13:00、荒川発。
矢ノ口、白泊、国道384は入り組んだ岩場の裾を海岸沿いに北上してゆく。
地形図に、計画時には気付いていなかった、丹那という名前の集落を見つけた。ならば集落の向こうのやや大きなトンネルは丹那トンネルなのかもしれない、と思った。「丹那トンネル」という名前は、東海道本線熱海・函南間に昭和9年開通した、大変有名な鉄道トンネルの名前である。掘削の記録が本になっていて、土木技術史上というより昭和の歴史として知られていると言っていい。
丹那手前のやや短いトンネルは「丹那岬トンネル」だった。そうだろうな、これだけ短いトンネルに丹那トンネルの名は着けられないよ。
と思っていると、自販機すら無い丹那の向こう側、60mまで登って現れた延長600mのトンネルが、やはり天下の「丹那トンネル」だった。丹那トンネルをおれは自転車で通ったぞ、と何だか嬉しい。
トンネルとトンネルに挟まれた頓泊の短い谷間で、入り江一番奥の白い砂浜がちらっと見えた。そろそろ国道384沿いに砂浜が続く区間である。あまり深いことを考えずに計画時のイメージに従い、とりあえず立ち寄ってみることにした。まだ13時台、時間はあり余っている。
砂浜沿いに湾の外に向かう間、入り江一番外側に頓泊海水浴場のレストハウスが見えていた。軒の深い、いかにも何か食べられそうな雰囲気のテラスは、一方で小汚いおやじツーリストが訪れてもいいのかというようなリゾートの雰囲気を、1km手前から漂わせていた。
しかし近づいてみると、その印象は単純に屋根・柱の細い木造部材やウッドデッキによる開放感であり、そもそもレストハウスの売店が営業休止中で、トイレだけが利用可能だった。静かで落ちついた雰囲気も単純に人が少ないだけの話で、何人かの訪問客はやや手持ち無沙汰そうにその辺をぶらついていた。まあこの季節では仕方無いことかもしれない。
小汚いおやじツーリストとしては、折角人がいないので、この際レストハウスのウッドデッキに自転車を停めさせていただく。波打ち際の、靴にあまり海の砂が付かないぐらいの場所まで行ってみると、海面が近いせいか潮の濃厚な香りが感じられた。
足下の明るく透明な砂浜の海中に、メダカのような小さい魚が群れている。もちろんここは海なのでメダカじゃない。
辺りを見回してみる。白い砂浜、青い海が鮮やかだが、海の色がどこか鮮やかではない。さっきより更に空に薄雲が拡がっていて、日差しはやや陰り始めているた。太陽の周りに虹の輪ができているのに気が付いた。
次の砂浜「高浜海水浴場」へも立ち寄ってみた。こちらでは渚が国道384沿いで、休憩施設は国道384から近く、訪問客も多い。しかし休憩施設が営業していないのは頓泊と同じだった。まあ自販機があれば小汚い親父ツーリストは最低限事足りる。
しかし一方、少し手前で道端に現れた「道の駅」の看板を見た途端、条件反射で腹が減り始めたような気がし始めたのには参った。道の駅まで何kmかは書いていないのに。ちくしょう、近くにあるんだろうな。
記 2019/6/16
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