Canon A-1 |
|
CPE布製オーディスリング付 スクリーンはレーザーマット化 |
1976年、小学校5年生の頃。毎月読むようになった鉄道ファン誌の裏表紙には、ほぼ毎月Canon AE-1+ワインダー+FD35-70/2.8-3.5の広告が載っていました。恐ろしく単純にその広告に影響された私は、その後1年ぐらいの間に、
・父のPENTAX S2→露出計無
・母のCanonet→パララックス大きい・シャッター不調
・叔父に頂いたRICOH AUTOHALF→ピント固定にハーフサイズで画質悪
という手持ちカメラの不満を一気に解決する、自前購入新機種に思いを馳せるようになったのでした。
当初の憧れは当然広告で見慣れていたAE-1。鉄道写真向きの速度優先AE、現在の目で見てもすっきりオーソドックスな外観にしびれていたものでした。
ところが、カメラ屋で各社のカタログ収集を始めるようになった段階で、何とAE-1には上級機種のA-1が誕生していました。
そのキャッチフレーズは「カメラロボット」。当時の中学生にとって、A-1のカタログは何から何まで徹底的に電子的でメカメカしく、恐ろしく未来的だったのでした。ちなみにこの時期、A-1のこのイメージ戦略にやられてしまった同年代の人は多いようで、何といろいろなHPで似たような話を読むことができます。思えばこういう売れ方をしたカメラは、後にも先にもこのA-1だけ。A-1の一番の特徴は、実はこの緻密に作り込まれた(AE-1からの流れすら意識された節もある)販売戦略かもしれません。
またもや恐ろしく単純にその宣伝戦略に一発でやられてしまった私は、それまでのお年玉貯金の放出を決意。両親にも少し足してもらい、1979年1月、Canon A-1を手にしたのでした。
ちなみに最後まで悩んだ対抗機種は、だいぶ手ごろな価格でやはりシャッター・絞りが直読でき、モードラ装着やスクリーン交換まで可能なPENTAX MX。PENTAX S2ユーザーの父と弟はPENTAX党で、Canonユーザーになった私は、その後家の中でだいぶ肩身の狭い思いをしました。
今中古屋で見てもPENTAX MXはちっちゃくて実に可愛く、ますます魅力的。コンディションがいい個体は数の少なさもあり、A-1より遙かに高い値段が付いていたりします。
2006年現在、カメラ史的には、A-1の特徴はカメラ制御系へのデジタルコンピュータ導入と5モードAEということになっています。でも、私にとって魅力的だったのは、夜景でもAEが効きそうな超ワイドレンジと、ファインダー内のシャッター&絞りの直読デジタル表示でした。5モードAEは速度優先だけあれば良かった。
しかし、購入後しばらくして敢行した夜行列車の徹夜撮影で、夜景AEの目論見は崩れ去りました。当時の一眼レフの主流でA-1も採用していた中央部重点測光は、露出が画面中の明るい照明部分に影響され、著しい露出アンダーになってしまうのです。
画面サイズ | 24mm×36mm |
マウント | キヤノンFDマウント |
ファインダー | 固定式 ペンタプリズムアイレベルファインダー |
ファインダー視野率 | 上下93.4% 左右95.3% |
ファインダー倍率 | 0.83倍(50/1.4使用時) |
フォーカシング スクリーン |
交換式 キヤノンSSで交換 |
測光方式 | TTL中央部重点平均測光 |
測光素子 | SPC |
測光範囲 | EV-2〜EV18 |
露出方式 |
シャッター速度優先AE 絞り優先AE プログラムAE 絞り込み実絞りAE ストロボAE(専用外部調光ストロボ使用 NewCATS) 絞り非連動値読取マニュアル |
シャッター形式 | 横走り全速電子制御4軸式布幕フォーカルプレーンシャッター |
シャッター速度 | 1/1000〜30秒 B 倍数系列ダイヤルセット AE時無段階可変 |
X接点同調速度 | 1/60 |
フィルム感度 | ASA6〜12800 |
露出補正 | ±2段 露出補正ダイヤルで1/3段セット |
セルフタイマー | 電子式 10秒又は2秒 動作中LED点滅 |
フィルム装填 | 多スリットスプールイージーローディング |
フィルム巻き上げ |
手動レバー120°予備30°分割巻上可 自動巻上はMOTORDRIVE MA装着時秒間最高5コマ、 POWER WINDER A/A2装着時秒間2コマ |
フィルム巻き戻し | 上部クランク 自動不可 |
多重露出 | 多重露出レバーによる |
電源 | 4G13酸化銀電池 又は4LR13アルカリマンガン電池 |
大きさ | ボディのみw141mm h91.5mm d47.5mm |
重量(電源込) | ボディのみ620g |
発売日 | 1978年4月21日 |
定価 | ボディのみ\83,000 50/1.4付\114,000 |
参考リンク |
Canonカメラミュージアム キヤノンAシリーズに萌え萌え Photography in Malaysia>Modern Classic SLRs Series |
実はこの現象には、既に昼でも悩まされていました。標準レンズの50mmで鉄道写真を普通に撮る場合、画面中の大きい面積を占める空で、やはり露出はアンダーに。仕方無いので、最初は常に露出補正をプラス側に掛けていましたが、そのうちAEは使わずファインダー表示を見て手動で露出をセットするようになってしまいました。私のよく使う構図では、結局それが手っ取り早くて一番確実だったのです。だってそうでしょう、予めAEの露出をマニュアルで撮った場合に合わせて補正するなんて。
高校・大学・社会人と、私はA-1のお世話になりました。初の北海道ツーリングにもモードラ付で持っていきましたが、50/1.2L導入でシビアなピント合わせがどうも決まらないことに気が付いた辺りで、キヤノンAシリーズでお馴染みのシャッター油切れも発生。1991年T90の導入で、とうとう引退となりました。
その後ほとんど触ることも無くなったA-1でしたが、一応メンテナンスは続け、モルト固着や光学系のカビ発生など無く現在に至っています。最近キヤノンSSで2度目の油切れ修理&オーバーホールによりシャッター調整までしてもらい、完全復活。
思えば中古屋さん店頭の同期他社他機種はプリズム腐食や露出計故障などの不具合が目立ちます。キヤノンAシリーズも油切れ個体が多いものの、修理に部品不要なので、SSに出せば完全に調整されて完全復活できるのが30年後の大きな違い。とかく技術至上主義・イロモノ的な見方をされることが多かったA-1ですが、意外にもカメラの基本的な部分がしっかりしていたことに、改めて感心。それにやっぱりいろいろな場所に一緒に旅したカメラです。手にも馴染んでいるので、いつまでも大切にしようと思っています。
記 2006/6/12