始発の上越新幹線が大清水トンネルを抜けると、越後湯沢の山々はすっかり色付いて鮮やかだ。しかし、夕べまで主に太平洋側で降っていた雨が山間では残っているのか、まだ谷間にはこってりと綿飴のように雲が溜まっている。
浦佐でもまだ雲が厚く低い。魚沼丘陵の山々にも赤や黄色の木が目立ち始めていて、紅葉的には申し分ないと言える。こうなると心配なのは山奥の天気だけだ。目的地を魚沼丘陵〜頸城に変更するか、いっそ帰ってしまおうか。
悩みつつ新幹線を降りて上越線に乗り換えると、列車が小出に向かう短い間にその雲は切れ、その隙間から青空が見え始めていた。これなら天気予報通りだ。いけるかもしれない。
8:10、小出発。
いつものように小出の町中から湯ノ谷の山間に進むと、行く手の山間にはまだ低い雲が残っているが、魚沼の平地部の上空は少なくとも雲が切れていて、逆光がまぶしい。これならあと2時間、枝折峠を登る間に何とかなってくれるかもしれない。
8:45、みみずく広場通過。比較的順調だ。これならこの後そんなに写真にかまけさえしなければ、会津高原は17時半前の列車を狙えるだろう。
すぐ先の大湯で魚沼盆地から続いた谷間が終わり、辺りは一気に無人の谷間の森になった。森は杉が多いが、下草の茂みや広葉樹がすでに色付き始めている。
奥只見湖の手前に壁みたいに立ちはだかる枝折峠の山の手前、その山々に囲まれた湾のような裾野部分には、濃厚な杉林が拡がっている。この辺りから道は急に細くなり、鬱蒼とした杉林の中を粛々と抜けて行く。
途中には秘湯「駒ノ湯」への分岐もある。かつて友人たちとのドライブで訪れたことはあるが、まだ自転車では訪れたことが無い。
まもなくその杉林が切れ、枝折峠へ続く広葉樹の斜面の登りが始まった。
何回かのつづら折れで離陸するように高度を上げると、すぐに辺りが開け、今までの杉林、そして杉林を取り囲む山々も見渡せるようになった。
一昨年と同じく、山肌の紅葉が紅葉が凄い。今年の紅葉はニュースなどで例年比1週間遅れと報じられていたはずだが、いやいや、これはなかなかのものである。
コンクリート補強の岩肌に取り付く細道には、今回はいつにも増して車とバイクが多い。実はさっきの杉林から、時間別で自動車・バイクが片側通行になっているはずだが、明らかに逆走してくる車もいる。まあそういう車を運転しているのは、地元長岡ナンバー、穏やかそうな老夫婦が多い。まあ通行止めに関しては、私もあまり大きなことは言えないことを思い出す。
それにしてもこの紅葉ぶり。今はまだ暗い雲の下だが、これがあと1時間もすると晴れてしまうのだ。いや、晴れて欲しいのだが、今日はあまり写真を撮らずにぱぱっと進まないといけないのだ。この鮮やかさ、ちょっと先行きが危ぶまれる。固い意志をもって進まないと。
そう思っているときに限り、登るに連れて垂れ込んでいた稜線辺りの雲が次第にちぎれて縮み、青空が見え、日差しが現れてきた。
日差しが当たると、眼下にすとんと下って行く谷間の見晴らしが、益々引き立つ。その谷間から辺りの山肌、まだ上半身に雲を纏っている駒ガ岳の裾まで、とにかく一面真っ赤っかの紅葉の世界、いつもながら凄い見晴らしである。
山腹から稜線近くに取り付く、折り返しのスノーシェッドは9:30通過。ここからいつも40〜50分ぐらい掛かっていたはずだが、今日も枝折峠9時台通過の壁は破れないのかもしれない。まあ、この先更に斜度が急になるし、枝折峠を越えてからの行程が長いのだ。どっちにしてもこれだけの坂、無理せず行けるペースで登るしかない。
その記憶通りに、稜線近くに続く道には、時々前輪が浮きそうな激坂が現れる。これも記憶通りそう長くは続かないことを期待して、蛇行でも何でも駆使してとにかくこなすしかない。
峠が遠くに見え始めてきた辺りで、ついに10時を過ぎてしまった。タイミング良く下草が切れた道ばたから、眼下に拡がる裾野の谷間、絨毯みたいに拡がった紅葉、手前の山肌に続く今まで通ってきたコンクリート補強斜面、そして遠く小出の町に下って行く湯ノ谷の谷間が現れた。焦っても枝折峠着は10時オーバーなのだ、ついつい足を停めてしまう。まあこの絶景なら仕方ないだろう。
再び行く手を見上げると、だいぶ高くなった雲はまだ峠へ続く稜線のすぐ上に残っていたが、稜線の向こう側の奥只見湖側が何だか明るく見える。
10:10、枝折峠着。さすがに峠道に車が多かっただけあって、峠には紅葉見物の観光客がうじゃうじゃしている。「お、自転車来たね」等という声も聞こえるが、足を停めると話しかけられて面倒臭いので、そそくさと通過。
記 2007/10/28