北海道Tour19#12
2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布-1

朱鞠内湖 (以上#12-1)
(以下#12-2) →母子里 (以上#12-2)
(以下#12-3) →下川 (以上#12-3)
(以下#12-4) →上幌内 (以上#12-4)
(以下#12-5) →仁宇布  109km  RIDE WITH GPS

赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路と航路
RYDE WITH GPS

   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 5時。窓の外の空は明るくなっているようだ。布団の外は寒い。東京ではまだ日中30℃台当たり前だというのに、流石に道北の山間だ。
 森に夜明けの白い霧が漂り、雲海になっている。その上の夜明け空が澄み切っているのはよくわかった。それでも、とにかくまだ寒いというのが第一印象の、朱鞠内湖畔の早朝である。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内 レークハウスしゅまりないより朱鞠内湖を望む #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 6:45に朝食開始。朝食をきっちり食べて行動できるのが、宿泊ツーリングの有り難いところだ。今朝の食事は大変美味しく、更に有り難い。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内 レークハウスしゅまりない前 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内湖畔 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 食後に部屋に戻ってもう一度湖を見ると、霧はすっかり晴れていた。空はますます雲一つ無く真っ青、もの凄い快晴だ。そして空を映した朱鞠内湖が真っ青、湖岸の森がまた青い影になっている。
 これはいいぞ。今日は行程上で風景が期待できる。もう少し眺めの良さそうな空き部屋の、バルコニーから別の方向を眺めたりしてみた。外の空気が、暖房の効いている室内やこの時間の東京からは想像がつかないほど冷え込んでいる。かなり冷え込んでいるのに、陽差しはかなり強烈である。そういうところがやはり北海道らしい。晴れると秋でもこうなのだ、と思った。

 あまり早く出発しても寒いだけだろう。出発はいいとこ8時ぐらいが適切ではないのか、という意図で7:40から出発準備を開始。昨日と同じくやはりサドルバッグに追加のレンズケースでやや手間取ったり、昨日と違って日焼け止めを塗りたくったり、地図を準備し直したり。余裕を見込んだつもりでも何かと時間が掛かり最後は焦り気味になってしまった。
 空はもう真っ青でものすごい青濃度、陽差しがさっきにも増して強烈である。ただ、やはり夏のようには暑くない。しばらく行動するのにフリースが必要だ。などと思いながら、結局8:00に出発することができた。昨日湖畔から登ってきた道を一旦下り始めたものの、また引き返すことにした。
 やはり朱鞠内湖を見ておかねば。少しでいいから。

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
 
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内湖畔 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 1985年の夏から湖畔の「しゅまりの宿」に訪れるようになっていた私は、1986年の夏、「しゅまりの宿」のボート綱引きチームとして朱鞠内湖に連れて行っていただいた。1回戦敗退だった。翌年夏もボートに乗りに行き、1988年の2月には宿のツアーでワカサギ釣りに訪れ、湖面の氷上で数時間釣りをした。どれも曇りの日だったせいか、朱鞠内湖の印象はまあごく普通のどろんとした湖であり、むしろやや殺風景な印象すら残っている。

 今、目の前には真っ青な空を鏡のように映した真っ青な湖面が広々と、というより堂々と、そして液体金属のようになみなみと静かに、対岸の山の裾まで拡がっている。その空間感覚には迫力すらある。さすが日本最大の人造湖だけあるね。足下からは緑の芝生、その先が浜辺になって湖へ一続きに下っている。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 PENTAX K-1 MarkII HD PENTAX-D FA15-30mm1:2.8ED SDM WR パノラマ合成
 
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内湖畔 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 しばらく立ち尽くした後、もっと湖面に近づいてみた。

 PENTAX K-1 MarkII HD PENTAX-D FA15-30mm1:2.8ED SDM WR パノラマ合成
   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 砂浜の岸辺には小さな桟橋、ボートが仰向けになって並んでいる。もう少し上には乗用車が何台か、恐らく釣り客だろう。30年前から、朱鞠内湖のワカサギ佃煮がとても香ばしくて美味しいのは知っていた。昨日朱鞠内でもレークハウスでも可能なら買いたい気はあったのだが、朱鞠内ではお店が開いていなかったし、レークハウスでは酔っ払っちゃったし、そもそもバッグに全く余裕が無い。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 遠くの対岸は丘と低山に囲まれている。見えている範囲の森に、人の営みを感じさせるような要素は無い。何か切り立ったり激しく隆起したりとかではない比較的穏やかな地形ではあるものの、近寄りがたい山深さが際立っている。それは昨日眺めた添牛内の奧羽幌の山々や美深峠の北側谷間の眺めと共通した印象だ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 1980年代後半から訪れていなかったことを後悔しながら、その頃に朱鞠内湖の代名詞ですらあった立ち枯れの木が、あと20年もしたら立ち枯れは1本も無くなっているだろう、などと昔聞いた通りの風景になったのが2000年代中後半、それから既に10年以上。また来るのに随分時間が掛かってしまった。その間訪れていた近くの母子里でも良い思い出を一杯頂いているのに。いや、朱鞠内湖にこの眺めを期待していなかったのだ。夏冬2回来て、何となくわかった気分になっちゃっていたのかもしれない。いつも余裕無く先を急ぎすぎていたとも思った。こういう風景を見逃してしまったのは事実である。朱鞠内湖のこの表情に、30年以上かけて辿り着けたのかもしれない。いや、やはり30年以上かかったのだろう、自分の旅でこの景色を見るには。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 気が付くともう8:30。もう少し早めに出発すれば良かった。でも今日も、見るべきものを見逃さずに悔いの無い1日にしよう。折角秋にやって来たのだから。朱鞠内湖の風景が、この先の旅程を路線付けてくれたような気がした。

 再び宿の前を通って朱鞠内方面へ、湖畔から道道528へ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 朱鞠内へ戻る前にもう1箇所。1986年に1泊アルバイトさせていただいた高山牧場へ再訪しておきたい。あの時はしゅまりの宿から車で1〜2分だったか。よく覚えていないものの、そう遠くないというよりすぐ近くのはず。

 道道528の宇津内湖方面へ。長年名羽未成線のトンネルが茂みに埋もれている未開通区間の実態は気になる。などと考えていたら、分岐から最初の牧場はすぐに現れた。距離感的にここが高山牧場っぽいように思う。でも確信は無い。
 風景だけ眺めて戻ろうかなと思っていたら、農家から30台ぐらいの方が出てきた。軽トラに乗り込もうとしていたその方に伺ってみると、まさにその方のお名前が高山さん。その方は30年前、まだ小さいお子さんだったのだろうとご自分で仰っていた。かつての牧場バイトの方が何十年かぶりに再訪されることが時々あるとのことで、今お父様もご在宅、とのこと。大変嬉しいお申し出だったものの、何しろこちらは30年も前のたった1泊で30年振り。静かな朝をお邪魔しては申し訳ないので、そのまま先へ進むことにした。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町湖畔 道道528 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 道端から草地の向こうに2泊したことがある「蕎麦の花」、今日はあまり人気が無くひっそりした元「しゅまりの宿」を眺めて湖畔を後に。レークハウスしゅまりない、またいつか来よう。


 国道275に合流、美深方面へ。湖岸縁の小山へ登り返す。いつもは下りで一瞬で通過してしまうえんじん橋の標識も、今日はじっくり眺めながら登ってゆく。橋の近くに動力っぽい何かがある訳ではないのに、何故こういう唐突な名前なのかという疑問が毎回頭に浮かぶ。

 道道275は朱鞠内の谷間から母子里へと、大体5〜60mぐらい登って湖岸の縁の丘へ乗り上げ、その後は緩い小山の起伏を何となく地形なりに通過してゆく。道の高さは最高で湖面から最高100m以上あったり、そうかと思うと湖面から10mも無いぐらいの高さで橋を渡ってゆくものの、特に纏まった登りも下りも印象に残らないのは、いつもの美深・母子里から朱鞠内への訪問の時と同じ印象だ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内 国道275 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 南岸では湖の外へ下り始める開けた丘の上に、士別方面への道道251の分岐がある。この後そちらへ向かう方が今日のコースでは近道なのだが、今日は一旦母子里まで脚を延ばしておきたかった。一度秋の母子里を眺めておくことは、今日の目的の一つなのだ。

 空はますます真っ青、朝より高く昇った陽差しが明るい。緩くても登りが続くと汗をかく。朝の寒さに一時はどうなることかと思ったものの、順調に気温が上がりつつあるのだ。フリースを一旦仕舞い、周囲の森を眺めると、茂みも白樺の森も何となく色付き始めていて全体的に秋の装いだ。内地より1ヶ月以上季節が進んでいる印象である。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内 国道275 朱鞠内湖 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内 国道275 朱鞠内湖 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 母子里手前の牧草地もすっかり色付き始め、明らかに夏と雰囲気が違う。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 国道275と道道688の交差点近く、町営施設の自販機で缶コーヒーを飲み、10:10、母子里着。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町母子里 国道275・道道688 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 以前建っていた母子里の宿の痕跡はもはや跡形も無いし、交差点の売店は今日もシャッターが降りたままだ。1985年の写真に写っている農家や牧場も、かつてと大分変わっている。

 母子里も2000年代前半まで頻繁に訪れていた場所だし、ここにも牧場バイトでお世話になった方がいらっしゃる。でも、母子里は比較的頻繁に訪れているから変遷と推移にはあまり驚きは無い。今自分の前にあるのが、間違いなく2019年の母子里そのものである。


 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町母子里 道道688 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 母子里から道道688で狭い谷間を160m、登り返しにやや汗をかいて名母トンネルへ。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道雨竜郡幌加内町母子里 道道688 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 トンネルを抜けるとそこは名寄盆地側に開けた山の中腹で、道道688は山裾を巻いて高度を下げてゆく。途中に名寄盆地の眺めが時々拡がる箇所があるのを楽しみにしていた。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道名寄市瑞穂 道道688 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 PENTAX K-1 MarkII HD PENTAX-D FA15-30mm1:2.8ED SDM WR パノラマ合成
 
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道名寄市瑞穂 道道688 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 道の向きにより士別方面や名寄方面、どちらも母子里からの登り量が少ないのに、地形の変化と名寄盆地への下り量が多いことによるお得感が一杯の眺めだ。陽差しがぽかぽか暖かく、クロカンスキーの練習団体も見かけた。

 PENTAX K-1 MarkII HD PENTAX-D FA15-30mm1:2.8ED SDM WR パノラマ合成
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道名寄市瑞穂 道道688 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 名寄盆地へ下りきる前に道道688から南へ分岐、軽めの丘陵を縦断して弥生で谷底へ。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道名寄市弥生 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 下りきってもまだ谷間は広くないものの、ここまで森が続いた周囲に畑や牧草地が拡がり始めた。陽差しに照らされて緑が何かと鮮やかで、何ということは無い風景にしょっちゅう脚が停まる。風景がというより、ぽかぽかで自分の気分がいいのだ。

 道端に何か看板が掲げられた木造家屋が現れた。何か軽食ネタかと思っていると、そこは元天塩弥生駅の建物なのであった。確かここで宿もやっていた筈である。そうか、名寄・母子里の道道688と深名線は全然違う経路を通っていることを理解してはいたが、こっちが深名線だったことは意識していなかった。トンネルの名前も道道688は名母トンネル、元深名線は名雨トンネル(雨は雨竜郡の雨と思われる)である。
 10:50、天塩弥生通過。この分だと盆地を横断して国道238から下川に着くのは13時前になってしまうかもしれない。朱鞠内湖をはじめ、けっこう寄り道したしな。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 谷間が盆地へ向かう途中、やや大きな線形で山裾を田んぼの端、森、農家の脇から畑の中へ続く裏道へ逸れて間もなく気が付いた。この道、さっきの天塩弥生駅から続いている。ひょっとして元深名線なのか。それは大変懐かしいことだ。
 深名線には、1985年の鉄旅行(ちなみに当時既に旅行の私的名称は北海道Tour85だった)で初めて乗った。名寄本線で1日上興部周辺を撮影した後、15時台の深名線に乗り、朱鞠内、或いは深川までのどこかで駅寝するつもりだったのだ。しかし朱鞠内すぐ手前の湖畔駅で「しゅまりの宿」のポスターを見かけ、旅人ホイホイに引っかかるように下車してそのまましゅまりの宿で1泊。旅人宿の濃厚な魅力に引き込まれ、その後しゅまりの宿が閉館するまで2〜3年ぐらいの間、何度か深名線としゅまりの宿を訪れたのだった。

 初めて乗った深名線には、ほとんど等高線と森林記号、まばらな道と地名だけの、内地と全く違う地形図から想像できなかった更に驚くべき風景が一杯だった。
 非力なキハ22が30分エンジン回しっぱなしで密林を登った名雨トンネル越えでは、宿泊場所として全く情報が無い朱鞠内への不安と共に、一体これからこの列車はどこへ向かうのかという気になった。しかし、トンネルを抜けてすぐ打って変わって周囲は一気に開け、母子里の明るい緑の牧草地と人なつこい里の風景に衝撃すら受けた。私が母子里に一目惚れした瞬間だった。
 その後は延々20分以上、森と高い茂みと立ち枯れが異様な朱鞠内湖畔の風景が湖畔まで続いた。初めてまともに眺めた、北海道ならではのローカル線の風景、というものだったと思う。
 深名線での天塩弥生の印象は、異様な迫力をまとう密林と桃源郷母子里の入口、15時前の陽差しが眩しい端正な駅舎に優しく長閑な農村風景である。だから今日ここまで過去の記憶を辿るような旅の最後、突如深名線の痕跡が現れ、なんだかとても懐かしい気分になったのであった。

 盆地の真ん中へ下りきり、刈り取り前の稲穂の中、名寄盆地を横断してゆく。こういう平地の裏道は、本来GPSトラック頼みの区間である。

 今日は昨日の旭川市街と違い、コースの要所は名寄盆地中程で天塩川を渡る橋一つだけ。その両側は田んぼのグリッドなので、地形図と現実の風景を眺めながら迷うこと無く通過することができた。ただ、東向きの向かい風がややしつこく鬱陶しい。

 11:35、風連通過。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 国道40と宗谷本線を横断、集落外れから突如細くなった道で下川への台地へ乗り上げる。段丘部の森を登り切って、再び開けた畑の外れには、もう風連の営みの影も形も無い。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 森や畑や茂みをアドリブ気味に国道239へ。やや分断気味の細道は迷走気味に屈曲してゆくものの、迷っちゃいないはずだし国道239はすぐ近く。最後は国道239の名寄手前ちょい坂の、夏の国道239訪問時に見覚えある分岐だった。

 国道239でも、名寄盆地と同じくやや横風気味の向かい風に悩まされた。日影・朝日・上名寄と、下り基調の追い風で一気に通過できた夏と同じ風向きである。夏の追い風借金(?)の返済だと考えることは可能かもしれない。

 向かい風に加え、普通の田舎国道ぐらいに車は多いのが精神的にじわじわつらい。一方、国道275や道道688と比べて交通量は多いものの車が全く途絶えるような瞬間も無いでも無く、夏に通ったとは言え風景ものんびりと悪くない。

 山の形と裾までの距離感、川の位置、道の線形を地形図と比べ、名寄まであとどれぐらいと想像しながら脚を進めてゆく。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 最後のカーブを曲がって突然セイコーマートのオレンジ色が見えたときは嬉しかった。

 12:20、下川着。セイコーマートで目出度く仕入れることができた豚丼を、例によって軒下でいただくとする。流石北海道の秋、9月の12時台で早くも日が赤い。日没までに着けばいいというより、ちゃちゃっと食べて早め早めに行動せねば。


 12:50、下川発。

 道道60でサンル川の谷間に入ると共に風が止んだのはいつもの通りである。しかし昨日の幌加内と同じく、夏は真っ白な花が満開のソバ畑が、ことごとく赤っぽく半分枯れてくちゃくちゃの始末が悪い茂みになっている。これが秋の色なのだろう。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンルダム #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 すぐにサンルダム湖岸への登りが登場。サンルダムは夏に間近からゆっくり眺めているものの、下川側から登って対面するのは初めてだ。去年はタク輪、今年夏に上流側から訪問し、やっと今、全く問題無く下流側からコンクリートの堤体を眺めることができているのだ。

 湖岸道路区間で時々湖面を眺めるのも感慨深い。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道上川郡下川町サンル 道道60 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 サンル大橋から眺めるしもかわ珊瑠湖(という名前が付けられたようだ)は、橋を過ぎて少し上流側まで冠水していた。元道路や畑や牧草地がだいぶ水没しつつあり、振り返った上流側も、夏には勢いよく流れていたサンル川の幅がぐっと増し、部分的に池になり始めていた。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル大橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル大橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 8月中旬から僅か1ヶ月ちょっとでこれだから、今後も水量が減ったり増えたりしながらどんどん湖が広くなっていくのだろう。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 ダム外周の新道が旧道に合流した後も、サンル牧場は道道60沿いに断続して続く。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 沿道に全く人は住んでいない。同じ道北山間の無人区間でも、延々と森が続く道道120の仁宇布・上徳志別間より、人の手が入ったこちらの方が風景の変化に富んでいる。更に近年はサンルダムがその変化に輪を掛けている。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 下川で想像したとおり、まだ14時過ぎなのに陽差しはすっかり赤い。風が吹くとやや肌寒いほど。広葉樹林、茂みがことごとく色付き始めているのは、内地の11月の感覚だ。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道上川郡下川町サンル 道道60 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 過去何度かの秋の北海道訪問で、この時期の北海道について頭では理解しちゃいるつもりだし、昨日実際に眺めてもいる。しかしやはり想像以上の季節の進行が目の前にあった。1日当りあまり走らない計画にしておいて良かったと、昨日に続いて思った。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 晩秋の山間といえば内地でも心配なのが熊の出現だ。ましてや北海道の熊はヒグマだ。きっと夏より更に凶暴なんだろうな、等と思っているとそこの茂みもあっちの茂みも怖ろしくなってくる。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道上川郡下川町サンル 道道60 サンル牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 幌内越峠の取付区間、周囲に原生林が続き始める辺りから、空の雲が増えて陽差しが隠れ始めた。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 辺りは薄暗くなり、俄然冷え込み始めた。

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北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道紋別郡雄武町上幌内 道道60 奥幌内本流林道分岐 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 幌内越峠を越え、たかだか100mほどの下りが寒くて仕方ない。


 15:00、上幌内通過。道道49に乗り換えていよいよ一番難所、というより森が深くて怖ろしい雰囲気が漂う松山峠越え区間である。

 取付の7%区間は、4サイドじゃないと思っているより大分楽だが、遅いのは相変わらずである。狭い谷間の深い森の圧迫感にびくびくしながら、イキタライロンニエ川の谷底とともに次第に高度を上げてゆく。登りで身体が温まり、汗が出てくるのだけが助かる。

 谷底から離陸し、一気に峠へ取り付く手前から、再び陽差しが辺りを照らし始めた。しかしもう15時半過ぎ、かなり真っ赤っかの弱々しい陽差しは山影に隠れそうだ。

 一刻も早く、仁宇布に着きたくて仕方無い。大丈夫、ここまで来たらあとは松山峠を越えるだけ。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道紋別郡雄武町上幌内 道道49 松山峠手前 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
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北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道紋別郡雄武町上幌内 道道49 松山峠 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 15:40、松山峠通過。

 下りでは僅か1ヶ月前夏に登りで通った時より、通過時間が明らかに長く感じられる。我ながら、脚を回して気が紛れているのだとつくづく思う。

 松山湿原分岐を過ぎ、最後の白樺区間からやっと交差点が一直線の遠くに見え始めたときには嬉しかった。とにかく熊が怖かったのだ。交差点直前まで、いや、仁宇布のどこで熊が出ても不思議じゃないことも、一応知ってはいる。それでもやはり森と集落では、安心感は段違いだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 15:55、仁宇布着。周囲はもう真っ赤っかに染まって夕方そのものだ。

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 夕陽の牧草地と畑の中をファームイントントへ。

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北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道中川郡美深町仁宇布 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 夏に真っ白の満開だったソバ畑が、ここまで眺めてきた状態と同じく、赤っぽい枯れ色が目立つ単なる茂みでくちゃくちゃでやや殺風景だ。しかし夕陽が風景全体を真っ赤にして影を伸ばし、殺風景さを帳消しにしてくれていた。牧草地は殊更真っ赤っかで見応えがある。

 風景を眺めていても、アブやらブユやら邪魔する奴らはいない。途中、仁宇布から歩くには長いこの細道を、牧草地を見物しながら散歩する方がお2人。案の上、ファームイントントのお客さんだった。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントント前 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 16:25、ファームイントント着。何だか帰ってきた気分になれた。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 お風呂に入って早速ビールを所望。

北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19秋#12 2019/9/21(土)朱鞠内湖→仁宇布 北海道中川郡美深町仁宇布 ファームイントントにて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 テラスで写真を撮っても寒いので、すぐ中に入るというのを何度か繰り返し、酔い覚ましに一眠りした後夕食に。他2組のお客さんも一緒に、賑やかな楽しい晩になった。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 明日の天気予報は6時に雨が降り、しかし9時以降はもう晴れとのこと。6時から9時のどこかで晴れるのだろう。ということは、美深の市街で7時半に晴れるとして、仁宇布では8時半、または9時に晴れるのだ。予報がそうなら、実際に雨でも、計画通り8時に出発してしまえばいい。ただしあまり寒すぎなければ、の話だが。
 ということは計画通りに走る前提なので、20時には寝室へ戻って寝た。夕食にまたビールを呑んだので、多少酔っ払ってもいたし。毎日夕方から酔っ払っている。楽しい秋のツーリングだ。

 しかし私が寝た直後に空が晴れて、ものすごい星空が見えたらしい。翌朝伺ったそのことだけが、大変残念だった。

記 2020/1/31

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Last Update 2020/2/2
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