柏はやはり陸地の突端部、それなりに最果て感が溢れる漁港だった。
海上にはややシルエット気味に姫島が浮かんでいた。薄く拡がっていた雲が普通に濃くなり、海の色もやや重いものの、再び海を意識させる風景である。
一旦内陸の畑を経由して高崎で再び海岸へ。
観光案内の出ている高崎鼻で少し脚を停めてみた。
この辺の海岸も、五島列島の各島でよく見かける不自然なほど真っ黒くやや大きめの石浜である。あちこちで余りに漂着ゴミを見かけたために、不自然に黒い石も、近年のタンカー沈没か何かで重油が付着したのかと心配していた。そこで岩場の海岸で何かを採っていたおばさんに尋ねてみると、黒いのは火山岩の黒さであり、むしろ所々白っぽい部分は潮に晒されたためとのことだった。少し安心できた。ただ、黒い石の中に漂着ゴミが目立つことは変わらない。
高崎鼻を回って海岸から千々見ノ花へ続く道では、白い砂浜がところどころで現れ、海も澄んだ青緑で大変美しいのだが、黒い石の海岸ではやはり漂着ゴミが目立ち、何かやはり済まないような申し訳ないような気持ちは残った。
岸辺のやや放置気味の茂み、曇り気味の空と共に、気分があまり落ち着かない。
後網から八ノ川への内陸の畑でやっと人の営みの雰囲気にほっとして、やはり自分は里の風景が好きなのだ、と思った。
浜ノ畔辺りから、道は畑の中を登り始めた。ちょうどGPSトラックの画面に三井楽YHの文字が出て、三井楽半島2周目のGPSトラックの交叉点が登場。そろそろ2周目へ乗り換えるタイミングだ。まだ15時台、2周目も行こう。
京ノ岳の裾から中腹へ、集落上手ぐらいのつもりで描いていたトラックの実態は、むしろ森の中主体の林道だった。さすがに拾いやすい道だっただけあり、林道は京ヶ岳一周道路という通称があるようで、そんなような看板が時々みられた。京ノ岳の外周を反時計回り、しばらくやや緩めに登りが続いた。森は道を覆ったり、或いは海側が開けて時々集落上手の畑を掠めたり、若町島で通った道のように時々東シナ海や海上の姫島が見えたりして、退屈しない。時々京ノ岳を直登で登ってゆく道が直行したものの。もう今日も宿が近いので、たかだか100m足らずを登って頂上に行こうとも思わない。
岳では道が集落上手を通過。その辺りで最高地点も通過し、京ヶ岳一周道路は再び森の中をどんどん下り始めた。最初は森の道かと思ったものの、やはり里に接しつつ一番山裾を周回する道である。
再び浜ノ畔に戻り、そのまま畑の中から三井楽の港町へ。小綺麗な民家が多く、生活感溢れる美しい町並みは流石元三井楽町中心部である。
三井楽半島2周はここで終わりとなる。エリア自体は狭く、高度の震幅も狭く、曇り始めた天気のせいもあり、全体的にやはり空撮で思い描いていたイメージとは異なる風景が展開したものの、ころころ景色が変わる楽しいコースだった。私的には、こういう走り方をあまり移動系宿泊ツーリングでしたことが無い。
もう宿まで数百m。この期に及んで、やっと懸案の道の駅「遣唐使ふるさと館」が行く手に現れた。
今更とは思ったものの、一方で引っ込みが付かなくて、つい立ち寄ってみた。食堂は既に営業時間が終わっていたので、勢いで売店でソフトとチョコだけ買い、ソフトをむしゃむしゃ食べてみる。食堂は15時まで営業していたようなので、さっき桐の木からほんの1kmぐらい下るだけで、何か食べられたのだ。やや残念だったものの、こちらがコンビニツーリングに慣れすぎているのだとも思う。
16:50、民宿西光荘着。案内された部屋の名前は「京ノ嶽」。さっきまでぐるっと回っていた、三井楽のどこからも眺められる低山の佇まいを思い出す。或いは、京ノ岳一周道路から宿到着時刻を電話したので、女将さんが気を回して下さったのかもしれない。「夕陽は見ないんですか」と尋ねられたものの、今日は空が霞んでいるし、今は網風呂の方が有り難い。
夕食は五島の名産が集められ、大変美味しかった。食器もイメージが揃っていて、野菜はやや少なかったものの、今回の旅程中一番豪華な宿の食事だったかもしれない。私の場合、通常メニューに加え、オプションのまぐろ大トロと鯛の刺身、五島牛ヒレステーキが付いた。中でも五島牛はここまで食べたものと同じく、霜降りのようにとろける、しかも油臭みの無い極上の肉だった。五島牛ってもれなく美味しいのかもしれない、と思わせるに十分なものだった。
記 2019/6/16
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