紋穂内→咲来→咲来峠
(以上#7-1)
(以下#7-2)
→歌登→小頓別→敏音知
(以上#7-2)
(以下#7-3)
→上駒→知駒峠
(以上#7-3)
(以下#7-4)
→中問寒→上問寒
(以上#7-4)
(以下#7-5)
→南幌延→幌延
(以上#7-5)
(以下#7-6)
→オトンルイ→天塩
169km ルートラボ
4時の天気予報は15時以降晴れ、その前は美深、枝幸、豊富で曇り。昨日から変わっていない。
出発以来の晴天予報だ。あれだけ道東で雨が続いたので、道北にやってきてようやく夏らしいサイクリングができると思うと大変に感慨深い。北海道に来て良かった。
天気予報が15時以降晴れなら、この晴天は多分サロベツ原野で迎えるのだろう。緑に輝く一面の草原と青空、青空を映す湿原の川、間近に聳える利尻山を期待してしまう。そしてその前の曇り予報の時間帯も、少しづつ晴れ基調になってくれることを期待したい。
昨日買い込んでおいた朝食分の食料を腹に流し込み、並行で着替えその他の荷物をサイドバッグにまた詰め込む。荷物の量自体はそんなに無いはずなのに、部屋に荷物がばらけたりバッグに詰め込むのに時間が掛かってしまうのは、自分に荷物の整理能力が無いからなのだろうか。それともエンタルピーが下がるのは当たり前のことなのだろうか。
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5時半前に部屋を出て、入口のポーチでバッグを積み始める。空は雲が多いものの、昨日までのどんよりと低く重い雲と比べ、明らかに高く明るい。空気中には少し水滴がぱらつき、路面はまだ濡れていた。外に出てきた宿直さんが、「オホーツクは曇りみたいだよ」と言っていた。オホーツクでなくても午前中の天気予報は曇りなのだが、オホーツクは午後も曇りのようだ。知駒峠の前、オプション的に考えている歌登方面では、あまり冴えない天気なのかもしれない。
びふか温泉の建物の前はキャンプ場になっている。目の前のキャンプ場には車やバイクやテントが一杯で、一部の人はこの早朝から早くも行動を始めていた。一昨年も十勝の鹿追で見たキャンプ場の客達は、朝の行動開始が早かった。このキャンプ場、2001年に初めて美深温泉に泊まった時からかなり人気があった。最近聞いた話では、設備がやたらと充実していてWiFiまで完備しているらしい。確かに管理棟的な建物は小綺麗で寂れた印象が全く無く、いかにもそんな雰囲気だ。
5:50、びふか温泉発。
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まずは国道40へ。
JRの路線で言えば宗谷本線に相当する、道北の国道でも一番基幹となるべき道ではあるものの、まだ早朝のためか、交通量はかなり少ない。
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美深盆地が多少狭くなってきた恩根内で、一旦国道40を降りて脇道へ。以前から、国道40に付かず離れずの細道が恩根内から咲来の先まで断続しているのを地図で見ていて、ここ数年間訪問の機会をねらっていたのだ。
田んぼや畑から天塩川の土手へ、路盤の低い道が続いてゆく。風景とその中にある道の、空間としての一体感、同じペースの時間が感じられる。それに丘陵をまともに直登して下ってゆく国道40に比べ、こちらはあくまで天塩川沿いの平地に淡々と続いていて、地点間の移動というより人里への訪問を感じさせてくれる。
宗谷本線の踏切には、「国道40旧道」という表示があった。流石に裏道にしちゃ細々と続くだけのことはある。旧道にしてはところどころで現在の国道40とやや経路が離れるので、単なる脇道かとも思っていた。細道国道が拡幅されるときに全くの別ルートに変わってしまうのは、紀伊半島や四国の山中の現象だけではないのだ、と思った。
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旧道は途中からダートに変わった。ダートながら路面は安定して良好だったし、地図を見ても谷間の平地は極端に狭くなることは無く、道が唐突に途切れたり廃道になったりしないとは思っていた。
淡々と続いた道が国道40に再び合流する豊清水の先辺りから、空が明るくなって日差しが現れた。このまま天塩15時の晴れ予報へ続くといいなと思う。
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7:00、咲来着。
廃業してもう大分経つ(というか営業していた頃を知らない)ドライブイン跡でコーヒーを飲んだ後、次は咲来峠の道道220経由で歌登へ。
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北見団体(という地名)では道端にソバ畑が、カラマツの森をバックに続く。満開のソバの白い花が見事だ。
天気が変わるときの例に漏れず、空の低い場所にはボリュームのある雲が勢いよく動いていた。雲の切れ間からは鋭い日差しが時々現れ、そうなると急に気温が上がって一気に暑くなり、途端に汗が噴き出てきた。もうこのまま一気に晴れるのだ、と思われた。
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ところが咲来峠に近づき、谷間が狭くなって対岸の山裾が迫る辺りから、雲は目に見えて低くなり、辺りはがらっと暗くなってきた。道端には舗装路面に堂々と、かなり巨大な熊の糞も登場。しかも、まだ真新しく、乾燥も崩壊もしていないっぽい。少なくとも12時間以内、いや、昨夜が雨だとすると、数時間以内に落とされた物だとしてもおかしくない。さすがは道北内陸の山間だけある。去年もう少し北の毛登別で見かけた熊出没情報の看板、同じく志美宇丹の巨大な熊の糞を思い出す。この辺りではこんなのはごく普通の話なのだ。と思うと、一気に怖くなってきた。
咲来峠の手前から路面が濡れ始め、下り始めてすぐに本降りの雨が降ってきた。薄暗く肌寒くもあり、早々に雨具上下を着込んでしまう。
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ぬらぬらと真っ黒に塗れた舗装面、特に水たまり部分で何かの拍子に滑ってはいけない。まだ朝なのだし、急ぎすぎずに緩い下りで楽をしよう。
咲来峠から下ってすぐ本幌別に降りる印象があったが、実は意外に距離がある。地形図を見直すと、歌登まで半分ぐらいの地点と言ってもいい。ずっと緩い下りだけで下ってしまえるのが、そういう印象につながっているのだと思う。今日については、薄暗い雨の中延々と続く森と茂みの無人地帯が、さっき見かけた巨大な熊の糞による恐怖を増していた。あんな巨大な糞の落とし主が、この辺の山中にはうろついているのだ。
やっと本幌別に着いて安心できたものの、本幌別には数年前に廃校となった小学校があるぐらいの集落なのに、自販機は無い。そのまま通過してしまう。
本幌別から先、道は牧草地の中を更に緩い下りで延々と歌登へ下ってゆく。11kmで標高差60m程、この間ほとんど平坦な地形が歌登方面へ下り傾斜しているだけで、目立った起伏や谷間の拡がりは無い。広々とした牧草地は低山に囲まれ、特に南側の山々は北側の山々よりぐっと高く、すっきりと立ち上がる姿が毎回見応えがある。
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今日はその姿が、もう山裾から厚い雲に覆われていた。雨はもう上がっていたものの、雲もまだかなり低く、予断を許さない。広々とした牧草地には、ところどころ大きな水たまりが見られ、また時々渡る川は、濁流で泥水が溢れそうだ。これも近年では毎度の道北の風景でもある。
まあしかし、15時から日本海側の天塩で晴れると思っているので青空と日差しを期待してしまうのである。咲来峠から東側の天気は露骨にオホーツク海沿岸に影響されるということもわかっているので、オホーツク海側へ向かうとこうなるのだ、と思ってしまえばそれまでの話だ。知駒峠辺りに向かう頃には、何とか晴れに向かってほしい。
歌登から知駒峠に向かう道は、道道12・小頓別経由国道275と道道120兵知安峠経由の2拓となる。前者は、大回り(とはいえ35kmぐらい)だが登りは少なく、去年も使っている。後者は、距離は短い(とはいえ劇的に短くはない)が標高差200mちょっとの峠を含むコースで、毎年道北縦貫道道としてお世話になっている。天気さえ良ければ、好みと気分だけで選んで構わないような2択だ。
今日は雲がかなり低い。そしてこの薄暗い空の下、まだ8時過ぎ。山間の谷間には早朝の雰囲気がたっぷり残っている。というより、山深い兵知安峠では熊が怖い。雨が強まるのも心配だ。どうせ3日後に通るチャンスはあるのだし。
このため、歌登手前の道道12への分岐ではあまり悩まず、道道12へ向かうことにした。
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道道12で標高差100m弱を10km強、ほぼ均等に高度を上げてゆく間、上流へ向かって谷間は次第に狭くなってゆく。
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周囲には道北らしい牧草地と植林主体の山林が小頓別手前まで続き、最後にひょいと低い峠部分を越えて小頓別に降りる。
典型的な道北内陸の地形通りの道であり、今日は終始薄暗い空の下だった。
小頓別では、何日か前に鱒やの橘さんに噂を聞いた木造の元旅館を表敬訪問。その後、国道275で中頓別方面へ。
秋田、上頓別と緩い下りに身を任せ、9:05、道の駅ピンネシリ着。
時間が早いせいもあるが、基本的にこの道の駅は自販機と売店のソフト以外にあまり補給できそうなものは無い。もっとも10km弱下手には中頓別のセイコーマートがあるし、ここに訪れる人の大部分は車かバイクを利用していると思われるので、実用上全く不便は無いのかもしれない。
用を足している間に、それまでも雨具が必要無い程度に漂っていた空気中の水分が完全に消え、空の雲は勢いよく動き始めていて、更に辺りも急に明るくなっていた。咲来峠から雨が続いたお陰で、このまま雨が続くなら今日は標高の高い知駒峠には行けないのではないか、とすら思っていた。でも、いよいよこれから晴れに向かうのかもしれない。
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9:25、道の駅ピンネシリ発。
10km弱国道275を下る間に、雲の中に青空が現れては消えるうち、次第に青空の部分が増え始めた。いいぞと思っていると、路上を照らす日差しすら現れ、上駒の道道785分岐までに路面はすっかり乾いてしまった。好調の波に乗ってきた、という奴かもしれない。人生にはこんなこともあるのだ。
これならもう全く問題無く知駒峠に向かうことができる。というより、過去の知駒峠への訪問中、一番天気がいいかもしれない。もう後は15時へ向かってどんどん晴れてゆくだけだろう。
昨日美深で買い込んでおいたクロワッサンを腹に入れてから、10:00、上駒発。久しぶりの知駒峠だ。
上駒で既に知駒岳や峠手前の道まで見通せるものの、その姿はやや遠くにある。登り始めの山裾までしばらく谷間に人気の無い牧草地が続く。集落などは全く無い。これで曇りの日には、山深さがやや怖ろしいというぐらいの静かな谷間だ。
標高70mぐらいからおもむろに離陸開始。森の中に斜度5〜6%ぐらいの、幅広で路面・法面とも安定した、今風の道道らしい道が淡々と続く。
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しばらく登ると森は切れ、周囲の山々と低地に拡がる樹海が見渡せるようになる。
標高の高い場所ではないのに、ごつごつ不揃いな原生林が鬱蒼と拡がって、遠くの山影に続いてゆく展望は見事に山深い。さっき上駒辺りから見上げた知駒岳の、周辺の低山から急に立ち上がる姿を思い出す。
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そして日差しが出ると、鋭い直射日光と照り返しで途端に面白いように路上の気温は上がり始め、身体中から汗が噴き出てきた。
峠区間の後半では、道は尾根を越え山裾を巻き尾根を掘り割りがぶち抜き、尚も淡々と高度を上げてゆく。
道の外側にはますます下界の展望が開ける。さすがに道北最北部でダントツに高い峠だけの眺めである。
道の外側から空と視界の彼方へ拡がる大空間、原生林のような不揃いで荒々しい木々の姿、そして人工物としてそれらに対峙する幅広の整った道も、いかにもそういう峠らしさを盛り上げる。
終盤のスノーシェッド手前で、峠まで湾状に山肌を巻いてゆく展望が一気に拡がり、脚が停まる。というより、この風景を初めて晴れの日に眺めることができているのだった。
この峠に訪れるような行程を組んでもいつも曇りか、雨っぽくて訪れることができない事も多かったのだ。今回前半の道東で雨続きで希望を失いかけていたものの、真面目に走っていればちゃんと晴れてくれることだってあるのだ。
12:10、知駒峠着。標高は466m。
峠の北側も、5〜6%ぐらいの一定の下りで山腹の安定した斜面を行ったり来たりして、一気に低地へ下ってゆく。こういうところはいかにも、造って通した道らしい線形だ。
また、知駒岳を始めとする山脈は、その北側もやはり低地から一気に立ち上がっていることがよく理解できる。しかし南側に比べて、ダイナミックに展望が拡がることは少ない。
下っている間に空は雲が次第に去り、全体的に晴れ始めてきていた。
以前、上駒の分岐近くには「サロベツ・利尻を一望!」などと謳い文句が描かれた、道道らしからぬ観光系の看板が建っていた。前3回の訪問ではことごとく曇りか濃霧だったため、晴れたらそういう眺めが開けるものと思っていた。
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しかし今日、この天気でまだ利尻やサロベツは眺めることはできない。そちら方面の遠景は雲に隠れているので、もしかしたらあの雲の中にそういう風景が拡がっているのかもしれない、などと手前の低山や樹海を見下ろしながら思う。或いは道路建設時に伐採した道端の木が再び大きく育って、かつては見えていた展望を隠しているのかもしれない。
12:50、中問寒着。もうすっかり空は晴れていた。
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知駒峠の次は、また小さな峠の未済経路がある。谷間の牧草地のまっただ中の分岐を、問寒別方面ではなく上問寒・北進方面へ。
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この道も確か2000一桁年代中ぐらいまで途中で終わっていたように思う。また、以前雨の薄暗い日に下って来て、かなり心細かった印象が強い道でもある。
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今日はかなり明るく暑いぐらいの晴れで、低山に囲まれた緑の牧草地を、夏の風が通り過ぎてゆく。牧場と牧草地が静かにのんびり大変好ましい。道東から昨日まで、雨や低温に悩まされていたのが嘘みたいだ。多少の向かい風など気にもならない。
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牧場が続く上問寒で、上幌延への道道645へ。
私の古い地形図には、この道道645は載っていない。道道785の問寒別〜北進と同じく、確か以前のツーリングマップルにも載っていなかったように思う。
道道785も南幌延も基本的にあまり人口の多い場所ではなく、一般的にはあまり通る必然性は少ないと思われる道だ。今日の私の訪問目的について言えば、道北の未済経路消化が大きな目的だ。
標高30m程の分岐から230mちょっとの峠へは、低山を巻いてゆく比較的開けた登りが続く。
道幅は広く、掘り割りや法面の形状は安定していて、道全体に近年新規に山に通して開通した道らしさが一杯だ。
ただ周囲の茂みが密林と呼んでいいような深い森なのは、道北の低山毎度のパターンだ。そして毎年、宗谷本線沿いが曇りでも、こういう低山にはべっとり雨雲が溜まっているという光景に、私は出会っている。
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今日は雲は低くても雲が動いていて、その色も眩しく、路面には日差しが照りつけてやや暑い。峠まで標高差200mを甘く見ていたら、登りは意外に長く感じられた。
峠の向こうもやはり密林の新道だった。
下りきると低山に挟まれた狭めの谷間で、集落はおろか民家も無い無人の牧草地だけがしばらく続いた。
峠区間が開通する以前から谷間には牧草地のための道が通っていたようで、いつの間にか道道645は真新し目の今風の表情から、適度に枯れたごく普通の舗装道に変わっていた。ただ、あまり広くない谷間と道幅のせいか、何とは無しに漂うワイルドなニュアンスに、何だか不安にさせられた。
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狭い牧草地の脇で、地図を確認するために脚を停めてみる。さっき上問寒で感じた向かい風は、道の向きが変わって追い風気味に変わっていた。やや強い風に乗って、次から次へとどんどん雲が動き、全体的に天気は晴れに向かっていた。
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クロワッサンを食べていると、この物寂しい雰囲気の道に、意外にも時々車が通る。それも明らかに知駒峠より車が多い。上問寒の牧場農家の方は、最寄りの市街地である幌延へ出るのに、この道を使うのが一番便利なのかもしれない。
前方の谷間が開けてやっと民家が登場し、14:10、上幌延着。
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ここで近年道北での私的幹線となっている道道256に合流。道道645を通りながら、こんな道、道道256のどこから分岐してたのかなと思っていた。今まで全く意識していなかっただけあって、道道256から眺める上問寒への分岐は、やはりかなりさりげないものだった。
いよいよここからサロベツ原野東端、道の周囲が一気にサロベツ原野側に拡がった。
今まで追い風方向だった風が変わった横風の中、幌延に向かう間に空は更に晴れ、日差しがじりじり熱いほどになった。明るく眩しい午後の日差しは風景をとんでもなく高コントラストに、鮮やかに変えていた。
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14:45、幌延着。
町手前のいつものセイコーマートで小休止とする。Hotchefでは豚丼を入手できた。今年は入ったセイコーマートで豚丼を仕入れることができる機会が多い。他にもトウキビにアイスを、一気に腹に押し込んでおく。ここまで食料は足りていたし、別に飢えているわけではない。でもいいのだ、ここまで通ってきた峠は標高500m未満に300m未満、ここらで一杯食べておくのに何の問題も無い。
次から次へとむしゃむしゃ食べる間に、遂に空から完全に雲が消えた。傾いて赤みを帯び始め、それでも眩しく強い日差しが、風景全体を更に印象的に、鮮やかにしていた。15時、天塩へ続くサロベツ原野を前にして、天気予報通りの展開となっていた。
15:20、幌延発。
この時間にして、もう天塩まで30kmも無い。ちょっと楽をしすぎかなと思ったが、それは間違いだった。
今回の北海道で初めての、そしてかなり強烈な晴天の下、夕方の風に揺れるサロベツ原野の草原まっただ中でしばしば脚が停まり、写真を撮ると更に時間が経ち、時間の経過に対して全く進まない行程となってしまったのだ。
日差しは赤くなり始めたものの、澄んだ空から照りつけていて、焼き付けられそうな程に強い。日差しに照りつけられた草の緑は、どちらを向いても鮮やかに輝いていた。空の色も鮮やかで、影は長くなり始め、山影が青く濃く変わり始めていた。
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いつの間にか北東方面には、草原の向こうに利尻山が大きく現れていた。思えば利尻とサロベツ原野のため(だけじゃないが)に、道北まで2kg近くある望遠レンズを持ってきたのだ。
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開陽台では夢破れた気になったものの、旅程も7日目にしてようやく思いが遂げられたという気になった。
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まだ日本海沿岸に達していないのに、この時点で既に、天塩到着はあまり遅くならないようにしよう、という気になってきた。それでも風は強い追い風気味で、走っている間は結構快調だった。
オトンルイでいよいよ日本海海岸、ますます景色が開ける道道106へ。
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日本海の海岸に続く1本道が有名な道道106。そしてオトンルイから天塩には、道道106沿いに風力発電の巨大な風車が3.1kmに渡り28基も並ぶオトンルイ風力発電所がある。
視界の彼方へ一直線に続く道と陸地の緑、風車と羽幌方面の山々の淡いシルエット、眩しい日差しに濃紺の日本海。陸地側の柵や電線の具合を見ながら景色がすっきり通る場所で脚を停め、海側の茂みが低くなって日本海と利尻が見える所でまた脚を停めた。道の方向が変わって、風は向かい風気味の横風でややしんどい。でもそれも脚を停めて景色を眺める口実にした。
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もうあと20km程度で天塩の宿。オトンルイ発電所の南端から天塩手前の天塩大橋はすぐだったはず。
夕方の天塩川は何日か続いた雨のせいか、満水でたぷんたぷん。天塩大橋の真上でまた脚が停まる。
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天塩市街まではすぐだと思っていたら、意外に距離があった。そして市街北側のやや小さいセイコーマートをあてにしていたら、何と空き家になっていた。でも、天塩にセイコーマートは少なくとももう1軒あることは知っていた。確か今日の宿の近くだったはず。
もうすっかり薄暗くなり始めた町を過ぎ、2009年に泊まった西澤旅館の前を過ぎ、今日の宿「天塩温泉夕映」が建つ市街南側へ。スマホで調べると、セイコーマートは国道232沿いだった。日本海沿岸には、天塩から北へ、稚内まで道道106が続き、天塩から南は留萌まで国道232となっている。道道106も国道232も地図上は日本海沿岸に一続きなのだが、やはり国道232は幅が広くなるのを始め、道路を構成する全ても路上の往来も、何かと物々しく、道の雰囲気が明らかにがらっと変わることが、国道232に移って50mも走らないうちによくわかる。やはり国道は基本的に通りたくないと思う。1990年代前半ぐらいまでは、まだまだ国道でものんびりした道が多かったように思う。国道でも喜んで走っていた。そんな感傷に浸っているより、今は早く温泉で汗を流したい。
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17:30、「天塩温泉夕映」着。
「天塩町民保養センター」と表示されている新しめの大きな温浴施設棟と、「林業研修センター」と表示されているやや古めの宿泊棟からなる宿泊施設だ。温浴施設棟にフロントがあり、受付の後は宿泊棟まで建物の中を少し歩くことになるのは、毎回この宿でややかったるさを感じさせる点だ。また、私の部屋は片側窓で換気があまりよくない構造で、窓を網戸に変えようとして、かなり大きめのマイマイガ♀が部屋内の窓枠に停まっていることに気が付いた。恐らく夜中まで暑くて、窓を開けっぱなしにしたお客さんがいたのだろう。或いはやや建て付けが悪く隙間がある網戸から潜り込んだのかもしれない。他に吸血昆虫は入ってはいないようではあったものの、到着早々やや閉口した。
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しかし、その窓の外、建物裏手間近には日本海が拡がっている。しかも時刻は夕方。刻一刻夕陽が沈み、水平線のオレンジ色が濃くなってゆく。この眺めで、全ては帳消しだ。
こんなもの、狙って訪れれば眺められるというものではない。更に夕食はやはり日本海側に面した食堂で、オレンジ色から次第に藍色、暗闇へ変わってゆく空を眺めながら食べることができた。
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明日も天塩〜サロベツは晴れらしい。一方、オホーツク側は一転して終日曇りの予報だ。これだけ日本海側が晴れて気温が上がっているのだから、あまり極端な低温にはならないとも思うが、いやいやいや道北も最北部、雪以外ならどんな天気でもおかしくない。
日本海側が晴れでオホーツク海が曇りなら、どこかにその境があるのだろう。それは宗谷丘陵から小石峠、浜頓別・豊富町界へ続く稜線ではないかと思われる。ならば明日は、北上して宗谷湾まで出てオホーツク海側へ折り返すコースから、どちらかと言えば午前中日本海側での行動に重点を置いたコースに切り替える方がいいのかもしれない。ということはほぼ自動的に、サロベツ原野や内陸の道道121周辺での、未済経路裏道潰しコースということになる。
まあまた写真でも撮ればいいのかもしれない。とにかく1日行動できて、夕方に満足していればそれでいいのである。旅なのだから。
記 2017/12/6
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