中国地方Tour22#5
2022/5/3(火) 柿木→赤-1

柿木→日原 (以上#5-1)
(以下#5-2) →津和野 (以上#5-2)
(以下#5-3) →金谷 (以上#5-3)
(以下#5-4) →萩 (以上#5-4)
(以下#5-5) →池ヶ峠
(以下#5-6) →赤
114km  RideWithGPS

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
ニューサイ写真 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 RICOH GRV GR18.

 6時半に荷造りに外に出ると、まず空気がきりっと寒い。しかし空は真っ青。まぶしい程光が漲っている。かっと照らされた山々の、日なたは鮮やかに明るい緑で影が青い。高津川の瀬音の他にはカジカが響き、朝の鶏が鳴き始めている。静かな景色は楽しいものの、荷物を積んだらコーヒーを買って部屋に戻るとする。出発時にはレインジャケットを着込む必要があるな。
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 今日は津和野経由で萩へ向かい、また内陸に戻って美祢市の赤まで行く。問題はRideWithGPSによる登り標高差が1750mということだ。これでもかなり台地上を通るようにして少なくしたのだ。標高差1750mはそれ程問題は無いのだが、実際の登り総量が多い方に転ぶとややしんどい。まあ今回は計画値より実際の登り標高差が4/5〜2/3ぐらいになっている。今日も計画値より増えることは無いんじゃあないかと思うのだが、行程は粛々と進めてゆく必要がある。
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 赤は秋吉台の麓であり、明日のお天気次第では今日中に秋吉台に寄る必要があった。ただ、明日も激晴れ予報なので、今日の到着時刻と登り総量で決めればいい。まあでも、明日晴れるなら明日の朝に秋吉台と出会うのが理想的なのかな、とは思う。
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 7時から美味しい朝食をいただき、7:30柿木発。まずは津和野へ。ショートカットの一登り標高差400mを避け、高津川で日原まで下り、折り返して津和野川を遡って津和野へ向かう。

 高津川対岸の町は既に日なたの中だ。橋を渡り、道沿いに低い軒が並ぶ小綺麗な雰囲気の町へ。昨夜は一晩中田んぼと高津川から、カエルの声が聞こえていた。またこの辺を訪れる機会があれば、柿木の原田屋旅館に泊まるべく計画を組むに違いない。そういうことを考えるのは、柿木の町の佇まいが、落ちついてこぢんまりと上品で、旅先として好ましいからだと思う。

 昨日に引き続き、国道187を高津川沿いに下ってゆく。当たり前のように風景は基本的に昨日里の風景が次第に渓谷に推移する続きである。谷間は更に狭くシェッドなども現れ、柿木までの谷間に比べて道の表情が更に山間っぽくなった。道の勾配が緩い下りなのも相変わらずだ。地図から想像された展開通りではある。まだ朝7時台のためか車は時々通るぐらいなので、下流側でどんどん山深くなっている静かな山間の風景を存分に楽しめているのが有り難い。柿木から津和野に向かうのが朝で良かった。

 万瀬で左鎧を経由する旧道っぽい細道を経由してみた。道が細いので、道の外側の空間が道に近づいて、自分も周囲の風景に溶け込めてゆくような気がする。民家の軒、庭先の鯉幟、角の萬屋、畑。朝の山間集落ともいうべき、生活感一杯の風景が続くのもとても楽しい。そういえば今回、鯉幟をあまり眺めていないように思う。

中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 島根県鹿足郡津和野町左鐙にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 集落が終わると再び国道187に合流。左鎧で細道を通っている間に、谷間の川原は少し拡がったようだ。もう少し下って8:30、日原着。行く手の谷間が明るく開けているようだ。高津川と津和野川が合流する日原の盆地である。こちらは盆地の手前で高津川を渡り、折り返すように津和野川の谷間を遡って津和野へ向かう。

中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 島根県鹿足郡津和野町枕瀬 津和野川にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 津和野川の谷間は高津川の谷より多少広く、両岸に狭いながらも田圃と農村が続く。谷間の幹線道路は国道9、その名も山陰道。田圃と農村を縫うように脇道をが通っていて、少しでも脇道を経由すべくGPSトラックを書いている。

 脇道は少し谷間に続いて国道9に合流したり、また分岐して対岸に渡ったりする。行程の進行は今ひとつだ。しかし、国道9の交通量はツーリングの許容範囲内ではあるものの、脇道が有り難く思えるというぐらいには多い。そして脇道沿いの風景は静かで生活感があり、こぢんまりとした空間が居心地が良いのだった。

中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 島根県鹿足郡津和野町瀧元にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 島根県鹿足郡津和野町瀧元にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 そのうち谷間に国道9と山口線だけになるので、仕方無く息を止めるような気分で国道9を進む。こうなると、確か津和野は近いはず。その通りに、和田で前方に現れたこんもりした山を巻き、国道9と山口線は山中へ消えてゆくのであった。トンネルを抜けた先が津和野である。山から谷間に、またもや鯉幟の列が掛かっている。さっきから眺めている津和野川の谷間、山肌からこちらを見渡す展望を想像していると、ステンレス車体187系3両編成の特急おきが通過していった。山口線、かつて国鉄が復活SL列車を走らせる路線として白羽の矢を立てた理由がわかるような気がした。

 こちらはは山口線がトンネルでショートカットする津和野川の谷間を、細道で大回りしてゆく。森から茶畑が目立つ集落へ、狭い谷だが険しい表情が無い里っぽさが親しみやすい、いい道だ。

 9:20、津和野着。旧市街っぽい道を通っておくべきではないかとは思った。でも何となく、初回は町の実態としての駅前を見ておく方が良いような気もした。結局、町の北側から山口線に沿った県道で駅前を経由しておく。その割には意外に静かな駅前は立そのまま通過して、ローソンポプラをを目指す。ローソンポプラは何とやや深めの瓦葺き、更に看板が普通の青ではなく茶色である。流石は津和野だ。

 出発後約2時間で32km。ペースはあまり良くない。まあ、高津川沿いでも津和野川沿いでものんびりしたしな。等と思いながら、暑いのでアイスを食べておく。あとクリーム系のスイーツでカロリー補給も。
 店の軒下から表通りをぼんやり眺めていると、外国人含みの若者グループが、なぜこんなにてれてれ歩けるんだと思うぐらいてれてれと、笑ったりきょろきょろしながら通り過ぎてゆく。昭和のYH団体っぽいそういう雰囲気が、ちょっとニガテだったせいか、あまりYHで出会った人と一緒に行動するというような旅はしたことが無かった。それにもう大分長い間、そういう観光地のYHにも泊まってないな、と思う。津和野に興味が無くなった瞬間だったかもしれない。


 妄想していないで先に進まねば。9:45、津和野発。次は本日最高地点、標高450mの馬草峠だ。その後は内陸の道を渡り歩き、萩を目指す。津和野と萩は、例えば「萩・津和野」とか、観光上は一般にセットで語られていることが多い印象がある。私など、一続きの町だとすら思っていた頃があった。しかし島根県の津和野と山口県の萩は町としては結構離れているし、幹線道路や鉄道などではつながっていないのだ、ということを今回の計画で初めて知った。
 森鴎外邸の看板を横目に、自分はこういう旧跡系には全く興味が沸かないな、等と思いつつ、津和野の町中を通り抜けて南下してゆく。森鴎外の作品をあまり読んでいないせいかもしれない。これが鶴岡の藤沢周平だと何だか泣けてくるというのに。でも藤沢周平も映画やドラマで見ているだけだ。
 とにかく、津和野で通ってきた道のせいか、小京都として名高い津和野の町は自分にとって観光地っぽい香りが漂っているような気がしていた。昨日泊まった柿木とはキャラの違う町だとは思うものの、あまりいい印象を受け取ることができなかったことは確かで、でもそれも残念な訪問だったと思うだけだった。そういう印象は自分のせいだとも思う。単に通過しただけの訪問だったし、通るべき道を通っていないのだろう。だからツーリングにいつも余裕が無くなってしまうのだ。

 山口線に沿った県道13で名賀川の谷へと進んでゆく。道の駅を過ぎ、谷間次第に狭く、淡々と登ってゆく。山口線も対岸の山間を巻きつつ高度を上げて並行している。確か津和野から次の船平山へは、標高差100mちょっとを稼いでいたと思う。山口線もなかなかの山岳路線だ。SLやまぐち号には是非とも一度乗っておかねば。
 その船平山へのトンネルへ突入する山口線と分かれ、県道13は単独で馬草峠越えへ、ぐっと狭くなった狭い谷間の底を、やや斜度を上げて緩々と登ってゆく。10時を過ぎて陽差しがもうかなり高く鋭く、時々山影に入ると日陰が涼しい。こういう季節になったか、と嬉しくなる。
 徳次で標高400mを越えると、斜度が一段落し、狭かった谷間が拡がって農村が断続し始めた。もう少し登った田代では早くも山の鞍部に乗り上げたようで、道沿いに休耕田が拡がった。使われている田圃もある。昨日の松の木峠手前の冠高原と似た展開だ。しかしこちらの方が稜線部分がかなり低く、鞍部全体が平坦な地形のように思える。風景の雰囲気は平地っぽくなく、あくまでけっこう高原ぽい雰囲気が漂っているのが面白い。2日目に通ってきた、山深い広島県東部とは一線を画す不思議な地形だ。山口県と言えば島としての本州の西端部、この不思議な地形は先端部故かもしれない。
 等と思いながら馬坂峠を通過する。標高450m、ここから再び山口県だ。山口市の看板が出て、来たなあ、と言う気分になる。まあ、どこもかしこも市町村合併で自治体が広いというだけのことかもしれない。

 県道13が国道315に合流する手前、旧道っぽい細道に入り込む。国道315の喧噪を数10m〜400mぐらい向こうに眺めながら、東居坂、西居坂と山裾の静かな農村をつないでゆく。畦道のように細い道にぽつぽつ民家が点在し、そこそこ裁けた県道で構えていた気持ちがほどけてゆく。我ながら他人事のようだ。

中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 山口県山口市阿東嘉年上にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 細道なら細道のまま、たかだか60mぐらい登る金谷峠へ向かうべきとも思うのだが、何となく突如現れる10%を警戒したのと手っ取り早いのもあり、20mも登らない国道315の割嶽トンネルへ向かうことにした。

 割嶽トンネルの向こうは早くも萩市である。ほとんど登らない分、出口の向こうもあまり下らない。そして自分で選んだ道ながら、車は皆無という訳ではない、と思ってしまうぐらいにやはり車は多い。後でRideWithGPSの標高差計画値が1750mだったのに比べ、気圧高度計による実際の登り標高差が1150mとかなり少ないことがわかった。どうせそんなに登る訳ではなかったのだから、この区間では金谷峠に行っとけば良かったかなと思う。

 11:20、金谷着。国道315から県道13が再び単独で分岐する、交差点の道の駅「うり坊の里」に少し脚を停めてみた。付帯施設としての売店・軽食部分はやや簡素な、休憩施設としての道の駅なんだからね、という雰囲気がある。或いは早い時期に設けられた道の駅なのかもしれない。私が最近のゴージャス系道の駅に頼りすぎていて、道の駅に期待しすぎなのかもしれない。
 それに何となく何か食べたかった気はしていたものの、例によって具体的なイメージは無い。水だってまだ十分にある。ここでは原田屋旅館に作っていただいたおにぎりを頂くとし、特に道の駅では何も仕入れずに済ませておく。


 金谷からは県道13で、伏馬山裾の南側を回り込んで萩方面に向かう。山奥ではないが丘陵でもない、かと言って平地という程真っ平らでもない台地上に県道13は続いていった。交通量は国道315よりがくっと少なく、GWでやってきているような雰囲気の車が目立つのみだ。それ自体は落ち着ける要素なのだが、道の表情がやや広域農道然とした雰囲気なのが多少物足りない、気もする。

 田圃から集落が断続する途中、民家が途絶えること無く続いているのも特徴のようだ。まるでゴーストタウンのように色褪せた看板の商店が数軒並ぶ、30年前は元市街地だったのかもしれないと思わせるような集落も現れた。昔は地域全体で栄えていたのかもしれない。

中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 山口県萩市吉部上 県道13にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 伏馬山の裾を過ぎ西へ進む。鈴倉から細道の県道315で狭い谷間、畑からおそらく県道10の旧道と思われる県裏道で谷間の裾から集落を抜け、裏道が県道10に合流すると、丘陵を広域農道っぽく豪快にトンネルと大きな線形で突っ切っていった。この辺り、地形の展開が複雑なのに道が分節的で、更に県道10新道区間(と言っても決して新しくない)が地形図に載っていないので、全体としてあまり印象に残っていないのが残念である。登りと言っても鬱陶しいだけで大して登らないのは計画時にわかっているし、計画時に印象に残っていないぐらいの道だから、あまり印象にも残らないのかもしれない。道の駅ハピネスふくえも、看板が現れ始めた時点では「道の駅が現れたら立ち寄って何か食べなくちゃねえ」とは思っていても、いざ現れた道の駅はやっぱり通過してしまった。

 県道11に移り、次第に車が増え始めた丘越えから予め選んでおいた細道分岐へ。一度見逃して戻ったその道は、舗装されているだけの細い山道のような里山急降下系みたいな道だ。トラックを書いてなければ絶対入り込まないだろうと思いつつ、山裾のごみ処理上の脇から集落の上手へ下り、細い川沿いに山陰本線をくぐって萩の西側へ出た。

 山から漁村の裏手に下ってくる展開と細道の雰囲気は、南房総の海岸部に似ているように思う。しかし漁村の軒先を抜ける細道の上に掛かる、架線が無いシンプルな鉄橋の開放感は、非電化線たる山陰本線ならではである。以前乗車した山口県内の山陰本線で見た、漁村と青い海と海岸の森が続く素晴らしい風景を思い出す。


 12:50、萩到着。ちょうど賑やかな国道191に出た所でセブンイレブンの看板を見つけた。萩と言ってもまだ東側の町外れ。とりあえずそろそろ脚を停めてもいいタイミングだし、ほぼ自動的にセブンイレブン反射炉前店に自転車を停めてみた。
 ただ、コンビニへ入っても、特に何か心から食べたいようなものは無い。今日は有り難いことに補給計画に抜かりが無いのだ。いや、田舎道であっても、あまり山間には入り込んでいない里ばかりだから、とも言える。大して走っていないので腹も減っていないとも言える。とにかく、昨日買ったものとはいえパンだってまだ残っているのだ。ただ何となく安心するためだけにコンビニに入っているのかもしれないなおれは、等と思いながら外で缶コーヒーを煽ってみる。
 コンビニの駐車場が「萩反射炉」の駐車場に面していて、その反射炉の説明看板が立っている。反射炉か。長州藩縁の進取の気性がある方が先進の技術を導入されたんだろうな。どうやって作ったのか、建築系の人間として見ておくべきかもしれない。しかし、私は誰がどうしたこうした的な、歴史旧跡にあまり興味が沸かないという習性がある。反射炉については技術史的興味が無いわけじゃない。でも、そういう旅をする才能が無いんだろうなといつも思う。さっきの津和野に引き続き。

中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 山口県萩市椿東 萩反射炉駐車場にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 GPSトラックに身を任せ、萩の市内へと進んでゆく。途中、国道191が山陰本線を越える陸橋で、歩道を登りながらGPSを見ていたら、道端の(あり得ない)大きな枯れ枝に激突してしまった。幸い低速だったこともあり、がしゃっという大きな音に驚いた以外に大事無かったのは有り難かった。しかし、普段から事故は全てあり得ないと思っているから起こるのだ、と思っていてもこういうことが起こったことには、ショックを受けた。あるいは、さっきから何となく気分も含めて疲れているのかもしれない。毎日行程を緩くしているのに。歳だね。

 何となく打ち砕かれ疲れたような気分のまま、それでも脚は進めてゆく必要がある。そのまま、海岸はとりあえず向かわねばと思って描いたGPSトラックに従い、とりあえず海岸を見ておこうと何の気なしに菊ヶ浜へ向かって進む。川岸沿いの町並みは古風で落ちついていて上品だ。河口部分の川も川岸の松並木も、町中としては鮮やかで美しい。空は青空だし陽差しは明るい。何も不満は無い。

 海岸に出た途端、目の前に砂浜と日本海が開けた。菊ヶ浜だ。

 PENTAX K-1 MarkII HD PENTAX-D FA21mm1:2.4 ED Limited DC WR パノラマ合成
中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 山口県萩市東浜崎町 菊ヶ浜にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 真っ青な空の下青緑の日本海、緩やかなカーブの眩しい白浜に寄せては返す静かな波、すぐ先の半島まで短いものの風景としては十分な長さの海岸線。水平線まで開けた空間、青と白の色彩は、今日ここまで無かった風景である。浜沿いの県道には車も人も少ないし、ブロック舗装の歩道にはフェンスが全く無く、歩道状に何の突起も無い。足下からすぐ白浜の海岸が始まっているのである。それが他ではあまり見たことが無い開放感の要因かもしれない。整った菊ヶ浜の曲線が存分に活きる、大変心憎い演出だ。というより、萩の人々にとって、この風景が大切なものであることが伺える。こちらに向かって正解だったということがすぐにわかった。
 沖には大小の島が浮かんでいる。山陰にこんなに島が見える場所があるなんて、地形図で計画していた時には全く意識していなかった。五島列島Tour19での離島サイクリングを思い出し、船でこの島々に渡るとどういうことになるのだろうなどと思う。
 これこそ旅先で見たいものだ。自分はこういう風景を見にサイクリングしているんだ、とつくづく思った。これだよこれ。

中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 山口県萩市堀内 菊ヶ浜にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 気分が盛り上がったまま、引き続き萩城址へ。萩城は城址内へ自転車で行けるのだと驚きつつ、何となく脚は海岸方面へ向いてしまう。やはり歴史系より空間系の方が多分興味があるのだ、と我ながら今度は何だか可笑しい。
 石垣の隙間から海岸へ出ると、期待通りさっき眺めた菊ヶ浜を半島側から眺めることができた。しかし同じ砂浜でも、こちらは海に突き出した半島の小さい湾から、正面に向こう岸を眺める風景となっている。菊ヶ浜で感じられる、沖合の水平線の向こうへの拡がりとはまたひと味異なり、こちらは海岸の漁村や山裾の畑、人々の暮らしに思いが馳せる、そんな風景なのだ。
 城から見える風景としては、こちらの方が素敵だ。萩城、なんて美しい風景と町並みが眺められる城だったのだろう。萩の人々が眺めてきた風景が、萩の歴史の重みを教えてくれるようだ。萩に訪れたかそうでないかで、長州藩や何年か前の大河ドラマの印象はがらっと変わるなと思った。

 PENTAX K-1 MarkII HD PENTAX-D FA21mm1:2.4 ED Limited DC WR パノラマ合成
中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 山口県萩市堀内 萩城潮入門にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 萩城址の次、GPSトラックは遊覧船が通り過ぎるお濠沿いに更にの西ノ浜へと向かっていった。
 海岸沿いの住宅地を抜けた西ノ浜も、小さな湾と砂浜、岸辺の松が素敵だ。地元の人しか来ていなくて、何だかプライベートビーチ風に大変静かなのもいい。奥の陸側に最終処分場が建ってはいても、静かでとてもステキな海岸である。こういうところはしっかりばっちりトラックを組んでいる自分が少し可笑しい、というぐらいに前向きな気分で楽しめた、萩の海岸3箇所セットなのだった。

中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 山口県萩市椿東 松本川 国道191 萩橋にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成
中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 山口県萩市堀内 西ノ浜にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 山口県萩市堀内1区 橋本川 常陸大橋にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
中国地方Tour22#5 2022/5/3(火) 柿木→赤 山口県萩市山田 国道490にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 14:30、萩発。町の西側へと橋本川を渡り、玉江駅前から国道490へ。宿まであと20kmちょっと。登ってもせいぜい200m台、車が少なさそうな道を選んでGPSトラックで繋いでいる。

 国道490に入った途端、さすがは400番台国道、交通量が急に少なくなった。山に囲まれて田圃と農村が拡がる谷間の表情は、何となく南伊豆松崎の岩科辺りに似ている。途中で大型車通行止めの看板とともに分岐してゆく細道旧国道を見送り、その細道旧国道の旧道だった道をそのまま拡幅したと思われる新道区間へ進む。登り総量は変わらないと思われるのだが、旧国道は最後に凄まじい激坂が登場しそうに思えたのだ。しかし、これも今思い出すと細道旧国道でも良かったかもしれない。

 新道の谷間は高度を上げると共に次第に狭くなり、眺める山肌には標高100m前後にしちゃ険しさが感じられるようになっていった。斜度は一定していて、道幅が広いのにも拘わらず、相変わらず車が殆ど来ないのがいい。


 池ヶ峠の手前で、旧国道が脇の茂みの中から浮き上がってきたように現れて新道と合流。そして池ヶ峠で、道は急に道が細くなった。RideWithGPSのプロフィールマップでは、この先、国道490は微妙に登り下りを続け山中を推移してゆくように描かれていたのがちょっと不思議だった。実際の道も、細道が森の中をくねくねと、細かくアップダウンを繰り返してなかなか下り始めない。途中1回拡幅済み区間になってまた狭くなったりしつつ、地形図とGPSの線形が一致しているので、これが国道490本来の道なのだろう。地図では道が妙に近づいているのに合流しないので、注目していたが、案の上道がちらっとしか見えないぐらいに高低差がある。

 不思議な地形と道。そして明るい若葉の広葉樹と、深緑の杉が断続して登場する森は、鬱蒼とした影ときらきらの木漏れ日が楽しい。これぞ400番台国道、国道490は最高だ、と嬉しくなった。今日も素敵な道を走れていること自体が嬉しい。

 しかし、地図を確認しようとして気が付いた。今日の宿が載っている次の地形図、1/5万「山口」をなくしてしまっているのだった。さっき萩から国道490を登り始めたときには絶対一度眺めているので、池ヶ峠までの間どこかで落としてしまったに違いない。GPSトラックからは外れていないので道の心配は無いし、GPS画面の地図は1/2.5万相当の地形図だ。スマホだってあるので地図を全く見ることができない訳じゃない。宿まであと10km台だし、もう明日は最終日。あまり問題は無いようにも思える。でもその後は何となく落ち着かない気分が続き、いかに自分が地形図依存のツーリングをしているかを思い知らされた。

 野呂戸で稜線部から里に下ったかのように見えた国道490は、殿河内で里への下りから分岐し、笹目峠へと再び登り始めたようだった。しかしさっきの池ヶ峠と違い、狭いながらも谷間にはずっと田圃や畑、或いはそれらのなれの果てのような茂みが続いていた。こういうことも地形図を気軽に確認できないと、見える風景をそのまま眺めるだけになってしまい、あまり面白くない。

 笹目峠は、一般的な峠という場所の斜度の変曲点より、集落の道と道、あちら方面とそちら方面の分岐、という雰囲気が漂っているのが特徴的だ。そのまま里方面へ下ると順当に道幅が拡がり、二反田でやや車が多い県道32に合流。銭屋で県道32から杉野峠方面へ分岐して、やっと車がいなくなってほっととした。

 杉野峠は峠と言いつつもう丘越え未満。穏当な起伏の丘陵とそこに拡がる農村、そして細道というのがこの辺りの特徴であり、峠は国やエリアの境というより目印としての地名なのかもしれない。

 サファリランドのバス停前を通り抜け、16:30、赤「ほっとびれっじ美東」着。考察より風呂だ飯だ。

 ここまで4泊、タイプの違う宿に泊まってきた。5泊目のここは、一番カジュアルな旅の宿という雰囲気だ。「サイクル県やまぐちサイクルエイド」のポスターも掲示されている。サイクル県やまぐち、言ってくれるじゃん。
 とか斜に構えているのは、RideWithGPSによる登り標高差が1750mだったのに、実際には1150mだからかもしれない。津和野から萩までもう少し道が静かだと、今日は最高だったんだが。後で思い出すと、やはり計画時に標高差を意識しすぎて里の道を選んでいたことが、コースにややメリハリに欠ける印象が続いた原因だったかもしれない。

 お風呂は近くのトロン温泉へ。帰ってきたら、まだ17:30。食事開始の18時でもまだ明るい。食べ終わってやっと少し薄暗くなってきた。

記 2022/6/20

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Last Update 2022/6/25
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