北海道Tour23#15 2023/9/17(日)仁宇布→仁宇布-1

仁宇布→歌登→咲来→美深→仁宇布 130km (以上#15-1)
(以下#15-2) 区間2 (以上#15-2)
(以下#15-3) 区間3 (以上#15-3)
(以下#15-4) 区間4 (以上#15-4)
(以下#15-5) 区間5
km

赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路と航路
RYDE WITH GPS

 5時半過ぎ。明るくなり始めたファームイントントのプライベート牧草地に濃霧がかかっている。天気予報は相変わらず午前中晴れだ。晴れの日の早朝にはありがちな濃霧であるように思われる。
 6時を過ぎると、上空に青い空の色が見え始めた。これなら晴れは間違いないだろう。今日は予定通りまず道道120で歌登、咲来峠から国道40に向かって美深廻りで仁宇布に帰る計画だ。朝は青空の山間をじっくり楽しみ、途中の歌登セイコーマートも道の駅びふかの売店も楽しみだ。帰りは既知の道を淡々と帰ってくればいい。
 心配なのは山間のクマ。ましてや秋。まあ、あまり考えないでおこう。

 7:25、仁宇布発。肌寒い空気の中、仁宇布の交差点近くまで降りてきたら、辺りの濃霧が消えて空が晴れた。道道120に進むと再び霧が出始めた。晴れているのは交差点の近くだけのようだ。朝のうち寒いぐらいは覚悟している。むしろ想像より、今は暖かいぐらいだ。

 山裾の霧を伺いつつ牧草地を過ぎ、山腹の樹海と西尾峠への登りに突入。仁宇布側からの登りはたったの80m。斜度も緩く辺りは寒い。登りが遅いなりにするするっと登れる。

 フリースを着ていて良かったと思えるぐらいの気温ではあるものの、手袋は必要無いことはやや意外だ。2019年は西尾峠じゃなくて美深への下りだったにも拘わらず、かなり冷え込んでいた。指先が凍え、しょっちゅう立ち止まり首筋で暖めていた程であり、用心して今回は手袋を持ってきている。この先上徳志別まで無人の森が20km以上続く。山間で少しでも過ごしやすい気温であることは助かる。

 8:05、西尾峠をそのまま通過して鞍部の平地へ。この辺りから霧が消え、晴れと言っていい青空が拡がった。有り難いとか嬉しいとかより天気予報通りの展開だし、今日午前中は、天気についてはあまり心配していない。でもやはり爽やかな朝であることは有り難いし嬉しい。それにこの先しばらく無人の山中なので、曇りだとちょっと不安かもしれない。

 峠の下からフーレップ川の谷の底まで下り、更に延々と谷底を下り続ける。明るい陽差しに照らされた森は、仁宇布側より明らかに葉っぱの色付きが進んでいる。やはりこの時期道北は秋まっただ中であり、毎日紅葉が目に見えて色づいてゆくのだ。未だに毎日30℃台まで気温が上がっている東京を思い出す。日本は広い。

 音標への分岐、天の川トンネル。道北スーパー林道分岐を過ぎ、大曲へ。追い風に乗った下り基調の快調な、というより気楽な行程だ。この低い気温で向かい風じゃないのも助かる。大きな心配はクマだけではあるものの、車が意外にやって来るので、あまり不安な気にはならない。

 大曲では、何年か前まで建っていた炭焼き小屋みたいな小屋が、もう完全に無くなっていることを確認できた。前回もそんなことを眺めたと思っていたが、暑くてそれどころではなかったように思うし、今日こういう余裕があるのも、わずか一月前に同じ道を通れているからだと思う。


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 8:50、上徳志別着。晴れていて風が無いと、やはり盆地の全てが夢見るように静かな風景だ。白っぽい陽差しのせいか、明るい緑の牧草が夏よりも軽い色に見える。これが秋の風景なんだろう。

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 夏に脚を停めた東側の牧草地、そして西側の牧草地で少し脚を停めてみた。人の手による牧草地の拡がり、防風林などと周囲の地形が作る風景が好ましい。そういう風景がある場所がいくつも集中している。ここが里であり、多くの人が関わって創られてきた営みとその眺めなのだ、と思う。

 立ち止まっては写真を撮り撮り、9:30、志美宇丹着。上徳志別から40分もかかったものの、ここが間違いなく今日の見所の一つだ。焦って急ぎすぎるようなことが無いようにせねば。

 夏にいつも脚を停めるバス停に表敬訪問しておく。さしあたって何か飲む必要があるとは言えないものの、ここでいつものように缶コーヒーを飲んでおく。

 志美宇丹でも、牧草地を取り巻く蕗の茂みと広葉樹が色付き始めている。やはり全体的に進んでいる秋を感じさせる。等と感傷的になっていると、風に乗って雲が次々やって来ては飛んで行くのに気が付いた。梢がざーっと音を立てて風に揺れる度、木の葉が空中を飛んで行く。谷全体に風が吹き始めている。天気予報で午後曇るだけあり、晴れてはいても雲は完全に消えることはなさそうだ。

 辺渓内から盆地に降りて、歌登へもう一下り。相変わらず辺りは日なたの中。それに追い風でなかなか好調だ。歌登から先は、この風が一気に向かい風に変わるはず。そのことはあまり考えないことにする。

 10:25、歌登着。あれだけ上徳志別と志美宇丹でゆっくりしてこの時刻。なかなかいい感じだ。楽しみにしていたセイコーマートではあるものの、パンは十分持っている。この先補給地点にはそんなに困らないはず。カップ麺だけ普通に食べておく。
 店の前の風景を見ながら思う。普段と全然違う場所に、夏に続いて来れている。そしてまた出発し、夕方は仁宇布に帰っている。我ながら何だか不思議なぐらい、有り難いことだ。


 10:55、歌登発。そろそろ空に雲が増え始めている。

 牧草地の風景は、ここまでの山間にも増して木の葉やら茂みが色づいて秋っぽい。しかしずっと夏に訪れた時はずっと晴れていて、暑くて脚を停め停め通っていたこの道で、今日はいつも写真を撮る場所に限って雲が陽差しを隠している。少し待てば雲が動いて陽差しが現れるのだが、そんなことはしない。これが今日の訪問だ。暑くて脚を停める必要も無く、脚を進めるには有り難い。

 11:40、本幌別着。今日は歌登からここまで登り基調の向かい風なので、下り方向で追い風任せだった夏より時間は掛かっている。更にこの先、空はどんどん曇ってゆくはずだ。まあしかし、夜まで雨は降らないだろう。走れるだけ有り難いし、今日の行程には退屈していない。

 時間がある割にはのんびり気味の行程なので、この際集落の中を通る旧道に脚を向け、本幌別ペヤマン林道への入口を表敬訪問しておく。計画の段階で時間に余裕がありそうなので、今回訪れてみようと思ったこともあった。しかしやはり、終盤の怪しげな森を空撮とストリートビューで見るに付け、止めとこうと思ったのだ。それでももし現地で入口の雰囲気が問題無さそうなら、次回以降検討してもいい位には思っていた。しかし現地の、砂利が深そうで鬱蒼と怪しげな道の入口に、やはり自分にとってはなかなか訪れにくい道だと思った。何しろこの辺クマだらけなのだ。熊出没看板もこの辺の物はリアルに熊が牙をむいている、かなり恐怖を感じさせる秀逸なものだ。他ではこれほど怖いのは見かけない。

 本幌別から先、周囲は無人の森となる。森が深くのみならず、空が曇り始めて辺りが少し暗くなってきた。山が迫っているからだろう。道の周りに、道北ならではの不気味さがぷんぷん漂っている。頭上は比較的開けているのに森と茂みが密なためか、森に圧迫感が感じられるのだ。本幌別までと比べてペースはがくっと落ちているものの、淡々と脚を動かせる。それに夏に下りで感じた森の長さは、登り方向だと体感上はそれ程でもない。もちろんペースは遅いし、時間は下りより全然掛かっている。

 12:20、咲来峠着。夏に感じたとおり、以前に比べてオホーツク側の茂みは高くなっている。もはやこの峠、オホーツクへ空が続いてゆくような感覚は無くなってしまった。しかしごく普通の斜度変曲点になってしまっても、やはり静かで好ましい、道北の名峠だと思う。


 咲来峠の下りでも夏に通った時は暑かったなあと思い出す。今は風が出て日が陰り、肌寒さすら感じられ始めている。

 まだ雨が降り始めるようなことは無さそうだ。峠の下、南側の丘陵へ向かう農道っぽい道の分岐へ向かってみる。過去何度も通っているのに、この分岐は今まで意識していなかった位の分岐だ。ここも現地で行けそうだったら行っちゃってもいいかな、でもどうしようと思っていた。今、分岐の入口は、さっきの本幌別ペヤマン林道と違ってもう少し取り付く島ぐらいはありそうな感じなのは間違いない。有り難く行かせていただく。

 分岐から丘陵への登り斜度は、今日の道の中ではかなり急だ。地形は事前調査である程度わかっている。確か100mなんて登らないはず。落ちついてゆっくり脚を回すだけだ。

 登り切る手前辺りから、山中に牧草地が開けた。そのまま牧草地の中ピークを越えた道が、山中の誰もいない静かな牧草地、森緩斜面に大きな線を描いて下ってゆく。開けた風景、眼前に聳える山肌、そして森。道の角度や位置と共に、それらすべてが自分との位置関係と大きさを変え、動いてゆく。今日ここまで通ってきたのは、良い道だとは言え何度も通ったことのある道ばかりだったせいか、いきなり知らない風景を、ゴージャスな3D体験させられたような気分だ。

 そこで谷間へ下ってもそのまま国道40に下りきらず、次の丘へ脚を向けてみた。段丘の森を抜け、丘を越えた道は、またもや山間の牧草地と秋の広葉樹林の中カーブを描いて登ったり下ってゆく。目の前には間近に道北の山々が聳え、やや遠くに丘陵の森が彼方へ、幾重にも続いてゆく。丘陵が右側へ下ってゆく先の、天塩川の谷間なんて見えやしない。そんなに広くない山間なのに、想像以上の拡がりとダイナミックな展開が続いたのだった。こちらに脚を向けてみて良かったと、心から思えた。むしろこの道こそ本日のハイライトだったと言える。

 山から離れて谷間に下るに連れ、空の雲は再び次第に減り、確実に陽差しが辺りを照らし始めていた。でも今日は夜までこのまま曇りの予報だし、現実にも雨の心配は無いものの、明日は確実に雨が降るんだろう。もう明朝のデマンドバスも美深→旭川の特急サロベツも予約済みだ。サロベツなんか1時間ちょっとで美深から旭川に着いちゃうのだ。もう嫌になってくる。

 谷底で国道40に合流し、次は美深の道の駅を目指す。国道40との合流点は豊清水の丘、国道沿いにしちゃあ牧草地が少しだけ拡がるのが特徴の、見覚えがある箇所だった。この牧草地はあの風景の続きだったのだ、と納得できた。

 豊清水から恩根内まで、緩いものの何となく嫌になるようなアップダウンが概略2回。時々車が続けて通過してゆく。あまり大したことじゃないかもしれないが、これらの相乗効果で、ここまでの道の静かさを思い出してしまう。

 豊清水からは国道40旧道の裏道が分岐している。天塩川の川原近くまで降り、駅近くの集落と畑の中を経由する、ダート含みの静かで良い道だ。国道40の喧噪から離れられるので、ここ何回か好んで通っていた道だ。しかしながら、今回は割愛して国道40を進むことにする。暑くないのが原因かもしれないと、自分で他人事のように思う。そうしたらそうしたで、この区間の通過は感覚以上に早いのであった。

 13:40、道の駅びふか着。あまり根拠無くここで絶対に食べると決めていた、焼きスペアリブが売っていない。あれ、そうだったかなとは思うものの、そうなのかもしれない。そう言えば2019年の段階で、既に食べられなかったような気もする。まあいいやと思いつつ、ファームイントントの牧場ミルクとメリーさんの羊乳ソフトをいただいておく。この道の駅にはフライや揚げ物などオイリーな食べ物が多いのだ。それにそもそも、まだ昨日風連で仕入れたパンが残っているし、深刻に腹が減ってるわけじゃないし夕食のジンギスカンに備えてある程度新を好かせておくおく必要がある。


 14:05、道の駅発。狙い定めて裏道へ向かったつもりが、既知の裏道よりちょっと回り道を拡大しすぎて、あやし目のダートに突入してしまった。畑の畦道で押しまで挟みながら、まだ14時過ぎ。のんびり楽しい寄り道なのだ。それにあまり不安になる前に、牧場の裏手から既知の道へ復帰することができた。

 道北スーパー林道の方角を少し伺って、今からは流石に無理だよなどと思ってみる。思うだけなら全く問題は無い。全く気楽な秋のサイクリングだ。

 14:45、道道72に合流、美深の盆地からペンケニニウ川の谷間を遡る。ここまで来たら今日の行程ももう先が見えたようなもんだ。標高差200mの登り基調で16km、1時間。淡々と進んで、見覚えのあるぐらいの風景が記憶にあるというぐらいの順番で登場し、去ってゆく。

 15:50、仁宇布着。空はもはや暗めの曇り。今年訪れた中では、風景に鮮やかさは無い。それでもかけがえのない仁宇布訪問だし、二度と来ない時間なのだ。有り難く存分に、のんびり風景と雰囲気を味わい、粛々とファームイントントへ。

 16:10、ファームイントント着。着いた段階でもう自転車をかたづけてしまう。

記 2024/2/18

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Last Update 2024/2/13
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