天塩→稚咲内
(以下#8-2)
→豊徳→豊富
(以下#8-3)
→開源→下豊幌
(以下#8-4)
→曲淵
(以下#8-5)
→浜鬼志別
121km
RIDE WITH GPS
4時過ぎ。西向きの部屋の窓からも、明るくなってきた空が晴れているのがよくわかる。日本海海上にはやや厚い雲が出ているものの、陸地側は大丈夫なようだ。海岸線が、日本海と陸地の天気境目になっているのを、過去にも時々見かけたように思う。海と陸地の温度は、それだけ違うのかもしれない。
朝から晴れだと、気持ちも身体も何かとしゃきっと順調だ。5時過ぎには諸々準備完了、一晩自転車を停めさせていただいた元林業研修センターの出入り口へ。既に外には朝日が、日なただけじゃなくて影の部分の雰囲気も朝っぽい空気に入れ替えつつあった。
荷物を全部積んで外に出ると、さすがは道北、寒いと思うほど肌寒い。風もけっこう強く、しかも北風なので、これから向かう北上方面へは向かい風になる。しかし空は晴れまくっていて、朝日は眩しいというより鋭く肌に突き刺さるようだ。こういうところもさすがの道北だ。
天気予報は午前中に通る天塩町、豊富町で晴れなのに、午後の、というよりオホーツク側は終日曇りだ。日本海側はこれだけ晴れなんだから、オホーツク海側だってそう極端な天気にならないんじゃないかと思いたいものの、一方で雪以外なら何があっても不思議じゃないのが北海道の天気である。ましてやこの道北、そして曲がりなりにも日本海側とオホーツク海側なのだ。全く別の場所だという捉え方が適切だろう。
それに、日本海側激晴れ、オホーツク側は冴えない天気というのは、昨年、一昨年と全く同じパターンだ。その例から今年も似た傾向ならば、晴れる日本海側で選択と集中的により長い時間を過ごすようなコースを選ぶ方が楽しめるだろう。
幸い今日の宿は浜鬼志別の「ホテルさるふつ」。小石峠でオホーツク側に出れば、オホーツク海岸での移動距離を抑えられるから、その分長い間晴れている場所で過ごすことができるだろう。
そういう方針で実際に小石峠でオホーツク海側に向かうことだけ決めておき、実際のコースは、午前中に現地の晴れ方を見ながらアドリブで決めればいいのかもしれない。天気が良ければ良いほど、あまり脚が進まないだろうし。
5:50、天塩温泉夕映発。
まずは旧市街裏手の海岸沿い公園で日本海を眺め、市街地へ。昨日通ったのと逆に日本海沿岸へ向かう。
道道106で天塩大橋で天塩川を渡ると、もうオトンルイ風力発電所の巨大な風車群が見えている。市街地からずっと、相変わらず空はもの凄い青色で晴れまくっていた。北東の風はやはりかなり強い向かい風方向で、かなり冷たい。今日はしばらく、この強い向かい風にまともに向かって、北上することになる。しんどいが、むしろこの朝日に照らされた、海岸の風景を楽しんでしまえばいいだけなのかもしれない。
冷たい向かい風で、汗はかくのに身体は意外な程冷える。時々フリースの襟に手を片方づつ突っ込みながら、やはり流石の道北最北部だと感心する。こういう冷たい空気の中に一度身体を置いてから東京に帰ったら、果たして自分はあの高温多湿の環境で生きていけるのか心配でもある。
オトンルイ風力発電所の手前でもまたもや脚を停め、利尻富士を撮ることにした。
昨日同様、相変わらず海の雲が、水面に浮かんでいるような利尻岳の裾をぼやかしている。しかし昨日夕方の、逆光で霞み気味のシルエットに比べ、今朝の利尻岳は稜線近くの山肌が朝日に照らされてちゃんと見えている。
何にしても、利尻富士を撮るために道北でこういうコースを組んだって、いい天気になど狙って会えるものではない。それに、北海道に重い望遠ズームを持ってくるときに考えた、まさにその利尻岳がイメージ通り、いや、希望通りに見えつつあるのだ。絵として面白味が無いとか昨日同じ場所で撮ったとかどうかは関係無く、今撮っておかねば。
しょっちゅう脚が停まるので、6時前に天塩を出てまだ7kmなのに、わずか10kmほどのオトンルイでもう7時前。予想通り、進行はかなり遅くなっている。しかし7日前の釧路出発以来、ここまで見ることができなかった夏の色彩まっただ中に、今、自分はいる。こういう風景の中で時を過ごしたくて夏の北海道に来ているのだ。これを楽しまずに何のツーリングなのか。
もうこの段階で、今日は下方修正を怖れず、いや、目一杯下方修正する方向で、天気の良さそうなサロベツ原野〜内陸部をのんびりしようと決めた。
昨日この道道106に合流した幌延への分岐を過ぎると、雲が溜まっていた日本海の海上はどんどん晴れてきた。時間が経つにつれ雲は明らかに減ってきて、海上の空気も澄み、さっきまで雲に隠れていた利尻岳の裾が現れ始めた。
一方、天塩大橋からずっと道道106の道端にの続いていた電柱と電線が、分岐のすぐ先のスノーシェッドで途切れ、それまでもシンプルだった道道106の風景は、更に単純になってしまった。道の両側が1点に収束する彼方へ、路上と左右両側の草原が一続きの空間になって、真っ青な空と対峙する。路上にいる自分の空間と空が一つであり、まるで空の中に道があるような、道道106の真骨頂と言える区間だ。
相変わらず強い向かい風に、ぬれタオルが絞られるみたいにもみくちゃにされ、前に進むのはつらい。しかし、もう時間をかけることに決めてしまえば、今日のコースに下方修正のネタは事欠かない。落ちついてのろのろ進めばいいだけだ。
稚咲内で内陸に進む前に、もう一度利尻富士を撮っておく。未だ中腹部は雲に隠れているものの、日本海沿岸の天塩に泊まって出会えた、最高の朝の風景である。
記 2017/12/29
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