四国Tour23#6
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十川の先で対岸に渡る時にも、大正では十川までには何か目新しいようなものを食べられるかもしれないと漠然と思っていたことを思い出した。しかしこのまま国道381から対岸の細道へ向かうことに何の迷いも無い。食糧は持ってるしさしあたって何か具体的に特に食べたいようなイメージは無い。それに徹底的に静かな道を通りたくて来ているのだ。今日の行程には、集落で見かける道端の自販機が合っている。
今のところどこかに立ち寄る気は自分には無いんだろうな。次の細道に向かいたい気の方が強いということでもあるな。等と他人事のように思うほど、今日は気楽にのんびり進めている。
14:50、江川崎通過。というよりこちらは少し手前の中半家で江川崎の対岸に渡っていて、森の中の細道を通っている。対岸の江川崎はいつのまにか過ぎちゃった、という方が正しい。等と思っていると森が切れ、ボートのレストハウスのような施設が現れた。対岸から国道441が渡ってくる立派な橋もある。2001年にこの橋を渡り、向こう岸に渡ったことは憶えている。
江川崎過ぎたな、と思ったところで思い出した。お昼に電話をくれと、今日の宿の女将さんに言われていたのだ。もう間もなく宿到着だが、宿に電話しておく。
用井で支流の藤の川川の狭い谷間に入り、森の中を少し遡る。午後ともなると、やはり登りで息が切れる。早く着けて良かった。
道から川原際の杉の森に急降下し、15:05、用井「寿荘」着。
インターネットで見て期待したとおりの、大変渋い佇まいの木造平屋建ての宿である。到着して軒下に自転車を停めて荷物を降ろしていると、母屋から女将さんが現れて部屋に案内してくださった。本当は1人部屋のはずだったのが、昨日まで連泊の筈だったお客さんが連休後半の混雑に備え今日の宿泊をキャンセルして帰ってしまったため、私は振替で2人部屋を使って良いとのこと。何て勿体無く有り難いことだ、と思いながら一人で広々とした部屋を使わせて頂いた。その後17時頃、別のお客さん2名が飛び込みで泊まることになり、私が泊まるはずだった1人部屋で泊まられたらしい。何だか申し訳ないが、その時既に私はお風呂に入った後で、布団も掛けずに居眠りしていたのであった。
夕食は18時から。川原側の桟敷であぐらをかき、夕方の藤の川川を眺め、何とも野趣溢れる素敵な食事だ。これもインターネット情報で知っていて、楽しみにしていた。食事はあめごの塩焼きや山菜天ぷら、ウドの煮付けなど山の物が一杯だった。中でも絶品だったのは川海老塩焼き。揚げたのかと思うほど脂が乗っててカリカリだったが、女将さんに尋ねると炙っただけとのこと。こんなに大きく香り高く脂の乗った川海老は食べたことが無い。もちろん量も一杯で、大変美味しい夕食であった。渋い宿に美味しい食事。良い旅だ。
記 2023/6/8