中国地方Tour22#3
2022/5/1(日)三瓶温泉→広島-1

三瓶温泉→粕淵 (以上#3-1)
(以下#3-2) →川本 (以上#3-2)
(以下#3-3) →瑞穂 (以上#3-3)
(以下#3-4) →千代田 (以上#3-4)
(以下#3-5) →宇津 (以上#3-5)
(以下#3-6) →広島
133km   RideWithGPS

ニューサイ写真 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 外が明るくなると共に、かなりどんよりの曇りだということがよく見えた。昨日の夕焼けの山々が思い出される。天気予報では大田市は終日曇りとのこと。広島市では午前中曇り、午後は晴れだ。どちらも昨日の朝まで今日5月1日も晴れの予報だった。まあ、連休後半の明日以降は3日間晴れるらしいので、雨さえ降らなければ良しとせねば。
 今日は広島へ向かう。約15年前、某導入促進事業強制労働の広島検査前泊で教えていただいて以来、広島お好み焼きが大好きになってしまった。会社に戻ってからも、会社近くで見つけた広島お好み焼き店(良い店があった)に毎週通っていたほどだ。そのため、一度自転車で広島を訪れ、夕食に広島お好み焼きを食べなければならないと考えていたのだ。40年前どうしたこうしたとかよりも重要な、今回最大のミッションなのだ。
 広島入りの経路決めにはいろいろと悩まされた。狭い山間や狭い海岸部が近郊〜市街地になっていて、そこを幹線道路が経由していて脇道に乏しく、経路の潰しが利かないのだ。経路に悩むうち、広島市街に続く太田川に山間の渓谷で突き当たる国道261を見つけた。太田川の渓谷から川沿いに続く道は、広島駅近くまで唯一の車が少なさそうな道であるように見えた。そのため、太田川までは国道261経由となる。これが第1案。もう一つ第2案は、三次経由のコースだ。第1案より多少大回りなので距離が20km長い代わりに、登り標高差が多分100〜200mほど少ない。特に後半は裁けた近郊地帯を通るため、幹線道路区間が多い。こちらも市街地区間の終盤で太田川沿いを経由できる。この2択を昨日の疲れ次第で決めようと思っていた。今のところ、身体が深刻に疲れているという感覚は無い。第1案で行けそうだ。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 島根県大田市三瓶町志学 さひめ野にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 6時半から荷積みを進め、7時予定の朝食には6:50から望むことができた。とろとろに脂のりのりのどぐろ干物と、席で沸かしてくれる宍道湖しじみ汁が素晴らしく美味しい。まあ、ホテルの値段が値段である。
 7:25、さひめ野出発。まずは元三江線沿線の町、粕淵へ。走り始めても意外に脚が動くようなので、第1案で行けそうだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 三瓶山高原道路から細道で裾野の牧場を経由し、山腹の森へと細道が続く。

 出発早々、粕淵手前で合流する道の2択分岐が登場。当初向かう予定にしていた林道の路上に杉の枝が積もり気味だ。登り返しが20m弱程度とはわかっていても、目の前の道が登り返している。それに、この先多くの区間が森の中っぽい。昨日1日走って、自分は里の細道が好きだというのを思い知っていたこともあり、素直に里方面へと向かうことにした。

 
中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 島根県大田市三瓶町志学にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 里方面の道は県道40。昨日三瓶山高原道路へ向かった車の多い県道40が、粕淵へと降りてゆく谷間の道である。長原で県道40に合流すると、こちらでも朝っぱらから相変わらず車が多い。しかし県道40に並行し、旧道っぽい細道が山肌に張り付いて粕淵まで下っているのを、地形図で確認済みだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 合流した県道40の道幅が広くなったお陰でつい調子に乗って下り速度を上げてしまい、最初の細道分岐を間違ってしまったものの、少し下ってトラックが画面に戻って来た。分岐で通行止めにはなってなさそうなので、有り難く問題無くそちらに向かうことにする。

 森の中から里の田圃脇へ、再び森に戻ると急斜面に貼り付いて細道は谷間を下って行った。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 基本的には外側も頭上も広葉樹が覆い被さり時には折れ書けた枝が垂れ下がり、斜面側はごつごつの岩場か法面補強だ。路面はやや荒れ気味で、金属の横断側溝や亀裂段差が現れるものの、苔は中央部だけだったり轍部分はまあ比較的良好だったり、毎日何とかそこそこ通行はあるような形跡がある。森の外側は谷間の空中であり、時々斜面の農村や県道40の喧噪が他人事で眺められる。まあ、朝から凄い道ではある。下る一方で良かった。

 粕淵手前まで森と岩場は続き、高速道路(と思ったら国道375だった)をオーバークロスし、おもむろに集落上手に放り出された。この展開はストリートビューで予習済みだ。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 島根県邑智郡美郷町粕渕にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 7:55、粕淵着。切り立つ山に囲まれ、広い谷間一杯に拡がってゆったりと流れる江の川の、狭い岸辺に貼り付いた町だ。東城以来のコンビニもあるという規模の町であり、何だか久しぶりの町の雰囲気には少し戸惑いすら感じられる。などというのも、見知らぬ土地を旅しているという証しというものだろう。

   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 GPSトラックに身を任せて進んでゆくと、道の脇に草ぼうぼうの線路が現れた。4年前に廃止されたJR三江線である。
 1982年の中国・山陰地方訪問時に、私は三江線に全線乗っている。当時から全線直通列車は1日3本だったので、江津早朝発の列車に狙いを定め、前の晩は山陰本線の波子で駅寝したのだった。三江線ではあの揺れてうるさいキハ11に乗ったにもかかわらず、途中で居眠りしてしまった。既に2週間近く駅寝と撮影ばかりの旅でやや疲れていたのだ。しかし、江の川沿いに続く美しく長閑な農村風景がとても印象に残った。当時から、いつかあの風景の中を自転車で走ったら楽しいだろうな、とは思っていた。のんびりとした田園風景の中、江の川沿いに農村から今いる粕淵ぐらいの町へ、また農村へ。
 今、その希望が実現しつつある。でも、三江線は4年前に廃止されてしまっていたな。あれから40年、私も17歳じゃなくて57歳だ。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 島根県邑智郡美郷町浜原 旧三江線浜原駅にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 などと思いながら、江の川に掛かる元三江線の錆びかけた鉄橋を眺め、粕淵の町からGPSトラックを辿っていた。気が付くと、江の川の流れが逆だ。川を遡っているではないか。これは第2案のトラックだ、こっちじゃない。とりあえず逆戻りするより、前方に折り返しできそうな橋を見つけた。
 ふと、道端に建つ建物に何だか親しみやすそうな雰囲気が漂っているのに気が付いた。前庭のような道端の広場に石碑が建っていて、「昭和50年三江線全通記念」とある。その建物は元浜原駅なのだった。じゃ、私が乗った1982年は、全通後7年しか経っていなかったのか。そう言えば、中間の区間でまだコンクリート構造物が新しかったのを、改めて思い出した。そして、帰ってから浜原駅は、長らく全通していなかった三江線の北側区間、三江北線の終点だったことを知った。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 橋を渡って江の川対岸へ渡ると、案の上それっぽい細道が始まった。道間違い込みの回り道で、20分ぐらいのロスとなった。また、この間違いによって、距離は第2案と大して変わらなくなったことに、後で気が付いた。

 江の川の谷が屈曲して折り返す、亀村、野井を回り込み、道は軽く緩く登ったり下ったりして明塚、柳瀬、乙原と、河岸一皮の狭い森を三江線跡とともに続いてゆく。

 三江線は基本的に道から少し高い位置に通っている。時々現れるコンクリート橋は60〜70年代っぽく近代的であり、踏切では線路に仮設パイプの柵が立てられていた。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 島根県邑智郡美郷町野井にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 柵そのものとその錆び方に、もう廃止されて4年も経っているのだと改めて思わされた。そもそも線路跡は草ぼうぼうになっている。

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中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 明塚島根県邑智郡美郷町にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 それでも三江線跡が時々道の高さに降りてきて、線路跡と道の空間は一体になると、何だか列車かトロッコか何かになって線路跡を走っているような気分になる。

 三江線が通っていた岸の方が、2022年の現状としては向こう岸より民家が少ないように見える。

 柳瀬からは県道40がこっちに渡ってきたようだった。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 島根県邑智郡美郷町簗瀬 旧三江線 石見簗瀬駅跡 県道40にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 柳瀬では少し道幅は広がったものの、集落を川岸側で過ぎてゆくと、道は再びかなり細くなった。別人の様に好ましい道である。この細道区間がボトルネックになり、江の川沿いの県道40は、交通量がかなり少ないのかもしれない。

 森の向こうに時々眺める江の川は大河のようにゆったり悠然とした表情ながら、その割には川幅が大河というほど広いわけではない。時々現れる農村の空間感覚は、こぢんまりと可愛らしく何とも居心地が良い。

 全体として山に囲まれた森ではあっても、山の形はどこかのんびりと穏やかで優しい。そして、集落だけでなく森にも対岸にも、そこはかとなく人の営みの優しい気配、田舎の人里として典型的なような象徴的な雰囲気がが漂っている。独特ですらあるその雰囲気が、江の川の表情、個性なのだと思った。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 島根県邑智郡川本町川本 県道40にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 9:20、川本着。粕淵より更に大きな町だ。走り始めて30km全部下りなのに、意外に時間が掛かっている。のんびり走りすぎている。意識していなくても、やはり昨日疲れているのかもしれない。

 川本は粕淵より大きな町のように見える。何か凄い建物が、見上げる斜面に建っている。小学校のようだ。元川本駅舎はほぼ廃止前のまま(と思われるぐらい)キレイに残されていて、三江線に思い入れのある町だということがよくわかる。何だかずっと列車を待っていたいような気分になるが、まだ行程全体の1/4。粛々と広島へ向かわなければならない。便所をお借りしておくに留めておく。

 三江線の谷間に降りてから晴れ始めていた空に再び雲が拡がり始め、辺りは再び薄暗くなり始めていた。ここで天気予報を再確認しておくと、何と島根県大田市に10時から雨マークが付いているではないか。北広島も広島市も天気予報は変わっていないので、先を急いで早く広島県に入らねば。でも、ちょっとぐらいは降られるのかもしれない。5km先の因原で江の川沿いから南へ登り始めるので、山間区間が少し心配ではある。


 川本を出発して岸が再び森に変わった辺りで、ふと後ろを振り返ると、早くも雲がどす黒くなっていた。明らかに予報通り天気が雨に向かって推移している。
 因原では、ずっと辿ってきた江の川岸辺の県道40から、これから広島市までしばらくお世話になる国道261に移った。途端に道幅が拡がって車が多くなり、自転車周囲の空間はがらっと一気に今時の国道っぽく変わってしまった。ずっと立ち寄ろうと思っていたコンビニでパンを仕入れた後、道沿いに昨日の東城からここまで見かけることが無かったロードサイドの大型ドラッグストアが現れた。ドラッグストアでも更に必要物資を補給しておく。というより現実逃避なのかもしれない。道の雰囲気にちょっと当惑していた。
 2日目の登り総量がなかなか縮まらず、その代わりに3日目を楽にしようと、内陸の山越えについ国道をコースとして選んでしまった。安易な選択だったかもしれない。まあしかし、その分登り量が少ない楽なコースにはなっている。昨日の疲れを残さないようこれぐらいなら我慢しようと、緩め優先の行程にしたのだ。地図上では一応納得はしたつもりなので、目の前を通り過ぎてゆく交通量へのショックは尚更行き場が無い。
 でも進まねば。山間区間を前に、空はどんどん薄暗くなっている。

 9:50、因原発。実際の国道261は、やはりという以上に幅広の、今風の国道そのものだ。交通量は何とか許容範囲と言えないことはないものの、昨日からここまでの愛らしい道の数々が何につけ思い出されてならない。しかもこれから登りだというのに、空はますます暗くなっているのであった。

 1つ目のそんなに長くもないトンネルを抜けると、道の雰囲気と交通量はそのままに、辺りは急に切り立った渓谷の底となった。何となく細かい霧粒を感じるような気もする。道には断魚渓という看板が建っていたので、そういう名前の渓谷なのだろう。そのまま脚を進めてゆくと、地形図よりトンネル区間が増えているようだ。山深さが感じられる風景の印象に比べて、斜度が緩めなのも、今日は大変有り難い。

 断続するトンネルを抜けてゆくと、トンネルの狭間、渓谷沿いの広葉樹林に所々旧道らしいかなりの細道が見えた。明るい緑の新緑が生い茂る道を眺め、あの道だけだったら車も通りにくいだろうなとか、あちらをいつかローラー作戦してみたいなどとも思う。

 長いトンネルを抜けると道は少しだけ下り、井原の盆地に出た。道端に「ハンザキ」の文字が目立つ。ハンザキというのは天然記念物オオサンショウウオの別名だ。少し高い土手を通っている国道から見下ろす生け簀に、長さ1m以上ありそうな黒い影が見えた。あれがオオサンショウウオか、でかいぞと一瞬思ったものの、隣にチョウザメ養殖施設等というものが建っていたので、それはもしかしたらチョウザメだったかもしれない。
 GPSトラックが国道から逸れ、細道へと分岐していた。旧道らしいその道は分岐から川に沿って小学校や元役場の脇から井原へと進んで行く。井原は山間の、町と里の中間ぐらいの古びた集落だ。車は一気に少なくなった。計画時、なるべく国道を通らずに済むように、めぼしい細道があればそちらを選んでおいたのだ。何かお店的なものがあるかもしれないと思っていたものの、大して裁けたようなものは無かった。まあ、さっきコンビニに寄ったばかりだし、何かお店に寄るような必然性は無い。もっと晴れた日に通ったら、もっと楽しいかもしれない。

 再び国道261に合流。井原から民家が断続する山間で、遂に雨粒を感じ始めた。振り返るともう後ろの山が霞んでいる。やばい、遂に雨予報が襲ってきた。と思う間もなく間もなく本格的に降ってきたので、道端のバス停小屋で雨具を着込む。まあ、10時過ぎだし山間だし、天気予報の通りだね。

 しかし因原から登りが続いているものの、その登りが地形図の印象からは意外な程、均等に緩々淡々と続いているのは有り難い。断魚渓みたいな渓谷もあるし里もあるし、普通もう少し緩急がありそうなものなのに。峠っぽいと思っていた瑞穂手前のつづら折れ箇所も、淡々とした峠未満の丘越えに過ぎないのだった。中国地方独特の地形によるものかもしれないし、RideWithGPSによる計画でそういう道を比較的簡単に選ぶことができていることが有り難い。

 11:20、道の駅みずほ着。今日もお昼前。何かめぼしい食事ネタがあれば食べていきたいところだが、いや、雨としばし国道の交通量でやや気が滅入っていた。空を見上げても、雲は厚いような明るいようなとにかく低く、しばら雨は止みそうに無い。天気予報はあてにできないかもしれない。何だか億劫で、とりあえず取っかかりに自販機で缶コーヒーを飲んでおく。
 ちょうどその時、バスが来て去って行った。引かれるようにバス停の時刻を見てみると、広島・大田間の、石見交通石見銀山号である。今のは大田行きだった。今日もバス輪ですかあ、と他人事の様に思いながら広島行きを見てみると、1日2本で次の便は17時台だ。いくら何でも、今からここでこれを待つという手は無い。
 天気予報を視ると、ここ北広島町では曇りということになっている。まあ、予報の振れ程度の雨なのかもしれない。それぐらい走れよ、と誰かに言われてしまったような気もしていた。ツーリングの神様かもしれない。

 気を取り直し、やや混雑している道の駅では何も食べずに出発すると、すぐ国道脇にヤマザキデイリーが登場した。幟の「店内焼き上げ」に魅かれて入ってみると、日曜はパンを焼いていないとのこと。ヤマザキデイリーは大弛峠を下った梓山に店舗があるのはじめ、ツーリング中のここぞという時にに助けられることが多い、脚を向けて寝ることはできないコンビニチェーンではあるものの、こういう緩い所がヤマザキデイリーなんだよなあ、と思うのも又確かである。
 ところが何か心破れて店から出ると、雨が何と完全に上がったのみならず、空が明るくなり始めていたのであった。天気予報通りにこれから曇りに移行することが確信できた。またヤマザキデイリーに助けられたかもしれない。


 引き続き国道261でもう一越えだ。瑞穂の町外れが何となくずるずるっと谷間に続くうち、やはり均等に次第にじりじり高度を上げ、いつの間にか位置が進んでいるありがたい道だ。交通量さえ少なければ大分楽しいのに、とも思う。

 地形図では、島根県と広島県の県境に中三坂隧道という3〜400mのトンネルが描かれている。しかし実際には、新道と共に地形図より長いトンネルができていたことは今日大変有り難い。

 トンネルを抜けると、広島県北広島町の看板が立っていた。遂に広島県に入ったのだ、となかなか嬉しい。路面も乾き始めている。

 大朝の盆地手前でGPSトラックに従って町道らしき細道へ。確かここは国道が小さい丘を越えているので細道経由にした区間だ。すぐ国道261に戻る短い細道区間ではあっても、周囲は十分に長閑で車は皆無。一気にツーリングの気分が戻って来た。確か今日はこういう区間をちょこちょこ入れている。実際にも狙い通りに国道の気分転換になっている。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 広島県山県郡北広島町宮迫にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 細道は谷の隙間から盆地に出て、新庄で再び国道261に合流。ちょうど狙い定めたように、浜田自動車道大朝ICの真ん前だ。そのためか、まだまだ広島から遠い山間の盆地なのに、かなり車が多い。ICから吐き出されるように車が国道261にどんどん合流していてがくっと来る。

 そんな国道261でGPSトラックがあらぬ方向へ向かっている。と思ったら、ここはしばし千代田まで、国道261のひと登りを迂回して、細道の県道311へ向かう区間なのだった。

 下市の交差点でつい道を間違えてしまった程の細道は、集落の生活道然とした表情のまま民家、学校脇、田圃から森へと進んでゆく。自分で選んだ道ながら、細道となればこれが県道か目を疑うほど細いのが我ながら面白い。

 農村から抜けて谷間が多少狭くなり、辺りが田圃や畑から川原の茂みっぽい森に替わると、道幅がふたたび拡がった。拡幅しやすいところで拡幅してるんだろう。谷間の川は、なかなかゆったりとした雰囲気を漂わせている。川幅はそう広くないものの余裕たっぷりの優しい表情で、ほぼ平坦に近く緩い下り基調の道に沿ったり、時々拡がる田圃の向こうに離れたり。看板を見て驚いた。何と江の川なのである。朝に通った、あの江の川の上流なのだ。江の川って一体どういう経路なのかと思って後で地図を見ると、三次からこちらに戻るように遡っている、上流部分なのだった。
 川戸から県道311は国道433に合流し、この辺りから青空が現れ、陽が差し始めた。

 国道433は県道311の細道区間より更に細い道である。同じ国道なのに、ついさっきまでの国道261の喧噪が嘘のようだ。そして、こよなく美しい江の川の渓谷を更に下ってゆく。

 昨日もそうだったように、こういう田舎道ではカジカや鳥の声が響き渡っている。明るい光の中、カワトンボがひらひら、サナエトンボやシオカラトンボがすいすいやって来るのもステキだ。さっきまで輪行に切り替えようかと思っていたのに、今日もやっとこの時間になって、5月のツーリングまっただ中になってきた。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 広島県山県郡北広島町川戸 国道433にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 広島県山県郡北広島町惣森 国道433にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 上漆原から先も谷間の川は江の川なのだが、谷間が急に拡がって、周囲の風景はやや開けた平地の農村となる。一方、国道433は江の川を離れて山中に向かってゆき、道は県道69となった。

 急に風景が変わっても、こちらは何が起こったのかあまり把握せず地図も見直さず、気楽にやや受動的に行程の進行に身を任せ、山に挟まれた農村風景の中をてれてれ脚を進めてゆくのがいい気分だ。贅沢な連休である。


 12:50、千代田着。中国自動車道の千代田ICは、さっきの大朝IC3つ分ぐらいに、出てくる車が多い。車が多いICからなのか、道の駅はかなりゴージャスなガラス張りの大きな建物となっているのが仰々しく、慌ただしさを盛り上げる。広島という都市が近づいてきたことを感じさせる。

 少し先で道は再び国道261に合流した。実はこの時、合流した国道261が朝通ってきた交通量が多い道の続きだとは思っていなかった。事程左様に土地勘が無いのに、GPSトラックを辿ることで、道を間違えずにいられるのである。しかし地形図の絵面には記憶があり、いよいよ広島市まで最後の大きな登りに推移しつつあることはわかった。そしてこの先、国道沿いの旧道っぽい細道を積極的に選んでトラックを描いていることも思い出した。

 GPSトラックに従い国道261から分岐し、白い壁の倉や見事な瓦の家並みへ進んでゆく。里まっただ中なのに、道端のこぢんまりした休耕田っぽい草むらには、鹿がこちらを眺めていて驚いた。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 広島県山県郡北広島町本地にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 行く手には時々やや急な短い登りが現れたり、行く末を疑うような変な曲がり方をしたりもするものの、そういうときはすぐ向こうの国道も、付かず離れずぐらいの距離でじりじり高度を上げているのだった。そして国道から数10m離れただけで、国道を通り過ぎてゆく車はこちらからは単なる映像になってしまっている。こちらの落ちついた路上空間とは全く別世界である。

 谷間の集落が終って国道261に合流、そのまま峠部分へ高度を上げてゆく。車は増えたものの思ったほど悩ましくはなく、まあ何とか許容範囲である。もうあとは数10m順当にじわじわ登り峠を越え、向こうへ下ったら、広島までほぼ真っ平らということもわかっている。
 それでも、本地で峠部分を越え広島市安佐北区の看板が出たときには嬉しかった。陽陰分水嶺の看板も出ている。広島市側は、やや開けてはいるものの狭い山間の谷間である。全体的に緩く傾斜した台地だった北広島町側とは全く違う風景だ。たった400m代前半の峠ながら見事に雰囲気が変わってしまうのが面白い。

 竹迫でつづら折れがある他は、谷間に沿った直滑降をどんどん下ってゆく。途中、GPSトラックはまたもや旧道を経由したりもした。あまりふらふらしないように気を付けながら国道261をどんどん下りつつ、ここまで慌ただしい国道を経由しすぎたかなと思っていた。思えば今日の行程は、徹底的に獲得標高差を下げるため、国道経由を聖域無い適正化として選んでいた。しかしRideWithGPSでの計画値は1800m近かった登り標高差が、今のところ1100m台。14時台でこの後はもう広島までほぼ平地だけなんだから、もう少し無理をして細道を一杯通っても良かった。それでどんなコースになるのかは全くわかっていないのだが。
 とにかく、もうこの後は広島だな、広島に近づくんだから車が増える一方なんだろうと思っていた。しかしその先太田川沿いでは、想像と全く違う展開となったのだった。土地勘が無いということは怖ろしい。


中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 広島県広島市安佐北区安佐町飯室 県道267にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 広島県広島市安佐北区可部町今井田 県道267にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 広島県広島市安佐北区可部町今井田 県道267にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 15:10、宇津で太田川に合流、太田川沿いに2本通る道のうち、静かそうな方の県道267へ。途端に路上の車はかなり少なくなった。
 両側に切り立つ山の間に挟まれた谷間には、広めの澄んだ川面と、落ちついた白い川原が悠然と、というより堂々と続いてゆく。狭い岸辺は基本的に森と切り立つ岩場であり、時々集落未満の民家が断続しつつ現れる。合流点からしばらく広かった道は、空中を飛び越えてゆく広島自動車道の高い高い橋をくぐった先で、かなり細くなった。ご丁寧に「すれ違い不可 車の通行はご遠慮下さい」などという看板まで立っている。何故こんなに広い川にこんなに細い道が続くのかとも思うものの、純粋に切り立つ山のせいだろう。
 向こう岸にはこちらよりは車が多い県道177が、やはり岸辺に強引に貼り付いている。あちらは恐らく、旧道を拡げず一気に新道作っちゃいました系の道なのかもしれない。
 数時間前までの雨が嘘みたいに空もからっと晴れている。雨上がりで空気が澄んだためか、陽差しは鋭い。その陽差しはそろそろ赤くなり始め、緑の森と山肌、川面や風景を鮮やかにして、とてもステキな渓谷の風景が続いてゆく。
 地形図には鉄道が描かれている。2003年に廃止された、可部線非電化区間だ。そう思って気を付けていると、時々線路跡やまだ線路が残っている区間を見つけることができた。可部線非電化区間が素晴らしい、という噂は聞いたことはあったものの、こんなにステキな所を走っていたのか、と思う。しかし2022年の県道267としては、県道40を含む元三江線沿いの道以上に岸辺が狭く岩場が切り立ち、ワイルドな区間が多い。ここもやはり廃止されて然るべき鉄道だったのかもしれない。
 という具合に、今日の行程のやや慌ただしく埃っぽかった印象は、この谷間でがらっと変わってしまったのだった。

 「広島到着16時台はいただきだ、15時台はさすがに無理かな。早く着いたらお好み焼き屋に寄ろう。」などと、まだこの時は思っていた。
 しかし実際には、渓谷区間は予想より長く続いた。あまりに渓谷に癒され、ちょっとのんびり流しすぎたのと、特に後半では太田川が山中を曲がりくねっているため、地図で見た距離と実際の距離がかけ離れていた。更に、朝、粕淵で方向間違いした距離オーバー分が、微妙にここで利いていた。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 広島県広島市安佐北区可部町今井田 太田川 柳瀬大橋にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 長い谷間の後、やっと太田川の谷間が拡がり、対岸が一気に市街化したのがわかった。地図を見ると、もう可部だ。可部線の現在も走り続け、のみならず廃止した区間を部分的に再開業させたほどの勢いがある、可部線の電化区間は、こういう所を走っているんだなとまた思った。それにしても廃止された非電化区間、列車が走っていたらJR西日本屈指の感動的な風景の路線だったんだろうな。

中国地方Tour22#3 2022/5/1(日) 三瓶温泉→広島 広島県広島市安佐南区八木町 Spherical Image - RICOH THETA

 太田川の土手に道が始まった。そちらを通るつもりで、もう少し手前の砂利道からGPSトラックは既に土手に登っていた。土手の道はサイクリングロードなどという裁けた雰囲気ではなく、単に河川管理道が舗装された細道っぽい雰囲気だ。時々軽自動車も通っている。
 もうすっかり陽差しは色づいているものの、未だに陽差しが高いのは昨日と同じ。向こう岸の市街はこちらよりずっと賑わっているように伺える。川岸に近い道も、車が渋滞気味であるようだ。GPSトラックがこちら岸でよかった。等と思いながらを下ってゆく太田川西岸、ここも意外に距離があった。まあここの長さは地図で見ても納得はできる。
 いつになったら広島の街には辿り着けるのか、と思っているうちにまあ順当に、時と共に脚は進んでいった。高速道路やら幹線国道やらの橋をくぐって、道が県道に変わった後また河川管理道っぽくなり、こちら側の風景も次第に普通の住宅地から市街地に変わっていった。信号待ちの間にロード乗りの方などとお話しするのも楽しく、まさか到着が17時半は過ぎないだろうなどと思いながらのんびり下ってゆく。
 太田川沿いから眺める広島は、大きく賑やかな美しい街である。可部線が太田川を渡ると、山陽本線の広島の次の駅横川のはずだ。と思って太田川を渡ると、川沿いに新緑が素敵な桜並木の遊歩道が通っていたので、GPSトラックトラックから離れてそちらへ脚を向けてみた。もう宿も近いから大丈夫、と思ったら、その後トラックを見失ってしまったので、あとはスマホ地図とアドリブで大都会の裏道を辿ってみた。

 結局、東横INN広島駅南口右着は16:50。意外に時間が掛かってしまった。ビジネスホテルなので夕食の提供が無いため、シャワーを浴びる前にまずは何を置いてもお好み焼き1枚目を優先せねば。これだけ腹が減っていれば、今晩2枚は行ける。
 10年以上ぶりぐらいに広島でお好み焼きを食べるに当たって、お店をどこにするかは悩ましい。東横インでは、ホテルが近所の飲食店を紹介しているチラシが配られていることが多く、泊まるときに大変重宝している。東横INN広島駅南口右はどうかというと、オフィス・マンション街に建っているためか近くにあまりめぼしい飲食店は無いようだ。ましてやお好み焼き。
 少し歩いて既知の駅前店に向かうという手もある。結論から言えばこの際タクシーを動員し、市街中心の有名店に勝負を掛けてみたのであった。パンフレットには少し離れた繁華街の有名店が紹介されていて、それが印象に合ったと思う。それにどうせ私は外様の観光客なのだから、こういうときには観光客らしいチョイスと、使える物を全部使った方が効率が良い。
 17:20、超有名店の「みっちゃん総本店」到着。入口付近の看板には17時半営業開始とのこと、しかし既にお客さんが入っているのみならず、入口に列ができはじめていた。連休中のためか有り難いご配慮である。私の前には10人ぐらいだった列は、私がお店に入る頃には3〜40mぐらいになり、出る頃には更に伸びていた。
 並んでいる間にお持ち帰りの文字が目に入ったので、この際2枚目は持ち帰りで作っていただき、ホテルで食べることにしたのだった。

記 2022/5/26

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Last Update 2022/6/25
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