下長谷→平田→平野→横平
(以上#6-1)
→岩松
(以上#6-2)
→宇和島
(以上#6-3)
→吉田→中浦
(以上#6-4)
→明浜→高山
140km
RIDE WITH GPS
岬先端の大良までいくらも無いものの、脚を延ばすのはためらわれた。いや、単に次から次へと入れ替わる地形と風景にすっかり夢中になっていて、むしろ脚を先に進める方を選んだだけの話かもしれない。とにかく何となく気が急いて、次の明浜湾に向かうことにした。
中浦で県道273へ分岐、40m弱の半島越えと内陸部の蜜柑畑を経由。
筋で再び海岸の市道へ。
漁村を縫って市道は明浜湾の奥へ向かってゆく。さすがに市道だけあり、道幅はかなり細い。湾に面した海岸線の道で、ここまで細い道は今まで通ったことが無い程だ。道幅なりに漁村は小さく、小さい集落なりに漁船も小さい。その漁船はびっしり道に接するように浮かんでいた。道が細いからか、道の空間が海面にとても近いような気分になる。
集落が途切れると岸辺の森が道に迫ってきた。そして海の向こうに、明浜湾の向こうに漁村がよく見える。空も海も真っ青で、緑が鮮やかだ。しばらく風景に眺め入っていたいが、もう17時。
外海へ向かう道の正面に、太陽が眩しい。風景が鮮やかに輝いて見えるのは、日差しが横から強く当たっていて、光の色が赤みがかっているからだ。本格的に夕方になってきた、ということだ。
地図で明浜から今日の宿がある高山までの距離を再確認しておくと、意外に距離がある。淡々と進めば夕食に遅れる心配は全く無いものの、淡々と進む必要はある。
畔屋から、海岸の道は国道378となった。相変わらず小綺麗な木造住宅が目立つ町中は賑やかで、ここまでの宇和海に見ることができなかった町の風格も感じられるのは流石に国道の面目躍如だ。
ここから再び2001年に訪れた区間の再訪である。16年前でもはやイメージしか残っていない宇和海の印象と、目の前の風景はぴったり合致していた。そしてこの道がずっと八幡浜へ向かうのだ、という気分になった。
17:15、深浦着。もう夕方がどんどん進む時間帯である。
与村井、深浦、俵津、狩浜と漁村が断続した後、最後は岸壁の70m登りへ。
少し高度が上がると、外海方面に浮かぶ半島や小島の影が見え始めた。豊後水道の向こうの九州本島もうっすらと見えるような気がする。
青から夕方のオレンジに変わりつつある空の曖昧な色、曖昧な色を照らす海の色、大分涼しくなってきた海の風。もう全部いい。
朝からいろいろと諦めることが多かった今日の行程だったが、最後の2時間ぐらいで全部、今日までの雨続きも含めて挽回してしまった。この時間に、夕食まで時間に余裕を持った気持ちで訪れることができて良かったと、心から思う。そして小綺麗な民家、集落の元気な生活感は、今回のツーリングで見かけた農村と共通していて、本州の私が訪れる多くの農村では過疎化に飲まれて消えつつある日本の暮らしそのものだったように思えた。
18:10、高山「民宿 故郷」着。
地図で見てわかってはいたが、湾の砂浜に面して、大変に素晴らしい立地である。湾にはキャンプ場に温浴施設にこの宿しかない。そしてこの場所、元は炭鉱だったらしい。この宿については民宿とは名乗っているものの、レジャー施設の一員的な宿なのかもしれない。
「夕食はお風呂の後でもいいですよ」とのことで風呂に入ろうとすると、風呂は徒歩5分の温浴施設を利用するとのこと。風呂が別の場所とは聞いていないが、まあよくあることだ。この素晴らしい立地で四国最後の夜を過ごせることが有り難いことには全く影響しない。
夕食は、事前に聞いていたとおりにゴージャスなものだった。特に郷土料理との「日向めし」。鯛の切り身刺身と出汁とろろが掛かった卵かけご飯がその実態で、普通盛りで大変にボリュームがある食べ物だった。
記 2017/7/4