中国地方Tour22#4
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山口県に入るとともに国道436は細道に変わり、急斜面の森を何段かのつづら折れで急降下していった。
周囲の森は深く、ここまで登ってきた高原っぽい風景と比べ山間の雰囲気が濃厚だ。今日は陽差しが路上に伸びた広葉樹の梢から差し、木漏れ日の斑が染まってしまいそうな緑色だ。そして木陰部分が、ここまで望むべくもなかったほど涼しい。
やっとツーリングの世界に帰って来れた。そして今日、ここまで来て良かったとつくづく思う。
谷間に降りると森が開け、突然中国自動車道が現れた。標高はまだ640m。中国自動車道が中国山地山奥の、かなりの高所を走っていることを理解した。もう少し東の千代田で中国自動車道を見かけたのは昨日のことだ。
勢いよく下り続け、常国の集落では急斜面に田圃、そして民家が登場。
急斜面の集落に対し、日本のチロルという形容をよくサイクリストは使う。ここもなかなかの急斜面集落であり、いい線を行っている。今は田植え作業も道端の草花も蛙もツバメもトンボも真っ盛り、春の賑わいが一杯だ。
急斜面の棚田をすり抜け集落の生活道へ、国道436はかなり勢いよく下り続けてゆく。集落下手で道幅が拡がった後、周囲は農村から宇佐川の渓谷に移り、また道はぐっと狭くなった。広葉樹が側面の岩場や上から生い茂る、谷底渓谷のくねくね細道。
松の木峠のつづら折れ、常国の生活道。この国道436には、400番台国道に求めるものが存分にある。
所々で対岸の森の外に、建設中の国道436新道を見上げることができた。いずれこの国道436は、松の木峠からずっと拡幅新道に変わってしまうのかもしれない。今日こっちへ来て良かった。
渓谷の細道が再び拡がってごく普通の国道に変わった。山口県に入ってから黄色いガードレールが目立つ。後で調べると、やはり山口県独特のもののようだ。しかし普通の国道にあまり用は無い。調子に乗って下り始めたら、道の途中から唐突にGPSトラックが分岐し、谷を渡って向こう岸を登り始めているではないか。はいはい旧道旧道とは思ったものの、登り返しはやや唐突だし旧道というには全く関係無い方向へ向かっているし、…。
地形図を眺め直すと、100m程登り返した集落から隣の谷が始まっているのであった。思い出した。ここで別の谷間に移るんだった。隣の谷が100m高い台地上から始まっているので国道436から登り返す必要があり、それでもたかだか100m程度だと、プロフィールマップではあまり気にならない程度なのだった。
そして隣の谷への分岐がいくつかある中、国道436からの分岐点が一番標高が高いこの道が、一番登り返しが少なかったはずだ。さっき羅漢高原への分岐で、羅漢高原経由だと登りがやや増えると思った理由がわからなかったことを思い出した。ここの登り返しを完全に忘れていたのである。
100m登り返すと言っても、落ちついてギヤを落として登れば、県道16という名の森の細道はやはり楽しい。
つづら折れから最後に森が開けて台地に乗り上げ、中国自動車道をくぐり、13:35向峠に到着。
最高地点が集落の上手であり、道端のお宮の向こうに田圃が拡がっている。ここまでの森の中や急斜面の集落、渓谷など狭い谷間の雰囲気とは打って変わって、山々に囲まれた適度な拡がりの平地がのんびりと開放的だ。
向峠の峠は「たお」と読むようで、このあと山口県内の小さい峠で○○たお(文字は峠か垰)というのがいくつかあった。この向峠は集落の名前のようなのだが、谷間の最高地点でもあるのがややこしい。
記 2022/6/8