四国Tour23#4
2023/5/2(火) 小松→直瀬-1

小松→葛原→寒風山隧道→東黒森下 (以上#4-1)
(以下#4-2) 区間2 (以上#4-2)
(以下#4-3) 区間3 (以上#4-3)
(以下#4-4) 区間4 (以上#4-4)
(以下#4-5) 区間5
40km

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
ニューサイ写真 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

https://ridewithgps.com/trips/119723779

 

 起きるとかなり冷えている。標高は370m。昨日の東祖谷は530mだったので、標高だけで言えば昨日より低い場所で夜明けを迎えているのに、今日の方が遙かに寒い。切り立った山に囲まれた湖岸なので単純な谷底より気温が低いのかもしれない。
 空は藍色から明るくなり始めた、透明感のある濃い空色だ。2階の部屋から窓の外(というより物干し台)に出て写真を撮ってみる。今のところは特に身体の重さや息切れは感じられない。ならば今日は町道瓶ヶ森線を目指すとしよう。せっかく今こんな場所にいるのだ。

 6時半から朝食をいただき、防寒に雨具を着込んで7:05、小松「旅館筒井」発。

 昨日の県道17を継続し、さめうら湖岸を上流方面へ向かう。

 途中大勢の猿が路上から走り去って度肝を抜かれた湖岸の道やさめうら湖は未だ影の中だが、周囲の切り立った山々には上の方に陽差しが眩しいほど当たり始めている。

 

 さめうら湖が上流側で収束して渓谷に替わる井野川では、深く落ち込んだ渓谷に、民家が点在する高台が島のように浮かび、その風景が又深い谷の中にある。宿かなと思っていた家屋が、今回準備段階の調査通りことごとく宿ではなくなっていることを、現地確認しつつ粛々と通過してゆく。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 前回脚を停めて眺め入った風景は、横目で眺めて通過することにする。走り始めて、やはり昨日感じていた息切れはちょっとの登りでも起こることを実感していた。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 

 どこも2017年訪問時の写真を、自分のHPで眺めている。相変わらず迫力満点の色彩豊かな風景に、新たな驚きは無い。しかし、やはり実際に眺める風景には空間感覚を伴う精緻さがあり、迫力では比べものにならない。出発直後からこの風景の中に身を置くことができる今日の幸せよ。全くじじいの身体は嫌だねなどと思いつつ、やはり出発して良かった、ということだけは確実に言える。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 道沿いにも対岸の山々にも生い茂る新緑の広葉樹の柔らかく明るさ、湖から渓谷区間に替わってゆく吉野川の岩場や流れの荒々しさ。いつの間にか鮮明になってゆく登り基調に次第にペースが落ちてゆくものの、ひたすら楽しい最初の区間なのであった。

 

 8:30、日ノ浦着。ここまで風景に立ち止まらないように進んできていたのだが、行程の指標として事前に確認しておいた前回の時刻、8:20よりやや遅れている。出発時刻が10分遅れであることを差し引き、まあまあ許容範囲である。


 県道17は吉野川対岸に穿たれたトンネルから突如現れた国道192に合流、寒風山トンネルへ向かう谷を数km遡ってゆく。

 ぐっと幅が広く国道っぽい堂々たる表情の行動192は、その佇まいとは裏腹に登り斜度は5〜6%。みるみるうちにペースが落ち、道の駅を横目に少し先でコーヒー休憩とする。計画段階では朝少し早く出発すべく、ここの道の駅併設の宿に泊まろうとも考えていた。その宿を予約できなくてちょっと残念だった気持ちは、昨夜の素敵な旅館筒井で完全に消え失せていた。

  A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 9:10、寒風山トンネル着。国道にしちゃあかなり長い5km以上のトンネルだ。と思って眺めると、入口にもそれなりに格というか迫力があるように思える。その入口を横目に、こちらは脇の山中へと登って行く細道の旧道へ。

 ここを400m登って、寒風山隧道の入口から町道瓶ヶ森線に入るのだ。同じ寒風山の名前が付いても、トンネルは新道、隧道は旧道だ。この場所、前回は9時じゃなかったかと思う。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 旧道の斜度はかなり緩く、寒風山隧道まで400mを15段ものつづら折れで登ってゆく。道の外には森の下手に2段、時には3段下の道まで見下ろすことができるのが大変象徴的だ。道が狭く斜面の広葉樹林は密なので、森の木漏れ日で路上空間はまさに緑に染まっている。そしてつづら折れの折り返しでは晴れまくった青空に周囲の稜線を見上げることができる。結構見上げる稜線のどの辺りまでこれから登るのかは、前回の訪問でよくわかっている。まだまだ登る必要がある。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 しかしこの辺りから、そろそろ疲れが顕著に現れ始めていた。旧道区間の下の方では100m置きぐらいに脚を着いて休むようになっていた。これなら前回写真を撮っていたタイミングとそれほど変わらない。しかしその間隔は次第に短くなっていった。気が付くと前回寒風山隧道に着いた10時過ぎの段階で、あと100m近く残っているのであった。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 10:40、寒風山隧道着。標高1100m。前回ここでは薄曇り、隧道出口からあやしい霧が吹き出して大変迫力があった。頭上の青空に雲はほとんど無い。今日は青空の下ぽかぽかの隧道前広場である。時々上空に霞が拡がった前回でも青空の町道瓶ヶ森線を存分に楽しめたのに、それを更に、しかも大きく上回る、絶好の晴天だ。なのにここまで400mの標高差に1時間半かかっている。明らかに普段のペースより遅い。やはり、というよりどうしようもないほど疲れが貯まって取れていないのだ。
 ここから町道瓶ヶ森線(UFOラインという愛称より敬意を込めてこちらの名前で書きます)に入るのは、ちょっと危険かもしれない。前回から30分遅れ、まだ許容範囲かもしれない。しかし、町道瓶ヶ森線終点の土小屋のタイムリミットを13時半としていたのを、14時にしてもいいかな、と思い直した。しかしこれは前回の土小屋到着を12時半と勘違いしていたためで、後で見直すと前回の到着時刻は13時半だったのだ。それならタイムリミットは14時半として考えても良かったかもしれない。まあそれでも、結果は変わらなかったとも思う。


 寒風山隧道の手前から周囲の森は開け始めていた。念願の町道瓶ヶ森線にやって来れて、天気が絶好調としか言いようが無いのをひしひしと感じさせられる。さすがは気象神社の御利益だ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 こういう状況で、標高1200mぐらいから始まる10%区間に入り、50m置きのつもりが30m、次第に10m置きに頻繁に脚を着く有様である。いよいよスタミナ切れになってしまった。グリーンラインじゃこんなことは無いのだが、明らかに何だかとても疲れている。

 岩山に穿たれた短いトンネルが現れ、標高1400mを越えて伊予富士がいきなり正面に現れた辺りから、遂に乗って進むのを諦めて自転車を押して歩くようになった。この段階で時刻は11:50。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 流石に暢気な私も、土小屋へ14時に到着できないかもしれないと思い始めた。どうしよう。13時を過ぎたら土小屋の国民宿舎に空きがあるか電話してみようか。その場合、今日の宿はキャンセルする必要がある。いや、15時土小屋なら今日の宿には18時に着けるかもしれない。できることなら宿は変えたくない。予約させていただいた宿への義理もあるし、意地みたいなものである。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 もう、町道瓶ヶ森線の登り区間から稜線廻りとも言うべき第1の核心区間に到達している。道の斜度が緩くなり始めたので再び自転車に乗ってみた。しかし、私の脚は全然回らなくなっていることに気が付いただけだった。再び歩き始め、水を飲もうとしてペットボトルを落としてしまい、想像以上に自分が疲れていることがよく理解できた。
 これで今日の宿まで下るとすると、土小屋かシラサ山荘からタク輪する必要がある、と観念した。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 ペットボトルを落としたとき、高知ナンバーの軽ワゴンが止まってくださった。しかしこれから高知県側へ戻るとのことで、お世話になることは断念した。この出来事があり、ヒッチハイクという方法はありかもしれないと私は思い始めた。お礼をかなりお出しても、タクシーを呼ぶより随分割安なはずだ。
 13:15、少し道の真ん中を歩いていた私を眺めつつ、通り過ぎた老夫婦のワゴン車が速度を緩めてくださった。今しか無い。

 というわけで、その後私はその老夫婦のお世話になったのだった。大きめのワゴン車だったので、自転車の前輪だけ外しただけで何とか車の後部に乗せることができた。
 ご夫婦は八幡浜から少し南、宇和海沿いのみかん農家とのこと。町道瓶ヶ森線にはよく写真を撮りにいらっしゃるそうだ。お礼を申し出たものの「ぼくの素敵な休日が台無しになっちゃうから」と受け取ってくださらなかった。私がお世話になったことを楽しんで下さっていたのだ。私は疲れてはいたが、よくお話ししていただき、楽しいヒッチハイクとなったこと感謝に堪えない。
 東黒森、自念子ノ頭、西黒森、そして瓶ヶ森。稜線近くに空中を辿るような細道が続いた。瓶ヶ森下の最高地点を過ぎ、稜線の向こうにいきなり間近に突き出した子持権現山を見下ろしつつ高度を下げ、更に稜線をシラサ峠、伊吹山、よさこい峠と通過してゆく。この間、忘れもしない風景が次々現れるのに、時間に対して脚取りは意外な程ゆっくりしていた。こういう細道では対向車との行き違いが多く、そうでなくても危なっかしい道なので、車と下り自転車の速度差はあまり無いことに気が付いた。車に乗せていただいてる身分ですが。
 土小屋まで100m登り返し、土小屋の先は対向車線が揃った県道12石鎚スカイラインへ。ここでも少し下った所に100m登り返しがある。これぐらい何とも思わなかった前回を思い出しつつ、今回は車に乗せていただいて良かったと、つくづく思った。

 14:20、道の駅面河着。前回も少し休憩したこの場所で、やっと前回のペースに戻ったと言える。我ながら前回はかなり好調だったかもしれない、と思った。2日目だったしね。
 15:10、ご夫婦は八幡浜から南の宇和海沿いまで帰られるとのことで、宿まであと6kmの七鳥で下車させていただいた。


七鳥→直瀬 6km https://ridewithgps.com/trips/119733158

 自転車を組み、七鳥発は15時半過ぎ。

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
 

 たかだか6km登り90mに難儀し、15:55、直瀬「国民宿舎古岩屋荘」着。

 宿に明るい内に到着できた幸運には感謝しか無い。しかし、やはりかなり疲れている。何故こんなに疲れているんだろう。カメラ、電源、あまり注意せずにいろいろ持ってきてしまい積み上げで荷物が重くなっていること。先々週に終わった某業務の疲れも否定できない。もちろん今回の行程による疲れも加わっている。そして紛れもなく歳。

 訪れたかった区間の多くを断念せざるを得なかった今日の行程だった、しかし、あまり自分でくよくよしていないのは不思議なほどでもある。何と言っても、何を断念せざるを得なくても、今自分はツーリングに来れているのだ。
 しかし一方、こういう状態では明日の四国カルスト訪問はかなり不安だ。明日の宿への履行行程の準備として、フロントにタクシーを呼ぶにはどうするか聞いておく。フロントにお願いすれば、ポーチ前まで来てくれるとのことで、とりあえず最低限ひと安心だ。
 てきぱきとお風呂、洗濯をこなして17時前。夕食の18時まで一寝入りすることができた。この段階で、辺りは未だかなり明るい。

 

 一寝入りしてもまだ疲れていたようだった。食事は通常の食事にオプションのきじ鍋をお願いしておいたのだが、元々の量が多く、更にプラスのきじ鍋がまったく腹に入らない。心ならずも残してしまったのが残念だった。あるいはこれも疲れのせいなのかもしれない。
 布団に入った頃にやっと薄暗くなり始めた。ここの名物らしき裏手の岩場が青い影に包まれ、空が次第に濃い青になってゆくのを見上げて本格的に寝るとする。
 体調とは裏腹に、陽差しがこよなく素敵な1日だった。疲れが明日に残らないといいのだが、いや、それは望み薄かもしれない。そしてこういう状態で、明日もかなりの晴れのようだ。過去の四国Tour中、こんなに晴れの日が続くのは珍しいというのに。

記 2023/6/4

記 2023/

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Last Update 2023/6/20
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