★行程★
北海道Tour18#10
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大村→上富良野
(以上#10-1)
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晴れ予報の最終日、今日はここ美瑛から北落合へ行き、幾寅から輪行で美瑛に出戻りだ。このため、置ける荷物はYHに置いておくことができる。しかし、自転車写真を北落合始め各私的名所で撮るために、4サイドは装備したい。という理由から、今日の荷物は4サイドだが着替えは入っていない、なんちゃって4サイドだ。まあ、とはいえ省略できるのは着替えだけなので、やはりバッグ丸ごと減らさないと、荷物を省略したほどの軽量化はできていないのが実情ではあると思う。つくづく自転車の積載というものは効率が悪いと思う。まあただ、サイクリングを旅として楽しめるかどうかは、自転車の重さとは全く別の問題ではないかと思うようにもなってきた。荷物が多いから楽しい、というのもどうかとは思うが。軽いから楽しい、のは確かにその通りかもしれない。
5:20、美瑛ポテトの丘YH発。
走り始めると、空気に肌寒さが感じられる。いつもはこの時間でもむっとするように暑くて、さすが道北とは違うのだよ、などと思う程なのに。そして、昨日夕方晴れ始めていたのに、空は雲に完全に覆われていた。
ただ方角によっては雲が切れ始めているような気がする。毎回美瑛発の最終日は、朝はどんより曇りでも麓郷辺りから晴れるのだし、今日も麓郷で晴れなくても、幾寅辺りでは晴れてくれるだろう。今日こそは晴れ予報なのだから。希望を持って脚を進めよう。
一旦美瑛に降り、町外れから新栄の丘へ登り返す。新栄は美瑛・美馬牛の中間にあり、お手軽に登れて充分に美瑛らしい風景が楽しめる、美瑛の丘めぐりとしても上富良野方面へ向かう私の経路としても一等地なのだ、ということを近年私は再認識しつつある。それに多少は登り返しがあっても、せっかく美瑛に来たのだから少しは美瑛っぽい場所を通らないと、美馬牛〜上富良野辺りで後悔することになることも近年私は学習している。
谷底から、辺りが開け始める丘の上手まで一登りして、やっと汗ばむぐらいに身体が温まってきた。雲は高く比較的軽く、さっきより切れ始めて青空まで見え始めていて、日差しが時々辺りを照らしては雲に隠れている。雲の下の遠景が良く見渡せるのだけでも、近年の美瑛では目新しい。
新栄の丘の手前、過去何回か写真を撮った場所で、2018年のカメラで写真を撮っておく。こういうのを面倒がってはいけないのだ。空は青空が見えていて、見渡す畑に明るい日差しが当たっているものの、未だ雲は多い。肌寒くても、今ひとつすかっと爽やかではない。しかし、これが今年の美瑛だ。今日天気が冴えなくても、まめに何度も訪れてみよう。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道上川郡美瑛町憩 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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6:05、美馬牛通過。相変わらず肌寒いのみならず、霧が漂い始め、晴れるどころか辺りは薄暗くなってしまった。
美馬牛から上富良野へは、いつもはすぐ谷に降りてしまう最短経路を使っていた。この道はしつこい登り返しが少なく、静かな落ちついた田舎道である。しかし、あまりに普通に田舎道っぽい道であり、この道を通る度、せっかくの美馬牛〜上富良野なんだからもう少しそれっぽい風景の中を経由してもいいのに、という気もしていた。
このため、今回はもう少し目新しく回り道気味のコースを狙い定めてみた。工夫の甲斐あって、多少の登り返しはあるもものの、毎度のコースより明らかに美瑛・美馬牛っぽい風景や丘の畑が眺められ、富良野盆地への降下区間では美馬牛の霧が去って、一気に盆地の景色が拡がった。
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北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡上富良野町草分 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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その時点では盆地は雲の影の中だったが、あっという間に上空の雲はどんどん消え、上富良野の外れでは辺りに陽が差し始めた。景色のニュアンスが俄然明るいものに変わり、なんとなく今日も朝が来た、という気分になった。
気分は朝でも、上富良野の道道291沿いのお店群はまだ閉まっていて、まだ街中は静かだ。
6:25、上富良野通過。富良野線を渡って市街の南側へ。セイコーマートがある筈の通りを探していたのだが、それっぽい辺りにセイコーマートが見当たらない。確か私の追加手入力が悪いせいで、GPSに表示される店の位置が違っていたかもしれない。等と思っている内に自衛隊宿舎の脇を通過してしまった。ここだと完全にセイコーマートは通過してしまっているという確信はある。まあ、今日はそのまま東中へ向かってしまえ。特に休憩する必要も無いのだし。
等と、いつも上富良野で小休止したくて仕方無いのに、今日は休憩しようと思わないことに気が付いた。この間空は劇的に晴れ始め、東中への町道では十勝岳の裾が全部見えた。青空と、日差しに照らされた辺りの明るさで、俄然気分が良くなってきた。これで曇っていたら、気分もあまり冴えないのかもしれない。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡上富良野町丘町 斜線道路 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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気温はまだ低く、北風が強い。北風というより、美瑛を出てからずっと追い風なのである。しかし3日前、浜鬼志別とか宗谷丘陵手前で、かなり強い追い風でもあまり有難さを感じなかった時とは気分が全く違い、終日追い風だといいななどと考えることができている。
そして、この天気だとベベルイ基線はかなりいい感じじゃないのかと思い始めた。そうに違いない。流石の晴れ予報、最終日で最高の展開になろうとしている。
6:55、東中着。5時代前半出発で上富良野で休憩しなければ、これだけのんびり進んでも東中に6時台に着けるのだ。
ベベルイ基線へ登り始める集落外れ、元商店の前の自販機で、缶コーヒーを飲んでおく。まだボトルの水は充分残っているし、水だけなら少し上にベベルイの湧き水があるし、別に今ここでコーヒーを飲む必然性は無い。しかし、ベベルイ基線に最初に訪れた1990年にここで確かお茶系飲料か何かを飲んだので、それ以来毎回表敬訪問というか、何となくここで飲んでおきたい気分になってしまうのだ。因みに当時は、確かこの辺に商店が2軒あったような気がする。
自転車を停め、ここまで着てきたフリースを脱ぐと、毎度この辺で感じるむっとした湿気に照りつける日差しの、たまらない暑さの予感とは異なる肌寒さが感じられた。しかし肌寒いというより、このきりっとした空気はむしろ、これが朝の爽やかさというやつではないのか。長年忘れていた、北海道らしい夏の朝は、確かこんな感じだったんじゃないのか。そして今日の天気予報は晴れだから、もしこのままなら、晴れているのにあまり暑くない、爽やかな1日になってくれるんじゃないのか。
晴れている上に、ここ数年会えなかった富良野の爽やかな夏。いつのまにか諦めてしまっていた、大変嬉しい展開になっていることに、私はようやく気付きつつあった。しかも毎日雨に悩まされ続けた今回の最後の最後で。
本幸までベベルイ基線はほぼ直登である。本幸まで登り総量は約200mということと、どうせ速く登れないことがよくわかっている。一直線に見通せる坂は視覚的にめげるが、淡々とこなせばいいのだ。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡上富良野町東中 ベベルイ基線 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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今日は涼しいので汗が噴き出るということも無い。等と思っていると、途中で日差しが射し始めて辺りが一気に暑くなり、すぐ雲に隠れてまた暑さが収まったりもした。先入観よりは涼しくても、やはり夏なのだ。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡上富良野町本幸 ベベルイ基線 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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7:25、本幸着。直登区間の一番上、畑の道端に高いポプラが立っている場所が私的定点撮影場所であり、ここ数年の北海道Tour最終日の名所第一ポイントである。
東中から十勝岳裾へと近づいて標高も上がったせいか、空の東側には細かい雲が増えて日差しを隠していたりまた日差しが出てきたりしていた。ただそれは、これから再び曇りに向かうようなものではなく、朝方の雲がまだ山裾に溜まっている程度の現象だろう。西側の空には雲は少なく、青空と言っていい。まあ近年の本幸訪問中、いい天気な方であることに間違いは無い。
いつも自転車を立てかける積雪時道端表示の赤白標識ポールは、昨年目出度く復旧されたというのに早くも再び傾いていた。前回と違い、今回は道路の方向だけではなく道巾方向にもやや傾いている。私としては是非とも早めに補修していただきたい。しかし、またすぐ誰かがぶつかってしまうのかもしれないし、むしろ今日はポールが立っているだけありがたいのかもしれない。
ここで満を持して、7月下旬に発売になったばかりのD FA★50mm1.4で写真を撮ることにする。中学一年生の時から親しんでいて大好きな50mmなのに、デジ一を導入した2011年以来、私のデジ一には50mmというレンズが不在だった。画角が似ていても画面サイズによるボケ量が違うと、空間感覚は全く違う。ようやく導入したフルサイズ機K-1でも、FA43mmLtdは43mmであって、50mmの世界とはまた違う。どうせ撮る写真は毎度同じなのだが、大好きなこの場所で、再び50mm1.4の空間がファインダーの中にあることが大変嬉しい。というわけで、時々日差しが翳ってはいても全体的に満足できた本幸訪問となった。
7:40、本幸発。引き続きベベルイ基線を八幡丘上手の水平区間へ進む。
空の雲は急に消え始めていた。もう少し本幸にいるんだったな、などと思う。でもまあ、進めば進んだ先の風景に出会えるのだ。今は時間なりに脚を進め、その場所なりの今回の風景に出会うことが、旅のリアリティというものだろう。気分が良いので、何事も前向きに捉えてくよくよせずにいられる。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡上富良野町本幸南一線 ベベルイ基線 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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向かって左側、斜面の上手は自衛隊の演習林。右側は普通の森。両方とも背の高いカラマツの森で、路上は未だ空気がひんやり、木陰の中だ。
カラマツ林は近年ブロックまるごと伐採された場所が増えていて、そういう場所では右側下手に八幡丘の畑、左側上手に旭岳の見晴らしが絶好調である。
道を日差しが直接照らしているので、森の中の区間とは全く違った広々と明るい開放感が感じられる。木々が伐採された後は幼木が植林されているので、20年ぐらい経つとまた大木がこの道を囲むのだろう。
ベベルイ基線終盤、布礼別への100m下りでも、富良野岳裾野の眺めが素晴らしい。
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北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道富良野市北布礼別 ベベルイ基線 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道富良野市布礼別 ベベルイ基線 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
布礼別を過ぎて麓郷手前でも、大麓岳裾野の畑の拡がりがまた格別である。
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北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道富良野市布礼別 道道253 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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この間ずっと、空気は相変わらず涼しいものの、日なたではやはり日差しが肌にちりちり感じる程厳しい。そうそう、こういうのこそ北海道らしい夏の感覚である。
そして毎年好んで訪れているはずなのに、晴れさえすれば木立も周囲の眺めも最強のコースだと、改めて気付いた。あまり急がずてれてれのんびり、走っているだけで最高に良い気分だ。
8:05、麓郷着。麓郷の交差点はまだ静かだ。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道富良野市麓郷 道道253・道道544 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
元A-COOPの建物はもうすっかりシャッターが閉まりっ放しなのか、何だか放置感が漂っている。ゆでトウキビ自体を売っている藤崎商店は、隣の木造家屋に移っていることを、去年訪れて知っている。折角麓郷までやって来たのだから、藤里商店のゆでトウキビを食べておきたいようにも思われるものの、今日まで毎日のように、私は各地のセイコーマートで甘くてぷちぷち美味しいゆでトウキビを食べている。それ以上に今日は、何だかこの空気と景色の中をどんどん進んでおきたい。自販機でコーヒーだけ飲んでそのまま出発することにした。
大麓岳裾野に畑が拡がる麓郷の盆地の南端で蛍橋を渡り、平沢への小さい峠へ。
毎回10時前頃通ると暑さが堪えるこの道も、今日は意外な程楽々登れる。
時間が早くて木陰が涼しかったりもともと涼しい日だったり、昨日までの2連休で疲れが回復していたり、いろいろ理由はあるのだろう。
平沢へ降り、森の中から再び周囲に夏らしく明るい風景が拡がった。真っ青な空、白い雲、丘に拡がる畑を眺めたり見回したり、脚を停めて振り返ったり、元展望ポイントに何年か前建ってしまった防風フェンスを恨めしく思ったり。
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北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道富良野市平沢 道道253 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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9:15、老節布着。交差点でまたもやコーヒー休憩とする。
開けた盆地の中、畑の真ん中の集落に直線の道が直角に交わる交差点と小さな商店、ガソリンスタンド。初回訪問時から何か心に残る場所であり、暑い日にはここの自販機がたまらなく有り難く、この道のいい休憩ポイントになっている。何とはない休憩ポイントも旅の思い出であり、再訪してみたい場所になっていゆくのだ。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道富良野市老節布 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道富良野市老節布 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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西達布への下りも畑の中の道が続く。この道を最終日のコースにした、最終日に眺めたいイメージ、いや、希望通りの風景が次々現れる。丘に展開する畑の開放感、畑に規則正しく植えられた各種作物の鮮やかな緑、背景の小山、盆地に点在する農家や木立。山をバックに地形が緩やかに起伏していて、時々木がぽつんと立っていたり農家があったりするだけなのだが、どこを見ても絵になり、ついつい脚が停まる。脚を停めて風が止んで、かなり暑くなっていることに気が付いた。
今日もそろそろ暑くなり始める時間帯に入りつつある。これだけ暑いからこの辺の畑は野菜畑で一杯なのだ、などと思う。折角の晴れ、ゆでトウキビも悪くないがこういう所で脚を停めねば、とつくづく思う。そうでなくても行程が早まる要素は私の脚に無く、遅れる要因は山ほどある。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道富良野市老節布あやめ #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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9:35、西達布着。そのまま国道38へ。幅の広い路上は大型車がやや多く、やはり国道独特の埃っぽさが漂っている。それに路面が平滑なのか路盤が安定しているのか、とにかく路面からの振動が少ないし、路上に気流が車の通行通りに流れているというか。要するに何もかもフォーマルで慌ただしいのである。やはりツーリングには、もう少し全てがいい加減な田舎道の方が望ましい。
しかし、相変わらず夏らしい日差しで景色は明るく、それでいて適度に雲が出て、暑いながらもそこそこ快適だ。峠区間に移行しても、登っていてさすがに汗は出ても、立ち止まらずにいられない、などということが無い。
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北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道富良野市西達布地内 国道38 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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峠手前の大樹海展望ポイントでやはり脚を停め、三の山峠を通過。
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北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道富良野市西達布地内 樹海の展望 国道38 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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一気に下りきり、10:35、道の駅南ふらの着。かなり快調な進行だ。上富良野や麓郷で寄り道しすぎず、途中でもあまりうだうだしなければ、これだけ早い展開で幾寅に行けるのである。
北落合経由で幾寅に戻る予定の今日の行程中では、ここ幾寅が最後の食料補給ポイントということになる。しかし行動食はしっかり持っているし、今幾寅でこの時間なら、北落合でゆっくりして、幾寅に戻ってきてから確実になんぷカレーを食べられるスケジュールが見えてきた。ここで必要以上に休み込まず、北落合へ粛々と進んでしまえ。
幾寅の盆地を横断、2016年秋の増水で川原の風景が変わってしまった幾寅川を渡り、幾寅側の谷間へ。まだ畑が続く久住までは盆地の範囲であり、道があまり登り始めることは無い。谷間が狭くなるとともに谷底の森は茂みに変わり、茂みの範囲も谷間を進むに連れ狭くなってゆく。段階的に少しづつ上がっていた登り斜度は、東幾寅への分岐が現れる辺りで登りと呼べるぐらいに変わった。この辺で、幾寅から北落合まで半分以上来ていることになる。
やや雲が増え始めた。やはり今日も山間では曇りやすいのかもしれない。北落合まではまだ少し登る必要があるので、幾寅より空は曇るかもしれない。まあ、登っている間はこの方が涼しくて都合が良いことは確かだ。
カーブの奥、切り通しの上端が防風林っぽくなった。北落合端っこの、畑を囲む防風林である。ちょうど良い具合に空は再び雲が少なくなり始めている。なかなか都合のいい展開である。
道は谷底から丘へ乗り上げ、開けた畑の中へ。1本道の正面には林と元小中学校の集会場がある北落合中央、周囲には見渡す緩やかな丘、畑に立つ1本の樹、防風林、遠くに狩勝の山々。エゾゼミとキリギリスの声が今日もやかましい。畑から農道の路上に、泥の付いた車輪の跡がカーブしている。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡南富良野町北落合中央 農免農道落合線 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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再び太陽の廻りには雲が消えていた。ほぼ真上からの日差しで北落合全体のコントラストが高く、彩度色相とも濃厚で落ちついて安定し、どこを見ても絵になる。日差しは厳しいものの今日は風が涼しい。雲の動きは速く高さもやや低く、もくもくと元気そうだが、今日の雲は真っ白で、真っ青な空の中をただ通り過ぎてゆくだけだ。雲の速さと低さに、なんだかんだでもう標高は500mを越えているということを思い出す。
11:15、北落合中央着。11時台ともなると、さすがにそろそろ腹が減っている。今日は前回より45分早着で進行しているから、いろいろな場所で相当うだうだしても、幾寅のなんぷ亭で落ちついてなんぷカレーを食べることができるだろう。体調次第では、もしかしたら2杯食べることができるかもしれない。ならば、カレー2杯に向けて、着々と腹を空かしておかねばならない。そして今、一番時間を過ごすべき場所は、北落合最高地点の680m地点である。
標高が高くて開けていて、雲が速いだけあって風は強い。途中、カラマツ防風林の向こうの牧草地へ立ち寄るのを楽しみにしていた。防風林の中短いダートの向こうに牧草地が拡がり、牛糞を避けて自転車を停めるのも楽しみだったその場所には、昨年無かったフェンスが設けられていて、今日はそのフェンスが閉まっていた。
最後は680m地点まで一直線の直登区間。農免農道が北向きとなり、強い風がもろに向かい風となった。向かい風もさることながら、開けた畑の中なので登り斜度が視覚的にわかりにくいのは毎度の事。どうせ登りで遅いのだ、いつも通りの登り負荷で淡々と進めばいい。雨続きの旅程を経て、遂にここまで来たのだ。しかも様々な作物の畑が防風林を区切りにして次から次と入れ替わり、脚を停める口実に不足は無い。
680m地点の背後に建つ農免農道の看板と最後の最後で斜度が更にがくんと上がる登り坂が近づいてくる。農家のログハウス、牛舎、最後の最後短い激登り。またここまで来ることができたという実感、歩みはゆっくりゆっくりでもその時が確実に近づいてくるという実感がとても嬉しい。
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北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡南富良野町北落合 680m地点 農免農道落合線 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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12:00、680m地点着。
登ってきたためか、風はさっきよりますます強い。青空の中、真っ白な雲が意外な程近い高さと速さで、背後の稜線の向こうから次々やってきて通り過ぎ、時々少しの間日差しを隠したり、再び日差しが牧草地を明るく照らしていた。平地で雲がこの動きだとかなり風雲急を告げる天気なのだが、今は晴天から何か劇的に変わる気配は全く無く、至って平和なお昼時だ。
雲の速さに改めてここの標高が狩勝峠より高いことを思い出す。680m地点としては近年出色の晴れだ。2015年の秋は雲一つない程の晴れだったものの、あれは秋だし夕方も暮れ始めていたし。
農免農道の外周にぶつかって舗装路面が途切れる、北落合中央からの1本道の最上端。舗装端部の砂利も埃も無いところにあぐらをかき、少しのんびりすることにした。補給食のパンを食べ、近くの草むらで鳴くキリギリスなど探してみたり、遠景を望遠ズームで眺めてみたり。ぼんやり眺める牧草地下手は、狩勝の山々から遠くの日高山脈へ、山影が段階的に青いシルエットになっている。ここはこれぐらいの拡がりが下っているから開放感があって、その向こうに日高山脈の山影が見えるのがいいのだ、などと改めて気付かされた。
10分も続けるとすっかり厭きてしまうこういう時間は、しかしとても贅沢な旅先の時間なのだと、雨続きだった故に気付けたな、等と今回の旅を思い出す。残りのパンはもう2切れある。今の腹の減りなら、こいつらを全部食べてもカレーには全く影響は無いだろう。補給食を残さず、過不足無く食べ終えられることは気分が良い。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡南富良野町北落合 680m地点 農免農道落合線 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
長居した。いや、これぐらいが必要充分。またいつか可能なら、この風景に会いに来よう。
12:25、680m地点発。
1本道を逆戻り、北落合中央下手の日進でいつもの畑へ。
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北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡南富良野町北落合日進 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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今年は柵が開いていたので、畑には絶対踏み込まないようにして畦道から丘の写真を撮らせていただく。★50mmを一番使いたかった場所の一つがここなのである。
1998年に最初来たときは麦畑で、その後は時々カルビーポテトの生産契約地となっていた他はずっとニンジン畑だったこの丘の畑は、今年なんとトウキビ畑になっていた。トウキビは高さ1.5m以上。他の作物に比べて背が高いため、デスクトップ写真でよく眺めるかつてのここの写真と比べて、丘全体のボリュームがいつもと違う。丘の上のポプラの背も、いつも写真で眺めるより高くなっている。考えてみれば、ここへ来始めてからもう20年も経ってしまったな。
日進からの帰路は、北落合中央に戻らず、長い間目を付けていた北落合の下手へ。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡南富良野町北落合日進 農免農道落合線 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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丘の畑を越えてゆく道は、エゾゼミやキリギリスの声が響くのんびりと好ましい田舎道ではあったものの、丘を見渡す開放感、人里っぽさという点では北落合中央の方が楽しめるように思えた。まあ、後悔はしない道ではあったし、次回以降は自信を持って好きな方を通ることができる。
13:25、幾寅着。日進でのんびり時間を取って、のんびり下って680m地点から1時間。大変わかりやすい。今後の目安である。
幾寅出発予定の14:50まで1時間半。普通に輪行作業してカレーを2杯、順調なら時間に何の不安も無い。ただ、手際よく物事を進めるに越したことはない。
まずは幾寅駅前「幾寅ハイヤー」でタクシーを14:50に予約。その後粛々と輪行作業と荷造りを進めてゆく。もうこの後、東京まで自転車を組み立てることは無い。「幾寅ハイヤー」の方が地元ロードバイク乗りとのことで、輪行作業中この辺のコースに話が弾んだ。こういうとき、トマム奥の双珠別林道に行っておいてよかったと思う。いや、今はもう熊が怖くて行けないんですが。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡南富良野町幾寅 幾寅ハイヤー前 - Spherical Image - RICOH THETA |
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14:00に輪行完了。「幾寅ハイヤー」の前に自転車を置かせていただき、さあ!いよいよなんぷカレーだ!
去年と違って時間は45分もある。去年は15分強で1杯食べたから、今日はまず確実に2杯行けるぜ!腹を適度に減らしておいて良かった。
果たして14:25、1杯目完了。過去2杯食べたときの記憶により、1杯目を食べ始めて5分後にはもう2杯目を注文しておいたので、1杯目完食からあまり空かずに2杯目を開始することができた。そして14:40、余裕で2杯目を完了。こう書くとあたふたと焦って食べているようだが、ちゃんと落ちついてじっくり味わって食べることができているのだ。
それにしてもなんぷカレーは美味しい。やっぱり幾寅で、最後にこれを食べないとね。
そういうわけで14:45にタクシーで無事出発、14:55分前には東幾寅到着。
タクシーが去って行った後、落合からの代行バスが来るまであと10分。木造の小さい駅舎から、砂利敷のプラットホームへ荷物を動かすと、あとはもうぼうっとするしかない。
北海道Tour18#10 2018/8/18(土) 大村→幾寅 北海道空知郡南富良野町東幾寅 根室本線東幾寅駅 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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どこをどう見ても完全に根室本線終着駅になってしまった山間の無人駅。あちこちで賑やかなキリギリスの声、茂みの向こうの森ではエゾゼミが鳴いている。いつの間にか少し赤くなっている日差しが雲で翳ったり、また現れたり。富良野方面の森の中から静かにやってきた単行のキハ40が静かにホームに停まる。そんな時間が意外に心に残るのだ。
10分後。わかっていたことではあるが、新得からの代行バスが到着してその静けさは破壊された。いや、乗客はたった10人強程度だし彼らはそこそこ静かなんだが、やはり人が増えたというだけで無人駅が無人じゃなくなるのである。
15:13東鹿越発。かなやま湖岸の森、空知トンネルを抜け、南富良野の谷底を、金山、山部。次第に谷間が拡がって畑が拡がり、民家が増えてゆく。
15:53、富良野着。順調に事が進んだお陰で、今年もノロッコ号に乗れる。まあノロッコ号に乗らなくても定期列車で美瑛には着けるんだが、去年乗ったノロッコ号の感動的な乗車体験が心に残っていた。
普通列車であるノロッコ号には指定席も自由席もあり、自由席なら乗車券だけで乗れるのだが、JR北海道支持者の私としてはここは断固指定席だ。ノロッコ号の指定券とともに、無人駅の東鹿越で買えなかった美瑛までの乗車券も買わなければならない。富良野駅の窓口では、若手の駅員さんが東鹿越から美瑛までの乗車券を買うのに、富良野分割・通しのどちらが安いかをすぐ計算してくれた。苦境のJR北海道には、こういう真面目で一生懸命な社員さんが一杯いて頑張っているのだ。私もとある事情から、苦しい会社とはそういうものだということをよく知っている。どんな夜もいつかきっと、再び朝はやって来るのだ。どうか頑張って欲しいと心から思う。
1号車の西側窓向きベンチはお一人様向けで、私のような乗客にはぴったりだ。16:20、富良野発。
中富良野、上富良野まで、富良野線は富良野盆地の平地まっただ中に続く。赤くなり始めてはいても、未だ日差しそのものはかなり眩しく強く、暑いというより熱い。しかし列車が走っている間は風が窓から入り、風はもう涼しくなり始めていることがよくわかる。上富良野から美馬牛は富良野線の丘越え区間。森の谷底から丘を見渡す美馬牛へと、日差しはますます眩しく赤く、森や木立から吹いてくる風がますます涼しい。
夕方の明るい風景と涼しい風、名残惜しい北海道の夏そのものが一杯だ。盆地周囲の青くなり始めた山影も、今日1日の行程がいよいよ大詰めであることを実感させてくれる。朝渡った踏切など渡る時、今日はどんな1日になるのだろうという朝の気持ちを思い出してちょっと感傷的になったりする。
こういうところが外の空気や景色を充分に感じられる、ノロッコ号の良さだ。そして今日は、旅程の最後の最後にそういう事を感じられた1日だった。
17:21、美瑛着。昨日準備していた農業祭りの大音響が、列車まで聞こえていた。美瑛の駅前も町がすっかり赤く染まって暑すぎず寒すぎず、いい夏の夕方である。
タクシー輪行でYHに向かう途中、新栄にちょっと寄っていただき、朝に立ち寄った丘をもう一度眺めることにした。毎年美瑛にやってきてもなかなか晴れの風景に出会えないのだ。今、この夕陽の中の風景を見逃してはいけない。
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翌朝もタク輪で旭川空港へ。最後の一日で前代未聞の雨続きを挽回してしまった、2018年夏の北海道Tourだった。
記 2019/2/28
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