紀伊半島Tour18#2
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上池原→寺垣内
(以上#2-1)
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奥地川の谷から白谷トンネル越えだ。峠の名前が付いていないだけで、標高差550m弱の堂々たる峠越えの道である。
道幅が急に狭く、カーブが急になり、辺りは広葉樹林が路上に梢を伸ばす明るい木漏れ日の密林となった。鮮やかなピンクのツツジ、木々に巻き付いた藤も、新緑ととも道を彩っている。
広葉樹林は時々杉の森に替わった。杉は当然のように植林っぽい。しかし他の場所で見かける杉に比べ、何故か梢の下の空間に鬱蒼とした密林の風格が感じられる。でも、それは細道ならではの気分かもしれない。
ほぼ平坦に近い渓谷に、そういう深い森がしばらく続いた。凄い透明度の渓谷を森の隙間から時々眺めつつ、木漏れ日と瀬音とひんやりした森の空気に包まれていると、緑に染まりそうな気分になってくる。緑に染まりそうという感覚を、今回のツーリングではよく感じる。紀伊半島訪問毎度の気持ちである。やはりこの緑は格別なのだ。
狭かった渓谷が更に狭くなり、渓谷が道に寄り添い始めた。ルートラボの高低差断面を思い出してそろそろかと思っていると、おもむろに坂区間が始まった。
斜度は初っぱなからもう10%以上。細かい緩急はあり、急な場所では15%ぐらいはある。緩い場所でも10%は下らないんじゃないかと思われる。もう白谷トンネルまで600m弱ぐらい、殆ど斜度は変わらないはずだ。
渓谷沿いの森の中からは、前方に高い山が立ちはだかるのが見えた。確か上の方に…と思って探すと、法面吹付コンクリートが以前の記憶通りに見えた。あれが行く手の道のはずだということを知識で知ってはいるが、その見上げ角度は標高差500mとは思えない。あれ本当に行く手の道なのかと思うのも、知ってはいる。
道は谷底からくるっと回り込んで折り返し、山腹を離陸開始。
相変わらず斜度が厳しいだけあり、すぐに面白いように高度が上がる。しかしそれは進んだ距離にしては高度が上がっているというだけの話で、位置は一向に進まない。
切り立つ岩場に貼り付く容赦無い登り、岩場の切り立ち度、小橋で渡ってゆく沢、緑の美しさなどなど、風景の要素が南アルプスを望む丸山林道に酷似していることに気が付いた。
入り組んだ山肌をショートカットする短く小さなトンネルも、何だかそれっぽい。無いものは残雪の南アルプスぐらいか。
峠下の80mぐらいまで斜度は殆ど緩むことなく、道は山肌をどんどん登ってゆく。
最後のつづら折れで尾根を折り返すと、谷間を見渡す展望が開けた。そうだ、向こうから来た2007年は、白谷トンネルから少し下ったところで展望が開けたんだっけ。
紀伊半島Tour18#2 2018/4/28 上池原→湯ノ又 白谷トンネル越え-2 トンネル手前最後の折り返し後の展望ポイント #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
ガードレールの中から谷底を見下ろしてみると、かなり見下ろし角度が急なのに、真下の谷底が見えないほどの急斜面だ。
何か落としそうで少し怖い。道端の法面補強には見覚えがある。まさにさっき、下から見上げた法面補強なのだった。
10:20、白谷トンネル着。標高870m。
紀伊半島Tour18#2 2018/4/28 上池原→湯ノ又 白谷トンネル下北山村側入口 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
空に開けた山肌の岩場にトンネルが穿たれていて、その手前に稜線から急降下する沢がある。沢と行っても水は涸れていて、大小無数の岩が転がって積もっているだけなのだが、それが何とも厳しく荒々しく、いかにもこの国道425のハイライト地点らしい。こういうところも山梨辺りの林道、それも2000m級の林道と表情がほぼ同じである。しかしこちらは国道なのが凄い。
見下ろす谷間は、かなりの急斜度で谷底へ落ち込んでゆく鋭角的な空間だ。鋭角的というより、何重にも続く両側の斜面に隠れて、落ち込む谷底が見えない。ひたすら斜面を埋め尽くした山肌を駆け上がる濃淡の木々が、視界を埋め尽くしている。岩場も緑も荒々しい表情の場所だ。過去の訪問では先を急ぐばかりで、あまりこういう雰囲気を味わうことはできていなかった。平和に拡がる青空を見上るにつけ、こういう天気の良い日に再訪できて良かったと、つくづく思う。
記 2018/5/28