(以下#6)
144km
恋ノ岐を渡ると、またもや道は標高差140mの鷹ノ巣越えへと向かって行く。
さっきあっち側から見下ろした道だけあり、こっちからも対岸が、入り組んで切り立った紅葉の山肌と、そこに張り付いた道がよく見える。
最高地点をくるっと回り込むと、例によって道は一目散に湖面に降りて行く。
正午を過ぎてとたんに赤みを帯び始める日差しがまぶしく、ススキの穂も白く輝いている。
12:55、鷹の巣通過。いよいよ奥只見湖岸が終わり、ここから尾瀬へ遡る只見川の谷間の遡上となる。
狭くなった谷間はやはり今までと同じく紅葉真っ盛り。
広葉樹林と茂み、時々山小屋と農家、森が断続して現れる。いつも思うが、北海道の山間の景色によく似ている雰囲気だ。
ここまでの坂で視覚は狂ってしまっていて、道は平地にしか見えないが、ここから県境までの10kmで200m標高差を稼ぐだけあり、あまりペースは上がらない。
まあ次々現れる景色はいかにも山間の里らしく、のんびりと登り続けるのが何とも楽しい。
13:25、県境着。
ここから福島県南会津郡檜枝岐村となる。かつて、公共交通機関だけを使うと、日本で東京から一番時間が掛かったという自治体の檜枝岐村、その一番奥である。県境となっている目の前の川は只見川。尾瀬ヶ原から福島県へ流れ出し、奥只見湖、その先の道すら無い狭い山奥を経て、田子倉ダム、只見の谷、そして阿賀野川から日本海へと長い長い旅を続ける川だ。尾瀬から流れてくるだけあり、この川にはいつもここでしか見られない何とも下界とは隔絶された厳しい清らかな雰囲気が漂っていて、見所の多いこの国道352の中でも印象深い場所である。
奥只見湖岸の紅葉のあまりの素晴らしさに、さっきからここで折り返すとどうなるかという脳内シミュレーションを行っていた。小出からここまで5時間半。恋ノ岐越、枝折峠をそれぞれもう1回こなさないといけないことになるが、枝折峠については小出側からの登りと下りの違いがある。まあ5時間もあれば十分だろう。しかし、それでも小出着は18時半ごろ。枝折峠の下りは真っ暗になってしまう。それなら、会津高原に向かう方がいいのではないか。つまり、ここまで来てしまったら奥まで来すぎて中央突破以外無い、ということなのだ。腹を決めないといけない。
記 2007/10/28