北海道Tour23#8
2023/8/16(水)浜鬼志別→天塩-2

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 6:37、稚内行きバスで鬼志別BT発。
 鬼志別で空気中に水滴が時々感じられた位のどんより曇りは、バスがオホーツク海の海岸に降りてすぐ雨に変わった。雨は東浦へ向かう間に本降りから時々弱くなったものの、その先宗谷丘陵から宗谷岬、宗谷湾沿いを声問、そして稚内まで、概ねかなり強い勢いで降り続けた。昨夜の天気予報の段階で既に、輪行が可能なら輪行一択だったものの、輪行にしておいて良かったと心から思った。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 東浦の手前から少しずつ増えていた高校生が、稚内高校前で一気に降りた。車内が静かになってもう少しの間、バスは稚内市街を走り続け、8:24、稚内着。

 稚内駅が現代的な建物に建て替えられたことはだいぶ前から知っていた。私の卒論を指導して下さった先生が計画されたのことで、頂いた年賀状にその外観透視図が載っていたのだ。
 30年前、稚内駅前には道内の他の駅と同じように、学生ツーリストやフレームザックの旅行者の寝袋が競りのマグロみたいに並んでいた。また駅舎は古色蒼然(という記憶しか無い)とし、それらが一体となって最北端の駅としての個性と魅力を形作っていた。新しい稚内駅は打って変わってガラスカーテンウォールの外壁に白基調の内装が明るく開放感一杯だ。1〜3時間に1本ぐらいの列車だけのための施設ではなく、バスターミナル、道の駅機能も備えている。

 

 内部空間の仕掛け(としか言いようが無い)は素晴らしい。駅部分が建物の片側に集約され、待合室は建物高さを一杯使っている。一方セイコーマートまで備えた店舗部分がもう片側に集約されている。駅部分の改札は、三日月形のような建物の一番端(というか先端部)に置かれていて、改札で折り返して行き止まりのホーム先端へ向かう形だ。駅舎とホームとしてあまり類をみないレイアウトなのだが、これが大変機能的でわかりやすい。快適で現代的な待合室空間から、意外な動線により一気に意識が変わり、日本の鉄路最北端の駅である稚内駅ホームへと最北端を意識して見据えながら向かうことができるようになっているのだ。こんな駅の演出は初めて見る。
 建物は変わっても、待合室で見かける人々が、基本的には昔とあまり変わっていないのが懐かしい。中高年がペタペタのバックパックから食べかけのサンドイッチを取り出し、むしゃむしゃ食べていたりする。寝袋がマグロの競りみたいに転がっているようなことは無いものの、合宿っぽい学生グループは濡れた大きな荷物をかためて置いている。外国人旅行者が目立つのは、現代ならではだ。大声で騒いで透明傘を振り回し、スマホ写真を辺り構わず撮影し、雨の中船着き場の埠頭方面へ去って、また戻って来て大騒ぎしていた。

 斬新な駅施設と、やることは変わらない人々を眺めつつ、私はバッグ5つと共にベンチでおとなしくしていた。列車は10:28だから2時間待ちだ。ちなみにその次の普通列車は18:03、前の普通列車は5:21。特急まで含めると、やっと次のサロベツが13:01、前のが6:36ということになる。
 ふと自分は前の稚内駅に何年前に来たのかを思い出してみるものの、1997年に夜行の急行利尻で札幌から来たところから思い出せない。その後は駅前を通過したり、もしかしたら東京への寝台券を買いに来たかもしれない。何にしても歳取ったなあと思う。

 
発着地点 計画 実施
鬼志別発
 枝幸バス
稚内着
06:37
1便
08:26
06:37
1便
08:26
稚内発
 JR宗谷本線
豊富着
 
幌延着
10:28
4326D
11:17

11:34
10:28
4326D
11:58

12:21
豊富発
 沿岸バス
幌延発
 
 
てしお温泉夕映着
11:50
7便
12:20


12:50
 
 
12:30
タクシー

12:51

 10:28、普通列車で稚内を出発。住宅の裏手をすり抜け、南稚内を出発すると宗谷本線は丘陵に突入してゆく。どこへ行っても高低差20mぐらい丘と谷が延々と続く、自転車だとちょっとしんどいエリアである。でもキハ54の単行列車は、蒸し暑い車内にエンジン音と扇風機の音を響かせつつ、大雨の中丘を越え谷を越え快調に進んでいった。こちらも日本海と利尻とワンマン運転士さんの旅情溢れる車内アナウンス、抜海の旧駅舎や駅間の鬱蒼とした茂みをぼんやり眺め、淡々と過ぎてゆく各停の時間に身を任せた気になっていた。過去の訪問が暑かったとか急に雨が降ってきたとか強風に悩まされたとか、早く昼飯が食いたい、等と考えつつ。
 上勇知だったか、駅間で列車は急にゆっくり減速して停まってしまった。と同時に「豪雨のためこの先線路点検中、連絡があるまで停車」と車内放送が。聞いてないよ。まあでも、土砂崩落じゃなくて点検ならそれほど時間は掛からないだろう、とこの時は思っていた。
 10分ぐらい後、列車は再びゆっくり動き始めた。しかし動き出した列車の速度は、10km/hかそこらから全然上がらない。丘陵の茂みの中でまた停まり、ゆっくり動き始めて、の煮え切らない状態をしばらく繰り返していた。その運転状況からして、崩落はしていないことが想像できた。崩落なら即運休、次の駅で運転打ち切りとかの案内があるだろう。

 この後、豊富で宿の前に停まる沿岸バス天塩行に乗り換える予定になっている。列車の本来の時刻は豊富11:17着でバス乗車は11:55分、38分待ち。このバスへの乗り換えは、実は豊富だけじゃなくてその先の幌延でも可能だ。幌延には11:34着でバスは12:22分、48分待ちとなる。列車の方がバスより速いのだ。乗り換え待ち時間が豊富の方が短いし、豊富はバスの始発駅なので、座席を確保しやすいと思われる豊富でバスに乗り換えるのがいいと思っていた。
 しかし現実としては、頻繁な停車と徐行運転で、列車の遅れは雪だるま式に膨れ上がっていった。11:03の兜沼には11:27着、14分遅れ。それでも兜沼に着いた段階ではまだ安心していた。何たって列車は動いているんだし、乗り換え時間に38分もあるのだ。これならいくら何でも間に合うだろう。しかし兜沼に到着してすぐ、下り列車交換のため出発が11:45になるとの放送があった。18分停車で32分遅れになってしまう。しまった、ここは単線、しかも列車本数が少ない宗谷本線だった。

 私が胃を痛めるように気を揉む一方、兜沼から先サロベツ原野の北端に降りた普通列車は、雨の中なのに見たことが無いぐらいの勢いで爆走してくれた。その甲斐あって遅れは若干回復したものの、豊富到着は41分遅れの11:58着、バス出発の3分後だった。でも、私も豊富到着前にいろいろ考えていた。これでも幌延ならまだ間に合うはず。幌延まで通常ダイヤで所要18分、到着は計算上は12:16。バス出発の12:22まで乗り換えに4分余裕がある。荷物と輪行袋を抱えてよたよたしていても、まず大丈夫だろう。
 しかしこの期に及んで、豊富に着いた列車は特急宗谷の交換待ちで12:05まで7分も停車した。これだと計算上でも幌延着が12:23、1分オーバーになってしまう。

 

 それでも我がJR北海道の運転手さんとキハ54はサロベツ原野の端を全力でぶっ飛ばし、12:21、47分遅れで幌延に到着。下車に備えて待機するドアの窓から、駅前に停車中のバスが見えた。しかし階段をダッシュで登って下って改札を出たところで、駅前を出発してゆくバスの後ろ姿が1ブロック、約200m向こうに見えた。沿岸バス、JRを待っててくれないのだということがよくわかった。
 まあ、間に合わなかったときのこともいろいろと考えてある。ここでお昼に着かないと昼食難民になってしまう。それにもう1刻も早く風呂に入りたい。心は決まっている、タク輪だ。困難は極力事前に考察で回避し、いざとなったら金で克服するのが50台後半の旅なのだ。そのうち年金暮らしになったら、そういうわけにも行かなくなるのだろう。今のうちである。

 慌てること無く幌延のタクシー営業所に連絡し、幌延駅出発は12時半過ぎとなった。

 バスを追いかけたタクシーがサロベツ原野を横断し、日本海沿岸に建つ宿前の信号に着く直前に、宿に停車した後交差点へ曲がってゆくバスが見えた。さすがJRを待たずに出発してしまう沿岸バス。出発後も予定時刻通りぴったりの運行、大変優秀である。
 幌延からサロベツ原野を横断する間に、空はすっかり晴れていた。晴れているので昼食後このまま温泉にしけ込んでしまうのは勿体無い気がしないと言えば嘘になる。でもよく見ると、遠景はどこも雲に覆われていて、風はかなり強い。日本海沿岸の道道106なんか出かけたら、天塩川の河口を渡る前に身を削るような強風に揉まれて大変なことになるだろう。

 何はともあれ明日は走れそうなので、今日のうちに自転車を組み立てておく必要がある。レストランで昼食後、取り急ぎ自転車を組み立て、お風呂に入って14:30過ぎに早めのチェックイン。

   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 その後は天気は多少回復したようでもあったが、外を伺った時に限ってあまり好ましい晴れ方はしていない。夕方には案の上、再び空は低く暗い雲に覆われていた。
 明日の天気予報は7時まで雨だがその後は終日晴れだ。7時頃までちょっとだけ我慢して走れば、いつもの出発時刻4時を遅らせる必要は無いだろう。しかし、たかだか標高80mにしちゃあ確か人気が全く無かったような記憶があるロクシナイ峠は止めておきたい。おとなしく最初は日本観沿いに啓明まで南下して、南回りの道道119で佐久へ向かい、国道40に合流しよう。道道119もかなり山深いものの、峠部分の通過は7時過ぎだろうから、こっちは大丈夫だろう。あとは明日の朝雨が実際にどれだけ降らないでくれるか、それだけが問題だ。

 夕食はお昼に見かけて羨ましかった焼魚定食にチャレンジ。今日の魚は大きなシマアジ。柔らかい潮味がとても美味しかった。

記 2024/1/15

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Last Update 2024/3/9
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