★行程★
北海道Tour18#7
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浜鬼志別→宗谷岬→川尻→沼川→本流→幌延→雄信内→歌内→中川
(以上#7-1)
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外がやっと明るくなった頃、少しだけ部屋の窓を開けてみた。浜鬼志別早朝毎度の例に漏れず、かなり肌寒い空気が風とともに入ってきた。そして外へ手を出すと、雨が少しぱらついているのが感じられた。
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5時過ぎ、ロビーで荷積みを開始。風も国道の音も全く聞こえない。ただ薄暗く色彩感に乏しいホテル前の駐車場と国道238と分厚い雲が見えるだけだ。これから外に出て、中川まで1日走るのだと思う。でもどんなに寒くても、最悪レインジャケットとフリースを重ね着すれば、気温一桁台後半ぐらいは耐えられるだろう。いくら何でも8月なんだから。
今日の天気予報は、コースの大半で朝のうち雨、9時以降概ね曇り。終着の中川とサロベツ原野方面では、15時の桝以降雨になっている。今日の行程は150~160km台。朝の宗谷丘陵やお昼頃有明辺りの丘陵で多少寄り道しても、15時以降はもうサロベツ原野方面の平地に降りているだろう。その頃に雨が降り始めたとしても、平地で1時間半ぐらい脚を回していれば、お風呂とふかふかベッドがある中川の宿に着くことができる筈。それに、実際には天気の進行が遅れて18時まで持つかもしれない。
今ここ浜鬼志別での現実としては、内陸方面の雲はかなり厚く低いように伺える。15km先の東浦に、早くもその内陸方面、宗谷丘陵の道道1077と889への分岐がある。分岐で空の状況をみて、訪問を諦めるなら潔く諦るべきだろうな。
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5:50、ホテルさるふつ発。国道238の路上に出ると、やはり寒い。
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国道238は浜鬼志別南側の台地から浜鬼志別市街まで下り、そこからしばらくオホーツクの海岸際に続いてゆく。市街北側の漁協のホタテ工場を過ぎると、廻りに漁港や漁村は途絶え、視界には建物はほとんど無くなった。
陸地側は高さ20~40m程度の台地の縁、森ではなくやや高めの茂みか崖になっている。海側は道の外がすぐ波打際になっていて、水平線の上は厚く薄暗い雲、下は寒々と不透明な暗い色の海が拡がっていて、遠くの海面は鈍く白く光っている。その明るさと遠くの明るさへ続く開放感が、頭上の雲の重さで滅入りがちな気持ちを和らげてくれていた。
道端には時々番屋みたいな倉庫みたいな小さな建物が現れ、過ぎてゆく。また次の番屋を遠くに見付け、次第に近づいてまた通り過ぎてゆく。単調な風景がしばらく続いていると、とぼとぼと北上する自分の空撮画像を想像したりする。これで空が青くて朝陽が出たら、どういう色彩の景色になるのだろうと思う。想像を遙かに超えた感動に震えることができるのだろう、とも思う。
とりあえず、どこまで行っても雲が低く厚くて、薄暗くて風は強いものの、雨にはなっていない。今のところは快調な進行ではある。
もともとだいぶ南の浜頓別辺りで既に交通量が減っている国道238は、浜鬼志別から北では更に車が減る。浅茅野や芦野辺りのように時々大型車が高速で通過するものの、これぐらいの交通量なら、国道とは言えツーリングの経路として普通に許容できる。そもそも、浜鬼志別から東浦まで他に道が無い。
海岸部ならではのかなりの強風が、昨日に引き続き相変わらず吹いている。進行方向に対して追い風方向で、脚をくるくるっと回して一気に30km/hにもっていくと、そのまま楽々巡航できてしまう程だ。軽い脚の感覚に、つい昨日の向かい風の苦しさも思い出してしまう。もしこれで進行方向が逆方向だったらとか、こちらの都合と風向きは基本的に無関係だとか、確率的には概ね半々だからまたいつか必ず向かい風に見舞われるとか、どうしてもあまり単純に追い風を有り難がる気分にはなれない。多分空が暗いせいだ。気分はどうあれ、好条件が続いている内に脚を進めとかねば。
東浦の手前、道道1077への分岐では、海岸からすぐ内陸側の雲がどす黒くかなり低いのが見えた。内陸方面からやって来た車の車体は明らかに濡れていて、オートバイなどは上下雨具完全装備だ。海岸から少し内陸へ向かうと、この低い雲の中で雨が降っているのだろう。こういう天気だと、早朝6時台に無人の宗谷丘陵まっただ中の道道889へ向かう気はしない。今日は少なくとも宗谷岬までは国道238継続だ。宗谷岬でまた宗谷丘陵へ立ち寄るか決めよう。
6:50、東浦着。ややまとまった港町ではあるものの、自販機が無いのでそのまま通過してしまう。確か東浦には自販機が無いぞと思ってはいたので、知来別で自販機コーヒー済みだ。
東浦までまで波打ち際に北上してきた国道238は、東浦の北から内陸の台地へ80m程度乗り上げる。海沿いの断崖が険しすぎるためかもしれない。その登りの直登が、東浦の漁村手前からとてもよく見通せて、初めて見たときには愕然としたものだ。見えている範囲の登りは、実は地図で見るとたったの40m。斜度も7%ということを、私は過去の訪問からわかってはいる。しかし今日も、登り総量はわかっているのに、心が折れそうになる気になった。
斜度7%は道北基準ではやや急な方と言え、登り下りの少ない国道238中、群を抜いている登りであることには間違い無い。しかし実際に登り始めると、まあ所詮は80m。当然の如く意外にすぐ登れてしまう。
海岸の断崖から内陸は、すぐに宗谷丘陵の樹海の端である。さすがに北海道最北端、密に生い茂る静かな、あまり植林っぽくない針葉樹森だ。何かそこかしこに熊が潜んでいそうな、いや、茂みからこちらを観察しているような雰囲気が、路上にまで漂っている。空がかなり薄暗いのも、そんな雰囲気を盛り上げている。空気中に水滴も漂い始めた。天気が雨に向かっているというより、道が少し内陸に入って少し標高が上がったためと思われる。やはり今日は宗谷丘陵の内陸方面には向かわなくて正解だったかもしれない。
こんな暗くて不気味な場所は早く通過してしまいたいが、登りなのであまり速度も上がらない。何事も起こらないようそろそろと、そして粛々と通過してゆく。
ピークを越えてもしばし森の中。海岸際に下りきる最後の30mぐらいで、やっと道は森の中から突如放り出されるように笹原の中へ。
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オホーツク海と空が道の周囲に拡がり、内陸側だけが宗谷丘陵の端部となって、周囲180°の開放感とともに海岸まで一直線の下りとなる。宗谷岬よりも余程視覚的インパクトが大きい。
丘の笹原の彼方には、風力発電の風車が並んでいる。日本最大級の風力発電所、「宗谷岬ウインドファーム」だ。内陸の道道1077と889が開通したこともあって、訪問が2008年以来10年振りになってしまった道道238のこの区間。国道だからと言ってあまり毛嫌いするような道ではないと思った。道道1077と889に行けるのなら、それに越したことは無いかもしれないとも言えるが、今日は今日の落としどころ、楽しみ方をすればいいのだ。道が今日の自分に自信をくれた気になれた、国道238の私的最大ハイライトだった。
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下りきるとあとは宗谷岬まで岸壁の波打ち際を2~3km。
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衝立のような岸壁の向こうに突如民家が現れたかと思ったら、その向こうから唐突に漁村が始まった。宗谷岬手前の漁村、大岬に到着したのだった。
大岬では宗谷丘陵への登りが分岐する。つまり、東浦の手前以来の、今日宗谷丘陵へ向かうかどうかの判断ポイントなのだ。まずは知来別以来コーヒーを飲んでいないので、とりあえず分岐を横目に通過し、少し先で缶コーヒーを飲んでから落ちついて少し考えてみた。
辺りには水滴、いや、もう少し雨っぽい粒がぱらつき始めている。今横目に眺めた宗谷丘陵への登りをのぞき込んでみても、少し上はガスの中なのだった。それは霧っぽい霞じゃなく、明らかに灰色の、暗くとろんと不穏で間近な雲である。今宗谷丘陵に行っても、単なる霧雨の中の10%登りであり、標高100mも登ればその霧雨は少なくとも小雨以上に変わってしまうことが確信できた。それなら、このまま追い風継続の海岸沿い行程でいいじゃないか。
ここで少し思いついた。まあ、とりあえず宗谷岬に行ってみるか。結局おれは宗谷岬に立ち寄るのか。
7:40、宗谷岬着。岬のモニュメントで写真を撮る人が、今日も朝っぱらから一杯だ。私は、混雑度を勘案してまあ道端だけでいいや。ラーメンを食ういいチャンスではあるものの、まだ腹は減っていない。宗谷岬には過去何度か来てるし、あまり狙い定めた訪問でもないしね。
引き続き国道238を先へ進む。宗谷岬で進行方向が180°近く変わるにも拘わらず、オホーツク海側から風向きは180°変わり、結局追い風は替わらなかったのが大変有り難い。突端の岬によくみられる現象である。
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清浜の宗谷丘陵への分岐でも、やはり断崖のちょっと上はもう霧の中だった。そのまま通過してしまう。ああ、今年は遂に宗谷丘陵の内部に行けなかったな。しかしその後も時々空を見上げてみると、やはり内陸側に切り立つ崖の40~50m上が、もう完全に灰色の雲に隠れている。これだとあの中はまず確実に雨だろう、と諦めは付いた。
上磯で「セイコーマートかみいそ」へ。
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昔は確か「そうや」店が道内最北のセイコーマートだったはず。いつの間にかこちらが宗谷岬から南下して最初に現れるセイコーマートになっている。こちらだと、稚内市街のセイコーマートに、もう少し北の店があるかもしれない。などと考えながらクロワッサンを仕入れておき、缶コーヒー以外にあまりネタは無いのに、店先で少し休憩したりする。宗谷丘陵に寄らず山間も経由せず、今日も昨日同様かなり余裕のある行程になりそうだ。
9:00、川尻着。コースはここで宗谷湾沿いの国道238から、内陸へ南下する道道1077へ分岐する。この分岐は、道北の私的最重要幹線ツーリングコース「道北縦断道道」シリーズの、一応最北端ということになっている。ここから南下し始めるということは、コース全体の南下フェイズに移った、すなわち旅が後半に入ったということだ。思えば今日で旅も7日目。そういう兆しがあって然るべきだろう。
内陸に入り込むと、平地では少しは空気が澄んでいて、谷の拡がりを囲む山の裾までは見通すことができた。しかし、裾からすぐ上が厚く暗い雲の中であることに変わりは無い。
下増幌では道道1077が東へと直角に向きを変え、そのまま南下する道は農道となって道道1077から分岐した。道道1077は、オホーツク海岸の東浦で国道238から分岐した道である。宗谷湾から南下する南北方向の道と宗谷丘陵の南端の東西方向の道が、一続きの道として道道1077に指定されているのだ。宗谷丘陵越えの区間は長らく未開通だったためか、近年までここ下増幌での農道分岐は、山中で行き止まりとなる太い道がいきなり一直線の細い農道に突き当たり、交差点からその道が道幅は変えずに名前だけ道道1077となって宗谷湾へ北上してゆく形となっていた。
今回、宗谷湾から既に道道1077は拡幅されていた。道としては南北に一続きだった農道も拡幅されたのかと思っていたら、一連の道道1077だけが拡幅されていて、直角部分はやや緩やかな1/4円を描く道道1077から細道が分岐するようになっていた。道はこういう風にして、次第に姿を変えてゆくのだろう、と思った。
下増幌から増幌へ向かう途中で、辺りが目に見えて薄暗くなってきた。やはり標高の低い平地であっても、海岸部から内陸部に進むとこういうことになるのだ。
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増幌では谷間の真ん中に通る道道121ではなく、東側の丘裾を通る道道1199へ。
道道1199は道道121に比べると途中丘越えはあるものの、こちらの方が車が少なく静かだ。とはいえ実は道道121も車が多いというほど通りゃあしない。沼川の手前では丘越えがあるし、基本的に谷の真ん中の道なのだが比較的のんびりした風景の中を通っている。特に何か決定的に通りたくない理由があるような道ではない。
つまり、どっちを通ってもいいんだが、道道121で3~4年前やや風が強かった印象があり、そしてさっき宗谷丘陵に行っていないので時間があることが、道道1199へ向かってみようと思う理由となっていた。
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空は一面雲、山は見えず薄暗いが雨でもない。こういう日には絶景ポイント的な場所で、景色の良さがわかりにくい。そのため、専ら道が通っている地形だけをイメージしながら道を辿ることになる。
というわけで、何度か通っている既知の地形を、改めて地形を想像、復習しながら沼川を目指す。
丘陵を下って開けた谷間の先、また登り返す丘の裾、牧草地の草原の中の森に所々屋根が見える。沼川だ。単に屋根が見えるというよりも、だだっ広い草原や森や丘陵を眺めた後では、何だか楽しそうな場所であるように見える。あれが人の営みというものなのだろう。
10:05、沼川着。
もう10時、とは言え川尻からまだ1時間。6時前の浜鬼志別出発から4時間強、68km。徒然なるままに脚を動かす内に、ここまでのんびりではあったものの、順当っちゃ順当な時間が経過して距離が過ぎている。まあ、沼川と言えばまずはA-COOP、やや肌寒い軒先でカップ麺で休憩を食べるとする。
相変わらず空は薄暗い。こんなに寒いここだって、晴れれば暑くて仕方無い日も過去にはあったな。去年もそうだった。と、暑さをまず思い出してみる。そう言えば去年はここに立ち寄った後、道道138で小石峠を越え、浜鬼志別へ向かったんだよな。このまま小石峠を越えれば、2時間で浜鬼志別、ホテルさるふつに戻っちゃう。そうしたら、もう中川へ向かう気はしないだろう。中川の宿もキャンセルする必要がある。朝はホテルさるふつにいたというのに、時間が経つということは面倒なものだ、等とも思う。そういうことをしに旅に来ているのに、何だかそういうことが面倒に思えていて、でも結局予定通り中川へ向かうんだろうな。無駄な逡巡は全て自分だけの時間であり、わざわざ休暇を取って北海道までやって来て、面倒臭がっている。旅という物はもともと大変贅沢で無駄なものなのだ。などと考えると、折角の道北で余り天気が良くなくても、もっと言えば走れなくても、「大変贅沢」ということで納得できるのかもしれない。
沼川に話を戻すと、そんな風に自分の行程を省みる気分になる、今日のコース上の要所である。そして沼川が要所である必要条件は、道が交叉していることよりA-COOPが存在していることが大きい。次の要所はセイコーマートがある幌延だ。幌延までは商店は1軒も無かったはず。自販機はあったかもしれないが、あまりあてにはできない。
10:30、沼川発。
有明までは一昨年通って気に入った農免農道を経由する。沼川までと同じく本来この谷間の主要道である道道121も、牧草地の丘を登ったり下ったりして開放的な風景が道北内陸の丘陵らしく好ましいものの、道の線形が大きいためか車が農免農道よりは多く、高速を出す傾向があるように思う。また、農免農道だと道幅が狭く防風フェンスも少ない。
落ちついてきょろきょろしながらのんびり進む私の走り方、気分には合っているような気がしている。
有明で一旦道道121に合流、少し先から豊富町営育成牧場へ向かう農免農道に入りかけ、少しだけ進んで止めた。少し先の丘の裾が霞んでいる。行く手の頭上も目に見えて暗い。
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ここまで雨に降られずに内陸の内側を進めていたものの、一方でここまで南下しても天気が良くなったわけじゃない。今日はずっと、どこもこんな感じで、夕方の雨に移行するのかもしれない。少なくとも一昨年、去年のような、青空と緑の丘が拡がる絶景は全く期待できないだろう。
丘陵を辿る道自体もダイナミックな空間の変化が楽しめるとは思う。とはいえ、さすがに3年連続で訪れるような気象条件じゃないかもしれない。
などと思いながら、どんどん薄暗くなる空の下、丘陵の谷を黙々と登って下り、12:20本流着。クランクで道道84を経由、道道121の幌延への最後の区間へ。
北進の台地へは登り返しとなる。幌延への最後の登りだと思ってややどきどきしていたものの、実際に登ってみれば驚く程あっけない。そして、1997年の訪問時に片倉Silkのフレームが折れてしまい、その場でツーリング終了となってしまった場所も、以前はかなり意識できていたのに、今回は気が付いたら通過後だった。その内道が拡幅などされると道の面影が無くなり、どこでフレームが折れたかすら忘れてしまう日が来るのかもしれない。
などと思いながら通り過ぎる台地上空は更に暗く、深層地層研究所の手前辺りから遂に行く手が霞み始めた、と思うと同時に雨粒のようなものがもう絶えず空中に舞い始め、路面が一気にしっとりと色が濃くなってしまった。雨具を着る程でも無いものの、何だか肌寒い。去年や昨年だとこの辺りはやや暑く、登りで陽が差し始めると汗だらだらだったのだ。さっき沼川でもそんなことを考えていたな。寒暖の差の激しい場所である。
ところが道道121がピークを過ぎて幌延への下り始める辺りから、空の低い部分に溜まっていた雲は、嘘のようにすっと高くなった。未だ青空は見えず日差しが差すような気配も全く無いものの、全体的には明らかに有明~本流の丘陵部より辺りが明るくなっている。幌延はサロベツ原野の北側縁であり、幌延に近づいていることで天気がサロベツ原野の天気に移行しつつあるのだ、と思った。道北も最北部、陸地の幅が狭くても、オホーツク海側と日本海側では天気がこれだけ違うのだ。そして、これで安心してセイコーマートで落ちつく気になれた。
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13:05、幌延着。宗谷本線を渡り、町南部のセイコーマートへ。
もうお昼過ぎ。沼川でのお10時からここまで無補給で引っ張っている。予定通りの行動ではあるものの、やはり腹は減っている。そんな貧脚親父ツーリストを、店内で豚丼が待ちうけてくれていた。これだからセイコーマートは好きなのだ。豚丼以外にもサラダ、オレンジジュース、いつもの面々で腹を充たすとする。
まだ13時台なのに中川まではもう30kmちょっと。内陸側はどうせ雨だし、日本海側へ遠回りしたくなるような天気じゃない。ど晴天には去年出会えているのだから、今この天気で無理をする必要は無いのだ。こういう余裕があるときに限って、のんびり休んでも思ったほど時間は掛からない。
13:35、幌延発。
まずは雄信内へ。セイコーマートから店の前の道道256へ出ると、空中に雨がぱらぱらっと来てすぐ消えた。気が付くと、空は急に暗くなり始めているように見えた。えっ、と思って立ち止まれるような軒下を探し、とりあえず町外れのスポーツ公園辺りにあずまやを発見。その間、いつの間にか雨はしっかり降り始めていた。よく考えてみたら、15時の桝に雨の記号があって隣の桝は12時だから、その境は13時半である。ということは、驚く程ぴったりの、もの凄い予報精度なのであった。
仕方無い。今日はこうなるはずだったのだ。と思って雨具を着る間に、雨は更に勢いを増し、完全に本降りに変わった。
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南幌延、雄信内、道道256では雨以外に向かい風も吹き始め、ぐっとペースが落ちた。
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まあこれも今朝想定したとおり、黙々と脚を動かしさえすれば、2時間もしないうちにホテルの部屋で寝っ転がれて、温泉でゆっくりできるのだ。
もう坂らしい坂は無い。雨であっても牧草地は広々と伸びやかだし、元天塩川の痕跡らしき三日月池はこの辺りの特徴だし、大きくのんびり構えて淡々と、楽しい気分で進めばいいのである。
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幌延から雄信内まで天塩川の西岸に国道40が、東岸には宗谷本線と道道256が続いていた。それが雄信内から歌内まで、東岸は狭くなって川岸から宗谷本線を挟んですぐ山裾となり、東岸を通る道は途絶えてしまう。このため、雄信内・歌内間だけは国道40を少し経由する必要がある。迂回区間は、国道、道道256、町道みたいな裏道を全部含めて約11km。
国道40は交通量はそれほど多くないものの、やはり大型車が時々高速で通り過ぎ、気流とともに水分を散らしてゆく。水たまりの直撃が無くても、そして感じられる水の粒が消えても、汚い水なのかどうなのか解らないほどの水しぶきではあって細かい水滴が漂っていると思うと、あまり精神衛生上よろしくはない。雨も強くなってきた。
周囲をよく見れば、牧草地の防風林が国道40を、一直線の彼方までずっと囲んでいる。やや轍が大きいのも、北海道らしい道の証しなのかもしれない。などとひたすら自分に問いかけるのも、天気があまり冴えないからだろう。この区間の天塩川東岸に静かな道があれば、水しぶき、高速大型車、轍に悩まされずに済むのに、とつくづく思う。
雄信内トンネルを抜けるともうあと少し。
私的幹線道の農道への分岐は唐突に現れる。
打って変わって巾4m未満の道が天塩河岸の牧草地の中をカーブなど描き、天塩大橋へ。大変牧歌的な道である。
毎度泥水で増水しそうに迫力満点の天塩川を渡り、歌内から道道541で再び宗谷本線沿いを中川へ。
東岸の平地は狭く、道は時々山裾の森に続くようになった。空が暗いせいで、森の中から路上に熊が出そうな気になってくる。まだ15時だというのに。
森を出てから天塩河岸の平地に町外れの民家が現れるまで少し距離がある。中川という町は、この辺りが中川郡というだけあり、さすがに広い町だと思う。
15:35、中川着。セイコーマートで物資を買い込み、更に忘れ物を地元スーパーで仕入れ、万全の籠城(といっても今夜1泊だけだが)体制を整えておく。
15:50、中川ポンピラアクアリズイング着。
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明日の予報は中川町と美深町で朝から終日2~4mmの雨だ。平野ならいざ知らず、あの山奥の道道120でこれだけしっかり降られると、正直何が有るかわからない。もうこれだけで、明日1日の運休決定である。仁宇布とはそういう山奥なのだ、とつくづく思う。でもまあ、平野の雨でも運休しちゃうかな、おれは。
とすると明日は天塩中川12:34の名寄行に乗れば、美深に13:53に着け、ファームイントントには14:40過ぎに着くことができる。朝から温泉に入れるぞ。何だかウキウキで、美深のデマンドバスを予約しておく。流石に今からホテルの朝食は間に合わない。いいのだ、豚丼、カップ麺等々、セイコーマート珠玉のメンバーが手元に揃っている。
記 2019/2/21
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