北海道Tour23#6
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6:15、丸瀬布発。この段階でまだ6時を過ぎたばかり、安心感があっていい。出発準備は億劫でも、ツーリングは早出に限る。
分岐の角(交差点と言うには雰囲気がのんびりしすぎ)を曲がってすぐ、道道305は金八トンネルへ続く狭い谷間、森の中に入り込む。トンネルへの登標高差は100mちょっと。登り量の割に距離が長い、北海道らしいトンネル峠だ。
谷間へ入って早々に、丸瀬布で感じた水滴は予想通り霧雨に変わった。そして登ってゆくにつれ、水の粒は大きくなって、密度が高い雨に変わった。こういう雨は勢いは弱くてもすぐ全身がびしょびしょになってしまうので、あまり濡れないうちに雨具を着込んでしまう。
まあここで雨だとしてもあまり降らない筈と思っていた。
辺りは霧っぽく煙っている。やや不本意な現状に、もう大分昔この谷間で雷雨に見舞われたことを思い出す。その時よりもますます茂みに埋もれてしまった鴻之舞の遺構を眺め、あのときよりまだましだよ、などとつぶやいてみる。
分岐を曲がると、それまで本降りだった雨はかなり弱くなり、そのうち止んでしまった。山深い道を淡々と上れることは有り難いものの、もう少し晴れててもいいのにという気もしないでもないぐらいに霧が濃く辺りは薄暗いのは相変わらずだ。
道が谷底の茂みから離陸すると、開通が新しい道の雰囲気がいかにも新道っぽいためか、熊っぽい箇所はそんなに無い。
山腹の法面、そして切り通しや森が断続し始めるともう稜線近くだ。それでも稜線近くを巻くようにしばし道は高度を上げていった。
7:45、狐沢橋着。相変わらず辺りはかなり濃い霧の中だ。2000年、通ったというより突入したダートの上古丹4号沢林道・ウチャンナイ林道の白樺峠が見下ろす位置にある。もちろんそちらも完全に霧に包まれてしまっている。それでも23年後、あの日は(も)無謀な行程計画で下方修正しちゃったんだっけ、等と思い出しながらまたこの辺にやって来れて、白樺峠方面を見下ろしている(見えちゃあいないが)ことが大変感慨深く嬉しい。
狐沢橋区間の登り下りは、地図だとどっちも同じような距離に見えるのだが、狐沢橋から中立牛側への下りは長く続くように感じられる。
稜線から山腹、谷底へ降りてから、上古丹の牧草地が現れるまでずっとあやしく茂る森が続く。いかにも熊が潜んでいそうなのだ。
まだ8時。時々(ほんとに時々)やってくる乗用車以外、前後のバッグに付けた熊鈴だけが心の頼りである。なるべくささっと下ってしまいたい。調子に乗って下っていても、前方の路上に熊が現れた場合にはむしろ危険だ。とにかく都合の悪いことは忘れて、現実逃避に意識の全てを集中する。時よ早く過ぎてくれ。
上古丹で向こうからやって来た谷間と合流し、周囲に広くないながらも牧草地が開けてやっとひと安心。いや、これぐらいの里の方が熊が出やすいのかもしれない。でも、人里の香りのようなものにひと安心してもいいじゃないか。相変わらず雲は低いものの、やっと路面が完全に乾いたのは、晴天に向けて明るい要素である。このまま晴れてくれ、と思う。
上古丹4号沢林道への入口はかなり茂みっぽい。今なら絶対に踏み込まない、あやしい雰囲気がぷんぷんしている。2000年の訪問時に林道入口を尋ねた牧場の納屋は、もうかなり前から廃墟になっている。久しぶりのこの道も、訪れ始めてもう20年以上経っているのだ。同じ道を走っているので感慨ばかりだと思いつつ、そういうのが楽しいのかもしれない等とも思う。曇りなので思考はやはり自分の中に向かってしまう。
もう少し下って8:20、立牛を今日はさくっと通過してしまう。どきどきしていても行程は順調だ。
そして、路上の気温は目に見えて上がり始めていた。また暑くなるのか。晴れるんなら仕方無いことではある。
と思っていたら、札中トンネルを抜けると再び辺りは霧の中。それどころか、そのまま谷に下りきる途中で霧は雨に変わってしまった。おいおいおいおい、いい加減にしてくれ。
さすがに濁川手前で雨は止み、路面は再び乾き始めた。しかし今日はこのまま山間に行くと雨っぽいままなのかもしれない。
9:15、濁川着。先行き不安なときこそ心の余裕が必要だ。以前から、ここの道の駅に漂うソフトっぽい雰囲気には興味があった。この際宛の無いソフトを宛にして、一息付くことにする。
道の駅本館は、徹底的な安普請が普通である道の駅にしちゃあ箱物行政系地味ゴージャスっぽい建物だ。肝心のソフトは本館に無く、隣のログ小屋で所望することができた。
改めて今日の予定と現状を比べてみる。下川・仁宇布間、道北有数の山深い区間をあまり夕方っぽくない安心可能な時間に通過するために、濁川・滝上を10時半ぐらいまでに通過しておきたいと思っていた。現状、出発時刻が早かったことを考慮しても、進行状況は好調と言っていい。何より身体が全然疲れていない。このままさくさく行けそうだ。
等と思いながら缶コーヒーをもう1本。
記 2023/12/13
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