四国Tour23#4
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寒風山隧道の手前から周囲の森は開け始めていた。念願の町道瓶ヶ森線にやって来れて、天気が絶好調としか言いようが無いのをひしひしと感じさせられる。さすがは気象神社の御利益だ。
こういう状況で、標高1200mぐらいから始まる10%区間に入り、50m置きのつもりが30m、次第に10m置きに頻繁に脚を着く有様である。いよいよスタミナ切れになってしまった。グリーンラインじゃこんなことは無いのだが、明らかに何だかとても疲れている。
岩山に穿たれた短いトンネルが現れ、標高1400mを越えて伊予富士がいきなり正面に現れた辺りから、遂に乗って進むのを諦めて自転車を押して歩くようになった。この段階で時刻は11:50。
流石に暢気な私も、土小屋へ14時に到着できないかもしれないと思い始めた。どうしよう。13時を過ぎたら土小屋の国民宿舎に空きがあるか電話してみようか。その場合、今日の宿はキャンセルする必要がある。いや、15時土小屋なら今日の宿には18時に着けるかもしれない。できることなら宿は変えたくない。予約させていただいた宿への義理がある。何か結論を出すなら、もう少し早い段階で出す必要がある。
もう、町道瓶ヶ森線の登り区間から稜線廻りとも言うべき第1の核心区間に到達している。道の斜度が緩くなり始めたので再び自転車に乗ってみた。しかし、私の脚は全然回らなくなっていることに気が付いただけだった。再び歩き始め、水を飲もうとしてペットボトルを落としてしまい、想像以上に自分が疲れていることがよく理解できた。
これで今日の宿まで下るとすると、土小屋かシラサ山荘からタク輪する必要がある、と観念した。
ペットボトルを落としたとき、高知ナンバーの軽ワゴンが止まってくださった。しかしこれから高知県側へ戻るとのことで、お世話になることは断念した。この出来事があり、ヒッチハイクという方法はありかもしれないと私は思い始めていた。お礼をかなりお出しても、タクシーを呼ぶより随分割安なはずだ。
13:15、道の真ん中を歩いていた私を眺めつつ通り過ぎた老夫婦のワゴン車が、速度を緩めてくださった。今しか無い。
というわけで、その後私はその老夫婦のお世話になったのだった。大きめのワゴン車だったので、自転車の前輪だけ外しただけで何とか車の後部に乗せることができた。
ご夫婦は八幡浜から少し南、宇和海沿いのみかん農家とのこと。町道瓶ヶ森線にはよく写真を撮りにいらっしゃるそうだ。お礼を申し出たものの「ぼくの素敵な休日が台無しになっちゃうから」と受け取ってくださらなかった。私がお世話になったことを楽しんで下さっていたのだ。私は疲れてはいたが、よくお話ししていただき、楽しいヒッチハイクとなったこと感謝に堪えない。
東黒森、自念子ノ頭、西黒森、そして瓶ヶ森。稜線近くに空中を辿るような細道が続いた。瓶ヶ森下の最高地点を過ぎ、稜線の向こうにいきなり間近に突き出した子持権現山を見下ろしつつ高度を下げ、更に稜線をシラサ峠、伊吹山、よさこい峠と通過してゆく。この間、忘れもしない風景が次々現れるのに、時間に対して脚取りは意外な程ゆっくりと感じられた。こういう細道では対向車との行き違いが多く、そうでなくても危なっかしい道なので、車と下り自転車の速度差はあまり無いのかもしれない等と思っていた。車に乗せていただいてる身分ですが。
土小屋まで100m登り返し、土小屋の先は対向車線が揃った県道12石鎚スカイラインへ。ここでも少し下った所に100m登り返しがある。脚取りは遅くてもこれぐらい何とも思わなかった前回を思い出しつつ、今回は車に乗せていただいて良かったと、つくづく思った。
14:20、道の駅面河着。前回も少し休憩したこの場所で、やっと前回のペースに戻ったと言える。我ながら前回はかなり好調だったかもしれない、と思った。2日目だったしね。
15:10、ご夫婦は八幡浜から南の宇和海沿いまで帰られるとのことで、宿まであと6kmの七鳥で下車させていただいた。
記 2023/6/4