紀伊半島Tour18#3
2018/4/29 湯ノ又→小口-5

東野トンネルからオトノリ経由で瀞峡トンネルへ 赤は本日の経路

湯ノ又→牛廻越 (以上#3-1)
→蕨生 (以上#3-2)
→滝→小川 (以上#3-3)
→上葛川→東野トンネル
(以上#3-4)
→オトノリ→瀞峡トンネル
(以下#3-6) →宮井→日足→小口 105km RIDE WITH GPS

オトノリのいつものアングル まさかここにフルサイズ機を持ってくる日が来るとは PENTAX K-1 smc PENTAX-FA31mm1:1.8AL Limited

 過去に通っているので、今は自分が進む方向がわかっている。まずは瀞峡上流側へ。
 この区間の国道169は、高速道路みたいな高規格の新道だ。険しく切り立って聳える山々と深く落ち込む谷間を、長大トンネルと長大コンクリート橋と堀割りで、地形とは全く無関係の直線と単純な曲線で、しかも山の中腹辺りで、可笑しくなるほどばんばん突き抜けてゆく。やや古い私の1/5万地形図には、旧道が大きく曲がりくねる瀞峡の断崖絶壁に貼り付く細道として描かれている。途中から破線となった渓谷沿いの細道は、東野の手前で国道色と破線が途切れ、もう一方の山間細道との間が未通区間となっていて、その未通区間が全く別の場所を通る新道となっているのだ。その差は可笑しくなってしまうほど大きい。ツーリングマップルだと両方の道がちゃんと載っているはずだ。実態としては、あるいは旧道が部分的に廃道になっているかもしれない。

 東野トンネルからもう2つトンネルを抜けてゆく。この先小松から小森ダム湖まで北山川沿いに数km、未拡幅区間が残っていて、そのためにこの高規格新道を訪れる車はかなり少ない。

迫力の北山川 PENTAX K-1 HD PENTAX-D FA15-30mm1:2.8ED SDM WR パノラマ合成
紀伊半島Tour18#3 2018/4/29 湯ノ又→小口 国道169 東山→小松 瀞峡を見下ろす #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 ツーリングっぽい装いの、一見緩めのロード団体が通過していった。関西のツーリストはこういう素晴らしい道が近場にあって、いやいやいや決して近い場所ではないようだが、これはこれで紀伊半島の、全国に類を見ない個性的な国道の一員と言っていいかもしれない。ならば、今日は国道169で熊野川沿いの宮井大橋まで下りきってしまうのが正解なのかもしれない。やっと気持ちが固まってきた。

紀伊半島Tour18#3 2018/4/29 湯ノ又→小口 国道169 小松 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 とりあえず細道区間、瀞峡を望む私的ポイントは訪れておきたい。K-1(と重いレンズ4本)を持ってくることに決めた時に、ここは念頭にあった場所の一つだったのだ。

 小松から急に狭くなった道を過去3度の訪問とは逆方向からオトノリへ。大分下って少し登ってみると、やはり道の周囲や登り下りの度合いがよく理解できた。それにしても連日国道425をみっちり訪問した後だと、この山深い瀞峡区間が、谷の空間が上下左右に大きいだけで広々として見えてしまう。

オトノリから瀞峡トンネル経由で小口へ 赤は本日の経路

 私的ポイントで晴天の瀞峡と自転車の写真を撮り、これで満足できたような気になれた。また次に来るときも、この瀞峡が静かで個性的な渓谷であってほしい。この道が拡幅され、熊野川の渓谷のように車がどんどん通り過ぎてゆくような空間になって欲しくないものだ。

今回も来ちゃった PENTAX K-1 smc PENTAX-FA31mm1:1.8AL Limited ここぞの77mm PENTAX K-1 smc PENTAX-FA77mm1:1.8 Limited

 14:35、オトノリ発。折り返して再び小松、そして新道区間へ。

 前述のように、国道169は高規格道路であっても車は少ない。あまり厳しい斜度の坂は皆無で、時々登り返しつつもほぼ一定の緩い下り基調が続く。橋の途中で脚を停めれば、類を見ない程緑濃厚な山々を中腹の位置で眺めることができる。谷底を見下ろせば、目も眩む谷底から空まで上下に巨大な空間が展開し、圧倒される。旧道系細道のような、周囲の風景と道の空間が一体化した楽しさとは別に、これはこれで充分に見ものだ。

 瀞峡トンネルは2049m。瀞峡の最深部を一気に通過して山の向こうの玉置口にワープしてしまう。トンネル手前の橋からは、前方の山のど真ん中に、斜め上下に並んだ2本のトンネルが眺められる。新道の瀞峡トンネルは下、旧道の田戸トンネルが上。2003年にはまだ瀞峡トンネルが建設中で、田戸トンネルから国道169の旧道へ脚を向けたのだった。2015年の訪問では瀞峡トンネルを通って玉置口で建設中の橋梁を見上げてから、まだ細道旧道の国道169で蟻越峠を越えた。そして今日は、玉置口も橋梁で飛び越え、竹筒まで全部新道で下ってしまうのだ。

 等と感慨に浸っていると、更に少し手前、100mぐらい落ち込む谷間を渡る大きな橋の隣に、旧道の細い橋が並んでいるのに気が付いた。ややか細く見える橋ながら通行止めじゃないようなので、少し脚を向けてみた。

紀伊半島Tour18#3 2018/4/29 湯ノ又→小口 国道169 神下 旧道の橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
東野トンネルから玉置口経由で宮井へ 赤は本日の経路  

 地図を見ると、谷底は北山川とさっき辿ってきた葛川の合流点である。渓谷が真下に深く落ち込んでいるのに、欄干は細い角パイプで1m程度、何だか転落が怖ろしい。6m程度の道幅のなるべく真ん中をそろそろと通る。でもこちらも、かつては車が普通に通っていたのだ。というより、2003年にこの橋を確かに通ったことを、やっと思い出した。

対岸に田戸の集落 一度瀞峡探訪ポタせねば RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 橋の上からは、地形図に描かれている道が見渡せた。道は谷底から対岸を再び山間の集落へと登り返してゆく。この辺りで、山間の一軒旅館がカフェに改装されて頑張って営業していることが、少し前にNHKの朝のニュースで紹介されていた。いつか小松ダムから続く瀞峡とその脇道にたっぷり時間を掛け、旧道巡りをしてみたいと、以前から思っている。しかし今は、これからあそこを訪問しようとは全く思わない。谷底との高低差は100m前後だし、登ってしまえば意外に登れるのかもしれないとも思うものの、やはり疲れているのかもしれない。おとなしく宿へ向かおう。

 瀞峡トンネルへ。長くひんやり薄暗く、照明に照らされたコンクリートの丸い空間断面が、渓谷の風、瀬音と鳥やカジカの声を尚更思い出させる。脚を停めてどんどん下ってゆく2000m強、やはり長大トンネルはタイムマシンか4次元トンネルのようだ。

記 2018/6/2

#3-6へ進む    #3-4へ戻る    紀伊半島Tour18 indexへ    自転車ツーリングの記録へ    Topへ

Last Update 2020/3/16
ご意見などございましたら、E-Mailにてお寄せ下さい。
Copyright(c) 2002-18 Daisuke Takachi All rights reserved.