RICOH GR DIGITAL
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RICOH GR DIGITAL+FINDER GV-1 |
GR1と後継のGR1SとGR1V、兄弟機GR21・GR10等のGRシリーズは、多くのユーザーに熱い支持を受けましたが、2003年4月、リコーは銀塩撤退を宣言。GR1シリーズから離れられないユーザーは、在庫処分叩き売りや中古屋では予備を入手したのでした。生産中止になっても、口コミや書籍、WebサイトなどでGR1シリーズの評判はむしろ高まり、今でも中古市場の人気はなかなか落ちません。
一方でGRデジタル版の商品化を望む人も多く、GRユーザーは寄ると触るとまだ開発発表もされていないデジタル版GR1を語る、という状況がありました。リコーはいつデジタルGR1を発売するのか。いったいどんなスペックなのか。画質はどうなるのか。
リコーのコンパクトデジカメCaplioシリーズは、もともと高速起動・省電設計・超近接マクロ・自然なストロボ調光など、その操作性が高く評価されていました。特にG4wide以降は、ラインナップの各グレードで広角端が28mm画角に。小型化・ズーム高倍率化・低価格化のデジカメ戦争で各社機が広角端35or38mm相当画角へシフトしていく中、どちらかといえば通好みの仕様でした。最近はやや広角寄りのコンパクトデジカメが増えましたが、この状況は2006年現在でも変わっていないと言えます。
そのCaplioシリーズ、新機種レビューなどでは必ずGR1が引き合いに出てきました。「早くデジタル版GRを開発して欲しい」「その登場が待たれる」等、Caplioシリーズの定評は、必ず裏付けとしてGR1への高評価とデジタル版GRへの期待があったと言えます。
GR1の高画質とCaplioシリーズの優れた特徴を備えたデジカメ。デジタル版GRのイメージは、GRユーザーの中で、製品の発売を伴わずに一方的に高まっていきました。
それに応えるように2004年のフォトキナで、リコーは突如「あなたは次に何を期待しますか」という思わせぶりぶりな展示で、2005年のデジタルGR登場を暗示。その通りに2005年8月30日にはデジタルGRの発表を予告。9月13日、満を持してGR DIGITAL(以下GRD)の10月21日発売が発表されたのでした。
一方、GR1ユーザーの「使えるコンパクト機GR1」のイメージと、一般デジカメユーザーの「一眼を越える画質のGR1」への期待の間には、大きなずれがあったように思います。それ故、発表されたコンパクトデジカメそのもののスペックには、インターネットなどで賛否両論が白熱しました。
記録フォーマット |
静止画 JPEG(Exif ver.2.21) RAW(DNG) 文字 TIFF(MMR方式ITU-T.6) 動 画 AVI(Open DML Motion JPEGフォーマット準拠) 音 声 WAV(Exif ver.2.21 μlaw) |
記録媒体 |
SDメモリーカード(3.3V 〜1GB) マルチメディアカード 内蔵メモリー(26MB) |
撮像素子 |
1/1.8型原色CCD 有効画素813万画素(総画素数 830万画素) |
レンズ | GR LENS f=5.9mm 1:2.4(35mm換算 28mm) |
種類 | 広角 |
デジタルズーム | 4倍 |
構成枚数 | 5群6枚 |
対角線画角 | 75° |
最小絞り |
11 全自動モード時F7.1〜F11はNDフィルター併用 |
フィルター径 | 無し アダプターGH-1使用時34mm |
フード | GH-1 |
ファインダー | 無し 外部ファインダーGW-1 |
液晶モニター | 2.5型 低温ポリシリコンTFT液晶 約21万画素 |
焦点調節 | マルチオートフォーカス |
撮影距離 | レンズ先端から約0.3m〜∞ マクロ時約0.015m〜∞ |
測光方式 | TTL256分割マルチ測光 中央部重点測光 スポット測光 |
測光素子 | CCD |
露出方式 | 絞り優先AE プログラムAE(シフト可) マニュアル |
シャッター形式 | 電子シャッター、メカニカルレンズシャッター併用 |
シャッター速度 |
静止画 180〜1/2000秒 動画 1/30〜1/2000秒 |
感度 | オート ISO64・100・200・400・800・1600 |
ホワイトバランス |
オート 蛍光灯 屋外 曇天 白熱灯 手動設定 詳細設定 ホワイトバランスブラケット機能 |
露出補正 |
マニュアル補正 +2.0〜-2.0EV 1/3EVステップ オートブラケット機能 -0.5EV ±0 +0.5EV |
内蔵フラッシュ | オート |
セルフタイマー | 電子式 約10秒/約2秒 |
インターフェイス |
USB2.0 オリジナル/マスストレージ オーディオOUT ビデオOUT |
電源 |
専用Li-IONリチャージャブルバッテリー 単4形電池アルカリ/オキシライド/ニッケル水素充電池 2本 専用ACアダプター |
大きさ | w107mm h58mm d25mm 突起部含まず |
重量(電源別) | 約170g (バッテリー/SDメモリーカード含まず) |
発売日 | 05年10月21日 |
定価 | オープン価格 |
参考リンク |
リコー製品情報 GR BLOG リコー製品のここが知りたい 使用説明書PDFダウンロード 発表 新製品レビュー <デジカメWatch |
発売まで1ヶ月を切った10月上旬、リコーからようやく公式サンプルが発表されました。ダウンロードしたその画像は、わざとシビアな悪条件で撮られていました。ところが、銀塩デーライトフィルムでは雰囲気を写すのが難しい曇りの湿原が、空気まで写っている。正面逆光でフレアもゴーストも出ていない。周辺減光もディストーションも認められない。驚きです。
どうも新GRレンズ、かなりの期待をしていたにもかかわらず、期待以上に抜けが良く素直で歪みの無い高画質のようで、リコーの自信の程が伺えます。少なくとも私にとって、一般に語られていた発表スペックへの不安を打ち消すには十分なものでした。
予定通り発売されたGRDは年末まで入手難の状態が続きましたが、発売日から使い始められたのは予約購入者だけの特典でした。
存在を意識せずにどこへでも持っていけて、必要なときだけぱっと取り出して見たまま撮れる。山や空の色、景色というより空気の雰囲気をリアルに捉えるその描写力。GRDは見事にGR1の一番大切な部分を継承していたのでした。とはいえ、どこまでも深い被写界深度は今まで見たことが無い感覚。当たり前の話ですが、同じ対角線画角75°でもこのレンズ、28mmじゃなくて5.9mmなのです。
レンズの性格もGR28mmと新5.9mmは全然違います。周辺減光、多少濃厚気味の発色でやや個性派だったGR28mmでしたが、この新GR5.9mmはどこまでもクリアで破綻の無いな忠実描写。レンズの味などという言葉がばかばかしくなってしまうほどのクリアさは、デジタル一眼ですら得難いレベル。画面サイズの問題は残りますが、やはりこのGRDで撮っておきたい必然性と、正常進化した「とにかく撮れ!」というメッセージを感じます。
カメラ自体の操作性、そしてAEとAFとストロボ調光の精度に関しては、GRDはGR1とは比較にならないほど進化しました。自転車走行中の片手操作で、電源ON→背面ディスプレイでフレーミング&露出確認、そのまま露出補正と時にはプログラムシフトまで行い、再度フレーミングが可能なほどの操作性にはもう絶句。まあAFについては被写界深度自体が深いのですが、マクロ時の調光などもほんとに自然です。
外爪マウントに外付けファインダーなど、デジカメとはいえいにしえRF機のボキャブラリーもみられます。GR1も、エレクトロニクスと融合した銀塩35mmの知恵が一杯詰まって、小型高画質化されていたカメラでした。こんな点にも「GRの継承」をみることができます。
記 2006/7/5