四国Tour23#7
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ここ数日に比べてあまり寒くないのが昨夜から感じられる。かなり狭く深い谷底なのに。さすがは標高90mだ。
今日の天気予報はほぼ曇り。宇和海では15時頃から雨っぽい。天気予報は数日前からあまり変わっていないものの、当日の展開は予報が早まる場合もあるし遅れる場合もある。今回のツーリングでは、全体的に朝出た予報が午後に数時間ぐらい早まるパターンが多いように感じられる。今日はどうなるか。宇和海で晴れてくれると嬉しいのだが、それはあまり期待できないような気もする。
今日より問題なのは、明日の雨と明後日の大雨だ。特に明後日。明日の夜半から大雨となるとのこと、昨日女将さんも心配して下さっていた。もし予報通りなら、明日明後日は全輪行を覚悟する必要がある。ということは、今日が最後の自転車行程日となるのだ。前半はあれだけ晴れが続いたのに、なかなか世の中上手くいかないものだ。いや、今回全体として天気はかなり上手くいっているのだ、間違いなく。
緑の森と瀬音を外に憧れつつ、何となく蚊かブヨが出そうに思い(昨日は全くいなかったが)、6時半からの朝食は中でいただく。やはり山の物、特に山菜がバランス良く、疲れた胃腸に優しく、全部すいすいっと食べることができた。
7:20、用井「寿荘」発。四万十川まで下り、ここで新道の橋がこちら岸に渡ってくる国道441へ。
■標高70mの用井から25mの川登まで24km。国道441は所々で少し登ったり下ったりしながら、一見ほとんど下っていないように感じられつつも少しずつ標高を下げてゆく。
森の中に淡々くねくねと続いてゆく細道には、時々小さな集落が現れる。入漁権や漁業関係の表示・張り紙が、四万十川での生業を思わせてくれる。
途中2011年に逆方向で通った津から口屋内を過ぎ、更に下ってゆく。
ほとんど細道だった2001年に比べて拡幅やトンネルショートカットが進んではいるものの、まだまだ細道区間が多く、車の通行を阻んでいる。お住まいの方には中村までこういう道が続くことは大変不便だとは思う。しかし、交通量の少なさは一方で四万十川沿いの道としての静かな表情を保ってくれているとも思う。
サワガニが路上を歩く最上流部から窪川までの上中流域、そして江川崎までの中流域に比べて一番静かな道が下流部にあるというのは、四万十川の大変大きな、他に類を見ない特徴だと思う。何だか不思議さすら感じさせる。こういう道は2〜3日間掛けて旅してみたい。徒歩も良いかもしれない。
9:10、川登着。たった24kmに2時間近くかかってしまった。疲れとか何とかより、ブラインドコーナーやスリップに注意して細道をゆっくりのんびりしか進めなかったことが大きな理由と思われる。
川登は中村市が近い河岸の平地だ。四万十川の谷閧ノも、やっと河口っぽい雰囲気が何となく漂い始めている。四万十川とはここでお別れだ。県道50で宿毛へ下る谷へ小さなトンネル峠越えでショートカットする。河岸の平地へ降りた道から、四万十川を渡る川登橋に登るのも一苦労。たっぷり寝てはいるものの、なかなか疲れが取れていない。
支流の谷間から里山の裾に県道50は続き、集落を過ぎるまで平坦が続いた後、森に入ってきりきりっと数10m登ってゆく。いかにも里の丘越えらしい展開の道だ。
標高100m程度、しかも短いトンネルながら、その名も新山伏トンネル。井川雨畑林道、そして道志村から山中湖へ登る峠を思い出す。そりゃあ厳しいはずだ、等と何だか可笑しい。
横瀬側に下って集落の細道を、事前組み組みのGPSトラック頼みで繋いでゆく。
川の土手、里山の裾、学校の脇。こういう田舎道は楽しくて仕方無い。
田んぼの中で立ち止まると5月の緑が鮮やかだ。雲間には青空が見え始め、周囲が明るくなっている。
左要素
里が再び山裾に近づき狭くなり始め、裏道ネタが尽きるとともに、GPSトラックは国道321に合流。一気に周囲は慌ただしくなった。
10:05、都合良く道端に登場したファミマでお10時休憩とする。あまり差し迫って休憩する必要も必然性も無いが、道が混んでて気疲れしていた。それにここ数日コンビニなど見かけることが無かった。ここまで降りてくればコンビニは珍しくもないとはわかっていても、何だか通り過ぎるのも勿体無い気がしてならなかったのだ。
天気は冴えない曇りから再び少し水滴がぱらつき始めている。天気予報を確認してみると、やはり今日は16時以降雨が降り始めるようだ。15時までに宿に着く必要がある。ということは、今日も宇和海ローラー作戦は中途半端に終わりそうだ。今日明日明後日を費やす予定だった今回の宇和海ローラー作戦パートが、早くも断念となってしまうのである。え、そんなに一気に終わっちゃうのかと思って考え直してみると、今日は半日未満、明日は1日、明後日は早朝2時間程度と行程の量は実質1日半だ。まあそんなもんかもしれない。
再び国道321で標高70m足らずの背中みたいな丘を越え、宿毛バイパスへ。
11:00、宿毛着。辺りには宿毛特有の南国っぽさが、いかにもそれっぽい山々の森にも、ごく普通の国道の道沿いにも、いつものように全体的に横溢している。3回目の宿毛は、どんよりとしたかなり低く暗い雲の下だ。だだっ広く大型車が慌ただしく埃を巻き上げ通り過ぎるバイパスの路上空間が、それだけで過去の訪問から現在への時間経過を感じさせる。不可抗力の交通量、通り過ぎる数多の大型車と共に時が通り過ぎていった、というか。
妄想していると雨がぱらぱら降り始めた。手っ取り早くコンビニの軒下で雨具を羽織ることにする。またもやコンビニに脚を停めると、なんだかコンビニ廻りというかコンビニに居着いてしまいそうな気がする。ロードサイド的にやや大作りなバイパス沿いの風景に囲まれ、押しつぶされそうな気分なのだ。休憩というよりこれは現実逃避なのかもしれないと思う。素敵な田舎の細道にいすぎたのかもしれない。それはそれで幸せなことだ。
次は四国Tour23〆の宇和海ローラー作戦だ。何となく先は見えてはいるものの、やれる時にやれることをやって脚を進めてゆく必要はある。最終日、自宅到着その時まで。
現実としては港を掠めて宇和海海岸沿いの県道7へ。この道にかなりの若番が与えられているのはどういう趣旨なんだろう、となかなか興味深い。自転車ツーリング的には、半島の外周道路という点が大変わかりやすい。まずはしばらく海岸の集落沿いに道は続いてゆく。ところどころ「6m」などという海抜高さが表示されていたり、○○年津波時の水位、等という表示もある。南海トラフ地震への備えかもしれない。私も今回の計画時、もしたまたま滞在中に南海トラフが起こったらどうしよう、などと考えたものだ(結局何の備えもしていない)。
10m以内ぐらいで港とその間のバウンドを繰り返していた道は、脇本からおもむろに高台に登り始め、その後はあまり海岸に降りず、少し登った場所に道が続いてゆく。
細道に断続する集落と森、徳島からここまで辿ってきた内陸の細道と違って深い谷間は無いし、何と言っても道の外側に見えるのは、谷闌いの山肌じゃなく海と遠くの島々だ。しかし、山村の細道と同じく、親しげな表情の生活感漂う静かな道だ。
こういう道を走るためにここまでやって来たのだ、と心から思う。来て良かった。
宿毛を出て一旦晴れ始めた空は、道を西に進むにつれ次第に霞み始め、雲がどんより濃く低くなっていた。そして下り始めて行く手の山が霞んでいる、と思っていたら霧に包まれるように辺りが雨になり、すぐ止んだ。空は相変わらず、というかますます薄暗い。2011年の訪問でもこんなことがあった。この辺の天気の特徴なのかもしれない。
等と思ったところで、県道7は城辺まで丘越えへきりきり登り始めたと思ったら20%ぐらい平気でありそうな坂が続いた。
登りの最高地点は200mぐらいではあるものの途中から当然のように息が切れ、もう押しに切り替えるのであった。更に稜線を越え、港がある垣内へ降り始めると、途中から本降りの雨となった。
ずっと雨じゃなくても、今日はもうこんな感じなのかもしれない。もう最短で宿に向かうべきだと思った。ローラー作戦、序盤で早くも断念である。仕方無い、明日明後日と全休の可能性が非常に高いこの状況では、あまり粘っても意味は無いのだ。
左要素
13:10、垣内で再び海岸に降りて城辺へ登り返す。
国道56の小さい峠部分で、今日ももう一杯一杯だ。思えばこの辺り、2001年には足摺岬までの行程で時間は一杯一杯だったし午前中の宇和海沿い国道378の素晴らしい風景にノックアウトされていたし、とにかく通過しちゃえと思いながら通り過ぎていた。無茶な行程だったし我ながら元気だったんだなあ、とも思う。
13:40、城辺(じょうへん)着。古びたというよりまさに昭和レトロっぽい町並みは2001年の訪問時から印象に残っていて、その雰囲気は今回も健在だった。確か町中に町界があり、西側が御荘で東側が城辺だったと思う。2001年私は御荘側から通ったので、「あれあれあれ、町中で地名変わっちゃうのか」と思いつつも町全体を御荘として憶えていた。今は市町村合併により、両方ともめでたく愛南町になっている。
城辺では何か食べたいと思っていた。道路看板によると「道の駅 みしょう」があと700mだという。それなら行ってみましょう。まさか比較的初期の道の駅で食堂が無い、なんてことは無いよな。
ところが不安が的中、道の駅はいかにも初期の道の駅っぽく販売施設が主体だった。2階に小さい喫茶店があるものの露骨に「軽食」と書いてあるだけあって本当に昼食のために立ち寄る程の食事は無さそうで、そしてそこ以外には供食施設が無い。
国道56の反対側には食堂が2軒建っている。そちらに脚を向けてみたものの、果たして1軒は13時でお昼の部がオーダーストップ、もう1軒は1時間以上掛かりそうとのことだった。なるほど、お店の駐車場が満車である。
仕方無い。そもそも必要に迫られて何かを食べたかったわけじゃあないのだ。もう宿へ行ってしまえ。
宇和島の闘牛大会のポスター が貼られている住宅地の細道から海岸沿いへ。
雨がぱらぱら降り始めたり収まったりする中、たった40mの登りでもうてっぺんで脚を着く有様だ。まだまだ疲れているね。
14:45、高畑「民宿山本屋」着。事前に知ってはいたが、本当に港の海岸際に建つ宿だ。
左要素
釣り宿だからなのか、平屋でやや長めの3棟が軒を接するように展開し、そのうち2棟が宿泊棟だ。宿主さんに到着をお知らせし、いろいろ説明を受けつつお話しした。あまりに海に近い場所なので「南海トラフ地震が心配でしょう」と尋ねると「ここは狭い湾の中なので地震の時はむしろ水が引く」とのこと。そういう考え方もあるのか。
明日の朝食は無いとのこと。しまった、予約の時にそれを聞いてたのに食料を買ってくるのを忘れてしまった。御荘で昼食にあぶれて、多少動揺していたかもしれない。まあどうせ明日は輪行だ。とは言え明日は御荘での滞在時間は数分だし、さっき通った町の感じではコンビニはバス停周辺に無さそうだったので、朝食は宇和島までお預けだろうな。何とかできればしたいものではある。
生活感漂う雰囲気の部屋は広々と、WCのみならずユニットバスが専用だ。居心地はなかなか良い。
明日の天気予報を確認すると、朝から雨がしっかり降るようだ。早くも全輪行確定である。明後日はと言えば、かなりの大雨のようだ。でも宿のキャンセルはしたくない。と思っていたら、明日の宿から確認のお電話をいただいた。「船で伺いますので」とお伝えしておく。
左要素
風呂に入った後、15:30には夕食が届いたとのことで、一寝入りさせて頂いてから予定より早く17:00から夕食となった。これがゴージャスで驚いた。量は一杯だしお魚、肉とも大変美味しい。中でも美味しかったのは、宿主さんが自分で揚げて下さった大きなエビフライ。野菜一杯なのも大変助かる。量はと言えば、何とか完食できた程の量である。私が食べ終わった頃食事にやって来た同宿のお客さんは3〜4組。車のお客さんが多かったようだ。皆さん完食できただろうか。
記 2023/6/17
記 2023/