林道千倉線のGRD〜GR2 |
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GRD初代の描写は、発色、コントラストとも中心から隅々まで引き締まり、コンデジ離れした堂々たるものでした。
ただしそれは、主に日中順光の風景ロングショットなど、Dレンジの中にハイライトからシャドーまで収まる場合の話であり、近景に影が多かったり空が反逆光だったりすると、すぐに黒潰れや白飛びで絵のバランスが崩れたものでした。まあこれは何もGRDシリーズだけの問題ではなく、当時の小センサーを使うデジカメ全体の問題ではあります。余談ですが、2018年現在、360°カメラのTHETA Vのセンサーは1/2.3型なのに、画像のDレンジは太陽の正面逆光から日陰部分のディティールまで巾広く、マイクロレンズの赤玉も出ないことに驚かされます。センサーもDRも画像処理も、かつてとは比較にならないのでしょう。
GRD初代以降GR2まで、GRD・GRシリーズは「GRD2〜GR2の日々」で書いた通りセンサー・画像エンジン・レンズを変え、10年間に渡って独特の発展を遂げてきました。この項では、ほぼ同じ場所、同じようなアングルで、各機でどういう写真が撮れたかを振り返ります。
ただくれぐれも注意されたいのは、これは比較にはなっていないということ。全ての写真は撮った日が違うので、天気、木々や竹林の茂り方、光線、そして露出が違います。
また、GRD初代・2はJPEGが元データ、GRD3以降はRAWが元データになっています。GRD・GRD2ではJPEGとRAWの違いがあまり感じられなかったことから、ほぼ全ての写真をJPEGだけで撮っていたことが理由です。また各機でどういう写真を撮ることができたのかという観点のため、RAW現像のパラメータも多少変えています。
そういうわけで、比較するという目的ではなく、あくまで似たような状況で思い出す各機種の傾向とか可能性とか、というぐらいの話として眺めてください。
撮影場所は千葉県南房総市、千倉林道のハイライト竹藪。露骨に正面逆光なのに全体が薄暗いという、写真には最悪の条件です。
ここで見た通りの写真を撮れるのはいつになるのか、長年楽しみにして各機で毎年の訪問時に写真を撮り続け、近年GR2でやっと満足のいく状態になってきました。それ故、いつか機会をみてGRD〜GR2の軌跡として紹介したいと思っていました。
GR DIGITAL
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2006/12/30
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他のサンプルよりハイライト基準気味の露出となっていますが、太陽の飛び方と影の潰れ方で、GRD初代のDレンジの狭さはわかると思います。
よく晴れた日で、空き気味の竹藪外の日なたから竹藪の陰まで明暗が激しく、主被写体は日陰の中。その周辺でシャドー要素が細かく(茂みや枯葉)、デジタルカメラにとってかなり厳しい撮影条件です。前述のようにGRD初代は、順光晴天ではさすがの堂々たる描写でしたが、条件が悪いと一気に普通のコンデジになってしまったことを思い出します。この後ほぼ毎年走り納め南房総で同じアングルの竹藪写真を撮った中では、期せずして最後のGR2の写真と一番似た天気と光線状態だという印象があります。
太陽の廻りにはマイクロレンズの赤玉が出ています。この現象、GRD2で出やすいのは知っていましたが、GRD初代でもこれだけ出るということに、今回初めて気が付きました。
また、この画像と次のGRD2は、JPEGの元画像となっているため、RAWで撮影しているGRD3以降とは、尚更画質に差が付いてしまっています。
私の場合、GRD初代・GRD2では専らJPEGだけで撮影していました。GRD初代はRAWが使えることがアピールされていましたが、撮影時RAWの記録にかなり待たされたことと、RAW現像した結果がJPEGで撮影した結果とあまり変わらなかったことが理由です。Dレンジが狭いため、明暗が厳しい条件ではハイライトを飛ばしてシャドーを潰し、適正部分での抜けの良さを活かすしかありませんでした。
GR DIGITAL II
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2009/3/15
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濃厚こってり系でGRDシリーズの中では彩度やや高め、ホワイトバランスはやや赤み寄り(というかGRD初代がちょっと青い気がする)。出た当初、絵作りがGRD初代から正反対に変わったと思ったGRD2。厳しい条件下では初代と同じく、Dレンジの狭さが目立ちます。しかし構図全体の明暗をDレンジに収めやすいという意味で、GRD初代より露出についてやや安心感が増したGRD2。
このカットではGRD初代と比べ+2/3の、暗部に振った露出としています。GRD初代同様JPEGではあるものの、竹、路面の影部分や藪の間の日なたの緑等で、シャドー側・ハイライト側とも初代より粘っている傾向が伺えます。この粘り方は、実際にGRD初代からGRD2に替えて、空の白飛びや影の丸つぶれが減った時と近い感覚があるように思います。
GR DIGITAL III
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2009/12/27
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GRD3によるサンプルは、GRD初代、GRD2のものとは別次元の描写となっています。もともとDレンジがGRD2から一気に拡がっていることに加え、更に私はGRD3以降RAW・JPEGで撮影するようになりました。天気が曇りであること=風景のコントラストが低いこと、またレンズの抜けの良さも一役買っているかもしれません。ただ、これが晴れであっても、GRD2がRAW原版でも、両者の差は大して変わらないだろうとも思われます。
GRD3を使い始めて、この画質向上にはずいぶん驚かされました。GRD3のセンサーの感度(?=Dレンジに関係するという話だった)は、初期のAPS-C一眼レフに匹敵するらしいという話をどこかで読んだことがあります。実際GRD初代〜GR2の流れの中としては前機種との差がダントツで目立っていて、w605×h405に縮小してしまうとAPS-CのGRとそう変わらないところまで来ているように見えます。もちろんGRと直接比較するといろいろありますが。
また、このサンプルではわかりにくいものの、「Fast GR LENS」とされた開放1.9の新レンズGR6mmは、「GR5.9mm同等の解像力」とされていましたが、諸収差や周辺部、マクロ時のボケなどが劇的に向上していました。このため、カメラ全体としての頼もしさも段違いでした。
GRD2から全ての面で画質向上を果たしたものの、GRD3は晴れの日の赤被りがかなり顕著でした。また風景ロングショットの露出オーバー傾向が相変わらずのため、露出補正-1/3はまだ常用していました。
GR DIGITAL IV
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2012/12/23
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GRD3と同じセンサー、同じ構成のレンズ。基本的な部分を踏襲しつつ、画像エンジン更新・ローパスフィルター薄型化・コーティング変更(←これはあやしい)によりDレンジとグラデーション、コントラスト表現が全体的に向上したGRD4。
GRD4登場時、赤被りの激しかったGRD3に比べてカラーバランスが随分変わって派手過ぎるという意見があり、最初は私もそう思ってRAW現像時のホワイトバランス・色被り設定などいじったりしましたが、今GR、GR2と合わせて見ると自然そのもの。現在のGR2に繋がる絵作りは、GRD4によって確立されたと言っていいと思います。
この頃からGRDの描写に全く不満を感じなくなりました。実際に、GRD4は未だにどアップが必要な場合に現役で使います。ただ縮小画像ではあまり伺えないものの、APS-CのGRと拡大で比較すると、全部解像しているGRと調子悪いんじゃないかというぐらいにもろもろぼやぼやのGRD4、という具合に、やはり決定的な差があります。
GR
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2014/12/28
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いよいよGRです。
新GR LEN18.3mm 1:2.8、APS-Cローパスレス16MPセンサー、GR ENGINE Vにより、シャープで繊細な画質が1/1.7型ローパスフィルター付10MPセンサーのGRD4とは比較にならないGR。しかしこのページの縮小画像では、比べてみて全体的にそこはかとない余裕があるとか、強いて言えばシャドー、ハイライトの伸びだとか、その辺の差が伺える程度。もちろん等倍鑑賞やISO800以上になってくると、明らかに違いがあります。
そして高感度域の画質向上は、レンズ開放値が下がったにも拘わらず、GRD4の手ぶれ補正能力を超えた暗所での手持ち撮影をすら可能にしているほど。
GR II
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2017/12/30
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レンズ、センサー、エンジンともGRから据え置きのGR2。しかしたまにGR2を修理に出したときにGRを使ってみるとその大きな差を実感せざるを得ません。やはりあの凄いGRを更に改良したカメラであるというのが、正直な実感です。
このサンプルでも、明らかにGR2の方が構図全体の雰囲気のようなものがよく出ています。それはより繊細なきめの細かいディティール描写だったり、マルチパターンAUTOの正確なホワイトバランスによる色味だったり。地道な部分の数々が効いているようです。
前述の通り実際の晴れ具合はGRD初代のサンプル撮影時に一番近く、ハイライトやシャドーの描写だけ見ても、GRD初代からよくぞここまでの進歩を遂げた、という感慨があります。
記 2018/7/28
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