北海道Tour23#11
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そうなると、当面この谷間を進み、とりあえず久しぶりの白金街道沿いの道の駅に向かうのが適切かもしれない。以前ならここでツーリングマップを開いて、その辺りのめぼしい施設等頭に入れておくところだが、いまはもうスマホ地図でそういうのが十分すぎるほどわかってしまう。
そちらの方面がコースの潰しが利かないという記憶はあった。道が少ないので、決まった方向から入って決まった方向から出てゆく、そんな行程に限られてしまうということだけを憶えていた。それでも、まあいい。少なくとも近年こっちに来ていないというだけで、脚を進める価値がある。久しぶりの白金街道だし、まだ朝の段階なのでそういう風に行動してみよう。
谷間に畑が無くなって辺りは森だけになっても、谷間を遡る登りはしばらく続いていた。GPSトラックから全く外れている脚取りではあっても美瑛の概略は馴染み深いので、地図で細かい位置を確認していくだけでいい気楽な道程だ。それに何だか90年代に美瑛を彷徨っている時の続きみたいな、懐かしい気分だ。
軽く丘を越えて道道966、通称白金街道の谷へ。本当に久しぶりの白金街道、多分2000年以来だと思う。そういえば2000年にも1日美瑛ポタで楽しんだことがあった、とやっと思い出す。あの時は遊岳荘に泊まったんだよな。
木陰を見つけて足を停め、少し水を飲む。気温は美瑛なりに時刻なりに順当に、今日も凄まじく暑くなり始めているようだ。けっこう汗をかき始めている。
田圃が拡がっていた谷間はすぐ狭くなって辺りはカラマツの防風林に変わった。そして間もなく、道の駅の標識が現れた。
8:30、道の駅びえい「美瑛ビルケ」着。モンベルアウトレットなども併設されている、かなり小綺麗で裁けた施設だ。確か2000年にはまだその原型すら無かったと思う。白金街道方面へ脚を進めてゆくとりあえずの目的地として、WCとか休憩のために少し立ち寄ろうと思っていた。そろそろ飲みたくなっていた缶コーヒーも、自販機で飲むことができた。
今日も鳴き始めたエゾゼミの声を聞き流し、ウッドデッキをひょこひょこ歩くミヤマクワガタを観察させていただきながら、地形図を開いて現状と先行きを検討する。さっき登りが続いただけあり、実はこの場所標高450mもある。標高600m台後半の白金温泉に足を延ばすチャンスなのかもしれない。1985年冬に初めて訪れ、前回は2000年。懐かしい温泉だ。でも白金温泉に向かってしまうと、その先戻って来るだけになる。2000年に入った白金温泉の殺されそうな熱さも思い出した。これから200mぐらい登った後にあんなに熱いのはちょっと。
とは言えここからすぐ先の小さい丘を越えると、次はほぼ上富良野へ降りてしまうしか選択肢が無い。当初は美馬牛から直接上富良野に降り、ベベルイ基線へ向かう予定だったので、わざわざ白金街道に向かったことを自ら無駄にしてしまうような否定する行程になってしまう。何の気無しにここまで来てしまった、その気軽さが完全に裏目に出てしまいつつあるのであった。わかっちゃあいたが、なるべく避けたいたるんどる事態に陥りつつある。
上富良野に向かった行程が無駄にならないようにする必要がある。と思いながら改めて地形図を眺めてみると、上富良野から美瑛西側というか西側の山裾に向かう道を見つけた。過去36年間の美瑛訪問でこちらに向かったことは無いどころか、意識したことすら無い。上富良野から旭川方面へ向かうのに美瑛西側の丘を通り抜けたことはあった。しかしこの時は旭川方面に向かうのが目的だったので、比較的効率のいい、もう少し中央側の留辺蘂の台地を経由していたのだ。今見つけた道は、留辺蘂から谷2つを挟んだ西側を通っている。この道を通れば、美馬牛辺りまで未済経路主体のコースが組める。時間次第では一旦美馬牛へ降りて休憩できるし、美馬牛から留辺蘂の丘を出直し再訪すれば、夕方まであまり人気の無い場所で過不足無いぐらいのボリュームで楽しめるだろう。うん、これで行こう。
8:50、道の駅発。道道353で上富良野へ。まず80mぐらいの軽い丘越えへ。登りはやはり暑く、車が何故か数台続けて通過してゆく。既知の道だけあり、登っていると途中の地形と線形に、ふと過去の訪問を思い出した。
暑いとは言え丘越えはやはりあまり登らず、早々に下りに移行した。斜度はすぐ落ちつき、しばらく谷閧フ底を森に囲まれ淡々と均等に下ってゆく。
森の向こうに谷間が拡がり、その後水面が拡がり始めた。日新ダム湖だ。
ダム堤上に道が続いているようなので、立ち寄ってみる。以前絶対来たことがある筈なんだが、風景に見覚えがない。多分道道353が拡幅されていて、ダム堤上が改修されていて、湖水も今日はかなり多いんだと思う。
ダム堤上で自転車から降りてみた。何故水があるだけで、人は何となく感動するんだろうと思う。湖岸の森が陽差しを受けて緑濃く鮮やかだ。あまり広くなく浅い谷の小さな湖の水面が、鏡のように廻りの景色と雲一つ無い真っ青な空を映している。
もう陽差しはかなり高く昇り、頭上から凄まじい強さの直射日光がぎらぎら照りつけ始めている。気温がかなり上がっている。きっと上富良野へ下ると、こんなもんじゃないんだろうと思う。何たってあの富良野盆地なのだ。
不安通り、谷間から富良野盆地に下るともう凄まじく暑い。走っていて皮膚がちりちりするほどだ。もともと暑い富良野盆地なのに、こちらは昨日まで道北の山間仁宇布にいたのだ。感覚が慣れていない。
9:50、上富良野セイコーマート着。この先美瑛の山裾に向かうと、多分美馬牛に降りて何か食べられるのは早くても12時以降になるだろう。ここでややしっかり目のお10時にしておくことにする。そうでなくても暑すぎる。少し休まねば。
陽差しから現実逃避したつもりで、軒先の日陰に腰を据え、アイスやら冷えた水を頂く。少しは楽になった気になれた。調子に乗って日なたに出ると、アスファルトの照り返しがかなり熱い。出発して辺りが畑になったら少しはましになるんだろうか。期待するしかない。
先に軒下で一服されていたお婆さんが話しかけてきた。お元気な方のようで、少しお話しする。このご時世おやじに話しかけられるとだと何かの詐欺じゃないかと思うが、お婆さんだと安心するのが我ながら可笑しい。そのうちに町内会の顔役らしきお爺さんもやって来た。こういうとき、地元の方が話しかけてきてくれる自転車ツーリングは得だと思う。
軒下で長居してしまった。辺りはますます暑くなっているが、いつかは出発しないといけない。いつまでもうだうだしている訳にはいかないのだ。北海道最後の1日が日陰で過ぎていってしまう。
記 2024/2/11
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