北海道Tour23#9
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12:35、志美宇丹発。
一旦谷間が狭くなり、乙忠部への分岐を過ぎて再び盆地が拡がって上徳志別へ。
拡がる牧草地を囲む山々の伸びやかな風景が、今日は恨めしいほど暑い。しかし雲はますます増え、直射日光はほぼ遮られている。大曲までの山間谷間区間が近いからだろう。このまま山中に入れば少しは何とかなるだろう。なってほしい。
大曲への登りに入ると、志美宇丹峠と同じく木陰が有り難い。でも、お昼の陽差しは高いので、一昨日より木陰の部分が、期待より明らかに少なくなっていることがよくわかってしまう。いくら何でも、もう少し木陰が欲しい。
いくら何でもここなら涼しいだろうと思いながら脚を進め、やっと辿り着いた天の川トンネル。入った途端、果たして想像以上の涼しさだ。冷蔵庫に頭を突っ込んだように、脳幹を一気に冷やしてくれた。それぐらい暑かったんだなあ、などとトンネルの中で他人事の様にここまでの暑さを思い出す。後で思い出しても、この涼しさで今日は助かったと思う。仁宇布まで辿り着けないということは無いにしても、気分ががらっと変わった、山の神様からの贈り物だった。
そして、トンネルを出ると空に雲が増え、天気は曇り基調に変わり始めた。風も強くなってきて、向かい風は追い風に変わったり、何だか気流にもみくちゃにされそうなほどの乱気流に変わったりした。
しかし、風は森を抜けてきているだけあって明らかに涼しく、照り返しも無くなったことで、辺りの気温は確実に下がって更に助かった。山深いこの道ならではの場面転換なのだった。
ここまで来て雨さえ降ってなければ、あとは西尾峠まで登っていればいい。長い登りではあるものの緩々のたかだか180m。熊が出ないことを祈り、路上でもはや逃げすらしない物欲し顔のキタキツネを無視し、淡々と脚を進めてゆく。
谷底から道が離陸し緩斜面を直登、欺し峠はもうGPSの標高でわかっている。
峠というより鞍部の背中を乗り越えると、仁宇布の盆地の上空に雲が溜まっているのが見えた。仁宇布は薄暗い曇りに違いない。
想像通りに、仁宇布の牧草地はもうすっかり低い雲が空を覆っていた。2日前に晴れの風景をたっぷり眺めた後でこういう状況だと、あまり写真を撮る気にならない。
一目散に交差点へ降りてしまう。一目散なつもりでも、向かい風というより乱気流のように滅茶苦茶に吹き荒れる強風でハンドルを取られそうだ。
それに交差点から先は、いかんせん登り基調。のろのろと暴風の牧草地を登り返してゆく。
15:05、仁宇布ファームイントント着。到着してみればほぼ15時。至って好調な行程だったのかもしれない、などとすら思う。いや、あんなに暑くて泣きそうになってたんだけどね。
この時点で吹き荒れていた強風は、夕方から嵐に変わった。吹き荒れる風は木々を振り回すように揺らし、引きちぎられた木の葉が空を飛び回り、あちこちに散乱した。
夕食時、手摺に立てかけておいた自転車ががたんと倒れたところで、シェフ佐藤さんが自転車を食堂に入れてくださった。その時は恐縮していたが、間もなく大雨が降り始めた。或いは仁宇布ではよくある展開なのかもしれない。本当に助かった。
明日の天気予報は6時まで雨、12時まで曇りでその後旭川盆地は晴れ。早朝に雨は残りそうだが、多分松山峠までだ。その後は問題無くなるだろうから、多少雨っぽくても行ってしまえ。久しぶりの美瑛自走到達が可能だろう。
しかしその後真夜中、天気はますます荒れたようだった。凄い風と雨の音で何度か目が覚めた。その度に寝ぼけつつ思った。いまは布団の中、自転車も屋内だし、とりあえず屋根は飛ばされそうだがまあ百戦錬磨のファームイントント、飛ばされやしないだろう。心配が無いのは大変有り難いことだ。明日のことは明日考えよう、と。
この段階では、まさかこの嵐が翌日の行程に大きく影響するとは思っていなかった。
記 2024/1/28
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