新得→(国道38号)落合
→(道道1117・136号)
→(双珠別林道)双珠別
→(国道237号)下金山橋
→(国道38号)東山
→(道道253号)布礼別
→(ベベルイ基線)東中
→(斜線道路)上富良野
→(国道272号)草中
→(農道)新栄
165km

美瑛

上富良野

ベベルイ

布礼別

麓郷

東中

下金山橋

金山峠

占冠

双珠別湖

トマム

落合

狩勝峠

新得

北海道Tour00 #10
2001.8/19 新得→美瑛


 朝、外に出ると、新得の町は濃い霧に包まれていた。降水確率0%じゃなかったのかよ、と思ったが、こういうこともある。

 7:10、サホロYH発。すぐ前の国道添いのセイコーマートで例によって早い朝食にした。北海道を旅行した人なら絶対に知っている、このセイコーマートには毎年世話になっているのだが、今年はいよいよセイコーマートでないと休憩したくないという状態にまでなってしまった。理由は、今年から始まった「セイコーマートクラブカード」だ。そめさんから教えていただいたこのカードは、ほんの少しの割引やポイント加算など、実際のメリットというのはそう大した物ではない。が、何より「セイコーマートのメンバーだ」というだけで北海道に来ている気分になれる、北海道ファンの気持ちを突いたなかなかうまい商売である。もちろん本来は道内の地元客向けのサービスだ。

 100m先が見えないくらいの霧が、6合目辺りから霧雨になった。全く天気予報なんて、とかぶつぶつ言いながらウインドブレーカーを着込む。2つの覆道を抜け、8:50、狩勝峠通過。そのまま下ると、どうも南富良野側は霧は濃いものの、雨は降っていないようだ。その霧も、ほんの少し下った狩勝信号場付近から晴れだし、そのうち前方の山肌が見えたと思ったら、山肌に太陽が当たり始めた。

 9:15、落合通過。低い雲の隙間から、ところどころ青空が見えている。そのうち晴れになりそうだ。少し寄り道ができそうだ。いつもの北落合もいいが、北落合では近すぎる。まだ全面的には晴れないだろう。第一、芸が無さ過ぎる。
 そこでもう1ヶ所、懸案の林道、双珠別林道へ行くことにした。この道はトマムからほんの少し登って双珠別川沿いに下り、山の中の双珠別ダムを経て占冠の少し南に抜ける約28kmのダートと2・3kmの舗装区間、という楽しそうな道である。
 ツーリングマップルには昨年版まで入っていた通行止め表示が抜けて「締まったダート」とある。林道を狙って走っているわけではないのだが、4サイド装備でも大丈夫だろう。

 落合からトマム・占冠方面へ進み、HiSさんの常宿「どんころ野外学校」を脇に眺め、平坦に見えるのにいつの間にか坂になっている、と言う程度の坂が続く道をのろのろ進む。坂に見えないのにけっこう登らされているようだ。
 トマムに着く直前、私が自分で勝手に「直角カーブ」と呼んでいた場所があった。原野の中から、ここの直角に近いカーブの付近から急に畑や十勝風の防風林が始まる、という場所だったのだが、直角だったはずのカーブは道路整備で付け替えになり、かなり緩いカーブが農地の中を進むように変わっていた。昔の細い舗装道路が草の中に埋もれているのが見えた。

 ツーリングマップルでは双珠別林道への入口は標識が書いてないとのことだったので、トマムで人を捕まえて道を聞いた。消防署の生け垣の草刈りをしていたおじさんは、「最初の分岐を左、いくつか分岐はあるけどみんな左、最後は右」とか自分しかわからない表現をした。
 9:50、トマム発。まだ先があるだろうと思ってどんどん左へ行ったら、深い砂利ダートの急坂を10分押した後に見えてきたのが農家の屋根と庭先。犬まで2匹も出てきて吠えられた。もうすっかり雲が消え、ぎらぎら照りつける厳しい陽差しの下、結局2本道を間違った。

 双珠別林道は最初のうちは木がまばらに生えている原野のような中を、快調に走れる程度の緩い坂で登ってゆく。やがて坂が急になり、前方にゲートが現れた。ゲートは閉まってはいるが、「国有林内作業中のため狩猟禁止」としか書いていない。狩猟禁止か。ゲート脇にはオートバイのタイヤらしい通行の痕跡が、かなりしっかりと残っている。これが通行禁止表示の解除の理由か、と思って中へ入った。

 一面に拡がるクマザサの中に、まばらに背の低いエゾスギが生えている。斜面の向こうの山肌の一つは、木々はおろか下草まで丸裸だ。微風にかさかさ音のする笹原の中で、これが森林大伐採か、と思った。山奥だと思っていた場所に本当にこういう風景があったことに、単純に驚いていた。いや、自然破壊なのか乱獲の実態なのか行政の陰の部分ということなのか、「見てしまった」といういろいろな気持ちが混じって、驚きにしかならないというのが正直なところだ。

 そのまま斜面を下ると谷が狭くなって、双珠別川沿いの区間が始まった。
 最初は渓流、だんだん広くなる流れに沿って、3・4mのダートは延々と続いた。そう足を動かさなくてもそこそこのペースで下れる、砂利が少なく穴も少ない極上ダートだ。山側はかなり切り立った崖だったり、山の急斜面だったり、山側・川側の両側の木々が程良い木漏れ陽を作っている。太陽に透ける青みの強い木の葉やその木陰と、時には間近まで迫ったり時にはけっこう下を流れる澄んだ沢の流れがこよなく美しい。山側から道に流れ出す水が時々大きな水たまりを作っており、そうでなくても道の脇の水たまりにはカラスアゲハや各種タテハチョウ系の、おびただしい数のチョウが水を飲みに舞っていた。
 しかし、一方でこの道の通りやすさはあの伐採のためなのか、という気持ちは消せなかった。もう長い間目を付けていた林道なだけに、ちょっとそのショックは大きい。途中には夏休み中だと言うのに、巨大な倒木と、ちょうどそれを運搬するらしいトラックも止まっていた。

 沢が大きくなって川になり、しばらく下ると流れが不自然に突然広くなり始めた。双珠別ダムだ。ダムサイトは無人で、殺風景な味気ない場所だったが、ほんの少しの道路の広がりがあり、ここでお湯を沸かしてまたラーメンにした。今回はラーメンばかり食っている。ニューサイの特集で「峠でコーヒー」というのがあったのを思い出し、「湖でラーメンか」と一人でつぶやいてみた。

 12:10、双珠別ダム発。しばらくそれからも川沿いの林道が続いたが、やがて谷間が拡がってトウキビ畑に農家が現れ、すぐに舗装区間が始まった。間もなく国道237号と合流し、12:50、占冠中央着。
 いつも山奥の印象がある占冠は、今日は何かかなり開けた場所、という気がした。山奥から出てきたため以上に、かなり暑く感じる。道東から道北へ出てきたので、それは当たり前なのだが。

 13:10、占冠中央発。金山峠で北上する。時間が許せばトマム方面へ今度は舗装道道を行くのも悪くない、と思っていたが、どうもその時間は無さそうだ。
 金山峠は交通量も国道としてはかなり少なく、アプローチ部分はそこそこのんびりして雰囲気はそんなに悪くないのだが、ここを通るときは何かいつも落ち着かない場合が多く、自分の中ではあまり印象が良くない道だ。まあ、今日はせっかくのショートカットなので、のんびりと進む。

 峠を下って金山湖への分岐を越え、14:50、下金山橋着。朝、落合で分かれた国道38号に再び合流し、麓郷からベベルイ基線・上富良野を通って美瑛へ向かう。

 東山から麓郷へのルートは、以前90年に通って以来の道だ。全部舗装道路で国道38号へ抜けられるのだが、抜ける地点が樹海峠から遠くの中途半端な場所で、日高方面へ抜けるのにわざわざ麓郷まで登る必要はなく、ずっと足が遠のいていた。
 青空の下のこの道は、開けた丘の畑の中の眺めが素晴らしく、以前の曇りの重苦しい天気での寂しい印象とは全く別の道のようだった。やはり同じ道でも何度か通ってみるものだ。
 十勝岳を背にした開けた丘の風景は、道東や北見地方のそれではなく、もはや確実に何か富良野の風景だった。もうここまで来てしまった。

 15:55、麓郷着。交差点の小野田食堂で大麓そばを食べた。もう夏も終わりなのか、夕方だと言うのにまだ店がやっている。今日の分のソバがまだ売り切れていないようだ。客は私の他に2人。と思ったら、食べているうちにもう1人入ってきた。
 夕方の赤い光の中、刈り取りの進んだ畑の中をベベルイ基線へと向かった。辺りの風景はまだ夏なのだが、キリギリス系の昼の虫の中にカンタンの声が混じる道に、吉岡くんの「畑に収穫の秋が訪れる頃」というナレーションを思い出した。

 ベベルイ基線を下り、上富良野を経て、美瑛「遊岳荘」には18:15に到着。3年振りの美瑛の丘は、コントラストの弱くなった夕方の光の中でもやはり鮮やかで、北海道の田舎の「丘の畑」の中でも何かやはり印象的だな、と思った。

記 2000.8/20

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Last Update 2004.1/2
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