紀伊半島Tour18#3
2018/4/29 湯ノ又→小口-3

蕨尾から滝経由で小川へ 赤は本日の経路

湯ノ又→牛廻越 (以上#3-1)
→蕨生
(以上#3-2)
→滝→小川
(以下#3-4) →上葛川→東野トンネル
(以下#3-5) →オトノリ→瀞峡トンネル
(以下#3-6) →宮井→日足→小口
105km RIDE WITH GPS

迫西川 隅々まで人が住んでいるのが十津川村の凄いところ RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

紀伊半島Tour18#3 2018/4/29 湯ノ又→小口 十津川温泉 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 今日は十津川温泉のドライブイン長谷川は通過しておく。昨日のラーメンはとても美味しかったのだが、町中に見かけた「ラーメン」の幟が気になっていて、とにかくそちらに行ってみないことには気が収まらなかったのだ。幟など普段は珍しくも何ともない。しかし、実は大変な宣伝効果があるものなのだ、と思った。

 結局十津川温泉の短い町中区間では、昨日あったはずの場所で今日はラーメン屋の幟が見当たらなかったので、そのまま十津川温泉自体を何となく通過。食堂には立ち寄りそびれてしまった。まあいい、特に何か切実に食べたかったわけじゃない。やはり何か、行く手の道程に手がかりが欲しかっただけかもしれない。

 蕨生から昨日国道425で国道168と合流した滝まで、国道168と国道425は一応重複区間となっている。だからあえて「国道425を走っているのだ」と言い切っても全然間違いは無い。しかしやはり、「国道425を通る」と文字で考えるにあたって、168重複区間と純正425はやはり全く別の空間として捉えたい気にはなる。

栃本手前 泥水は昨日見た崩落復旧工事の影響? RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 国道168は国道168で天下の十津川街道であり、関西の自転車ツーリングコースとして私だって聞いたことがあるぐらい伝統的に有名な道だ。2018年の現実としては、拡幅が進んだり山間で長大トンネル橋梁連続の新道区間に変わり、交通量も多くなっているかもしれない。しかし、神奈川山奥の道志街道が道志みちとなり、全く別のテイストの道に変わったほどの変化じゃない、と自分に言い聞かせつつ、山も水も緑色の大きな渓谷を遡ってゆく。

  折立から滝経由で上葛川へ 赤は本日の経路

 今戸トンネルの手前の町、折立までは何だかすぐ着けてしまったように感じられた。しかし、所要時間を見たら、実は昨日より5分多く掛かっている。昨日は下りで経済運転、今日はほとんど登らないから平坦と言っていいとはいえ、一応登り方向なので自ら脚を駆動する必要がある。そういう時間感覚の違いがあるのかもしれない。
 コンクリートにナトリウム灯が延々1.9km。映画で見かけるタイムトンネルのような今戸トンネルを抜け、再び昼の光の中へ。11:55、滝着。ループ橋から谷底へ降りて国道168のコンクリート橋をくぐり、放り出されるように芦廼瀬川の谷間まっただ中へ。
 ハルゼミの合唱、渓谷の瀬音、カジカの声、涼しい風。タイムトンネルを抜けて、ツーリングの時間が戻って来た。

野趣溢れる芦廼瀬川渓谷 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 国道425は滝から1〜2kmは拡幅済みだったのが、意識しないうちに何となく段階的に細くなっていて、気が付くとハードボイルドな表情の道が始まるところだった。昨日通ったばかりなのに、道が細くなるまではあまり記憶に残っていないのだ、と気付かされた。

 十津川の手前からずっと広い道が続いたからか、新緑の静かな細道では意識していなかった身体の緊張がほぐれるのが自分でよくわかる。しかし、気を許しすぎて転倒や転落しないように気を付けねばならないのも相変わらず国道425ならではだ。

 広葉樹の木漏れ日と渓谷の川面が、木陰の中できらきらしている。瀬音と鳥の声が響き、日差しの暑さが消え、涼しい気温と湿気が身体に迫ってくる。こういう道を走りに旅に出たのだとつくづく思う。

緑に染まりそうな国道425 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 先を急ぐ気分が無くなり、この後の行程について具体的に考え始めていた。事前に考えていたGPSトラックは、この後上葛川トンネル・瀞峡・小森から国道311風伝峠とその周辺の細道へ、そして県道780・熊野川から小口へと組んである。このうち後半の国道311周辺に対し、何だかあまり魅力が無いような気がし始めていたのだ。というのは、やや大回りの割に既済経路が多く、丸山近くで拡がる棚田以外、知っている範囲では特に何か景色が良いような場所があるわけじゃない。要するに目新しさに欠けるような先入観があり、それは先入観かもしれないとわかっていても、あまり訪れたいと思っていないのだ。さすがは苦し紛れにくっつけた上方オプションである。
 一方、瀞峡の国道169から先、北山川河岸の竹筒までトンネル新道が開通しているのを、昨夜発見してしまっていた。2003年2015年と、私はここの旧道、300m以上単純に登って下るだけの蟻越峠を、「何でこんな無駄な登り返しがあるんだ」と罵りながら通っている。2015年には「いよいよここも新道か」などと感慨を抱きつつ、開通間近の橋梁を下から眺めたものだ。そしてこの区間は、私が訪問した4ヶ月後の2015年9月、新道として開通していた。水呑峠ほどじゃないがそれなりに因縁の道であり、そちらを通ってみたい、というより通らないと後悔するんじゃないか、と心を奪われていたのだ。かつて骨を折った峠を新道で通過するとか思い出の谷間を大橋梁で通過するとか、もうそんなツーリングをしても良い年齢じゃないか、おれももう53歳だぞ、等とも思っていた。
 それに、国道169新道の方が圧倒的に楽だ。こんなことで悩むのは、3日目になって疲れ始めているのかもしれない。しかしそれなら、尚更今日は早めに宿に着きたい。
 というわけで、あらゆる面で国道169経由に気が向き始めていたのである。登りがちょっと少なくなることだけが何だか後ろめたく、決断するための大義名分を探していたのだ。

 12:50、小川着。滝から白谷トンネルの向こうの寺垣内まで、最後の集落である。集落の一番奥で道は芦廼瀬川を渡る橋でくるっと折り返し、そのまま上葛川へ登り始めるのだ。昨日下って恐怖を感じたほどの、上葛川への190m登りである。

 
紀伊半島Tour18#3 2018/4/29 湯ノ又→小口 国道425 小川 芦廼瀬川下流側を望む #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 6時過ぎに朝食を食べてからここまで水分だけしか摂っていなくて、そろそろ腹が減ってきていた。道の登り始め手前の橋が何だか脚を停めるのに区切りが良さそうだったので、ここで満を持して民宿龍神のおにぎりをいただくことにする。
 聞いていた通り、おにぎりは塩味の高菜ご飯であり、海苔の代わりに高菜の葉っぱが巻かれていた。ラップを剥いてかぶりつくと、高菜の葉っぱの香りがお米の香りと合わさって、尚且つ高菜ご飯自体が香り高い。むしゃむしゃ噛むと、濃いめの塩味にやはり瑞々しい高菜の香りがしゃきっとした歯触りで、こりゃあすごく美味しい。フロントバッグ内を多少無理してでも、もう一つ作ってもらうべきだったかもしれない。

記 2018/6/2

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Last Update 2020/3/16
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