紀伊半島Tour18#2
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上池原→寺垣内
(以上#2-1)
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13:00、蕨尾発。温浴施設「昴の湯」の看板が見える。昼食が食べられたかもしれない、等と思いながら、いや、ツーリングなんだからやっぱり長谷川だよ、などと思ったりするうちに、すぐに上湯川の谷間とこれから向かう県道735が国道425から分岐。国道425よ、しばしの別れだ。
県道735が遡る上湯川の渓谷は、川原の縁からすぐに高く切り立つ山に挟まれている。深い谷間の川幅は広く、谷間は比較的見通が良い程度の屈曲なので、薄暗いという雰囲気ではない。
谷間を挟む山肌はボリュームたっぷり、何か下界から隔絶されたような清らかさが漂う稜線まで良く見渡せる。時々思い出したようにごく小さな集落か民家が現れては山中へ消えてゆく。
全体的に、道の斜度の割には初っぱなから山深い表情が印象的だ。
谷底に貼り付いた道は、その幅が再びというか順当にというか狭くなると、川面近くから高度を上げ始めた。渓谷が道から50m位の深さになり、周囲の山々の眺めががらっと変わる。
標高220m辺りまで登ると斜度が一旦落ち着き、渓谷を遡りつつ細かくアップダウンを重ねながら標高400m弱ぐらいまで次第に高度を上げてゆく区間に移行。
その後約10km、下出谷、殿井、小壁と、小集落というより民家がまばらに現れる地域が続く。
細道は、広葉樹林や杉の森、渓谷の断崖に、時々その長さが不思議になるほど延々と続いてゆく。道の周囲は森と渓谷ばかり。登っている気はするが、実はあまり標高は上がっていない。
時々民家が出現して、自分のいる場所を地図で探し、「まだここなのか」と驚いたりする。もともとペース自体が遅いのに加え、風景がなんとなく変わらないので、ますます進んでいない感が増幅されているのだ。
またペースが遅いのは登り斜度のせいより、急カーブが続くために転ばないよう自然と自主規制していることも大きいかもしれない。地元軽自動車が時々通るので、尚更あまり調子に乗って真ん中を進む訳にいかない。
ただ、午後の日差しでまぶしい木漏れ日、杉の森の涼しさは厭きることが無い。空腹なのにおにぎりを食べるのも憚られるほど泡を食った2006年とは違い、たっぷり時間を取っている今日、落ちついてこの道を辿れている。
時間に追われてとても不安だった前回、午後の薄曇りだったせいもあって、良い道だと思いながらこの道を楽しめていなかったことを反省した。
また、自販機は国道425が蕨生で国道168と分岐してから全く登場していないものの、岩場の所々には湧き水がみられ、中には塩ビ管で配管されているものもあった。
今回はこれらの湧き水は飲まなかったものの、地図で見て上に集落が無い場所がほとんどだったことから、この道で水に困ることは無いと思われた。
大桧曽を過ぎて標高400m辺りから、杉の森の中で急に斜度が上がった。
細道の登りは、くねくねカーブの内側で前輪が浮く。多分軽く10%以上を越えそうだ。記憶通り、スパルタンな登りである。
寺垣内の小さい集落もお構いなしに、その先もぐいぐいと登りが続いた。
ただ、牛廻山登山道の分岐がある古谷川を過ぎると、斜度が少し緩くなった。大分高度が上がったためか、道はいつの間にか谷沿いから離陸していて、杉の森の間に周囲の山がちらちら見え始めていた。
この長い道も引牛越まで最終段階だ。気分的にだいぶ楽になった。そうなっても、山肌の細かい屈曲は引牛越の手前まで続いていた。
その尾根部分では、行く手の落ち込んだ稜線に道がくるっと回り込んでいるのが見え始めた。前回1度越えているからわかる、引牛越である。訪問前はこういうことは全く忘れているのだが。
何度も次が引牛越かもしれないと思った末に、15:20、引牛越着。標高770m。
記憶以上に狭い岩壁掘り割りの、補強法面の間をくるっと回り込むように通り抜ける峠だ。引牛越の名前が付けられてから長い間、この掘り割り部分は無かったに違いない。それでも鉈の刃のようにエッジの効いた稜線が、峠部分だけ落ち込んでいたのだろうと思われる。そこだけなら、何かまるで渓谷谷底の岩場のようでもある。○○峠などと名前が付いていないのも、国道425の牛廻越と同じように牛の一文字が付けられているのも、何か歴史的な厚みというか、全体的に不思議な存在感が漂う峠道だ。ただ、場所としては道幅だけなので、道端の岩に自転車を停める以外にやることはない。
紀伊半島Tour18#2 2018/4/28 上池原→湯ノ又 引牛越 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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記 2018/5/28