北海道Tour17#11
2017/8/19(土)大村→幾寅-1

大村→美瑛→上富良野 (以上#11-1)
(以下#11-2) →東山→布礼別→麓郷 (以上#11-2)
(以下#11-3) →西達布→幾寅 (以上#11-3)
(以下#11-4) →北落合→幾寅 (以上#11-4)  155km ルートラボ
(以下#11-5) →大村(輪行)

ニューサイ写真 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路
   PENTAX K-1 smc PENTAX-FA77mm1:1.8 Limited

 天気予報は朝曇り、12時付近から晴れ。最終日のいつものコースを上富良野・ベベルイ基線・麓郷と経由した後、早ければ老節布辺り、遅くても北落合では晴れるのではないかと思われる。
 2015年までは、その後トマムで行程を終えて札幌に向かい、翌朝は千歳空港から帰るというパターンで完成版だと思っていた。札幌ではラーメンやジンギスカンや生クラシックを始めとした食事が1983年以来の楽しみとなっている。JR北海道が誇る各爆走特急や快速エアポートに乗れるのも楽しかった。それに、予約さえ早ければ、比較的安くて便利なホテルも多い。北海道最終日の宿泊地であり、東京に帰る前の日の宿として、申し分無い旅の気分を味わうことができたのだった。
 一方今回は、今日もここ美瑛ポテトの丘YHに戻って、明日は旭川空港から羽田に帰ることにしている。旭川空港から帰るパターンは、かつて2009年に一度、旭川泊で使ったことがあった。その時は、朝に空港まで自走してみたものの、道としてあまり面白くなかったためかその後このパターンを使うことは無かった。しかし去年、ポテトの丘YHからタク輪で旭川空港へ向かってみたら、あまりに楽なことに気が付いたのだ。
 そこで考え直してみると、まず旭川空港から羽田へのANA便は、朝の便は8:55発10:40着と理想的な時間帯だが、次のANA便は13:25発15:10着になってしまう。千歳空港から羽田へは毎時2本。便の少なさが理由で今まで旭川空港を敬遠し、予約しやすそうな千歳空港を選んでいた。しかし、2ヶ月前の予約開始日に忘れずに予約すれば、午前中1本だから旭川空港便が予約しにくいなどということは全く無いことがわかってきた。かつてみどりの窓口で北斗星や急行はまなすの寝台券予約をこなしてきた者として、ANAのネット予約など朝飯前である。それにむしろ旭川便の方が、千歳便の同じ時間帯より空いているような気すらする。お土産だって、千歳空港に対して旭川空港に根本的に欠けている物など無い。あとは北海道最後の晩の夕食だが、札幌で食べるいかにも札幌っぽい食事の代わりにポテトの丘YHの美味しい食事があると思えば、これも全く問題無い。北の都札幌で、大通公園や独特の夜の雰囲気を楽しめないのはやや残念だが、代わりに美瑛の丘で秋っぽい虫の音など聴きながら最後の夜を過ごすことができるのも、やはり大変魅力的だ。そんなことに、去年気が付いたのだった。

 ただ、最終日札幌ではなく美瑛に帰る前提だと、自転車行程の終点はトマムではなく幾寅辺りとなる。

乗り換え地点 パターン1 パターン2 パターン3 パターン4
トマム発

JR石勝線
・千歳線

札幌着
14:00

スーパー
おおぞら6

15:41
14:32

スーパー
とかち8

16:18
16:12

スーパー
おおぞら8

17:56
18:39

スーパー
おおぞら10

20:15

 トマム終着の場合、北落合からトマムへの、山深く車が少ない農免農道北落合線と道道1117を通れることが旅程最後の楽しみであり、トマムに向かわない場合はこの道を通れないことがやや残念だ。それ以上に、トマムから札幌へは大変便利である。何故なら、特急がほぼ2時間おきに札幌へ、しかも直通、おまけに所要時間1時間40分強。

乗り換え地点 パターン1 パターン2 パターン3 パターン4
落合発
幾寅発
代行バス 
東幾寅着
11:37
11:47

11:57
14:43
14:53

15:03
17:10
17:20

17:30
東幾寅発

JR根室本線 

富良野着
12:09
普通
滝川行

12:49
15:13
普通
滝川行

15:52
17:40
普通
富良野行

18:20
富良野発

JR富良野線 

美瑛着
13:38
普通
旭川行

14:15
16:12
ノロッコ6
旭川行

17:21
16:55
普通
旭川行

17:38
19:10
普通
旭川行

19:50

 トマム→札幌に比べると、幾寅→美瑛へは各停となる。しかも直通ではなく、途中富良野で根室本線から富良野線への乗り換えが必要で、私が乗りそうな16時頃は接続が悪くて約1時間待ちとなってしまう。更に昨2016年、道央・十勝方面を襲った台風の影響で、そもそも根室本線は幾寅を含む区間が未だに運休区間であり、むしろ復旧すら危ぶまれている。一つ隣の東幾寅から富良野方面に列車が動いているのは、むしろ有り難いとすら言える。そして列車本数は、一昨年のダイヤ改正で全道的に削減されたと知っていても驚く程少なくなっていて、要するに今日は15時には東幾寅で輪行作業を完了していないといけないのだった。いや、富良野発は16時以降なので、脚さえあれば直接富良野に戻ってしまうことも可能なんだが。脚さえあればね。

   

 というわけで、今日は極力出発を早める必要があった。幸い個室泊のため何かと準備は順調に着々と進み、5時前には荷物を階下に降ろすことができた。

 外へ出てみると、空の中には明るい青い色が見えるような気もするものの、基本的にはやや厚めの曇りである。舗装路面は黒々と濡れていた。明るい朝に気分が盛り上がるというよりは、薄暗く冴えない天気にやや出鼻をくじかれた気分だ。

 5:15大村「美瑛ポテトの丘YH」発。やはり大村の丘には、視界200mぐらいに濃い霧が漂っている。丘を美瑛市街方面へ下っても、相変わらず路面は黒々と濡れている。ただ、30分前の大村より、霧の中が明るくなってきたような気もしないでもない。とりあえず天気予報の実現を希望するだけでも、あまり露骨に裏切られはしないような気もする。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 美瑛に下って町外れから美馬牛へ。

 極力アップダウンが少ない経路を選んだつもりのGPSトラックは、線路沿い気味の谷底に続く。確かにアップダウンは、どの過去経路より少ないところを選べている。しかし谷底なので、単調な木立と茂みだけが続く風景は、間違い無く美瑛らしさに欠ける。やはり頻繁なアップダウンこそが、美瑛の道の本質なのだ。

 今後は、多少の坂はあっても、せめて新栄の丘ぐらいは通るような経路を通るべきだつくづく思った。何事も極端と穏当は正反対なのだろう。

 最後に見覚えのあるひまわり畑から美馬牛へひと登り。朝の美馬牛は、未だ雲が低くて何だか薄暗い。今日に限っては、もし丘の上を通ってきたとしても、あまり景色は良くなかったかもしれないとも思った。まあ、今日はまだまだ先がある。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 美馬牛から先は下り基調。

 谷間に下ると、周辺は整った形の丘やすっきり整えられた道端の畑が続く美瑛っぽい景色から、北海道にやって来てから毎日見慣れた、普通にのんびりした北海道の田舎に変わった。

 上富良野までまだしばらく、そういう鄙びた谷間が続くはずだ。北海道に来てから10日程度で、こういう風景が何だか懐かしさを感じられるようになっていることが、何だか嬉しい。こういう生活も今日までだ。

 6:50、上富良野着。さすが富良野盆地の市街、丘陵地帯の美瑛や美馬牛に比べて霧は薄い。空も明るい。上富良野6時台。まずは順調な進行である。
 道道291沿いのローソンが無くなってからもう久しい。同じく街中の上富良野駅は、こぢんまりのんびり田舎っぽくて好ましい雰囲気の駅だ。だいぶ以前にはここから輪行していて、個人的に一方的に親しみを感じている。しかし、コンビニが無いこの通りに、差し迫って用事は無い。

 市街を通り抜けた南東側のセイコーマート軒先ベンチでPBカップ麺など食べていると、自衛隊のお客さんが次から次へとやって来るのが目立つ。今が出勤時刻(というのかどうか知らない)なのだろう。今朝の営みを始める人々に、北海道では来週から夏休みが終わることを思い出す。
 この間、再び空はどんどん暗くなってきていた。しかしここで帰っても美瑛の町で時間を潰すしか無い。少なくとも麓郷までは、雨は降らないようにも見える。希望的観測ではあり、実際に向こう側の山裾で雲の状態がころっと変わることも過去には何度もあった。しかし、この後の身の振り方としては、せめて麓郷まで行ってみてもs何の問題も無いだろう。


 7:20上富良野発。

 東山へ向かう途中、早くも山の上空だけが晴れてきたのが見えた。

 位置的にベベルイ基線の本幸辺りかもしれない、などと期待しながら東山からベベルイ基線へ。

 最初は低めの雲が動きつつ空を覆い続けていたが、途中ベベルイの湧き水辺りまで左側の山には日が当たり始めた。いい傾向である。

 日が当たって急激に周囲の温度が上がっているのか、登り始めた途端に汗が噴き出ていた。特に帽子のこめかみからもみあげの辺りに、次から次へと水滴が滴るのが我ながら驚く。ここまで身体に風が当たっていたためあまり意識しなかったものの、足かけ5日ぐらいいた道北より、確実に気温は上がっているのを実感する。

 しかしながら麓から約200m登り切った本幸では、再び空は曇り気味に変わり、日差しはすっかり雲の中に隠れてしまった。雲の動きは速いので、しばらく天気は三歩進んで二歩下がりつつお昼頃へと推移してゆくのかもしれない。
 ベベルイ基線道端の私的定位置の赤白スノーポールは、復旧を確認できた前回2015年秋から2年の間に、またもや折れ曲がっていた。前回ほど傾いていないように見えるものの、今回は畑側に少し倒れている。道路関係者の方に置かれましては是非ともまた復旧していただいて、元通りのスノーポールと再会できる日を楽しみにしております。

 ベベルイ基線の道端には、かなり高く育った自衛隊演習場のカラマツ森林が続く。中には近年ブロック丸ごと伐採された箇所も目立ち始めている。

 この道に始めて訪れた30年近く前、森は確実に今より低かったような気もする。そして伐採されたブロックにもう一度カラマツが高く茂るのを、私はさすがにもう眺めることはできないかもしれないなどと思う。

 自衛隊演習林沿いの区間が終わると、開けた裾野の畑の中を、道は布礼別へ標高差100mを下り始める。

 相変わらず空は曇り続けていて、日差しは姿を消し、富良野岳の裾も今日は雲から上は全く見えない。

 晴れれば脚が停まるような私的名所ではあるのだが、今日はささっと下りきってしまうことにする。

 9:10、麓郷着。上富良野、本幸に続き、なかなか順調な進行だ。空に雲が多く、途中であまり長い間立ち止まるような状況が無かったので、当然と言えば当然の展開ではある。
 店先露店販売のトウキビ・アスパラなど朝摘み野菜が楽しみな、交差点の「森の駅」ことA-COOPは、何と閉店になっていた。思い出してみると、以前ここに来てA-COOPに立ち寄ったのは2014年。3年も前のことになってしまっていた。2015年、2016年とも夏は天気が悪く、最終日の行程自体を断念していたし、2015年の秋にはこの道には来ることはできたものの7時過ぎの通過だったので、そもそも立ち寄るという発想自体が無く、あまりこの店がどうなっているかなんて考えていなかった。
 しかし元森の駅の隣には、もともとA-COOPの店先でトウキビやアスパラガスを売っていた藤崎商店が、今日はお店が開いたところだった。開いていた。今までここで店をやっていたのを意識したことは無かったものの、相変わらず店先でゆでトウキビが食べられるとのこと。それなら、麓郷でのミッションは全く問題無くこなせる。
 トウキビ3本は多すぎることを以前学習したので、ピュアホワイトを2本注文。結論から言えば、今回のトウキビはやや固めだったかもしれない。獲れたてののトウキビだから、新鮮さ故の張りなのかもしれない。こちらはセイコーマートで毎日2本以上トウキビを食べている。あまりがっつく必要は無かったのかもしれない。
 トウキビを食べながら、少し今後の展開を心配しておくことにした。未だに雲は低く、空は再び暗くなり始めている。早朝の美瑛出発時点で、もし10時台に幾寅に着けたら、問答無用で北落合に向かおうと思っていた。今のところ、麓郷に9時過ぎに着けている。もしかしたら10時台には幾寅に着けるんじゃないのか、という気もする。空は暗く、幾寅に着いたとしても、天気が良くなる保証は無い。いっそここで富良野に下ってしまうか。そうすると、多分この後は富良野市街でネットで調べた即席グルメツアーか何かになるんだろうな。
 しかし藤崎商店のおばさんに麓郷の天気を聞いてみると、「毎日朝はこんな感じだよ。昨日もそうだったけど昼前から晴れだったし。これから晴れるんじゃないかな。」と教えてくれた。それなら、もう少し行ってみよう。


 9:35麓郷発。幾寅に10時台に着くには、25分は長居しすぎだったかもしれない。

 麓郷から先、道道253の峠部分で空は急に晴れ始めた。

 元々雲はけっこう早く動いていたので、一度晴れ始めたらその後の進行は早かった。

 平沢の丘では、天気が晴れに向かっていることを確信できる程に空には青い部分が増えていた。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 東山のA-COOP(というより農協)でコーヒー休憩していると、日差しが暑くて肌がちりちりするほどになってきた。

 そして老節布では雲は更に少なくなり、気温は目立って上がっていった。

 これこそ富良野の夏だ。

 10:35、西達布着。どう考えても私の脚であと25分以内に幾寅には着けなさそうだ。しかし、空はもう完全に晴れと言っていい。これなら最悪美瑛着が多少遅くなっても、北落合まで行ってみる価値がある。時間がどうなるかは、また幾寅で検討すればいい。

 国道36では、過去の訪問で暑い日がそうだったように、今日もお湯のような東風、つまり向かい風が吹いていた。照り返しもたまらなく暑く、西達布から三の山峠の登り始めまで、じれったくかったるい。しかし、登り始めると幹線系国道にも関わらず木陰(と言うほどのものでもなく単なる森の影)が僅かながら頭上を覆い始め、一瞬でも身体を冷やしてくれるのがとても有り難い。

 エゾゼミのギーギー声に峠手前の樹海の展望も青々と絶好調。夏のサイクリングっぽい気分になってきた。麓郷で諦めて富良野に下らないで良かった。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 11:10、三の山峠通過。

 やはり幾寅着は11時を過ぎた。峠から幾寅まで下る途中、今後の予定をおさらいしてみる。
 乗車希望の普通列車は、東鹿越15:13。輪行完了状態で15時が目標として、幾寅からタクシー輪行してしまえば、幾寅14時50分輪行完了状態がタイムリミットだと言える。輪行時間25分とすれば、北落合680m地点出発は14時ぐらいがタイムリミットだろう。ならば北落合に13時に着ければ、680m地点にも行けてそこそこ落ち着ける。幾寅発は12時でいい。
 実際には、今のところ11時半前には幾寅を出発できそうだ。つまり、余裕は一応30分ぐらいあるということになる。絶景目白押しの行程ではあるものの、そういう気持ちで自分に厳しく時間管理すれば、あまり無理しなくてもこなせる行程だろう。更に目論見から余裕が出れば、幾寅に戻って「なんぷてい」でカレーを食べられる時間が生み出せるかもしれない。
 やや駆け足気味かもしれないが、いや、これなら行ける。

 11:20、幾寅「道の駅南富良野」着。


 集中的かつ速攻でWC・水補給など諸用事をこなし、11:35、幾寅発。

 農免農道北落合線が谷間に入る前に盆地外れで渡る幾寅川の橋は、未だに復旧工事中だった。のみならず、土手の中、川原の景色が以前とは一変していてぎょっとさせられるほど。一言で言えば、昨年夏の台風被害の爪痕が、未だに一目でわかるほどそこかしこに残っているのだった。流石に根室本線がずたずたになってしまっただけのことはある。橋の通過はほんの一瞬ではあるものの、胸が痛んだ。

 幾寅川の谷間、北落合への登りは2014年以来。最初は久住の畑の中から始まる。下っているとあっという間に通過してしまうこの辺り、登りのためゆっくりのんびりしたペースで、カーブと風景の順番まで新鮮に眺めることができる。
 その後谷間が狭くなり、幾寅川と森と農道北落合線だけが北落合まで続く。東幾寅の分岐を過ぎて登り斜度がやや厳しくなると、身体中汗だくになってしまうものの、狭い谷間故か雲が増えていて、時々日差しを隠すのは却って有り難い。

 前方の低山の上っ縁に畑が見え始め、最後につづら折れ状に台地上に一登り。明るい北落合の畑が開けた。狭い谷間の単調な道だと思って一気に下っていた道も、こうしてのんびり登ってみるとそれとない地形の起承転結があることがよくわかる。そして、幾寅から1時間掛かると思っていた北落合が、40分で着けたのは嬉しい誤算だった。

 12:15、北落合中央着。

 空の低い雲は未だに動き、なだらかに続く丘の畑に大きな影が次から次へと通り過ぎていた。大きい雲が日差しを隠し始め、10分ぐらいは日差しが出てこなさそうだったので、北落合中央ではあまり脚を停めずにすぐに680m地点へ向かうことにした。お陰で、引き続きタイムリミットより45分も早い上々の進行である。

 北落合中央から先、周囲の畑が広々と開けているため、道が全く登りに見えない。センターにしないと進めない脚の重さと毎度の帰り道があっという間なので、けっこうな登りであることは理解してはいる。それでもやはり、身体だけが重くなったように感じられるのが、この道毎度の現象だ。

 途中、空は再び晴れの周期に入ってきた。これ幸いとところどころの私的名所で脚を停めてみる。

 毎度お馴染みどころか、PC壁紙スライドショーで見慣れている風景なのに、やはり実際の空間感覚、というより実物の北落合が目の間に拡がっていることが嬉しい。この雰囲気は2014年以来、3年振りの再会であることも、またもや思い出す。

 680m地点とか協和の畑とか私的名所が多いというより、北落合全体として好きな土地なのだということを改めて強く感じさせられる。中標津や道北の母子里など、好んで訪れている土地にはそういう場合が多い。

 12:45、北落合680m地点着。
 晴れ基調ながら次から次へと雲が低い位置でやってきては忙しく去ってゆく。今日みたいな天気だと、やはり標高が高い分空の雲は多い。でも雲だってもう2度と会えない、今日ならではの夏の風景なのだ、と思える位には晴れてくれている。
 北落合中央の向こう側の山々、更にその先落合の谷間の向こう、狩勝の境から日高山脈へ続く山々。PCの壁紙やら自分のHPやらで眺める風景に、3年振りという気はあまり無い。ただ、2つの目で眺める実際の風景の空間感覚はやはり圧倒的だ。それこそが、この場所へまた来ることができた実感というものなのかもしれない。

 PENTAX K-1 HD PENTAX-D FA15-30mm1:2.8 ED SDM AW パノラマ合成

 最初空は薄日ぐらいには晴れていたものの。そのうちやや大きな雲がやってきて、10分間ぐらい日差しは完全に隠れてしまっていた、しかし、つい3時間前ぐらいまで考えていたタイムリミットに対し、1時間ぐらい余裕ができている。それに、ここまでの登りでいろいろな地点で脚を停めてきたが、やはりここは長居に相応しい場所だ。のんびりと次の晴れを待てばいいのだ。

 13:05、680m地点発。

 下りはやはりあっという間に、さっきのんびり登ってきた風景が次から次へと逆の順番で登場し、過ぎてゆく。

 再び幾寅へ下ってしまう前に、一度落合方面、協和の人参畑へ寄っておくことにする。

 いつの間にか亜鉛メッキの頑丈そうなゲートが建てられ、それが閉まっていて農道にすら入れないこともあったこの場所。今日は問題無く砂利道にか畑の丘を眺めることができた。
 空には相変わらず雲が早めに行き来している。680m地点からだいぶ下ってきたためか、再び雲は少なくなっていて、辺りは晴れの周期に入っていた。ニンジンの明るい黄緑が、午後の日差しに照らされて更に鮮やかだ。
 丘の稜線にアクセントのように立っているポプラの樹は、始めて訪れた1998年以降、かなり成長しているのも改めて確認できた。風景全体が毎回少しづつ変わっていて、今回は今回で2017年の去りゆく夏を見送っている、そんな気になってきた。いやいやいや、東京ではまだまだしばらく暑い夏が続くのだ。帰ったら強く生きねば。

 PENTAX K-1 HD PENTAX-D FA15-30mm1:2.8 ED SDM AW パノラマ合成

 13:25、北落合協和発。

 再び北落合中央まで登り返す。

 来た道を一目散に下って、13:50、幾寅着。


 下りで更に余裕を稼いだお陰で、想定タイムリミットの何と1時間以上前だ。ならばここは、何が何でもなんぷ亭へ行ってなんぷカレーを食べておかねば。
 それには、東幾寅へのアクセスを確実にしておく必要がある。もう迷う余地無くタクシー輪行、駅前にタクシーを探すとその名も「幾寅ハイヤー」の営業所を発見。東幾寅15時着として、タクシーならいくら何でも14:50発で楽勝だと思うが、念のため14:45幾寅発でお願いしておく。前のお客さんの都合やら帰ってくる途中の不可抗力で、タクシーが遅れて到着することだってあるのだ。
 13:55、輪行開始。速攻でてきぱき片付け、自転車を幾寅ハイヤー事務所前に置き、さあなんぷ亭だ!14:20にはオーダー、14:25に食べ始めることができていた。
 希望はしていたがまさかなんぷカレーまでこなせるとは思っていなかった。やればできるものだ、と思う。なんぷカレー自体も前回2年前に比べ、期待以上に更に磨きが掛かっていた。もう感無量である。11日間の行程最終日として、北海道に何も思い残す事はない。
 でも、やはり根釧台地に未練はある。かもしれない。と、この時は思っていた。やはり思っているということは、実現への強力な後押しになるのである。

 14:40には完食して幾寅ハイヤー前へ。14:45少し前に、かなり大型のワゴン車が登場して驚いた。「自転車を載せます」と言っておいて、気を回して下さったようだった。

 14:55、東鹿越着。もともと人気の無い場所の信号所みたいなこの駅が、まさか天下の根室本線の終着駅になろうとは、誰が想像できただろう。

 ひっそりと寂れたホームでキリギリスやエゾゼミの声を徒然なるままに右耳から左耳へ流して10分。15:05、新得からやってきた代行バスが到着した。代行バスは大型の、けっこうゴージャスな観光バス。代行手段の方が本来の手段よりゴージャスになってしまっている。この区間における鉄道と車の現状を象徴しているようで、何だか皮肉だ。ちなみに、バスは「ふらのバス」だった。

 乗客の多くは、一目でわかる、近年日本のどこへ行ってもお得意さん(その後秋に似たような構成のメンバーを、大阪京都、丹後の美山、会津の大内宿などで見かけることになる)な、推して知るべしのメンツであることに多少驚いた。彼らは日本の田舎に興味を持っていて、30年ぐらい前に我々がやっていたのと同じような旅を、日本の田舎で楽しんでいるのである。

乗り換え地点 パターン1 パターン2 パターン2 パターン3 パターン4
落合発
幾寅発
代行バス 
東幾寅着
11:37
11:47

11:57
タクシー
14:45

14:55
14:43
14:53

15:03
17:10
17:20

17:30
東幾寅発

JR根室本線 

富良野着
12:09
普通
滝川行

12:49




15:13
普通
滝川行

15:52
17:40
普通
富良野行

18:20
富良野発

JR富良野線 

美瑛着
13:38
普通
旭川行

14:15




16:12
ノロッコ6
旭川行

17:21
16:55
普通
旭川行

17:38
19:10
普通
旭川行

19:50

 15:13、幾寅発。普通列車ではバスで降りてきたメンバーによる、大声での会話、ロングシートで足を組むその足の放り投げ方、ガラガラバッグの通路への置き方(というか占有の仕方)、まあ他の場所で見られる通りの立ち居振る舞いが垣間見られた。ローカル線ののんびりした雰囲気の車内に似合わないとかいう気はするものの、これは国民性のようなもので仕方無いことなのかもしれない。もう少し時間を掛け、国民同士がお互いに理解し合う必要があるのかもしれない。地元の方は少数派で、彼らのやってこない隅の方でおとなしくしているのだった。こういうのはきっともう、毎日の事なのだろうし、地元の方にとっては夏の鉄道マニアが入れ替わっただけなのかもしれない。私も昔は周遊券の旅で車内を占有していたような気もするし、あまり大きなことは言えない。

 富良野には15:52到着。次の富良野線普通列車は16:55で美瑛着は17:38。その前に臨時で、16:12にノロッコ号が出る。折角早めに富良野を出発できても、ノロッコ号の運転はやたらとのんびりしているため、美瑛到着は17:21。16:55の普通列車とあまり変わらない。しかし、ノロッコ号に乗らないと、富良野駅で1時間も普通列車を待たねばならない。そこで、存在自体は知っていたが、過去の人生で移動手段として使う気は無かったノロッコ号に、座席指定料金\500を払って乗ってみることにした。こういうのをチャンスというのかもしれない。あるいはあまりに美瑛駅に観光客が多く、そのまっただ中で1時間過ごすことが煩わしかったせいかもしれない。

 ノロッコ号はほぼ満員で、車内は大変賑わっていた。車両は客車というのか、オハテフ500とかオクハテ510とか、改造元が51系か50系だというのはわかるものの、オハテフ(考えてわかった)とかオクハテ(調べてやっと理解した)とか全くピンとこない。機関車はDE15。以前1990年台に急行宗谷に乗って以来のDE10系だ。非電化DLのエースDD51に比べ、コンパクトにメカメカしさと程良いかわいらしさが凝縮されたDE10系は、以前からどちらかと言えば好きな位の機関車だった。元々撮り鉄系の私がディーゼル鉄道車両のエンジン音に興味を持つようになったのはごく最近のことであり、改めて機関車の直後で聴くDE15のエンジン音は気動車に比べてなんだか余裕を感じさせあり、それでいて速度が上がるとともに機関車らしい迫力を感じさせてくれた。

 富良野を出発すると、ほぼ西向きの窓から、かなり厳しく熱い西日が差し込み始めてた。しかし盆地をのろのろ走っている間は、むき出しの構体以外のほぼ全面の開口から風が目一杯入ってきた。その風は、たとえ富良野盆地まっただ中の富良野線であっても、美深のトロッコで感じられる森の風と似た開放感が感じられた。ノロッコ号という列車がJR北海道に登場して20年近く経った今、これがノロッコ号か、とやっと納得することができたのだった。

 富良野から上富良野へ必要以上に時間をかけて列車が進む間、日差しも弱くなり始めていた。時々雲が日差しを隠してくれると風が急に涼しく、なんとも夏の夕方っぽい。今日ももう夕方だ。
 上富良野から美馬牛へは丘越え区間の森の中。西日の木漏れ日、時々森が開けて眺める鮮やかな丘陵の緑に、北海道最後の夕方を存分に感じることができた。今回もいい旅だった、明日はもう東京なんだとしんみりさせられる。

 美瑛駅前では盆踊り真っ最中だった。多分これが、去年出会うべき盆踊りの風景だったのである。しかし去年、仁宇布から自走できていたら、美瑛駅前は通らないことにも気が付いた。やはり毎年毎年、旅の時間は連続しているのだ。

 17:45、大村「美瑛ポテトの丘YH」着。
 いよいよ北海道最後の夜。外ではカンタンやコオロギが鳴いている。するどくキリキリキリッと、エンマコオロギが鳴き声で戦っている。初秋を感じさせてくれる音を聴くのが、都会の夜じゃないのはとてもいい。こういう旅が未だにできている、私は幸せ者である。

 PENTAX K-1 HD PENTAX-D FA15-30mm1:2.8 ED SDM AW パノラマ合成

記 2018/2/1

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Last Update 2018/2/20
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