迷走気味の終盤となった。まあ、今日全体としては久しぶりの自走美瑛が大変順調だったことをよしとしよう。
16:30、ポテトの丘着。ゆっくり風呂に入り、夕食は予約しておいたブランルージュへ。
明日の天気予報は美瑛、上富良野〜南富良野とも終日曇りで降水確率は30%〜40%。最高気温28℃だからこの辺にしちゃああまり暑くない。ということは、曇りでも晴れ寄りじゃなくて雲が厚いのだと思われる。予報がややアバウトなところには一縷の望みが含まれているかもしれない。まだ行程中止を決めず、走るつもりでいよう。
記 2025/2/1
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