Canon NewF-1

クイックリターンミラーの反射はまさにブライトレーザーマット RICOH GR DIGITAL GR5.9mm1:2.4

NewF-1 CPE革製スリング&Tボタン付


 1970年代後半〜80年代初頭、ヨドバシさくらやカタログ収集ツアーの頃から、NikonF2F3CanonF-1は別格の存在でした。その価格、店頭での扱い。カタログも必要以上にゴージャスで、そこには畏れ多いプロ機の雰囲気が漂っていました。

 A-1購入の翌々年、1981年にはNewF-1が登場。F-1は単純に威圧的で近寄りがたかったのですが、NewF-1は何と無くA-1に似ていなくもない。
 しかしながら店頭で眺めるNewF-1はそんな印象を吹っ飛ばすように、F-1をパワーアップしたような頑丈さと精密さが感じられ、やはり依然として近寄り難いのでした。この頃、35mmプロ機はいわば映像機器の王者のひとつ。メディア多様化とか各社フラッグシップ機という裁けた概念も無く、その社会的地位は現代のNikonF6EOS-1Vとは比べものになりませんでした。

 その後10年以上が過ぎると、私ですらLレンズを使うようになり、いつかは自分でもファインダーの見やすいNewF-1を使うかもしれないという気ぐらいにはなってきました。
 そういう想像を勝手にするときには、現実にはT90が2台あったので、NewF-1は部分測光かスポットのブライトレーザーマットSとアイレベルファインダー付きしかないと思っていました。どうせストロボ関係はT90の足下にも及ばないし、AEファインダーもごつすぎる。使うならかっこいいアイレベルファインダーでマニュアルしかない。

 しかし1999年、各誌に「ありがとう」の文字と共にNewF-1販売終了の広告が掲載され、FD現役時代は終焉を迎えたのでした。最後までNewF-1の存在意義を保ち続けた高精度アクセサリー達も、もはや新品では入手不可能。とはいえT90が2台もあれば、わざわざ新品でF-1を揃える意味は全くありません。

 そのT90もGR1の手軽さに押されて、次第に出動が激減していた2005年2月。地元店中古コーナー隅で、NewF-1用スクリーンが出ているのを見つけました。
 虫の知らせか、とりあえず型番を確認。ところが何とそれは、NewF-1使いが今や血眼で探しても滅多に手に入らないブライトレーザーマットS、しかもなな何と部分測光、更に超が付く新同品だったのです。だめ押しで相場の半額以下、いや、ヤフオクの1/4以下。
 もはやこれはNewF-1神のお引き合わせか地元店のボランティアとしか言いようがない。とりあえず押さえるしかありませんでした。

 この時、ついにNewF-1を手に入れるときが来た、と思いました。しばらく中古屋を回り、NewF-1の相場調査を進めた結果、まあだいたい相場がわかってきました。世の中の人々はデジカメ買い換え中なのか、どうも各社中古機の相場は下がり始めているようで、覚悟していたよりだいぶ安く買えそうです。
 いろいろ回って1ヶ月ぐらい後に出た結論は、件の地元屋の新同品が一番お徳用っぽいということ。この新同品、キヤノン50周年のエンブレムが付いているのですが、50周年モデル特有の金色ロゴじゃなくて普通の白ロゴなんです。手っ取り早く言えば、落下か何かで外装を交換したらしい。そういえばシリアルは32万台で交換用外装のナンバーだし、巻き上げレバー背面にも傷が付いています。
 露骨にわけありなので安めではありますが、外装の程度を考えるとお徳用としか言いようがない。メーカー調整済との通り各部動作は揺るぎなく、マウント・フィルム関係もほぼ新同、光学系やシャッターも全く問題無さそう。もともとそう簡単に精度が狂うカメラじゃないのは、剛性の高いボディを手にした瞬間わかります。しかもアイレベルファインダー付、余分な投資が必要無い。
 というわけで、とうとう私は50周年記念NewF-1ユーザーになったのでした。

画面サイズ 24mm×36mm
マウント キヤノンFDマウント
ファインダー 交換式 ペンタプリズムアイレベルファインダー
ファインダー視野率 97%
ファインダー倍率 0.8倍(アイレベルファインダーFN 50/1.4使用時)
フォーカシング
スクリーン
交換式
測光方式 TTL中央部部分測光(約12%)
フォーカシングスクリーン交換により
中央部重点平均測光・中央部スポット測光(約3%)切替可
測光素子 SPC
測光範囲 EV-1〜EV20
露出方式 追針式マニュアル
アクセサリー併用で
シャッター速度優先AE 絞り優先AE選択可
シャッター形式 ハイブリッド方式4軸式チタン金属幕横走りフォーカルプレーンシャッター
1/2000〜1/90・B機械制御式 1/60〜8電子制御式
シャッター速度 1/2000〜8秒・B 倍数系列ダイヤルセット 絞り優先AE時無段階可変
X接点同調速度 1/90
フィルム感度 ASA6〜6400
露出補正 ±2段 露出補正ダイヤルで1/3段セット
セルフタイマー 電子式 10秒 動作中電子音告知
フィルム装填 多スリットスプールイージーローディング 順巻き式
フィルム巻き上げ 手動レバー139°予備30°分割巻上可
自動巻上はAE MOTORDRIVE FN装着時秒間最高5コマ
AE POWER WINDER FN装着時秒間2コマ
フィルム巻き戻し 上部クランク AE MOTORDRIVE FN装着時自動可
多重露出 フィルム巻き戻しレバーによる
電源 4G13酸化銀電池 2CR-1/3Nリチウム電池
4LR13アルカリマンガン電池
大きさ ボディのみw146.7mm h96.6mm d48.3mm
重量(電源込) ボディのみ805g
発売日 1981年9月
定価 アイレベルファインダーFN付ボディ\149,000 50/1.4付\181,000
AEファインダーFN付ボディ\160,000 50/1.4付\192,000
参考リンク Canonカメラミュージアム
Canonカメラミュージアム>デザイン館>先駆の肖像
Photography in Malaysia>Modern Classic SLRs Series

 以前何度も新宿SSで触らせてもらって、大体NewF-1については把握しているつもりでしたが、甘かった。やはりNewF-1、凄いカメラでした。
 まずシャッター。ショックとタイムラグがほとんど無い。特に反応の速さはさすがとしか言いようが無く、あのEOS-1NRSにわざわざタイムラグをNewF-1に合わせるモードがあるのをようやく納得。ほんのちょっと籠もったシャッター音からは、横走り最速シャッターの力強さがひしひしと伝わってきます。T90も反応のいいカメラですが、やはり別格なのでした。

 ファインダーが明るくてピントの切れが良いのは昔から知っちゃいましたが、ブライトレーザーマットSはそれにも増してもう驚きの明るさとピントの切れなのでした。たとえ50/1.2L開放でもピントを外す気がしない程。ちなみにT90+レーザーマットで50/1.2L開放だと、体調の良い日でピントが合う、という感じ(当社比)。
 部分測光の適切な範囲設定にもつくづく感心。画面中央部12%、やや横長の測光範囲は、どういうわけか被写体の暗部と明部とその中間を適切に捉えられ、半絞り分の印が付いた追針式露出計を見ながら、T90でやっていたようなマルチスポット測光→HSコントロール補正が1発でできてしまうのです。同じく12%部分測光のFTbを使っていた友人が、分割測光なんて要らんと言っていたのを思い出しました。

 よく言われる巻き上げのごりごり感も、ゆっくり巻き上げるとチタン幕の感触が伝わってくるようだし、その度に「横走り最速の強力シャッターを巻いているんだ」と思えばいいことです。
 つくづく買って良かった。イメージが沸かずに保留していた、自分への40歳お誕生プレゼント。ずっと昔から憧れだったNewF-1、これ以上のプレゼントがあるでしょうか。

 2005年の北海道ツーリングは、いつものT90ではなく、NewF-1登板となりました。思えば小学生の頃の露出計すら内蔵していないPENTAX S2以来、私のカメラは全部AE機でした。それに一眼をA-1からT90に替えて以来もはや10数年間、ずっとオートローディング&完全自動巻上&自動巻戻しの世界にどっぷり。フィルム装填すら思い出しながらなのでした。情けない。
 ところがあっという間に慣れることができたのは、見やすく合わせやすい追針式露出計をはじめ、素直でわかりやすく確実な操作性のおかげです。こんな良いカメラ、何故もっと早く使わなかったのかと後悔する度、あんなに近寄りがたかった昔も一緒に思い出します。

 NewF-1は特にファインダー光学係がT90より圧倒的に優れていますが、T90の方が優れている面も多々あります。素晴らしい部分測光も時々T90のマルチスポットを使いたくなったり、レリーズボタンから電子ダイヤルを探す指先が空回りしたり。それにT90にはA-TTLの300TLという強い味方がいて、この点はNewF-1には望むべくも無い。
 ジュディ・オングの「魅せられて」、好きな男の腕の中でも違う男の夢を見る、等という歌詞をつい思い出してしまいます。FDツートップのこの2機種、末永く補完関係を構築していくのが正しいユーザーのあり方であり、FDユーザーの幸福というものでしょう。余も果報者よのう。

記 2006/7/2

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Last Update 2008/1/3
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