中国地方Tour22#4
|
|
津田の町外れから続く農村の栗栖で標高320m。大竹からやってきた国道186に合流し、松の木峠へ向かう。その合流点で、更に多くの車が大竹方面に行ってしまったのは大変有り難いことだった。地図によると、松ノ木峠の手前までしばらく曲がりくねった渓谷を遡り、集落らしい集落は無い。そういう道でひょっとすると山中ずっとこれか、と覚悟していたよりは大分車が少ない。実は広島から大竹まで山陽本線輪行でワープしてしまい、大竹から山中に入る手もあると思い、第2案としてコースまで準備していた。しかし大竹まで行ったとしても、車の多さは広島方面から来るのとあまり変わらなかったかもしれない。やはり昨日広島に行った以上、ここまで全自走で良かったんだろうな。
風景も栗栖までとは一変した。佐伯の盆地から小瀬川の谷間、羅漢渓谷に入り込んだのだ。谷間に集落がほとんど無いためか小瀬川は眺めている分には大変清らかであり、切り立った岩場は荒々しい。車はまだ皆無というわけじゃないものの、全く車が来ない時間が1〜2台来ている時間より多い。十分にツーリングの許容範囲だ。そのぐらいの車の量なのに、普通の道幅の国道沿いにこれだけの迫力ある清らかな渓谷がずっと続くのは、他にあまり類を見ないんじゃないかと思う。そして国道なのに、道はあまり埃っぽくない。普段は車がもっと少なくて、今日は連休で普段より車が多いのかもしれない。
道の駅スパ羅漢は標高500m。地形図には、山中の他に集落も畑も無さそうな場所に道の駅と書いてあるので目を疑っていた。こんな所に道の駅があるのだ。あまり大きな道の駅ではなく、温浴施設以外に何か手っ取り早い食事ネタも無さそうではある。まあしかし、何か食べたいという明確なイメージがある訳でもない。恐らく気の持ちようだけで全て解決するのだ。とりあえずWCに行っておく。
その先も相変わらず清らかな小瀬川の流れ、渓谷の迫力ある岩場、森の渓谷が素晴らしい。国道沿いによくこんな渓谷があるな、という道である。
羅漢高原の看板と共に、県道119の分岐が現れた。計画時にここを経由するコースを検討したことがあったので、現実の分岐を前に少し悩む。
行く手の最高地点は、予定コースの松の木峠で776m、県道119の生山峠は936m。県道119の方が順当に県道らしく登りは多そうだし峠付近で登り返しもありそうだ。距離も多少大回りに見える。しかし県道119は、今ここでは国道186より明らかに細い。確実に車が少なさそうなのが、とても魅力的に思える。
地形図で獲得標高差だけ概算チェックすると、100mちょっとぐらい余計に登ればいいだけのようにも見える。でも、事前でRideWithGPSで計画していたときは、当然こちらも検討した。獲得標高差は確かそんなもんじゃなく、300m以上ぐらい差が付いていたはず。朝から車が多いにいい加減嫌気が刺していたので、目の前の2択は大変悩ましいものの、ここは安全策でこのまま国道186を進んでおくことにした。
再び走り始めてから、変速の調子がかなり悪いので触ってみると、幅方向にガタガタとフリーのギヤが動いているではないか。驚愕した。空走時にじゃりじゃり変な音がしていた理由はこれだったのか。さすが某国製だ。帰ってから即交換するとして、そもそもこの先走れるかというレベルの、最悪の調子である。少なくとも、あまり行程の無理はしない方がいい。さっき羅漢高原ではなく、こっちを選んでおいて良かった。そして標高差についても、この後こちらで良かったことを理解するのであった。
幸いこの後最終日まで、フリーが走行中に分解してしまう事態に陥ることは無かった。
小瀬川が道沿いから森の向こうへ、そしてどこかに行ってしまい、周囲は次第に狭い渓谷から山間斜面に変わり、栗栖〜松の木峠までほぼ唯一の集落、飯山に到着した。標高600m超、この辺から峠部分に続く鞍部が始まる。こんな山間にどんな山里があるのか、ここまでちょっと不思議な気分で地形図を眺めていた。
国道から飯山を望むと、山間の袋のような拡がりに、まばらな農家と休耕田に太陽光発電が目立つ。廃村ではなく、奥には人が住んでいる。ごく普通の静かな山村である。
標高600〜700mにしちゃ高原っぽい雰囲気が漂う森が続き、12:20、国道436分岐到着。
螺関渓谷で既にかなり少なくなっていた車は、ほとんど国道186方面へ下ってゆくようだ。特に何の境でもないこの場所が国道186としては峠部分であり、松ノ木峠は国道436でこの先1kmちょっと。2022年の現状としては、国道186は、広島県から登って分岐を越えて広島県に降りて行く道となっている。こういう峠の構成にも、何か曰くがあるのかも知れない。まあ後の人生でわかるのかも知れない。
森の狭間、そう広くない農地や牧草地を眺め、国道436は松の木峠へ向かってゆく。冠高原という看板が国道186分岐に建っていたとおり、標高700m台後半だというのにどこをどう見ても標高1000m以上の高原っぽい風景だ。車はやはりかなり少ない。静かな高原の風景が嬉しい。
それでもそんな有り難いことが続くのかと少しの間疑わしく、やっとこういう道になったかと安心するまでは時間が掛かった。次回の中国地方訪問では、もう少し交通量を意識し、山陽方面に向かう場合は注意して計画しようとつくづく思った。広島に行こうと思えば、電車を使ったって行けるんだし、現に今回は最終日に新幹線で広島再訪を予定している。
12:30、松の木峠到着。峠は広島・山口県境であり、山口県側は何と岩国市だ。山口県に広島が北側で接しているのも東京在住の私には斬新に思えるのに、それが海岸方面の岩国市というのが尚更だ。岩国市と言えば、海岸方面のイメージが強い。仙台市や静岡市同様、市町村合併で全国の巨大自治体は大変なことになっているのだと思う。そういえばこちら側も未だに海岸から続いた廿日市市だった。
記 2022/6/8