紀伊半島Tour24#2
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もう少し進んで県道40の登りピークから、棚田の中へ飛び込むように降りてゆく。
がしっと緻密に丁寧に積まれた石垣や棚田の縁が段をなして急斜面を下ってゆく中を、つづら折れの細道で景色に脚を停め停め下ってゆく。
2002年もこの道を通っているはずなのに、焦って下ったことしか憶えていない。
10:50、丸山千枚田休憩所着。あずまやのベンチに腰掛け、おにぎりとケーキを腹に入れるとする。棚田を眺める場所として、上下にも円弧の内側にも、中間地点の大変良い場所にある有り難い場所だ。こういう場所が無料で開放されていて、何かうるさく仰々しい施設じゃないのは素晴らしいことだ。
一息付いて水を飲む。ぎゅっと濃厚な、谷間に上下左右に展開する棚田の空間感覚も、少し下手の空中に突き出す巨石を見渡してみると、こういうもの全てを、再訪してやっと思い出せていることをつくづく実感する。
11:20、丸山千枚田休憩所発。棚田の中、巨石の脇から道は折り返して下ってゆく。
2002年の訪問では、確か宿の夕食時刻ぎりぎりで、ここは通り過ぎたんだった。あの時丸山千枚田には2回も泊まっているのに。そして2回目は、真っ暗になってから20時過ぎにタクシーで帰ってきたんだった。
2009年にも、上の県道40を通過はしている。毎回毎回、そういう立ち寄る余裕の無い行程しか組めなかった。2002年など折角泊まったんだから、ここで朝の時間を取っても良かった、もう少しこういうステキな風景を味わうようなツーリングをしても良かったとつくづく思う。行程に対して脚があるとか無いとかじゃなく、根本的に自分の旅にそういう余裕が無かったことを後悔する。
最後にやっと見覚えのある建物が現れた。2002年に私が泊まった後、今は閉館してしまった公営の「千枚田荘」だ。
手入れはされているようだが今は物置なのか、ややひっそりした雰囲気だ。千枚田で作ったとのお米がとても美味しかった記憶がある。
棚田の外れから森の中へ。細道を滑らないようにきりもみ急降下、その後急に大栗須の集落が拡がった。森の中から周囲が開けて、人里に戻ってきた印象はあるものの、ひっそり寂れたような、どこか違和感に近い雰囲気が感じられるようにも思う。
2002年の訪問時にもこういう雰囲気が感じられたような気もする。それなら、この地独特の雰囲気なのかもしれない。明るい日なたの休耕田らしき草むらで、キジがのっしのっし、高い声で一声鳴いた。
入鹿で集落に生活感が出てほっとして、間もなく板屋で、風伝トンネルから下ってきた国道311に合流。
板屋は、元役場の熊野市支所があるぐらいの、この辺では比較的纏まった規模の町だ。自販機に立ち寄るチャンスでもある。しかし、何故か毎回不思議に谷間に通る国道311に慌ただしい雰囲気が漂っているような気がして、立ち寄る気にはならない不思議な場所だ。何が悪いとか気に入らないというわけではないのに。
今回もそのまま何となく受動的に、てれてれ勢いだけで進むうち、板屋の小さな町は通り過ぎてしまった。
記 2024/6/1