北海道Tour23#9
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4時に起き、すぐに天気予報を確認。昨夜と変わらず、5〜6時降水確率60〜70%、7時以降20%に下がってそれ以降は晴れだ。SCWでも、その時間にいるべき辺りで7時には雨が上がるようだ。やはり2004年以来のロクシナイ峠に向かった場合、その時間帯は雨だ。あちらに行くわけにはいかない。標高は低くても道北まっただ中の谷間、そしてマイナー道道である。熊の心配が怖い、というより危険がアブナイ。というわけでやや受動的に、今日のコースは2014年以来の日本海沿岸と道道119経由に決定だ。
窓の外はまだ大雨だ。序盤、海岸沿いの静かな細道、更岸開拓農道はダートがあるので雨だとパス、国道232一択ということになるんだろうな。多少車はいても、その方が今日は都合が良い。とはいえやはり車に水を飛ばされて頭から濡らされるのは勘弁してほしい。とにかく雨が上がることに全精神力と念力とお祈り力を集中させておく。
晴れた後は至るところで最高30℃とか31℃ぐらいに上がるようだ。これはこれで、開けた牧草地での悲惨な事態が予想される。毎日の事だが、もう少し天気の振れ幅が少なくなってほしい。希望の他にできることは、事前の水準備と、早め早めの進行だ。
5:10、天塩温泉夕映発。
どうせ途中で国道232に移ることは予想されていても、最初は宿の前から続く開拓農道町道浜更岸線を行ってみる。更岸川を渡ってもしばらく町道を進んではいた。しかしダートが見え始めた段階で諦め、早々に国道232へ。
雲は未だ低く時刻にしちゃあ辺りはかなり暗い。そして天塩から離れると共に雨は強まり、4時頃見かけたような本降りに変わった。4時にこの雨を眺めているので、特に絶望感とか無力感とかは無く、やっぱりそうなのかという気しかない。
雨中の路上で、淡々とした気分になって脚を回し続け、白黒みたいな景色が過ぎてゆくのを眺めていた。それでも5時半を過ぎたら雨は弱まるだろう。なってほしいと期待はしていた。
5時半にはまだ雨は弱まることはなかった。天気予報が遅れるのもごく普通の現象だから、それ自体にあまり驚きとか疑問とか焦りは無い。7時までこんな感じなのかもしれない、とも思っていた。
しかし5時50分を過ぎたぐらいに、突如前方南の雲が彼方から切れ始めた。空の色は明らかに雲と違う。あれは晴れた朝の空だ。まだその辺りは遠いように見えるものの、あの晴れがこの後一気に北上して天気が変わるんだろうなと思った。
やっと、夜が明けたという気分になった。そして、ここまでいかに暗い雨の中を黙々淡々と進んできたかを改めて思い出させられた。どういう朝でも、やはり朝は人間の希望なのだとも思った。
6:00、啓明で道道119へ。交差点で急に弱まった雨は、内陸に向かい始めるとすっと収まってしまった。さっきまで国道232を南下していたのが今は道道119で東に向かっているため、その分南からやって来る晴れに近づく速度は遅くなっているはずだ。しかし晴れがこちらにやって来る速度は予想以上に速く、谷閧フ南側の山の上の厚くしつこそうな雲が一気に晴れた空に替わるのに、余り時間は掛からなかった。それとともに路面は急に乾き始めていた。スリップに少しは気を遣わないので助かる。
前回2014年も、道端の萬屋に自販機を見かけたで休憩したなと思っていた清川では、今回萬屋そのものが無くなっていたようだった。しかし、その先すぐ近くの住宅前に自販機を発見。まるで西部劇の牧場が無くなって、すぐ先に移っていた、そんな現象だ。こういう有り難い自販機には表敬訪問せねば。
コーヒーを飲む間、雨上がりっぽい風が吹き始めた。と思ったら空気がからっとした感触に変わり、出発してみるともう路面はすっかり乾いていたのだった。佐久間での軽いトンネル越えを前に、とりあえず雨は安心してもいいだろう。
清川の先から平地が無くなって屈曲し始める谷間に沿って、道道119は先に進んでゆく。
いつまでもあまり斜度が上がらないのは有り難く、あまり登った記憶も無いのでこんな感じで峠部分のトンネルをさらっと越えちゃうんだろうと思う。実は前回、トンネルがどんな感じだったかもあまり憶えていないのだ。
まだ時々水滴が空気中にぱらついているものの、空がこの時間の普通の明るさになり、青空も見えるようになり、時々陽差しが現れては失せるようになってきた。あとは道端に迫った茂みから熊が出てこなければいい。頼むぞ。
だいぶ進んでおもむろに斜度が上がり、谷底からの離陸が始まったと思ったら、すぐ峠部分の佐久越橋・咲花トンネルがカーブの向こうに現れた。そしてその少し前に突然、雲が一気に動いて空から消え、劇的に陽差しが照りつけ始めた。周囲の風景、森の、風景のニュアンスは一気に変わった。山深く、路上にまで押し寄せ人工物を潰してしまう茂み全体の生命の重苦しい圧迫感が、とたんに全部生き生きと上昇へ転じた。
早朝から真っ暗だったからそんなことを思うのかもしれない。でも、森のこういう変化は初めての経験じゃない。近頃は、これは葉緑素が日光で活発な状態になる現象なんじゃないか、などとすら思っている。
何はともあれ今は、緑も空も人工物も、色濃度と彩度が一気に上がった上に、さっきまで降っていた雨の水分に鋭い陽差しが反射して、風景全体を更に無数の細かいきらきらで彩っている。目がチカチカする程だ。これが夏の北海道だ、と思った。何度来ても驚きが感じられるのが北海道の凄いところであり、こういう風景の中に身を置けることは有り難いことだと思う。
しかし一方、路上の気温上昇も凄まじい。あっという間に暑さ、というより熱さを感じ始めた。まだ7時なのに。今日も気温がこんなもんじゃなく上がるんだろうなと覚悟した。まあ、まだ木陰は涼しいですから今のところは。木陰もそんなに涼しくなくなった時悩めばいい。だってそれ以外やりようがないじゃないか。水は十分に準備しておこう。
咲花トンネルの佐久側、下り区間は森みたいな茂みみたいな抑揚の無い無人の谷間で、記憶よりも意外な長さがあった。
とは言え周囲に牧草地が現れたと思ったら、もう国道40との合流点近くだった。
記 2024/1/28
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