日進
名寄
下川
西興部
札久留
濁川
中立牛
滝上
丸瀬布
湯の山峠
大和
鹿の子温泉
鹿の子温泉→(道道88)厚和 |
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今日も窓の外は曇り空。雨は降っていないようなので、陽が高くなると少しはましな天気になるだろう。
宿の小汚くあやしいモルタルの壁には、夜に灯り目がけて集まった色々な虫が張り付いていた。大きなガ、ヘビトンボなどと言う珍しい虫にも、何か山深さとあやしさを感じさせる。
荷物を積んで出発前の点検を行う。ブレーキをめいっぱい握ってOK、タイヤ空気圧を指で摘んでOK。と、ふと目をやったインフレータが無くなっているのを発見。やばい。今日はダート峠が2つある。1つは旭峠、標高差500m以上25km。もう1つは一昨年通行止めだった丸立峠、標高差300mぐらい11kmと、2つともパンクはしやすいと言える。空気を入れられないので、スケジュール管理上命取りになる。
どうしようかちょっと悩んだが、今日のコースには、峠さえ越せば丸瀬布・滝上と比較的大きめの町がある。スケジュールは滅茶苦茶になるが、英仏アダプターは持ってきているので、最悪そこで空気は入るだろう。問題はスケジュールがどれくらい狂うかだが…
次にどこで無くしたのかだ。思えば昨日の朝は確かに空気を入れたように思った。ということは、のんき舎出発まで空気入れはあったということだ。津別峠展望台では無くすはずがない、怪しいのは津別だ。そう、あのぼうっとしていたときに持っていかれてしまったのではないか。
等と思いは取り留めないが、とりあえず6:15、鹿の子温泉発。
ちなみに、後で写真を見たら、上里小学校の段階で既にインフレータが無い。「のんき舎」にも無いとのことなので、美留和駅があやしい。確かにのんき舎出発時に空気を入れたように思ったのだが…
宿近くの分岐から道道88に入ると、集落も牧草地も無い狭い谷間、森の中にだらだら直登が続き、最後にきりきりっと登ると一発目が終了。標高差約320m。あまり大したことはない峠だったが、登りより長いだらだら下りでは、なだらかな谷間一杯のカラマツの大森林が続き、見事だった。
唐突に放り出される感じで、1991年に通って以来の国道39号に合流し、ほんの少し下って、また7:15、温根湯発。
いよいよ今日最大のダート峠越え、旭峠である。標高830m、標高差約500mにダート25km。この後去年通った上紋峠へ行くとしても、最高地点の標高はこっちの方が上だ。
畑の中の細道を登り、舗装区間がちょっと続いた後、キャンプ場の向こうからおもむろに森とダートが始まる。ちょっと緊張しながら熊除けの鈴を装着して、ダートに突入。まだ7時台、のんびり行こう。
薄暗く静かな森の中、しばらく沢と一緒に登る道が続く。勾配は緩く、ダートも砂利が少ないので、走りやすい道だ。
標高差と距離だけ考えても斜度はこんなもんじゃない。まだかまだかと待っていると、突然激坂が始まった。壁のような坂に見えたので、あまり頑張らずに早々と押しに切り替えて進んだ。しばらく押したり乗ったりの道が続き、ぐいぐい高度が上がり、何度か道の向きが変わって、谷から山腹へ進んだ。沢の音が消え、道の脇に岩が目立つようになり、木々が開けると、既に周りの山々を山々を見渡す高さにいた。
最後は地図通りに山肌をなぞるように進み、8:45、湯の山峠着。地図では旭峠という名前だったはずだがと思うが、看板は湯の山峠である。近くの国道333に旭トンネルというのがあり、そこと区別するためにこっちの名前を変えたのだろう。
ちょっとおにぎり休憩後、木々がまばらで下草にクマザサの茂る中を、緩やかな下りで丸瀬布側へ下り始める。今まで登ってきた温根湯側と違い、緩やかな長い長い斜面の開けた明るい林道だ。なだらかな斜面に拡がった見渡すカラマツや広葉樹の大森林が見事だ。でも、クマザサの密集した下草は、何か熊が出てきそうで怖い。
とりあえずダートが終わり道が舗装になっても、まだ下る。高いカラマツの間を一直線に下ると、やがて唐突に牧草地が拡がり、牧場農家が現れ、やがて小さな集落の断続する道になった。
道の脇に、ちょっとした木立と道の駅のような賑わいが見えてきた。近づいてみると、「丸瀬布いこいの森」だった。この施設には旧丸瀬布森林鉄道?の車両が動態保存してあり、雨宮21号という機関車は、丸瀬布町のカントリーサインにまでなっている。のみならず、80年代後半から10年以上、道内時刻表の表紙はこの雨宮21号の走行写真だった。どんな場所かと思っていたが、こんな所なのか。芝に木立の中、敷地内周回の短い運転線をSLが走ると、なかなか絵になりそうな風景だとは思った。が、今日は先を急ぐことにする。
ようやく開けた谷間に出て、9:55、丸瀬布着。長距離の緩い下りとはいえ、1時間以上も下っていたことになる。そろそろ10時、暑くなってきていた。
国道38号の脇にセイコーマートを見つけて、補給に立ち寄る。丸瀬布ならインフレータの置いてある自転車屋さんがあるかもしれない。本日最大規模のダートは何とかパンク無しにクリアできたが、まだもう1ヶ所、丸立峠が残っている。それにパンクするのはダートだけではない。とにかく、この先名寄までパンクしないと考える方が不自然なのだ。そこでセイコーマートで自転車屋さんの場所を聞いてみた。
意外と近くだったその自転車屋さんにはロードレーサーが吊ってあり、ポジション台(?)まで置かれていたが、たまたまインフレータの在庫は無いとのことだった。まあ間が悪いときはこんなもんだ。仕方なく次の丸立峠に向かうことにする。
10:15、丸瀬布発。
オホーツク海沿いの国道を使わずに道北中央部から道東へ向かう場合に、滝上・丸瀬布・留辺蘂とショートカットする丸立峠や前述の湯の山峠は、位置として言えばなかなか悪くない場所にあると言える。特に丸立峠は大して高い峠ではない。
そのため、1999年からこの丸立峠アタックを狙っていたのだが、1999年は軽い熱中症のため断念、2000年・2001年はそれぞれ滝上・遠軽で崩落で通行止めとのことで、ずっと懸案だったのだ。今年は崩落の話からもうけっこう経っているので、いくら何でも開通しているだろうという確信があった。それに今年はいつもより少しは身軽である。きっと何とかなるだろう、熊さえいなければ。
丸瀬布の町外れ、地図を見ながら特に道道標識もない細い道へ入ると、すぐに道は拡がって道道らしくなった。しばらく狭くも広くもない谷間に舗装道路が続くのはツーリングマップル通りだ。民家のあるうちにと思い、2軒ほどの農家の方に「丸立峠は歩けば通行可能か」を尋ねたが、2軒ともわからないとのこと。ただ、ダート手前にはゲートがあり、そのゲートは閉まっているらしい。
牧場の奥、川に沿った道の奥が森の中の道になり、やがて閉じたゲートが現れた。しかし、ゲートの脇はけっこう隙間が空いていて、オートバイの車輪の真新しい痕跡が明らかに確認できた。いつものパターンである。最悪でも歩けば行けそうだ。
森の中のダートを奥に進むと、ツーリングマップルに出ているウォッシュボードの涸れたっぽいのがあり、だんだん坂が急になった。道には「路肩弱し」の看板があちこちに出ていて、路面も何と無くしっとりしているのが不安ではあった。また、道の脇の深い森、すぐ近くの沢、背の高い熊笹が、いかにも熊が出そうで、これもちょっと心配だ。
しかし、さっきの湯の山峠ほど坂道は長くもなく急でもなく、意外とあっけなく11:25、丸立峠着。白樺の木立、深い熊笹に囲まれた峠には、カーブミラーと「道道306」の標識が立っていた。山深さとこういう道道っぽい雰囲気がアンバランスで、涸れた風情は親しみを感じさせる。
路上に大きく張り出した蕗の葉の中を下る。茂みが高いのと、なぜかこっち側の道にはタイヤの跡が時々消えていて、またもや熊が出ないか不安な気分だった。ただ、ちょうど轍の部分には草が生えていないので、毎日1回ぐらいは誰か通るのかもしれない。
やがて左側に聞こえていた沢の音がどんどん下に落ちてゆき、道は深い渓谷に張り付いた道になった。木立の向こうに薄暗く深い谷が見え隠れしている。なかなか山深い道だ。道の所々にはコンクリートが真新しい崩落補修跡が見られた。まんざら捨てられた道という訳でもなさそうである。
長い下りの後、舗装区間が始まっても、道はまだしばらく下り続けた。高いカラマツの木立の間の中の1本道・牧草地・畑と過ぎ、中立牛で道道137に合流し、札中トンネルを登って下って、唐突に山の裏から濁川の町が現れた。
13:15、滝上着。
自転車屋さんを捜すが、滝上でもインフレータが買えなかった。滝上から上紋峠・名寄を経由して美深に向かった去年のツーレポによると、滝上着13:50で、コンビニ休憩後出発・美深着20:50だった。今年は荷物が軽いので、上紋峠を経由しても名寄着はもう少し早いだろうとは思う。しかし、明日のピヤシリ林道や明後日の道北スーパー林道を考えると、どうしても今日どこかでインフレータを入手する必要がある。それには名寄がベストだろう。できれば18:00前に名寄には着きたいところだ。
他にも去年行ったとか上紋峠方面の空低くに溜まっている雲とか、いろいろと言い訳がましい理由を付けて、今回は長距離の上紋峠コースを止め、ちょい峠3連発の札久留峠・天北峠経由で名寄へ向かうことにした。
13:50、滝上発。青々と勢い良く育った札久留の畑と背景の山を眺めながら、上札久留で道道137に入る。いつ来ても、この札久留周辺の風景は静かな美しさがある。まだかまだかと地図を眺めながら札久留峠を越え、藻興部川に沿った牧草地の下り基調アップダウンを抜け、もう一発瀬戸牛峠を越えて、15:10、西興部着。
セイコーマートで休憩後、15:30、西興部発。
国道239は交通量の少ない静かな道だ。1985年に列車の写真を撮りに訪れた奥興部周辺の丘陵風景が懐かしい。奥興部からひょいっとほんの少し登り、天北峠を越えると、あとは名寄まではほとんど下りだ。
16:15、下川発。夕陽の盆地をさらに急ぎ、17:10、名寄着。
思えば釧路以降そう大きい町を経由していないので、道北最大の都市、名寄の町の広がりは、いかにも大きく見える。何しろ実際にけっこう大きな町なので、とりあえず駅前の交番で教わった自転車屋さん、「斉藤サイクルスポーツ」に向かった。
自転車を停めて店内を覗くと、おお!奥の方に飾られた古めのTA・カンパ、海外チェーンホイール、手前にはダイヤコンペの古いクイック付レバーの付いたマースバーが。この店だったらいけると直感した。
買い出し屋と思われたのか、結局フレームポンプは入手できなかったが、小型のゼファール樹脂ポンプを入手。これで明日からのピヤシリ・道北スーパー林道Wアタックも一安心だ。
駅から徒歩5分程度の近いお店なので、名寄トラブルの際には覚えておきたいお店である。
名寄ではPHSが使えるので、ちょちょっと通信したりしていると、驚く程速く時間が過ぎてしまう。18:10、名寄発。自転車屋さんに寄ったりコンビニ補給したり、結局1時間もいたことになる。早く着けて良かったと思った。
名寄からは道に迷ってしまい、一度3kmほど離れた山の中のなよろスキー場まで行ってしまったりして、19:00、なよろサンピラーYH着。
今年開業の新しいYHは、なかなか広くて小綺麗だ。最近はこういうYHが増えたが、何でもJYHの規準がけっこう厳しいとのこと。
見た感じ、YHのペアレントさんは私と同い年ぐらいの方だ。丸立峠を通ってきたと聞いて色々質問してくれる、なかなかマニアックなライダーのようだ。それではと思ってピヤシリ林道と道北スーパー林道について聞いてみた。基本的に両方ともそう問題の無い、比較的通りやすいダートとのこと。ただ、
「道北スーパー林道の歌登側、あっちはねえ…、熊が本当に出てきそうなんだよねえ。会ったことはないんだけど」
などとちょっと恐ろしい話も聞けた。
記 2002.8/22
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Last Update 2003.12/31