分岐からはすぐに登りが始まった。
富江まで道は一応国道384となっているが、林道のような幅と線形と斜度の、まともに3回登って下ってを繰り返す道なのを事前調査済みだ。ルートラボのプロフィールマップは山が3つ、100m〜180mだったかな。充分時間は見込んでいるので、今日までの行程と同じく、落ちついて進めばいい。
福江から玉之浦方面に向かう場合、昨日通った内陸経由より海岸経由のこちらの方が距離・獲得標高・斜度とも厳しい。民宿たまのうらのロード乗りの方もこちらを通ってらしく「あれキツかったね〜」と仰っていた。
山間を巻いてゆく道の外側には、木々の間に青い海がちらちら見えた。
時々見晴らしが開けたりもした。振り返り気味に見える遠く高い岸壁は、昨日大瀬展望台から眺めた赤瀬の反対側だ。朝からそこそこ時間が経っているだけあり、あの岬の反対側、こんなに遠くに来れているのだ、と実感することができた。しかし遠くではあっても距離感なりに、岩の明るくもざらっとした質感がリアルで明瞭によくわかる。海面近くの霞みにも、波のしぶき、潮の香りや冷やっとした海の湿気を思い出す。
思わず脚が停まる、というよりこれを口実にちょっと脚を停めた。絶景が楽しい断崖ツーリングだ。
そういう絶景ポイントでは、道は相変わらず真下が見えない切り立った斜面に張り付いているのだった。せいぜい標高100mちょっとでもガードレールがあっても下が海岸じゃなくても、道から海に落ちる怖さ、いや、斜面自体が海に落ちてしまうような怖さをひしひしと感じてしまう。こういう気持ちは奥武蔵とかではあまり経験したことが無い感覚であり、頸城の深坂峠が少し近いかもしれない。
最初の峠は標高150m。下り始めるとどんどん下りはじめ、意外とすぐに太田の集落を見渡す谷に出た。
急斜面から狭い谷間に展開する、落ちついた集落を谷底まで下り、民家の軒先を掠めて谷の奥をくるっと回り込むと、すぐ次の90mが始まった。
きりきりっとした斜度の登りではあるものの、坂なんてもう毎日の事で珍しくもない。
峠部分を越える手前、海側の前方結構近くに、霞んで半ばシルエットのような富江半島と、漁村らしき海岸部の賑わいが見えてきた。計画時には富江を初日に訪れる行程を、だいぶ後まで組んでいた。いよいよ眼前に富江の半島が現れ、感慨深い。
次の谷間の琴石では、狭い谷間を横断する鯉幟が見事だ。子供のいるご家族が懸けたのかもしれない。
今回、五島列島のどの島でも、見応えある鯉幟をよく見かける。その多くには子供の名前が描かれていて、親御さんやじいじばあばの愛が大変微笑ましい。
昨日中通島で見かけた、晴れの日の朝に釣りを家族総出で楽しむ漁村を思い出した。例によって谷底に下ってバウンドするように次の190m登りへ。
登り途中で、谷を折返して向こう側の尾根を巻いてゆく道が見えた。谷が狭いためけっこう見上げる位置関係に高度差は感じるものの、まああれ一発だと思えばカワイイものである。
もう少し斜面を巻いて到達した最後の峠には、やや放置気味のバス停があった。後で調べるとバス路線は2年ぐらい前に乗合タクシーに転換されたようだった。バス停の看板には「牧場入口」と表示されていたので、もしかしたら山中のどこかに放牧場があるのかもしれない。多少なりとも10%を登ってきて峠を越えた気になっているこちらとしては、なんだかがくっとくるバス停名称ではある。
下りもくねくねの急斜度で、丸子の谷間、小さい丘の後で海岸に着陸。
一旦拡幅済み区間が始まった国道384は、黒瀬の漁村で再び、とても国道と思えない軒先細道となった。国道384、大宝・黒瀬間は細道国道合格である。
記 2019/6/16
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