八千代町→清川町
(以上#14-1)
(以下#14-2)
→忠類公親
(以上#14-2)
(以下#14-3)
→浜大樹
(以上#14-3)
(以下#14-4)
→豊似
(以上#14-4)
(以下#14-5)
→大樹
(以上#14-5)
(以下#14-6)
→上札内
(以上#14-6)
(以下#14-7)
→八千代町
143km
RYDE WITH GPS
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今日は昨日と似た細長周回コースだが、昨日とは反対に南へ向かう。清川町から忠類、浜大樹で折り返し、時間があれば豊似を回って大樹から尾田、上更別を経由して八千代に帰ってくる予定だ。
夜明けから空は昨日よりは晴れている。天気予報は午前中曇りでも、これならあまり雲は厚くならないだろう。いや、それはわからない。
R0010689.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道帯広市八千代町基線 帯広八千代YHにて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
昨日同様6時半に積み荷を開始。7時から美味しい朝食をいただき、7:30、八千代発。
宿の前の道道216を下手へ少し下った所で、GPSトラックに従い南東へ向かう道へ入ろうとしたら、予定のコースはダートなのだった。1区画毎に幹線と裏道系舗装道とダートが雁行しているので、ここはとりあえず1本隣の並行する道へずれておく。どうせもう一つ先で、更に下手の道道55まで下ってしまうのだ。
下手方向への道は防風林で区切られた畑、南東へ向かう道では開けた畑に背景の山々が見渡せる。いくらこの辺りの風景が良いとは言え、3日目ともなるとさすがに風景に新鮮な印象は無い。しかも天気は晴れから薄曇りに推移しつつある。
等と思いながら道道55へ。道道55は、十勝西部の幹線道道だと思う。もう少し南や北では、十勝西部縦断道道の重要パートとして何度も通っている。中札内から北に向かう時に札内川を渡るのも、毎回道道55だ。私的ツーリング道である十勝西部縦断道道は、札内川から北では山裾を経由するため、この辺りでは下手に下っている道道55を通った記憶はあまり無い。
平地中央部の道道だけあって、道道55は幅が広く、路側帯も道路設備も何かと幹線道路っぽい。車の交通量は十分以上にツーリング許容範囲、という位に通ってはいても、そのメンツは軽トラや牛乳タンクローリーやトラックなどいかにも農畜産業の盛んな土地柄らしい。大型車が埃っぽいのが多少気にはなるものの、この先戸蔦別川・札内川を渡るための手頃な位置にある道なので、しばらく道道55を進んでゆく。
8:00、清川町着。帯広市清川町と言えばジンギスカン白樺である。と言っても、私がジンギスカン白樺へ行ったのは確か2001年。もう19年も前になってしまった。お昼に白樺に立ち寄って、その後ナウマン国道から昆布刈石海岸を経由、厚内まで行ったんだった。思えばあの頃は余裕の無い旅をしていたな。まあ今はあんな走りはできないんだが。思えば19年前なんて、まだ30台前半だったな。
それはそうと、確か白樺のどこかにAコープがあった、ような気がした。と思ったら、道道55に面してAコープとその前に自販機が数台建っていた。そして道道55を挟んで反対側にジンギスカン白樺を発見。十勝に行ったら行っておきたい場所だったその白樺に、今日は特に意図せずに辿り着けているのが我ながら何とも可笑しい。
過去形で思い出してしまったが、今だって白樺は大変魅力的だ。今日はもうツーリングなんてやめて、立寄っちゃおうかなどと妄想する。でももちろんまだ8時、白樺は営業してないし、そもそも今日はまず大樹を目指さなければ。
などと結論がわかっている妄想は、ツーリング中の楽しい行事みたいなものだ。現実の行動としては、Aコープに何台も立っている自販機で表敬訪問、いつものように缶コーヒーで済ませておく。今回肉は毎日夕食の十勝牛ステーキで間に合っているしね。これが前回の白樺から19年後の私の旅だ。またいつか。
引き続き道道55で戸蔦別川を渡り、中札内村境を越え、すぐに札内川を渡る。戸蔦別川は多少登り下りはあるものの、札内川はほとんど平野からそのまま橋を渡って向こう岸の平野へ。全ての橋がこうだと有り難いのだが。
札内川の川原は広く、石ころと低木林が生い茂り、川には流木が散見される。増水時の荒々しい表情が想像される。しかし橋を渡ってしまえば、村境の中札内村という文字を見かけただけで、頭の中は一昨日食べたばかりのカレーで一杯になってしまっている。どうせ明日、また中札内村道の駅を訪れる予定なのに。
道道55は、コース途中の交差点で中札内方面へ向かって去ってゆく。コースは引き続き同じ一直線の道だが、道が町道に変わるとともに、周辺の畑もどことなく落ちつき、明らかに全体的にのんびりし始めた。というより、気が付くと畑のまっただ中に放り込まれたような気になっていた。路面の高さが低くなって周辺の畑とほぼ同じになり、畑の拡がりと道が一体になっているのだ。
R0010690.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道河西郡中札内村新生東1線にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
国道236を渡り、帯広広尾自動車道をアンダークロスする位置は、後で地図を見たら中札内市街の北側だった。川を渡るときの谷越え以外道はずっと一直線だし、GPSトラックに従ってひたすらその一直線を突き進んでいるので、自分の位置がなかなか把握しにくい。
R0010691.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道河西郡更別村更別にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
その一直線の道が、唐突に緩いカーブで曲がっている。と思ったら、予定コースはそこから直角に曲がっていて、ダートに替わった。そこには更別村の看板が立っていた。更別村の境界を越えたんだろう。
地図を確認すると、ダートとは言えその道は平地の区画道だ。区画道なのであまり空撮を確認せず、何の気なしに選んでいる道なんだろう。現実の道にもそれほど怪しそうな雰囲気は無いものの、どこかでまたコースが曲がるのかと思ったら、一直線のままダートは数区画続いた。そして再び、一直線のまま舗装農道に戻ってくれた。
R0010692.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道河西郡更別村更別にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
道は一直線のまま、どこかへ登る訳でもなく、どこかへ下る訳でもない。何と清川町辺りから、川を渡る時を除いて標高は170m前後で安定し続けている。平地が続いているのと、更に追い風アシストに乗れていて、昨日と違って進行は大変快調なようだ。
そして静かな路上で、ずっと周りの景色が自分の周囲と一体になっている。西側には日高山脈、東側のもう少し近い山裾には、やや遠くに平行する道道238を車が通っているのが見える。農道のためかあまり地名の標識は無く、今どこなのか判然とはしない。しかし、しばらく道は畑、人里まっただ中に続いた。
途中、旅客飛行機が頭上を飛んでいった。一昨日羽田からANA4761便で十勝に到着したことを思い出す。
道は道道238を越えてから、防風林の手前でダートへ突き当たって途切れた。GPSトラックは突き当たったダートへ進み、農家の庭先から森を横切ってゆく。そして国道236を渡った反対の道端茂みから、おもむろに段丘をどんどん下り始めた。何だこりゃ。
国道236には幕別町境の看板が立っていたので、幕別町に入ったのだと思った。幕別と言えば根室本線沿いの町の印象が強い。ここが幕別町なら、ものすごく南北に長い町ではある。町村合併でそんなことになったのだと思う。でもそんなことより、あまりここでこんなにワイルドな道が登場すると思っていなかった。余りにも簡単に道を選びすぎている。確か「おっ、こんな所に便利な道があるぞ」とか思っていたことは憶えている。後で見直すと、確かにここで標高を一気に70mぐらい下げているのだった。
一体どうなるのかはらはらしつつ、けっこう豪快に下りきった道が谷底の小川を越えると、そこはやや放置気味にひっそりした牧場の裏手だった。そのままダートは、マカロニウェスタンに出てきそうに寂れた畜舎と住宅の脇を過ぎ、更に半分原野みたいな牧草地の中へ続いていった。この間、周囲にはかなりの場末感が漂ってはいたものの、しかし車が通った跡は比較的新しい。そもそも轍部分に草が生えていないので、どうも常時使われている道っぽい。それに自分で線を引いたGPSトラックからは外れていないことをGPS画面で追えているし、この道がもう忠類市街のすぐ近くに出ることもわかっている。
R0010693-Edit1.jpg 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道中川郡幕別町忠類公親にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
道はダートのまま小さな丘を越え、しばらく牧草地に続いていた。程良く放り出されたような、しかし確実に予定コースを辿っているという妙な安心感とともに、何となく旅をしている気持ちが成立している。実は私にとってこういう展開は、あまり珍しいものではない。千葉とか茨城辺りで似たようなGPSトラックツーリングをよく楽しんですらいる。そしてその気持ちを楽しめることができれば、丘の牧草地や森の向こうに拡がる平地の眺めはなかなか素晴らしい。牧草地には丹頂鶴も散歩している。まだ10時前。のんびり行こうぜ北海道。
R0010695.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道中川郡幕別町忠類公親にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
丘を越えた道はその後舗装農道に合流してから、まさにおもむろに、忠類市街に出た。10:05。
終わってみれば、十勝南部の道沿いじゃない牧草地まっただ中の風景を満喫できた、ような気がする。まあしかし、あまり調子に乗って気ままにRIDE WITH GPSのルートを書くもんじゃあないとも思った。
忠類。5年前にここでバスを降りたはずだ。と思っていると、確かに見覚えのあるバス停と、その先に5年前も立ち寄ったはずのセイコーマートを見つけることができた。大樹町の太平洋岸までまだもう少し距離がある。などという理由付けは不要、セイコーマートでしばし休憩とする。まだ昼食は食べないでおく。そういうことが目的でセイコーマートに寄るわけじゃない。それに上手くいけば、浜大樹かどこかで地元の食堂に入れるかもしれない。腹は残しておかねば。などと缶コーヒーとクロワッサンを飲み食いする間、ドライブに訪れた観光客らしい車が2組、訪れて去って行った。
10:25、忠類発。道路標識の「ホロカヤントー」(海岸部の地名)に、太平洋岸までもう近いことを実感する。
2015年に忠類から晩成へ向かった道道657で、少しづつ地形なりに高度を下げ、国道336の通る低地へ下ってゆく。地形はここまでの広々とした平地に替わり、山に囲まれた狭い谷間が続く。谷間の牧草地は草が刈り取られ、黒いビニールで巻かれた牧草ロールが目立つのが秋っぽい。
八千代から忠類手前まで数える程しか道が曲がらず、概略には進行の方角も同じだったせいか、山裾に沿って時々カーブする道の線形が目新しい。また、下り基調なのでちょっと脚を回すと楽にペースが上がり、いかに忠類手前まで登り下りが少なかったかを思い出す。どうせ八千代へ帰るまでに下ったのと同じだけ登ることはわかりきっているので、ここは良い気分になっておく。
大樹町の町堺を越えて国道336を渡ると、周囲は再び平地に変わった。防風森と牧草地がお行儀良く区画で続き、道はその中を通り抜けてゆく。ただ、忠類の手前までの牧草地と決定的に違い、もう太平洋近くのためか、周囲を見渡しても山々がほとんど無い。
森を抜け牧草地に入った途端、牧草地の向こうに中層ビルがいきなり現れた。普通のビルとは違うメカメカしく物々しい雰囲気に、国道336から看板が出ていた、JAXAの宇宙交流館だとすぐわかった。宇宙交流館、というより、まるっきり打ち上げ施設っぽい雰囲気だ。ここ大樹町の太平洋岸近くにそういう施設があることを、衛星ロケット打ち上げのニュースで見たことがある。
R0010697-Edit1.jpg 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡大樹町浜大樹にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
GPSトラックは、JAXA施設の敷地を回り込み、打ち上げ場そのものみたいな広場を間近に通過してからダートに変わった。
R0010698-Edit1.jpg 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡大樹町浜大樹にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
そして滑走路みたいな広場を過ぎ、周囲は海岸の灌木帯に変わった。かなりどきどきな展開の細道ダートだ。しかしGPSトラックは海岸へ続いている。間違ってない。
自分で描いた線じゃなかったらこんな道絶対入り込まないだろうとあきれていると、しかし地図通りに灌木帯の先はすぐに海岸が開けていたのであった。10:55、太平洋岸着。2015年以来の十勝太平洋岸、今日最初の目的地に到達したことになる。
空には雲が増え始め薄曇りに変わっていたが、太平洋の広々とした大きな空間感覚、海そのものの大きさに、全く不足は無い。
R0010699-Edit1.jpg 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡大樹町浜大樹にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
東側はすぐに道が途切れるようだ。行くだけ行ってから西側の浜大樹方面へ向かうつもりで東側に進むと、少し進んで曲がった道の先は、宇宙関係の観測施設だった。一応これで、僅かな手間で行ける所まで行ってみたことになる。
次は浜大樹方面へ。2015年にはこちらに来ていないが、想像していた通り、断崖上の灌木帯先端、陸と空が接するような場所にダートがしばらく続いた。
道幅も路盤もダートの状態も比較的安定していて通りやすい。通りやすい道であることが理由なのか、静かな道には時々普通車がやって来た。海岸には意外にも釣り人が多く、途中の海岸に降りる場所には車が停まっていた。
太平洋岸に出たときより、空に薄雲が大分広がってきて、まだ明るくはあるものの、やはり色彩は曇りの日の彩りだ。2015年の訪問時にはなかなかの晴天だったので、この海岸の晴れの風景に出会えていた。その時の記憶をどうしても今と比べてしまう。簡単に言うと、ややどんより気味だ。一方でまだ11時。今日1日の目的地だと思っていた太平洋岸に目論見より早めに着けているのは、大変に有り難く、昨日の学習効果が活きていると言える。私もなかなか捨てたものではない。
そして意外にも走りやすく取っつきの良いダートに、前回2015年にここまで来ておくんだった、と曇り空の水平線を眺めてつくづく思う。これはこれで、なかなかいい気分だ。
道は一旦内陸側の茂みに向かってから、唐突に舗装道路に合流し、内陸側から再び海岸方面へ。11:25、浜大樹着。
海岸沿いに張り付くように続く漁村を横目に、更に西側へ。進みながらずっと眺めていた漁村には、生憎飲食店的なお店は無かった。何しろ自販機すら無いのだ。
漁村の外れで道は再びダートに替わり、海岸線の後半区間へ。いつの間にか再び辺りは日なたっぽく明るくなり始めていた。あともう一息。
R0010701.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡大樹町浜大樹にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
漁村から西側の区間の大半は、2015年の訪問で訪れているので、今日は2015年に大樹へ向かった1本先の道まで海岸を進んでみることにしている。その未済区間先端部では、海岸に降りることができた。更にその先、地形図に載っていてトラックで拾えなかった道は、荒野の先で廃道になっているようだった。そんなところを探索はしない。
R0010703.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡大樹町浜大樹にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
海岸はかなり荒涼とした雰囲気の砂浜だ。凄い量の流木が漂着したまま放置されている。さっき釣り人が多かった同じ海岸が、人が来ないというだけでこういう状態になっているのだ。或いは人はやって来て流木を運び出してはいても、漂着量が多くて追いつかず、こうなってしまうのかもしれない。
海岸の次は農道で内陸へ向かう。海岸ではであれだけ空は雲に覆われていたのが、海岸の灌木帯を出るとともにどんどん晴れ始めて青空基調となり、辺りは日なたに変わっていた。さっきJAXA施設から海岸部に出た時も、灌木帯の手前では晴れだったから、或いは海岸際から海上だけ雲が出ているのかもしれない。
R0010704.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡大樹町芽武にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
こうなると、辺りは軽やかな緑色の牧草地や畑が拡がる、開放感たっぷりの明るい十勝の低地である。2015年と同じように、このままあと数kmの大樹町へ向かってみようか、等とも思う。一方でまだ11時台、希望上方修正オプションとしてGPSトラックを組んである、豊似から大樹への内陸裏道へは確実に行けそうだ。しかし、同じくGPSトラックを組んではいる、豊似手前の海側の回り道を全部回れる気はしない。今日終着の八千代手前で、畑の風景に足留めを食らうだろうから、その時間も見込んでおくべきだ。予想以上に宿に早めに着いたら、その時は早めに風呂に入ってビールでも呑んでしまえばいい。
というわけで、しばしオプションコースへ突入、国道336で豊似を目指してゆく。歴舟川、紋別川を渡って広尾町へ。
R0010705.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡広尾町紋別 国道336にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
国道336のこの区間をこの向きで通るのは今回が初めてだ。道幅や線形、路側帯、ガードレールなどはいかにも国道っぽいものの、のんびりした雰囲気とともに拡がる牧草地の眺めが感動的だ。反対向きに訪れた2008年も、国道にしちゃのんびりした雰囲気に感心していたことを思い出す。過去何回か、こちらの回り道経由じゃなくて国道236を焦って通過していたことはあった。もっと早くこちらを訪れていれば良かったと、まやもや思った。
昔は今より一杯走っていたが、こういう回り道をする余裕を全く見込んでいなかったように思う。というより、コースのボリューム把握が甘いまま、行程を詰め込みすぎていた。そう考えると、過去のペースに比べて段違いに遅い、今のペースもなかなか悪くない。まあこういうのも、哀愁の50台ツーリングの味というやつなのかもしれない。
12:05、豊似着。何度か通っているはずなのに、幅の広い国道336沿いに町が貼り付く風景が、またもや全く記憶に無い。
除雪ステーションの自販機でコーヒーを呑み、次はいよいよ寄り道区間のハイライト、豊似から山裾へ向かう農道へ。公営住宅なのか、同じ造りの民家が並ぶ町の裏手を抜け、彼方の山裾へ一直線。空はすっかり青空、コースの一番遠くまで来て、最高の青空ツーリングだ。
R0010706.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡広尾町紋別にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
裏道の周囲には畑と牧草地と森が続き、のんびり進みながら緑がどんどん通り過ぎてゆく。海岸近くの雰囲気が漂う伸びやかな開放感は、青空と白い雲のせいかもしれない。程良く通り過ぎてゆく白い雲が、時々陽差しを隠してくれる。木陰も冷やっと涼しい。
R0010708.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡広尾町紋別にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
またもや、今まで広尾・大樹間を通る時に、国道336・236しか通っていなかったのがつくづく悔やまれる。
R0010709.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡広尾町紋別にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
終盤では道がダートに変わるとともに、道を囲んで牧草地が拡がった。西側のやや遠くに、国道236と天馬峠へ向かってゆく車が小さく見えた。
山裾の手前で少し脚を停めてみた。拡がる牧草地、道端の樹、陽差しが当たった緑が眩しいように鮮やかだ。空の中、低い高さでどんどん動いてゆく真っ白な雲。余裕を持った行程で、ここまで来れて良かった。
R0010710.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡広尾町紋別にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
もう数時間後は宿に帰ってるんだろうな、とも思う。他力本願な言い方をしないで、地道に真面目に着々と進まねば。今夜も十勝牛ステーキが待っている。
山裾に沿った農道で丘を一越えし、大樹へ。
R0010711-Edit1.jpg 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡大樹町開進にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
平地に下りきる前から大樹の市街は見え始めていたものの、大樹の市街地に入る前に、より内陸側の牧草地へ少し回り道しておく。なるべく幹線道路を通らないようなトラックが組んであるのだ。
13:05、大樹着。
町中には確かセイコーマートがあったはず。しかし、GPSトラックをなぞっている途上に、セイコーマートは見つからない。2015年にセイコーマートに寄ったはずなのだが。あの時は確か浜大樹から道道55を通ってきたはずだから、町の歴舟川対岸側だったかもしれない。
セイコーマートを捜して見回していると、国道沿いに道の駅の看板を発見した。しかしセブンイレブンの前を通り過ぎてわざわざ信号を渡って道の駅に着いてみると、そこにはカジュアルに入れそうな食堂っぽい店は無く、代わりにAコープのショッピングセンターが大繁盛だった。地元向けにおそろしく機能的な道の駅なのだった。
仕方無く再び信号を渡りセブンイレブンへ。腹が減っているので、手っ取り早くカップ麺を食べておくことにする。多分もう八千代YHまで何か食べられそうな店は無いだろう。
まだ13時過ぎなのに、もう大分陽差しが赤くなっている。あと3時間ちょっとで八千代まで行ってしまうのが、何だかまるで他人事のようだ。走るのは自分なのだが。
13:30、大樹発。コースも後半の復路、八千代への北上が始まった。
まず歴舟川南岸の道道622で大全を目指す。大樹の外れから牧草地や牧場が拡がる平地を横切り、山裾に近づくと周囲に農家が途絶えて廃屋に変わり、河岸段丘上の山裾に森と牧草地が断続しはじめる。全体的に車が少なく落ちついた雰囲気が大変好ましい道だ。しかしこの時間にしてもう日が傾き始めていて、早くも道が山影の中に入り込んでいる場所もある。そういう場所では影の中が冷やっと肌寒い。
大全で歴舟川対岸の尾田へ、神威大橋、カムイコタン橋を渡る。記憶通り、ずっと開けた平地が続いた今日のコースでは眺めることが無かった、彫りが深く森に囲まれた渓谷。橋から見下ろす屈曲した歴舟川には、意外な程に山深い雰囲気が漂っている。
ここからはもう最短ルート系で八千代へ向かってコースを組んだはずと思っていたのだが、対岸に渡って尾田まで少しの裏道がダートなのだった。こんなちょいダート省略して、最短距離の既知の舗装道で向かおうかとは思ったものの、こちらも短い距離なので、この際ダートを経由してみた。何事も経験である。
果たして短い道ではあったものの、尾田の山側に拡がる歴舟川の谷間、幸徳・相川の展望が、私を待っていてくれた。特に、午後の眩しい陽差しの中、日高山脈の奥へ続いてゆく拡がりを見渡せたのは大きな収穫だった。
R0010713.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡大樹町尾田にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
あっち方面へを回った方が楽しかったかな、とも思った。実は幸徳・相川方面は2015年に一度経由している。のんびりした、眺め通り明るく空に続くような牧草地が日高山脈の裾に拡がる、印象的な風景の道だったのをよく憶えている。距離は確か10km以上、いや17、8kmぐらい増えたような気がする。また次回以降、あちらへ行くという前提の行程を組んで再訪すべきだろう。その時も天気が良いといいな。
14:10、尾田着。もう標高160m。大樹は標高70mだったので、意外に登ってきているのだ。
尾田には午前中経由した道道55が通っている。大樹からここまで経由してきた道道662に比べて、やはり道道55はかなり幅が広い。さすがは道道55だ。その道道55に張り付くように、しかしお互いにやや離れ気味に建つ民家の中に平屋の郵便局が見える、という程度の規模の集落だ。2005年、確か尾田の道道55沿いに萬屋があり、そこの自販機で休憩したような気がする。その萬屋だったっぽい建物は見つけたものの、もう店としては営業していなかった。自販機は残っていてちゃんと動いているようだ。でも今は特に困っているような事柄は無く、そのまま通過して先へ進む。
尾田からは更別の段丘と村営牧場の丘へ向け、地形が次第に登りに変わる。辺りは開けていて、道は登りに見えなくても脚が明らかに重いという、よくある嫌なパターンだ。しかし、西側には牧草地や森が日高山脈の谷間に開け、十勝南部の山裾の地形を意識させ始める。山裾の道であることは尾田までと変わらないのだが、より日高山脈の存在が感じられるのだ。
R0010715.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道広尾郡大樹町拓進 道道55にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
道の正面に段丘が、立ちはだかるように現れた。100m程登って丘を越える峠部分は、十勝西部縦断道道の最高地点だったはず。標高は310m、確か1995年だったか、雨の中その最高地点周辺で「これが更別村営牧場か」と地形図に載っている文字と看板を比べて眺めたことを憶えている。そして、今日忠類の手前で豪快に下らされたダート下りが、この段丘の続きなのだと気付かされた。
今回最大の登りだ、と思って落ちついて7%程度の登りを淡々と登ってゆく。序盤は平地からの離陸、中盤以降は段丘に乗り上げ、その後は鞍部の森をゆるっと乗り越えてゆく。更別村の境界を越えると、村営牧場が記憶通りに現れた。しかし以前より牧場以外の森が濃くなっているように思えた。
この段丘の縁を境として、北側の平地は内陸の十勝川へ、南側の平地は太平洋へ下ってゆくという十勝南部の地形イメージを、標高とともに今回はっきりわかることができた。今回の収穫の一つではないかと思う。
所詮は標高310m。鞍部を越えると道は下りに転じ、丘の間の谷間をすり抜けてゆく。周囲は、森、森、牧草地ぐらいの感覚で入れ変わってゆく。途中で中札内村の境界を越えた。そうか、もう中札内なのかと思う。
下りが落ちつくと、道端の森の向こうに民家が見え始めた。元更別である。集落は農家もあるものの、やや廃屋が多いように見られた。
元更別から周囲は再び平地に変わり、道は上札内へ更に下ってゆく。途中目に付いた牧場が余りに緑鮮やかだったので、最高地点も越えたことだしちょっと脚を停めてみた。ちょうど雲の中から陽差しが現れたところで、大分横向きになってきた光に赤い色が混じり初めて風景の輝き、鮮やかさを増していた。
森から牧草地、畑まっただ中へ、道は一直線に続いてゆく。もうすっかり十勝西部に帰ってきたのだと感じさせられた。
サラベツ川を渡って、15:00、上札内着。どこか物寂しい表情の道沿いに民家が並ぶ、独特の西部劇っぽさが特徴的だと思っていた上札内だったが、今日はもうそうは思わない。家並みが、里の営みが何だか懐かしいように人なつこい。自販機で缶コーヒーだけ飲んで、GPSトラックの先へ。
次は戸蔦。既知の一番山裾側ではなく、直行コースの未済経路を行くことにしている。更に下手の中札内から八千代へ向かう道も景色は十分以上にいいことがよくわかっているので、どこを通っても素晴らしい眺めに出会えるだろうと目論んでいたのだ。
R0010717.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道河西郡中札内村上札内 道道240上札内橋にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
札内川を渡って拡がった風景は、これまで通ったことがある下手の平地と上手の山裾の中間らしく、大きな波を伴う地形に十勝の広々とした畑が続く、まさに期待していたとおりの風景だった。
気が付くと、拡がる畑や丘の上に、山々の隙間の谷からまとまって雲がかなり速い速度で動きはじめていて、あっという間に空を半分隠してしまった。そして更に雨がぱらつき、収まった。しかし空は暗く、予断を許さない。
新札内までは登りが続いた。
R0010718.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道河西郡中札内村新札内にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
岩内川を渡って裏道で戸蔦へ。過去に通ったことが無い細道だ。地図では細道で描かれていても、上札内からのどの道も区画の道なので、最悪でも道が途切れることは無いだろうという安心感はあった。
R0010719.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道帯広市岩内町東2線にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
しかし、やはり戸蔦川の段丘下りで、路面はダートに変わった。そして谷間を越える橋とその周辺、大きく向きを変える道の線形が複雑に屈曲し、急に短い登り返しも現れたりして、展開がめまぐるしい。さすが未済経路だけのことはある。
戸蔦は帯広市なので、いつの間にか中札内村から帯広市に入ったことになる。戸蔦で見つけた商店の自販機で表敬訪問、いや、条件反射でコーヒーを呑み、15:30、戸蔦発。戸蔦別川の谷から台地上へ登って、もう八千代まで1本道になってしまった。
山裾寄りの畑で雨が本降りになりかけてから、また雲が素速く動き、最後に青空が再び現れた。
R0010720.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道帯広市太平町西7線にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
陽差しがもうすっかり真っ赤になっていて、緑は鮮やかだし色付き始めた広葉樹の葉は赤っぽいし、日高山脈の山影は真っ青だ。
R0010721.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道帯広市八千代町にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
脚を停め停め進んでも、もう宿は本当に近づいてしまっていたのだった。八千代町の広々とした眺めは、十勝でも出色だとつくづく思う。
R0010722.JPG 北海道Tour20#14 2020/9/21(月)八千代町→八千代町 北海道帯広市八千代町基線 帯広八千代YHにて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
16:30、八千代YH着。やはりこの季節の16時半、すっかり肌寒い。行程終了時刻として良い線である。
夕食は最後の十勝牛サーロインステーキ。3日連続、本当に大型ステーキを食べてしまった。
記 2021/2/24
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