北海道Tour23#7 2023/8/15(火)仁宇布→浜鬼志別-1
仁宇布→歌登→中頓別→浅茅野→浜猿払→浜鬼志別
(以上#7-1)
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窓の外、森の上が明るくなり始めたっぽいので、外に出てみることにした。ファームイントントのデッキからプライベート牧草地、テントに青空が拡がっている。過去に撮った写真と同じ風景が目の前に拡がっているのが大変嬉しくもあり、あまりに同じすぎて何だか奇妙な気もする。いや、テントが建っていたり茂みや木の形が少しづつ毎年毎年違っている。とにかく、夏の晴れの朝であることは間違いない。1日ずっと晴れとの天気予報通り、夜明けから申し分無い晴れなのである。
朝食が7時からとのことで7時に朝食を頂き、7:20、仁宇布発。
交差点から、まだそんなに暑くない晴れの仁宇布をのんびり登ってゆく。去年も朝から凄い晴天だったことを思い出す。こういうことは何年か続き、また雨の年が何年か続くような場合が多いような気がする。根釧台地もチミケップ湖も津別峠もそんなような気がする。今年訪問したら雨だったという場所があっても、それがその年の特徴だったというだけの話なんだろう。
などとしみじみ今日の訪問そのものに感謝しつつ、明るい牧草地の緩い登りを緩々と通り過ぎ、未だ薄暗い森へ。道が森の中に入ると、まだ陽が差していない木陰がひんやり涼しい。日なたはもうかなり暑くなっていることを改めて感じる。
盆地外れから西尾峠までわずか70mの一登り。ひんやりした森の闇に、熊が息を止めて潜んでいると思うと怖いので、考えないように努め粛々と脚を回す。何度か道が曲がって峠周辺の鞍部に達し、そのまま平場を乗りこえる。いつもの西尾峠の通りだ。しかし木彫りの峠標識は去年から無くなり、峠の目印は町境の駐車場に変わっている。
峠の先も、しばらく鞍部の平坦に近い緩い下りが続く。緩くても脚を停めて速度は上がってゆく。やはり決定的に登りとは違うのだ。がくんと斜度が増え、しばし谷底へ一下り。谷底に降りると斜度は再び緩めに安定し、そのまま風烈布川に沿って延々と谷間がひたすら続く。森まっただ中の一連の流れは、仁宇布発の行程でのいつものこと。逆方向で歌登から仁宇布に向かう時は、これが全部登りに替わる。下りの反対は登りというだけの話なのだが、下りであまり脚を回さず長い間進めているのが何だか申し訳ないような不当な得をしているような気がする。
申し訳ないと言えば、この間ずっと森に睨み付けられているような、静かな圧迫感が感じられるのだ。或いはこれが、生い茂る森の生命なのか。20後半〜30km/hでしばらく進んでいると、ささっと次々通過してしまうので、少しはその圧力から助かっている。そして今朝はその圧迫感が、夏らしい朝の陽差しに照らされた眩しい鮮やかさと表裏一体だ。道の向き次第では陽差しが直接路面を照らし、木陰も明るく眩しい緑色なのは昨日の下川・上幌内・仁宇布の道道60道道49と同じだ。とにかく明るい眩しさが生々しい、今朝の道道120だ。
音標へのダート道道880の、いかにも林道っぽい分岐を過ぎる辺りから、日なたが暑くなり始めていることを感じ始めた。直射日光が鋭い。下りに任せて下っていたうちは気付いていなかった。
牽牛休憩所で辺りが開けて路上が日なたに替わると、まだ8時台後半なのに紛れもなくけっこう暑い。天の川トンネルの涼しさが大変助かるのも、逆に外の暑さを実感させられる。
トンネルの向こうはもう大曲まで一下り。大曲でちょっと脚を停めるかと思っていた通りに少し脚を停め、補給食のパンを引っ張り出して食べ、水を飲む。一息付いて改めてやっぱり、というよりかなり暑いのだった。道北の山奥でこれだけ暑いんだから、今日はこの先やってられないことになるかもしれない。
久しぶりに盆地と牧草地が拡がった。仁宇布以来の人里、上徳志別だ。
ゆっくり走って牧草地をを見回したり、ところどころで脚を停めたりしてみる。どこも一見均等に牧草地が拡がってはいるものの、何回か訪れていてやはり去年も写真を撮った牧草地の端で、木立と遠景の山のバランスがいいように感じられた。ワンパターンでもここで写真を撮りたい。
脚を停めてみると改めてもう暑い暑い。日差しが肌にぴりぴりする。時間はあっという間にもう9時過ぎ。確か以前雨で脚を停め停め来たときが、これぐらいの時刻だったと思う。
■盆地のくびれを過ぎ、北側の志美宇丹へ。集会施設前、バス停小屋の自販機が大変有り難い。冷たいコーヒー500mlを一気にぐびぐび呑み込む。かなり生き返った。落ちついて空を眺めると、雲がびゅんびゅん、暑さからは意外な程の速度で往来している。上空の風が強いんだろうと思う。まあしかしそんなことに気付いても、暑さが解消される訳じゃない。こういう一連の流れに、もう道北もこれぐらい北上して初めて、北海道の夏らしい夏に身を置けていると思う。暑くて辛いが、やっぱり夏の旅は楽しい。
軽い丘越えの志美宇丹峠を越え、歌登の盆地へもう一下り。下りきった辺渓内では時々涼しい風が感じられたのが、盆地の中に進み、周囲が開けて木陰が消えると、やはりもう暑くて仕方無い。地球温暖化による顕著な現象ではないかとも思うものの、でもまあ1990年代、たとえ稚内でも晴れると無茶苦茶に暑かったことも思い出す。道北でも昔から夏は暑いのだ。
10:05、歌登着。セイコーマートに逃げ込み、グランディア缶コーヒーにセコマアイス、低温系物資を集中的に買い込んで身体を冷やす。野菜は昨夜ファームイントントのジンギスカンでたっぷり食べられたので、パック野菜は割愛しておく。
延び延びになっていた初日〜西興部の地形図送還をここでこなしておく。地図満載状態で昨日生田原から仁宇布まで来れたんだし、今日で7日目、あと4日。もう大手を振って軽量化してもいいでしょう。
10:35、歌登発。道道120継続で兵安峠へ。道北内陸毎度のこの道、今日は陽差しが強い灼熱の道だ。全く、晴れれば暑いし雨なら雨でびしょびしょぐずぐず質が悪い。さっき志美宇丹で諦めたようなことを考えたばかりなのに、中間というものは無いのか、とまた思う。初北海道からずっと思っている。これが北海道の夏なんだろう。それにしても暑い、暑い。
リサイクルセンターを越えると谷間が狭くなる。平地の部分が無くなって森が道端まで迫り、登り斜度が増えて道は谷底ととも高度を上げ始める。谷は狭いものの両側の山は低い。谷底から伺える稜線部分は、森が所々で笹原になっている。宗谷丘陵の眺めを思い出させるとともに、道北ももうけっこう北までやって来ていることを思い出させる。
谷の奥の手前で道はおもむろに谷底から離陸し、稜線を巻いて峠を目指し始める。峠で枝幸町と中頓別町の町界をを越え、谷底へ下り始めてひと安心。標高220m、明らかに登り始めてからの登り量は130mぐらい。大した峠じゃないはずなのに、平地区間が長いのと急に登り始めるのと森の圧迫感のせいで、いつも絶対量以上のしんどさが感じられる峠だ。
兵知安側では去年の拡幅工事箇所で、今年も道端にバリケードが立っていた。工事が続いているのかもしれない。作業の方や重機は見当たらないので、今日は工事がお休みのようだ。この山奥の道で人が作業をしているかもしれないことが、有り難く心強い。まあしかし、これだけ山奥だと熊は工事なんかお構いなしに出てくるのかもしれないとは思う。
大分下って狭い谷から兵知安へ放り出されるように到着。中頓別へ続く里の一番奥、伸びやかに拡がる谷間。人里と異界の先端部に共通する、どこか寂しいようなきりっと厳しいような独特の表情が感じられる。この道の鬱蒼とした長い森の後の、印象的で楽しみな風景だ。今日はその風景が陽差しに照らされ、青空の下草原の緑が優しい。
12:20、中頓別セイコーマート着。
いつもの仁宇布発より出発が少し遅かったことを考えると、ここまでのんびり写真を撮り撮り来ているのになかなか順調な行程と言っていい。あとはもう海岸の浜鬼志別まで、丘陵以外には大きな登り下りは無い。時刻、天気、地形、補給物資の心配が無くなり、もはや心配なのは向かい風だけだ。まあ過去最大級の向かい風が吹きされたとしても、今日はもう極端なことにはならないだろう。
この2日後、過去最大級の嵐がやってこようとは、この時はまだ想像だにしていなかった。
12:45、中頓別発。国道275を浜頓別方面へ。さすが国道、ここまでの道道120より照り返しが暑い。寿手前の坂で汗が噴き出て、短い寿トンネルの涼しさに助けられた。
例によって下頓別手前で北側の農道へ。車が一気に減って気持ちが落ちつく以上に、やはり国道じゃない道では路面の温度が下がるような気がする。畑やら茂みやら森やら、道路と周りの風景要素も近づくように思う。実際にこういう道の路盤は国道より低い。実際にはあまり大きな差ではなくて気分だけの違いだとしても、気分が違うことは大きい。私の旅そのものが気分だけなんだし。とにかく助かるのだ。
常盤の山裾農道で、以前挨拶してくれた農家のご主人が今日は外に出ていないのを見送り、金ヶ丘の丘陵に直登で乗り上げる。農道仕様の急な斜度も毎度の事。先が知れていると思っていると、例えのろのろでも意外に淡々とこなせるものだ。
登り切る頃には汗が吹き出てたが、切り通しから牧草地が拡がる金ヶ丘に放り出され、風が吹き始めてずいぶん助かった。緩いアップダウンを少し脚を回したり、緩い下りに任せてのんびり下ったり。
牧草地まっただ中、中頓別・オホーツク海岸沿いのほぼ毎年通っている経路なのに、今日の金ヶ丘は過去に見たことが無いほど、広々と伸びやかで明るい表情の牧草地である。雲が低く薄暗いときと印象が全然違うのは驚く程だ。これは以前大先輩ツーリストから教えていただいた通りの浜頓別の牧草地だと思った。そして、これは道北の厳しい気候故に、束の間の優しい表情なのかもしれない。
道道84のクランクまで、夢見るような緑の丘が続いた。2000年に浜頓別に初めて自転車で到達して以来、この明るく伸びやかな風景に出会えたことがなかった。国道275を通って晴れたときには、道から雰囲気を伺えたぐらいのことはあった。
今日は風景のせいで全く脚が進まない。いいのだ、快晴の道北、狙って訪れて出会える景色じゃない。それにまだ13時台のこの段階で、この後浜鬼志別まで行けばいいだけなのだ。走行距離が短いと、こんなに風景を楽しめるのだ、どうだよと自分で何だか誇らしい。じじいになって走れなくなっても、それなりに、いや、それだからこそツーリングは楽しいのだと新発見した気分なのだ。
まあでも旅は天気と歳に連れ、いくつになっても着いた宿での充実感と、夕飯が美味しいことがいくつになっても変わらない真実なのかもしれない。
14:00、ポン仁達内で道道84をクランク経由、浅茅野への丘陵へ。道道710は途中から国道238まで並行する広域農道との二択コースとなる。どっちも道の属性なりにのんびりとこの辺の風景が楽しめ、どこかが極端にしんどいということも無い。このため毎回、去年はあっちだったので今年はこっち、という理由で経路を選んでいる。
去年は道道710経由だったので今年は農道だ、と思っていたら、去年見覚えがある風景が現れたので、2年連続で道道710になってしまった。次第に日が傾き、向かい風だが風もあるので、体感気温が下がってきているのが有り難い。オホーツク海に近づいているからなのかもしれない。向かい風がやや強いのは、この辺りの開けた丘陵で毎度のこと。そう思っていればストレスにもならない程度の風だ。
14:50、国道238を通過してエサヌカ線へ。
空は青いものの、薄い雲が拡がり始めている。午後ももう15時でもあり、前回空前絶後の晴天だったエサヌカ線のとんがった絶景、直射日光と極彩色は今日の視界に見当たらない。遠景も霞んでいる。利尻など望むべくも無い。いかに前回が突出した風景だったかがわかる。
でも残念な気分は全く無い。今またここに来れている。良かったじゃんかよ来れてという、ただそれが有り難く無性に嬉しいだけだ。
最後は向かい風気味の国道237を淡々と数km進み、16:05、浜鬼志別のホテルさるふつ着。のんびりしすぎで16時台になってしまったものの、まあ出発自体例年より少し遅いし、夕食前に風呂に入って過不足無いいい時間だ。それに夕食だってレストランを予約している訳じゃない。好きな時間に行けばいいのだ。
明日の天気予報は悪化している。午前中は宗谷地方全域で降水確率60%〜80%、午後は多少良くなるがそれでも天塩で50%。
雨が降ることは前から承知している。それに実は出発前に全日程の輪行コースを準備してある。現地でじたばたしたくないし、輪行するにしても前々日ぐらいからのそれを見越した補給計画が欠かせないからだ。
明日浜鬼志別から天塩まで輪行するなら、中頓別・天北峠経由で音威子府行きのバスに乗り、宗谷本線で幌延からバスに乗るのが順当であり、それが毎度のパターンだ。でも出発を1時間早めて、バスに乗ってオホーツク海と宗谷丘陵を眺め宗谷岬を経由し、稚内から宗谷本線、豊富か幌延からバスで天塩に向かうこともできる。そういやあ、稚内駅には1996年以来訪れていない。どっちの経路を選んでも、バスにはホテルさるふつ前の国道238にバス停から乗ればいい。それに、どうせ天塩着は同じ時間だ。
というわけで、早朝に輪行袋を担いでエントランスポーチから駐車場を100mぐらい横断してバスに乗り、数km先の鬼志別で稚内駅行きのバスに乗り換えるつもりだった。でも今の天気予報によると、明日早朝は何とか走れそうだ。そこで、数km走って鬼志別BTまで自転車で向かい、そこで自転車を解体することにした。万が一雨が多少降っても、数km走るだけならあまり大きな問題は無いだろう。途中、昼でも茂みに熊が潜んでいそうな道道1089を5時台に通るのが怖いが、まあ多分出ないだろうと希望的観測で思う。
そこまで明日の予定を決めた段階で、宿の天塩温泉夕映にチェックイン開始の15時より早着となることを電話しておく。事前にお知らせしておけば、何かと融通が利いたり、こちらの行動が効率良くなる場合があるからだ。果たしてチェックインは15時で部屋には入れなくても、お昼過ぎ到着は全然OKとのこと。それまで荷物を預かっていただいてに転写を明後日に向けて組み立てたり、温泉に入っていれば良さそうだ。
記 2023/12/25
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