四国Tour23#3
2023/5/1(月) 東祖谷京上→小松-1

東祖谷京上→京柱峠
(以下#3-2) →豊永
(以下#3-3) →本山
(以下#3-4) →小松

75km

ニューサイ写真 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 

 まだ暗い内から裏手の祖谷川の瀬音もカジカの声も賑やかだ。昨夜音がするほどの雨が降ったような気もする。四国は夜明けが明らかに東京より遅い。5時過ぎでやっと明るくなり始める。1時間とは言わないが、40分ぐらいは遅いかもしれない。その明るくなり始めた空が、ここ2日ついぞ見なかった色になっている。真っ青なのだ。雲一つ無いという以上の、まだそんなに明るくないのに光が漲る夜明けの空だ。

 

 起きたばかりの段階では、流石に疲れは感じられない。それならと思って準備してある2コースのうちの長めコースを確認してみた。全体的には祖谷渓を下って愛媛県の山中でしばし平坦に近い状態で進み、おもむろに900mの白神隧道を越えて今日の宿があるさめうら湖の早明浦ダム下手に出る。獲得標高差は丼勘定で1500mぐらいに収まる筈、そう心配することは無さそうに思える。しかし、新宮ダム・柳瀬ダム周辺のアップダウンを過小評価しているかもしれない。こういう小さいアップダウンが疲れているときにはてきめんに効いて、予定通りに宿に着けないという事態が起こるのだ。しかもこちらのコースには商店など無く、脚を踏み込んでしまえばリカバリーが難しい。ここは無理せず、京柱峠を経由することにした。更に言えば、南側の標高800mの赤荒峠越えなど止めて、本山経由の最短コースにしておくのがいいかもしれない。

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 7:35、京上発。集落の旧道でまずは祖谷渓谷分岐の新居屋へ。こちらの居屋は祖谷とは違う文字を使っているのが面白い。

 分岐近くで京上をバイパスした与作の新道が合流してきた。合流点に「京柱トンネル新規開通促進」等という看板が掛かっていて、前回2004年にこの風景と看板を眺めたことを思いだした。

 再び細道となった与作は、京柱峠へ向けて登り始める。森の中を緑色に明るく彩る木漏れ日は、この2日間見ることは無かったものだ。この段階で早くも、2回目の京柱峠が素晴らしい訪問になることを実感した。2001年はそもそも霧が濃く、麓から峠のどこも何も見えなかったのだ。

 登りが始まると共に、相変わらず疲れていることも実感した。森の中、木漏れ日の緑色の光の中で息が切れ、しばし立ち尽くす。登れなくなっているとは言えこういうのは悪くない。短縮コースとはいえ京柱峠に来て良かったと、また思った。

 森が開けた樫尾の集落では、山中に京柱トンネルらしき工事現場が見えた。或いは与作新道などではなく、何かの高速道路かもしれない。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
  A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 それ以上に、何と崩落復旧工事通行止めの標識が現れて驚かされた。出発前に県道クラスは通行止めをチェックしていたのだが、確かに国道は見過ごしていたかもしれない。看板には迂回路が示されていて、これがまた与作の距離半分以下ぐらいのつづら折れ3段で、峠近くまで登ってしまう道のようである。多分ほぼ全区間きりきり登る道なんだろう。そして核心の工事区間は、林道合流点のすぐ手前であるようだった。与作とは言え大の国道が白昼堂々通行止めになってはいるものの、何にしても迂回路が示されているのはまあ良心的だとも言えるし、迂回路があるから国道を通行止めにして工事できているのだろう。それが公共の福祉というものであり、自転車で通行する物好きの都合はやはり二の次になってしまうことは、物好きの私にも理解できる。

 実際には目の前の迂回路方面に、20%に迫るような激坂が早くも登場している。集落の道なのに路面もコンクリート舗装だよ。などとと思いながらもう早々に押してしまう。

   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 集落の中では途中で風景が開け、ますます斜度の激しい坂が続いているのがよく見えた。これが今回の京柱峠なのだ。

 そして集落上手で一旦斜度は落ちつき、水平に斜面を横切った後つづら折れの3段目が始まり、更に斜度を増したコンクリート舗装の激坂が森の中に続いた。

 

 これで午後の15時過ぎだと精神的につらいものがあるが、まだ8時台。のんびり明るい陽差しの中を、脚を停め停め休み休み延々と押してゆくワタクシなのであった。

 

 しかし斜度は厳しい分、距離はそう長くないのが救いではある。

 

 林道が与作に合流した場所では、さっきの案内通りにすぐ下手に工事区間が伺えた。大々的に路盤を掘削して構築し直しているようで、これは通れないね、と実感できた。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 峠までの最後の区間では、少し離れた稜線の鞍部にアンテナ鉄塔が見えた。多分そこが京柱峠であり、道はそこまで緩めに登りながら山肌を巻いてゆくのだ、ということがわかった。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 10:00、京柱峠着。屋根付の峠名標は以前眺めたとおり独特の佇まいである。それ以上に濃霧の中だった前回と違い、今日の峠は青空の中と言っていい。手前の東祖谷側、行く手の高知県とも、谷間は新緑に覆われ、真っ青な空の下彼方の霞へ消えてゆく。

 

 前回2001年の記録を読んでみたら、京柱峠に8時半に着いていて驚かされた。東祖谷の菅生から窪川まで1日で走っちゃった日とはいえ、自分の走りとは思えない。今の自分には絶対無理だな。などととても楽しく幸せに振り返ることができる。

 

 20年以上経った今でも5月の旅を全身で実感できることに感謝しながら、峠名標に自転車を立てかけおにぎりを1個。少し休んで高知県大豊町側へ。

記 2023/5/28

#3-2へ進む    #2-5へ戻る    四国Tour23 indexへ    自転車ツーリングの記録へ    Topへ

Last Update 2023/7/9
ご意見などございましたら、E-Mailにてお寄せ下さい。
Copyright(c) 2002-23 Daisuke Takachi All rights reserved.