北海道Tour23#13
2023/9/15(金)旭川空港→朱鞠内湖-5

旭川空港→江神橋 (以上#13-1)
→江丹別 (以上#13-2)
→幌加内 (以上#13-3)
→添牛内
(以上#13-4)
→朱鞠内湖  103km

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
ニューサイ写真 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 さっき添牛内の手前で合流した国道239が士別へ向かって分岐し、国道275は再び単独路線となった。こうなるともう朱鞠内まで10km。いよいよ朱鞠内湖まで先が見えてきた。まず確実に明るい内には宿に着ける。

 北星までは牧草地が続くものの、その先から次第に次第に谷が狭くなり、辺りは一気に山深い雰囲気に変わる。いくら今日が晴れだと言っても、もうそろそろ日陰がきりっと冷え始めている。森と茂みが何だか高く濃くなって、川原からのそっと熊が出てきても不思議じゃないぞという気になってくる。この時間に通れていることは有り難いことだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
  A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 16:35、朱鞠内着。陽差しはもう大分赤くなっていて、青い影が行く手の町を覆っている。でもまだ空は明るい。日没までもう少しだけ時間はある。これなら朱鞠内湖で夕方の風景を楽しめるかもしれない。では有り難く問題無く、向かってみよう。

 湖岸の丘の上に建つ今夜の宿、レークハウスしゅまりないの前を通過しても、まだ辺りと空は明るい。最低限、もう宿には着けているようなもんだと安心し、目の前に現れた湖畔へ向かう。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 16:55、朱鞠内湖畔着。まだ明るいとは言え、何だか秒速で段々暗くなっているようにも思われる。大急ぎで湖岸の木陰で自転車写真を集中的に撮り、波打ち際へ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 波打ち際とはいえ、彼方から足下まで湖面に波なんか無い。普通の鏡と比較にならないぐらいに平滑な湖面は、夕方の光と空を映すというより発光するように反射していて、ほわんと明るい液体金属というか、まるで未知の物質みたいに手前から彼方の対岸に拡がっている。対岸の森はかなり低くなっている夕陽に直射気味に照らされ、緑の梢と白樺の幹が光っているようによく目立つ。延々と拡がる微妙な起伏の樹海。森の明るい部分と闇、無数の生命に囲まれ、極限まで水平な湖面と夕方の空が対峙する、そんな状態を想像する。今、自分は朱鞠内湖の大空間に入り込めている。朝から交通機関を乗り継ぎ、自転車ではるばる100kmを走って。

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 手前の湖畔に数人キャンプ客がいることと対照的に、ますますその静かで動かない湖面の精密な平面、空間の大きさが実感される。それは4年前の朝に訪れたときと同じ感覚だが、今回は夕方の真っ赤な光のせいか、ますますその静かさが感じられる。夜の前の静かさかもしれない。この辺、5月にクマが出て釣り客が襲われ、亡くなっている。湖面を数百m挟んだ彼方の湖岸の森を望遠レンズで撮りながら、夕陽に輝く白樺の間に熊でも見えたら怖いぞと思う。いや、近くの対岸の方がもっと怖ろしい。今のところ幸い、それは私が妄想しているだけに留まっている。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 辺りが少しづつ暗くなっている。朱鞠内湖の大空間が、夕暮れの少し寂しい雰囲気で一杯になっている。長い影に沈んで一体になってゆく周囲とは対照的に、湖面はますます、非現実的に明るく、少し寂しく輝いている。横からの最後の夕陽も、遠い対岸の白樺を照らしているのがはっきりわかる。こんな風景、狙って訪れて眺められるもんじゃない。
 晴天が演出してくれた今日1日の、最大の見ものなのだった。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 17:20、レークハウスしゅまりない着。
 洗濯機が故障中とのことで、洗濯ができないのであった。ファームイントントも確か洗濯できないので、3日間洗濯できないことになる。まあ、こういうのは高校時代の旅で慣れている。あの頃は、日中の鉄で真夏の日なたを1日中歩き、汗でぐしょぐしょになった綿のTシャツとかGパンをいつも3回ぐらい回していた。それを思い出せば、秋の極楽ツアー3日間など比較にならない。ただ、できればそんなことはあまり思い出したくないし、当時58歳になってもこんな旅をしているとは思っていなかった。
 現実としては、替えシャツは2枚。就寝用としてシャツを1枚、今日から3日間温存し、最終日はそのまま着て帰ることにすれば、今来ているのを含めた残り2枚を今日を含めた3日間で使い回すことになる。今日は汗はかいたものの、かいたそばからすぐ乾いていたので、明日1日今日のシャツで我慢できない訳じゃない。というより、明日新しいシャツを着たとしても、序盤の朱鞠内湖湖岸アップダウン区間ですぐ汗が浸みちゃうだろう。
 というわけで、今日風呂に入ったら新しい就寝用シャツに着替え、明日出発前に今日着たシャツに着替えれば、3日目と最終日は朝から新しいシャツを着ることができる。これで3日間、問題無いことにしよう。

 

 などと考えつつ、夕食の美味しいダッチオーブンチキンを頂き、今日の行程を振り返る。連休前日の夜なのに、レークハウスには4組のお客さんが泊まっているようだ。さっき夕暮れの朱鞠内湖岸でお話ししたおばさん3名もいらっしゃった。気分上々、近年の私には珍しくサッポロクラシックを2杯も飲んでしまった。考えるのは汗を吸った服の使い回し方法でも、間違いなくとても贅沢で幸せな時間だ。

記 2024/2/17

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Last Update 2024/3/23
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