紀伊半島Tour24#2
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次はGPSトラックに従って、国道の小山を抜けるトンネル脇から、小山を回り込む川に沿った旧道っぽい細道へ。
森の中から対岸に渡る橋が現れた。唐突に今日3つめのテーマ、瀞峡未済経路廻りが始まったのだった。
ここまで板谷川の狭い谷間を下っていたのが、GPSトラックに従いその橋を渡り対岸の小さいトンネルを抜けると、その向こうは広く大きな北山川の谷間に変わっていた。道はそんなに曲がっていないのに、不思議な展開ではある。北山川が曲がりくねっているのでこういうことになるのだ。
そのまま細道を進み、北山川の川沿い集落木津呂へ向かう。山間にくねくね屈曲して続く北山川は、この辺りで180°ターンを2回繰り返す。180°折り返す北山川に挟まれた島みたいな岸辺の集落が木津呂だ。北山川には直接木津呂へ渡る橋は無い。このため、木津呂は曲がりくねった北山川沿いの行き止まりとなっている。実際には木津呂の先にもう少し道が続いてから行き止まりになるっぽいのだが、そこは今のところあまり考えていない。どうせ無人の森の中で唐突に道が途切れることを、Web地図で確認済みだ。木津呂に行ければいい。
北山川沿い、特に瀞峡にはこういう場所がいくつかある。しかし私は北山川には何度も訪れていても、こういうところには今まで訪れたことが無い。やはり今まで、行程上の理由を大義名分に、訪問をサボっていたのだ。
切り立つ岩山に貼り付き、木漏れ日の森の中、北山川沿いから次第に道は高度を上げてゆく。時々岩肌を強引に掘り割りで道を通したような場所もあるかと思うと、のろのろ進むうちいつの間にか100mぐらい登ってしまい、北山川の広く澄んだ川面が見渡せ、思わず脚が停まったりする。見下ろすその川面の透明度に驚かされるのは毎度の事、つくづく本当に水がキレイな川だ。そしてその透明度が、のんびりと長閑で伸びやかながら、どこかきりっと清らかな、川の風景全体に影響しているとも思う。
登り切った辺りで林道が分岐してゆく。そちらの道は地形図では破線の道が北山川沿いに高度を下げ、次に向かう瀞峡沿いの集落へと北山川沿いを渡る小橋が描かれている。そんな点線の道は信用できないし、この先そちらへ向かおうという気も全く無い。稜線をひょいと乗り越え森に突入するその道に、踏み込むとまず確実にろくなことにはならなさそうな雰囲気が漂っていることだけ確認し、こちらはそのままこちらの谷間を北山川岸近くまで下ってゆく。
森が開け、木津呂の集落が現れた。
初めて地形図で眺めてから20年以上。やっと訪れる事ができた今日の木津呂には、人里としてごく普通に親しみやすい表情が手入れの良さそうな梅畑や民家に漂っていて、「いらっしゃい、よく来たね」と行ってくれているような気になる。空き家っぽい家や休耕田はあれど、空地じゃない畑は綺麗に手入れが行き届いている。車が停まっている家もある。放置されている感じは全く無い。
そのまま木津呂の先へ、一応脚を進めてはみた。しかし一旦60m登った道が再び川沿いへ下り始めるところで、何となく満足して(というか面倒になって)、もう引き返すことにした。ここで12:30。
再び木津呂の集落を通って登り返す。
北山川沿いの道のピークで、もう一度妄想してみる。向こう岸へ下ってゆく林道の分岐で、この道を下ったら担ぎ込みで1時間かそれぐらい、地形図に載っている小橋で北山川を渡り、瀞峡のショートカットができるかもしれない。
現実としては、やっぱりそんなアブナイ賭けをするわけには行かない。そうじゃなくても地道に行かねば。まだお昼。
元の橋へ戻り、再びトンネルを抜けると国道311の大きな白い橋が見えてきた。何だかこっちの世界に戻ってきた気になると共に、やっと次に進める気になる。
記 2024/6/1