北海道Tour22#8
2022/8/17(水) 仁宇布→中川-1

仁宇布→西尾峠 (以上#8-1)
(以下#8-2) →歌登 (以上#8-2)
(以下#8-3) →中頓別 (以上#8-3)
(以下#8-4) →知駒峠 (以上#8-4)
(以下#8-5) →問寒別 (以上#8-5)
(以下#8-6) →中川
132km

赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路
RYDE WITH GPS

 

 4時、牧草地側の窓から眺める仁宇布の空が絶好調だ。やった、天気予報通り。このまま天気予報通りだと夕方まで1日晴れることになっていて、明日も概ね晴れの予定だ。今回はついている。高円寺の気象神社、今後は毎年お参りする必要があるな。
 あとは問題無く出発するだけで、今日1日の素晴らしいツーリングが半分ぐらい約束されたようなものだ。いや、不測の事故には気を付ける必要がある。
 結局やることはどのような場合でも変わらず、まずは今できることを着々と進める必要がある。ツーリングと言っても気ままな旅なのではなく、行程も行動も予定に縛られることは多いのだということを、近年の私は気が付きつつある。まあしかし、昔からそういう制限は嫌いではなく、むしろ完全に気ままな、予定が無い100%アドリブの旅というのはニガテだった。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
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 などと頭の中では過去の旅を辿りつつ着々と出発準備を進めてゆく。5時から荷積みを開始、朝6時に準備していただける朝食が、いつもと同じように大変美味しい。しっかり食べて、これでお昼頃、中頓別のセイコーマートまで安心だ。

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 6:45、仁宇布ファームイントント発。道道120の交差点へ下るまで、右には白い花が満開のソバ畑に左には静かに拡がる牧草地、明るく眩しい晴れの風景に脚が停まって仕方無い。今日は中川まで行けばいいだけなんだから、久しぶりの晴れの風景を、焦らずにたっぷり楽しまねば。

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 交差点から道道120で仁宇布から北へ。数km先の西尾峠へと登ってゆく道道120は、盆地内でも実は緩く登り続けている。周囲が開けているために視覚的にはわかりにくいので、あまりにのろのろとしか登れていない自分が大変歯がゆい。まあ、明後日西尾峠から降りてきたら、仁宇布の盆地内でもけっこう下っていることが実感できるはずだ、確か。などと思いながらてれてれと、仁宇布の風景をじっくり味わいながら、盆地の縁へてれてれ進んでゆく。

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 防風板の向こうには牧草地、畑、美幸線未成線の築堤、廃屋、そしてファームイントントの本体である松山農場。この道でも、近年夏に晴れたという記憶は少ない。全く晴れたことは無いとは言えないものの、晴れたのがいつだったかは少し考えても思い出せない。もう当分、夏に青空の仁宇布の牧草地や畑の風景には会えないんじゃあないかとすら思っていた。しかし今、目の前の風景のように、きりっと涼しい空気とともに青空の風景がそこにある場合は、極めて当たり前のごくごく普通の出来事のようにそこにあるのだ。それは一昨日の津別峠、チミケップ湖でも感じたことだった。

 等と考えながら松山農場を通過してゆく。もうお仕事真っ最中らしき軽トラと目が合ったので挨拶しておくと、挨拶を返してくれた。何年か前にファームイントントでご挨拶した、宿主さんの息子さんだったかもしれない。

 異常気象時通行止めのゲートから先、周囲は完全に森の中となる。そして道端の笹の中から、いつ熊が登場してもおかしくない雰囲気が漂い始める。ただ、今日の道道120には、時々車が通り過ぎる。時々ではあるものの、どうもこの場所のこの時間にしちゃあいつもより車が多いように思われるのだ。それも仁宇布方面からではなく歌登方面からやって来る。地元の人なのかそれとも観光客か、上徳志別まで20km以上無人地帯なので、多分観光客かなとは思う。観光客でも何でも、車が通っているなら分別のある熊は森の中に引っ込んでくれるだろう。実はそんなことがあるのかどうかはよく知らない。しかしこういうことで安心したい。というぐらいに周囲が山深く心細いのだ。

 西尾峠への登りは、仁宇布側は交差点からでもたったの90m。

 

 峠部分は鞍部になっているので、あっけなく緩々っと通過してしまう。目新しかったのは、近年やや老朽化が進んでいるように見えた丸太の峠名標が、今回遂に無くなってしまっていたことだった。初めて通った2000年から印象的な道標だったものの、私にとってはそれ以上に何か思い出があるという訳でもない。


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 フーレップ川の谷間をひたすら下ってゆく。路面の端には濡れた跡がある。朝露的なものかもしれない。でも昨夜ここで雨が降っていたとしても、驚くようなことではない。雪が降っていたとしてもあまり驚かないだろう。それほど天気が不安定なこの山奥で、この深い森を青空とともに眺めることができている。今日、訪問できていることには感謝しかない。

 ただ、明るい陽差しに照らされた大森林に朗らかな表情が感じられても、圧迫感すら感じられる山深さが減っている訳ではない。下りに任せてそそくさと、なるべく速やかに通り過ぎようとしても、行く手には谷間と森が次から次へひたすら延々と現れ続ける。そして時々、道端に熊のかなり新しい糞が落ちていたりもする。茂みから狐がこちらを眺めていたり、路上にふらふら歩いている奴がこちらが近づいてもなかなか茂みに逃げ込まない。今年のトレンドとしては、鹿どもの人間に対する間合いがかなり近くなったと思う。路上の森林化が年々進んでいるのかもしれない等と考えていると、ますます熊がひょいっと現れそうで怖くなる。

 ひたすら森だけだった谷間の道に、音標へ続くダート道道880の分岐が現れた。ゲートは一応開いているものの、薄暗く鬱蒼とした森の中へ道が登ってゆくというだけの分岐である。

 その先天の川トンネルの手前、待避所に毛が生えたくらいの牽牛休憩所を通過。そして天の川トンネルを抜けると、織姫駐車場に閉鎖中のWCと休憩場のあずまやがある。

 

 少し先の道北スーパー林道分岐近くでは、炭焼き小屋のような森林管理小屋(なのかどうかは実は知らない)があり、森の茂みに埋もれそうな大曲の廃墟群を過ぎ、牧草地が現れる。

 こうして仁宇布、西尾峠から続いていた道以外完全に無人の森は、やっと少しづつ人の営みへ推移してゆくのであった。この間、陽差しは高く昇りつつあり、道は日なたの部分が増え始め、どんどん暑くなり始めていた。

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 大曲の牧草地から森の中へ下ると、谷間が拡がって辺りの広葉樹林が低くなり、周囲が突如開けて牧草地になった。久々の人里、上徳志別である。

 枝幸の山々に囲まれた盆地に牧草地が広々青々と拡がり、雲が勢いよく流れる青空から、日差しがカンカンに鋭く照りつけている。これだけ晴れるのは何年振りか、もう忘れてしまった。確か少なくとも10年振りぐらいの筈だと思う。晴れの風景はとても素晴らしく、もう一度と思って行程を組み、来る度に雨か曇りだったのだ。しかし、今回津別峠やチミケップ湖で思ったように、ここも晴れだとあまりにあっけらかんと何の不思議も無く、ごくごく普通に目の前に青空の明るい風景がある。

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 元キャンプ場の元上徳志別小学校の南で、少し脚を停めることにした。背景に盆地を囲む山を望む牧草地がいい感じの、いつもの場所だ。こんな青空と眩しい陽差しとともにこの風景を眺めることができるチャンスは滅多に無い。

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 脚を停めると、かなり暑くなっていることに気が付いた。走っていると気温は低いのに、陽差しがかなり厳しいために、直射日光と照り返しの両面焼きで暑いのである。北海道の晴れの日毎度の現象ではあるものの、まったく適度というものは無いのかと思わされるのも毎度の事。そしてこの先、お昼頃の暑さが思いやられる。晴れても厳しく雨でも厳しい現実に、毎日のように出たとこ勝負でお天道様を伺うしか無いのだ。勤め人の毎日のように。

 乙忠部への道道1023分岐を過ぎると、再び志美宇丹へ緩い登りが始まった。

 延々と続く大森林の狭間に位置する二つの集落、上徳志別と志美宇丹。こよなくのんびりと静かな牧草地は、今日の青空の下ますます鮮やかで、夢のような風景だ。淡々と脚は進み、当たり前の様に景色が通り過ぎてゆく。大変勿体無く残念なような気もするものの、いや、これは最高に贅沢な時間なのだと考えるべきなのかもしれない。自転車旅行の実態には制限が多い。しかし、制限と制限の狭間で走っている間には何となく自由な気分を感じられるような気がすることも確かである。気分だけなのかもしれないが、そんな気分になれるだけでもいいじゃないかとも思う。

 暑いので止めどなく妄想しているうちに志美宇丹中央へ。

 今日は拡幅新道開通前に通っていた道道120旧道を経由し、晴れの風景を記憶に留めておくことにした。

 しかし、道端には人気が無くやや高い茂みが続いていた。いかにも熊が出てきそうで、現に数年前に志美宇丹で脇道のど真ん中に巨大なクマの糞(しかもほかほか)を見かけたこともあり、ちょっと怖くなってきた。やはりここは美しいだけじゃない、かなりの山奥なのだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
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 道道120に戻り、志美宇丹峠という名前が付いている盆地北端縁へ一登り、その後は辺渓内へ一下り。

 谷間に平地が現れた後は、歌登へと盆地を更に下ってゆく。歌登までまだあと8km。

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 正面のポロヌプリ山が裾から稜線まですっきり見える。時刻は9:30。上徳志別・志美宇丹で時間をかけて牧草地をじっくり眺めたせいか、歌登盆地への到着はやや遅い。

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 こういう時は曇りの方が却って順調だな、と思うのも晴れの日ならでは。ちょっと嬉しくもあるのが我ながら可笑しい。

 時間が遅目なので、歌登では珍しくセイコーマートに寄らず、そのまま次の兵知安峠へ向かうことにした。これぞ朝食をしっかり頂いたお陰で、まだ腹は全然減っていないので何の問題も無い。

 ショートカットを狙って、歌登市街手前の分岐で南回りの道へ分岐してみた。しかし、10年(ぐらい?)振りの道であることがわかったという以外に何かめぼしいものは無い。更に、何となく知っている道を通っている気分になっていたら、いつの間にか大回りする羽目になっていた。やはり見込みも無く気分で選んだ道に期待しすぎるものじゃない。まあしかし、青空の下行程にも時間にも問題が無い気楽なツーリングを、急がず焦らず、有り難く楽しむべきなんだろう。


 9:55、歌登道道120分岐着。次は兵知安峠だ。

 ほんの僅かであっても道が登りであれば、ここまでの下り基調に比べ途端にがくっとペースが落ちる。自分の走りに苦笑しつつ、歌登の盆地中央はやはり暑いのだとも思う。しかし私の場合だけかもしれないが、緩い登りでは体感時間が意外に早く過ぎてゆくのがありがたい。それは気分が退屈していないということである。

 それでも、牧草地が拡がっていた谷間が次第に狭くなり、リサイクルセンターを過ぎて谷底だけになり、道がぐいっと登り始めるまで、歌登から兵知安峠へ向かう谷間は記憶よりずっと長く感じられた。歌登から中頓別まで27km。当たり前の話ではある。この長い道が、リサイクルセンターから先は中頓別側の兵知安まで無人の森に続いてゆく。今日は空が晴れていて薄暗くないのは、やや心強いような気がする。

 それは気分だけであり、やはり道端にはところどころにかなり大きな新しい熊の糞がみられた。おおきな熊がのっしのっし夜中に道道120を横断してゆく光景を想像しつつも、熊のことはなるべく考えないでおこう、と思った。近年は特に、道北山間部の道道で大きな熊の糞に遭遇することが多くなっているように思う。

 峠への登り途中で空に雲が現れ、一気に拡がった。今すぐ雨になるような雲ではなく、むしろ明るく眩しく、時々陽差しが現れて暑さに耐えられなさそうになるところでまた太陽が雲に隠れる、というぐらいの雲である。まあただ、中頓別から先の知駒峠では、今日は空が晴れてくれないのかもしれない。

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 峠から兵安への下り側には、道路を拡幅工事中の箇所があった。こんなに交通量が少ない道をどうするのかとは思うものの、崩落が起こりそうな場所ではある。崩れてもまだ道幅があって通れる、という崩落対策なのかもしれない。あるいは崩落復旧のついでなのかもしれない。そういう疑問と自答より、工事現場に人がいることが、リサイクルセンター以降全く無人の深い山中では大変心強い。こちらが盆休み期間物見遊山中のお仕事、少し恐縮でもある。

 谷間が延々と続いた後、やっと兵安で辺りが開けた。

 兵安は中頓別へ下ってゆく平地の終端だ。山に挟まれた牧草地には、半島先端や谷間の奥など端部に共通する凜とした雰囲気が感じられる。仁宇布や上徳志別、志美宇丹にも似ていて、静かで伸びやかな風景と山間近くの厳しい自然に向き合う生活を伺わせてくれる気がする。道北内陸の山奥から山奥を辿る、道道120ならではの風景と言えるかもしれない。

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 中頓別へあと8km。一直線に谷間を下ってゆく道を望む辺りから、雲の合間に再び陽差しが現れ始め、途端にまた暑くなり始めた。帰りに晴れていれば、今度は中頓別側からこの道を通ることができるんだな、と思う。長い下りは、登りで更に長く感じられるんだろう。

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 引き続き兵安、豊泉、僅かながらも中頓別へ平地は均等に下ってゆく。自転車だと、こんなに緩い下りでもペースが快調だ。

 
 

 11:50、中頓別着。そろそろ少し休憩しておく必要があるので、国道275沿いのセイコーマートへ。集中的に昼食系冷却系甘味系を補給吸収しておく。
 歌登到着からやや遅延ぎみではあったものの、中頓別到着がお昼前になってしまったことに少し驚いてしまう。ファームイントントで朝食を頂いたし上徳志別でかなりのんびりしたし、全体的に時間を喰う要素が満載ではある。しかしこんなに遅くなるぐらいだったかな。歳だしな。
 まあしかし、今日はこれから知駒峠を越えて中川まで行けばいいだけだし、このパターンは近年実績があるから余裕の見込みは裏付けは取れている。それに昔は下川発で道道120経由、知駒峠を越えた後抜海まで行っちゃったこともある。あの時は確か下川6時発で中頓別14時前だったな。それなら、今日の上徳志別立寄りを考えると、ペースとしてはそんなに不思議がるようなものでもない。それに、よく考えると仁宇布から中川までの工程として確かに脚は進んでいる。歳に悩みこむような状況じゃない。


 兵安から、曇りという範囲では空は大分明るくなっていた。一方、国道275が通っている中頓別まで下って来ても、相変わらず雲は多い。この後順当に予定通りだと、知駒峠へ向かうコースになっている。しかし知駒峠は、2年前の訪問時が晴れだった。そしてその時は、利尻富士を初めて眺められた程の私的過去最高の眺めだった。今、この天気で知駒峠に登ると、基本的には雲が増えると思われる。しかしSCWで確認すると、こんなに雲が厚く見えるのに、今のところほぼ薄曇り。この後午後はずっと晴れることになっている。本当かなあ。
 果たして今日知駒峠に脚を向ける価値があるのか、音威子府大回りで知駒峠は省略しちゃおうかなどと逡巡しながら、12:15、中頓別発。
 国道275で上駒へ。知駒峠への道道785の分岐が決断の時だ。最後の検討をするために立ち止まり、とりあえず仁宇布から替えてないフロントバッグの地図を現位置を含む「敏音知」に替えてみた。

 気が付くと、いつの間にか動き始めていた低い雲に隙間ができていて、青空と陽差しが現れて急に辺りが暑くなり、またすぐ雲がやって来て隠れた。

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 ほんの短い間の出来事だった。しかし、これで心は決まった。知駒峠、行ってみようじゃないですか。代案の国道275・音威子府・国道40より全区間で車が少ないだろう。それに明らかに、辺りは明るくなりつつある。

 宗谷地方の峠はどこも非常に長い裾部分の後、低い峠を急に登り始めて下り、また長い裾を下ってゆくという構成のものが多い。知駒峠もその例に漏れず、麓区間では延々と緩い登りで谷間の牧草地を進み、裾から斜面の森に取付き、突如、そして5〜6%ぐらいで登り始めてゆく。

 

 100m程登った辺りで動いていた雲が切れ、空は急に晴れ始めた。そして道の外側には展望が一気に拡がった。山裾から緩やかに下ってゆく平地は濃淡の緑、そして低山が彼方の青いシルエットへ重なって続いてゆく。空間のど真ん中には、名峰敏音知が居座っている。前回、敏音知はそのすっきりと端正な姿を2001年以来に見せてくれたものの、すぐてっぺんに雲が掛かってしまった。印象的な美峰ながら、毎年の私の訪問時には、なかなかその姿を拝めない印象の山なのだ。それが今、雲は動きつつも、敏音知が遮られることが無い。そして雲はどんどん去り、少なくなっている。

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 未だ標高は300m台なのに、周囲の山々は標高200m台とか100m台なので、低山の稜線と裾野に拡がる平地が一望なのだ。長い登りの間、全く退屈しない。というより勿体無いので、脚を停め停め敏音知を眺めて登ってゆく。

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 PENTAX K-1 MarkII HD PENTAX-D FA15-30mm1:2.8ED SDM WR パノラマ合成
 

 稜線のスノーシェッドから山頂に建つTV通信設備の下へ、道はぐるっと回り込んでゆく。この通信設備のために、道道785はわざわざ越える必要の無い知駒峠越えなんていう経路を辿って問寒別へ下るのではないかと、私は毎回思っている。

  PENTAX K-1 MarkII HD PENTAX-D FA70-210mm1:4.0ED SDM WR

 きょろきょろ見回していたら、標高400mを越えた辺りで驚かされることがあった。東の遠景、と言ってもそれほど遠くでもない辺りに、平地と真っ青な海面が見えるのである。平野の雰囲気とその背景の山、海岸との位置関係に記憶がある、というより明らかに浜頓別南のオホーツク海である。何とオホーツク海を知駒峠の登りで眺めることができるのだ。そんなことは今まで聞いたことが無い。知駒峠の展望の素晴らしさを、前回以上に思い知ることができたのだった。


 14:40、知駒峠通過。

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 さあ次は下りの利尻富士だ。と思っていたら、これだけ空気が澄んでいたら間違いなく会えると思っていた利尻富士は、今回はそちら方面の海上だけがかなり霞んでいたようで、全く見えなかったのは意外だった。

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 しかし手前の内陸部や真西側の海上は、基本的に晴れまくっている。オホーツク海を初めてこの道で眺めた満足とともに、真っ青な空の下明るい風景の中ををゆっくり落ちついて降りてゆく。中頓別であんなに知駒峠に脚を向けるかどうか迷っていたのに、蓋を開けてみれば嘘みたいに素晴らしい訪問となり、大変気分が良い。

 下りの途中では、またもや驚くべきものを発見した。路上にのっしのっし歩いている昆虫が、何とカブトムシの♀だった。もともと道内にいなかったカブトムシは、美瑛辺りではもう珍しくもなくなっていて、普通に死骸が路上に落ちていたりする。しかしこんな道北の北にもカブトムシがいることは知らなかった。

 道道785は均等な緩めの斜度で長い間斜面を下り続けた後、突如ほぼ真っ平らな開けた平地に放り出されるように着陸した。

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 15:10、中問寒八線通過。

 問寒別までは約10km、前回も通った谷間北裾の農道は、牧草地と畑の中に続く、静かで落ち着いた良い道だ。

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 向こうの山裾に点在する牧場を眺めていると、前回同様もう陽差しがすっかり赤い時間になりつつあることに気が付いた。

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 あとは中川までもうずっと静かな道だ。ほぼ平地を20km。いやもうちょっとあるな。30kmは無いだろう。などともうすっかり気を抜いてゆっくりのんびり、脚を停め停め問寒別へ。

 

 この谷間を向こう側の道で初めて通った2008年、泡を食って問寒別まで脚を回して20分だったことを思いながら、もうあんな走りはできないだろうな、等と思う。

 しかしこんな平地でも、道端茂みの際には、かなり大きな熊の糞が落ちているのであった。さすが道北、平地でも気を抜けないね。

 
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 16:00、問寒別着。

 道道541で80mぐらいの、宗谷本線沿いに迂回できなかったのかといつも思う軽い丘越えがややしんどいものの、わかっていればどうということもない登り下りだ。

 それに眺めが楽しみなソバ畑や牧草地も随所にある。

 下りきって再び宗谷本線に合流し、歌内に到着。
 あとは中川までひたすら平坦な山裾だというのに、歌内で通行止めのフェンスが現れた。山裾とは言え何か危なっかしい崖に面しているような道じゃないはず。一体この平坦な道のどこが通れないんだろう。

 ここが通れないと、中川の手前まで国道40へ大回りする必要がある。つまり、中川の手前まで車の多い道を通らないといけない。仁宇布、上徳志別、志美宇丹、知駒峠、上問寒。素晴らしい風景に身を置けた今日の素敵な行程の〆として、何かそれは譲れないことであるように思えた。それに、通行止めのフェンスはA型+単管パイプ。あまり強い意志が感じられない。
 時間はある。本当に危険なら、引き返せば良いだけの話だ。「困った人ですねえ」などと他人事の様につぶやきつつ、そのまま道道541を進んでみた。

 当該区間はすぐ近くだった。道が20〜30mぐらい、丸ごと20〜30cm程陥没していたのであった。宗谷本線を運休にしてしまったという、10日ぐらい前の豪雨の影響かもしれない。そろりそろり自転車を押して渡った先、向こう側のフェンスを抜けて通行止め区間が終了。

 すっかり赤い日差しの中を、地図も見ずに途中で天塩川の土手を大回り経由したり。ひたすらのんびりてれてれ下ってゆく。中川まであと何kmだったか、そんなこともうどうでもいい。天塩川河岸の平地を照らす陽差しは、さっきよりますます赤くなっている。風も大分涼しくなっていて、畑や牧草地で秋の虫カンタンの声が賑やかに鳴り響いている。8月ももう後半だしね。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
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 中川市街でセイコーマートに立寄り明日の朝食を仕入れ、16:55、中川ポンピラアクアリズイング着。

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 毎回建物通用口のような軒下に自転車を停めるよう指示されていたこの宿でも、今回は何と自転車を部屋に入れることができた。自転車ツーリングの客が増えている影響らしい。
 部屋に荷物を降ろし、一息付いて眺める夕焼け空が見事だ。陽差しが厳しい中、しかし青空の中に身を置けた1日だったとは思い返しつつ、まずはとにかく風呂に入りたい。風呂は温泉なので、入りすぎないようにしないといけない。2020年のように腰痛に悩まされてしまう。
 夕食はレストランへ。前回はコロナ体制メニューでトンカツ定食を選んだ記憶がある。しかし今回、通常メニューで選んだのもトンカツ定食だ。まあ世の中、そんなもんなのかもしれない。

記 2023/2/15

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Last Update 2023/2/19
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