紀伊半島Tour18#1
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三瀬谷→宮川貯水池
(以上#1-1)
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2005年の撤退から13年後、初めて眺める宮川貯水池である。
湖面の幅自体はそう広くなく、入り組んで奥へ続いてゆくタイプの人造湖だ。
切り立った岸辺の山は、もりもりと広葉樹林に厚く覆われて鬱蒼としている。入り組んだ湖岸の山側はがけが露出し、木々が道に覆い被さっている。ダムから先更に細くなった道道53の路上には、岩の細片が絶えない。
人間の領域が森に勝負を掛けるハードボイルドな雰囲気は、ここまでの人里でみられた細道の整然とした親しげな表情とは全く別だ。まさに紀伊半島の、コアな細道のイメージ通りだ。
しかしそういうワイルドな雰囲気の道なのに、意外にもかなり古びた公衆便所(夜は足を踏み入れたくない位)や水場など、そういう裁けたものがしばしば現れるのが特徴的だ。おそらく道の開通時に作られた物と思われる。特に、こんな谷の奥まで来て、食堂が存在するのには驚いた。
12:10、新大杉橋着。かなり細い鉄骨橋で県道53は対岸へ分岐し、道の標識は県道603に変わった。いよいよ水呑峠を越える道の名前である。
橋からまだしばらく湖岸沿いだと思っていたら、意外にすぐ湖岸を離れ、桑木谷をぐいぐい登り始めた。このまま峠の短いトンネルまで続く登りである。
地形図では、一見谷の折り返し地点まで等高線があまり横断していないように読めた。このためしばらくあまり登らないと思っていた。実際には早くも面白いように高度が上がっている。地形図をよく見直すと、確かに湖面から折り返しまで70m以上登っているはずなのだった。
道は山腹を登り続けた。ルートラボの通り斜度はほぼ均等で、10%程度。これならギヤをぐっと下げ、淡々と登ってゆける。まあ遅いが。
周囲の森は、広葉樹林と杉林が入れ替わって続いた。杉も植林だと思われるが、奥武蔵のような整った雰囲気は全く見られない。どちらにしても鬱蒼と深い森である。森の中には猿が多い。
時には行く手の道を横切って山中へ逃げていったり、斜面の上の方からギャーギャーと、多分こちらに向かって鳴いていた。恐らく威嚇しているのだ。路上には真新しい緑色の糞もみられる。熊の看板が無いのが救いである。熊も猿には辟易するだろう。
谷間の道から、行く手正面の切り立った斜面に道がくちゃくちゃ貼り付いているのが下からよく見えた。峠手前のつづら折れだろう。たかだか100〜200mの標高差に思えないほど上に道が見え、心が折れそうになるものの、視覚はあまり当てにならないことも毎度の事だ。あと200mと知っていれば、いつもの200mである。
つづら折れの上からは、深い谷間と緑もこもこながら鋭角的に切り立つ山々、そしてさっき通ってきたばかりの道が見下ろせた。上から眺めると尚更、山間にくねくねと随分細い道である。
峠近くの稜線には丸裸の斜面が見えた。森を伐採してその後なかなか木が定着しにくいのか、それとも何年か前に大伐採したばかりなのか。
ひょろひょろと草だか樹だかよくわからない茂みの斜面は、何とも他でみかけない異様な雰囲気を醸し、13年前の崩落によりなかなか開通してくれなかったこの道に箔を付けていた。
R0010202.JPG 紀伊半島Tour18#1 2018/4/27 三瀬谷→上池原 水呑峠宮川ダム側手前 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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谷間を見下ろす展望ポイントから最後にひと登り、13:15、水呑峠着。標高650m。
R0010203.JPG 紀伊半島Tour18#1 2018/4/27 三瀬谷→上池原 水呑峠水呑トンネル宮川ダム側入口 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA |
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13年間の思いが叶った瞬間だった。雲は宮川貯水池辺りより更に厚く、やや薄暗い程。しかしこちらは53歳の誕生日。最高のお誕生日プレゼントだ。思えば曇りで風景がやや重い反面、暑くないので水をあまり飲んでいない。雨さえ降ってなければ上々だ。ツーリングの神様、どうもありがとう。
そして、上池原着18時のスケジュールとして、水呑峠から下った海岸の相賀を14時に通過できれば、後は安心できると思っていた。今水呑峠で13時15分なら、かなり上々である。
記 2018/5/20