北海道Tour22#9
2022/8/18(木) 中川→浜鬼志別-1

中川→雄信内 (以上#9-1)
(以下#9-2) →北進 (以上#9-2)
(以下#9-3) →沼川 (以上#9-3)
(以下#9-4) →浜鬼志別   111km

赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路
RYDE WITH GPS

 ポンピラアクアリズイング、今回の部屋は東向きの天塩川寄り。4時から始める朝食兼出発準備中、大きな窓から、夜から夜明けへと明るくなってゆく開けた空がよく見える。
 今のところ、空に雲は出ているものの晴れ基調だ。そして昨日の朝まで、今日は1日晴れということだった。しかし夕方の予報から、午後はオホーツク海側と内陸で曇りということに変わっていた。オホーツク海側で曇りなのは、珍しくないというよりむしろ当たり前だ。ということは、内陸でそこそこ晴れてくれるかどうかが、今日のコースの印象となりそうだ。
 曇り予報なのは午後であっても、午前中も空に雲は多いのかもしれない。しかし午後に晴れが延びてくれるなら、宗谷丘陵まで脚を延ばしてもいい。予報通り午後から曇る場合には、今日後半の、内陸からオホーツク沿岸方面へ向かう行程は、オホーツク海沿岸独特の寒々しいどんよりした曇り空の下になるだろう。どこへ行っても比較的近年訪れている場所ばかりなので、さっさと浜鬼志別に向かう方が良いかもしれない。
 要するに現地の空模様で判断する出たとこ勝負であり、判断を誤らないよう、また行程の進行・手持ち食糧とも宗谷丘陵訪問に備えておくべきだろう。それは例年、晴れ予報でも曇り予報でも変わらない心構えかもしれない。用心するような気分になっているのは、過去の晴れの日の風景に惑わされているのかもしれない。
 一方、2年前にツアー後半の道北パートで腰が痛くて仕方なくなった。今回、腰は痛くなっていない。その頃から日常でも腰痛対策に留意していた。結局、腰痛の原因は想像するしか無いものの、何か取り急ぎ心配する必要は無さそうでもある。

 5:35、中川ポンピラアクアリズイング発。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 補給食は昨日仕入れているので、スーパーやセイコーマートに寄る必要は無い。道道541ではなく、町の外側山裾、駅裏手を通る静かな道へ。山裾の茂みはすぐ終わり、市街地の生活道では朝日が明るく、小中学校のポプラ並木を明るく照らしている。

 市街地の一番北で宗谷本線を渡り、昨日通った道道541に合流。道道541が問寒別経由で上問寒の谷間へ向かい始める歌内まで北上してゆく。

 路面にかかる森の影は未だ長く、空気はまあまあ道北なりに涼しい。夜露がしっとりと、落ちついて静かな道端の茂みからカンタンの声が聞こえる。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 昨日通った天塩川土手が広々と素敵だったので、今朝も通ることにした。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 平地の道ながら、天塩川側には河岸の深い森が拡がっている。茂みから熊が出てきそうな気になっていると、熊注意の看板を見つけ、更にそいういう気になって仕方無い。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 道北もこの辺りだと、平地でも普通に熊が怖いように毎回感じている。ということは、やはりそういう雰囲気というものがあるんだろうな。

   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 道に立ち止まって広々としたソバ畑を眺めているとスーパー宗谷が通過してしていった。時々鉄道車両が通る宗谷本線沿いに通っている道ということだけが、熊に対する安心材料だ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 この辺りから早くも空を雲が覆い始め、陽差しが時々隠れ始めていた。やはり今日は曇るのか。

 問寒別から雄信内まで、宗谷本線沿いには道が途絶える箇所があり、この区間は何らかの道を通り抜けることはできない。このため、問寒別手前の歌内から雄信内まで回り道する必要があり、その回り道には国道40が10kmほど含まれる。

 歌内から国道40までは、天塩川河岸の牧草地に静かな細道が続く。この道はかなり細いにも拘わらず、整った線形でシンプルに牧草地と土手に続く、まるでおとぎの国の道のようなとても楽しく素敵な道だ。

 しかし国士からは天下の国道40だ。

 今朝の国道40は、いつもよりかなり車が少ない印象だ。対向車の風の影響が少なく、落ちついて走れていることは有り難い。ただ車が少ないように思えても、やはり国道40は国道40でしかなく、路上の雰囲気全体がどことなく国道然として愛想が無い。黙々と先へ進むことに専念してしまう道ではある。そういう道なのだと思う。私も昔はそんな道でも、好んで通っていたことも事実ではある。


 雄信内で再び宗谷本線沿いの道道256へ。

 路上空間が一気に静かに人なつこく変わり、再び道北平地の風景の中に戻れたような気分でサロベツ原野の東側山裾を北上してゆく。

 この頃になると、空はすっかり灰色の曇りに変わっていた。しかし雲は高い。晴れよりは薄暗いものの、気温は寒くなく、むしろ曇りとしては暑い方かもしれない。当面雨の心配は全く無いだろうと思えた。

 周囲の風景は広々と伸びやかである。しかし、特に何かとんがったものも無い。まだ時間は早い。今日の宿は鬼志別、行程には厳しいところなどは何も無く、焦る必要も無い。淡々と進んで、その時その時でできることをやればいいのだ。

 などと思っていると、南幌延を過ぎた辺りで、サロベツ原野北西の向こうに利尻富士が見えることに気が付いた。それも意外な大きさで、かなりくっきり見えるのだ。昨日は知駒峠のような高い場所でも、海上の霞で全然見えなかったのに。それに過去、この辺で利尻富士を意識したことは無い。こちらは曇りでも、あちらの海上方面の上空はかなり空気が澄んでいるのだろう。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 そう言えばいつだったか、豊富から抜海でゲリラ豪雨含みの変な天気だったのが、抜海から眺めた日本海上ではかなり晴れていることがあった。オホーツク海側でも道東の太平洋側でも、陸地と海上の天気が違うことはごく普通だ。天気予報では一見天気が安定しているように見えるが、やはり毎日天気は変わってゆくのだろう。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 8:05、幌延着。道道256沿いのセイコーマートへ。町外れではあるものの、ツーリスト的には町よりこちらの方が何かとツーリング中的な食糧を買いやすく、行程上幌延での経由地点として立寄りやすい。そのため、私にとってはここが幌延となっている。
 セイコーマートの軒下に座り、パンやら何やら食べたり飲んだりしながら思う。今セイコーマートの軒下で眺めている風景の建物も雰囲気も、時々眺める過去訪問時の写真の通りではある。あの時は暑かったな、等と思い出す。今日もそこそこ暑いんだが、空が雲に覆われていてやや薄暗い。晴れの日の画像より明るさ、鮮やかさはいろいろと地味だ。天気が違っていても、見慣れた画像の風景が目の前にあることは、それだけで何だか嬉しい。
 まだ8時。今日の夕方浜鬼志別の宿に辿り着くためには、必ずどこかを経由して北上する必要がある。ならば今曇ってはいても、予定コースの通りこのまま豊富町大規模草地育成牧場へ行ってみよう。折角今近くに来てるんだから。天気に何か新たな展開があれば御の字だし、曇りでも雨じゃなければ行くべき展望ポイントだ。

 8:25、豊富発。
 道北ではこの時期もう2学期が始まっている。登校中の小学生や緑のおばさんを眺めて町中を通過、道道121で北側丘陵への登りへ。

 町外れから急に始まる登りはしんどい印象はあるものの、実はせいぜい70mちょっと。登り始めてしまえばあっという間にピークを越えて北進へ、道北内陸部の丘陵に突入だ。大したことは無いのだが、大したボリュームじゃなくて峠でもないのに平地じゃない、という捉え所の無さがここの一番厄介な点かもしれない。

 北進ではゆめ地創館の敷地の前を通過してゆく。以前ここに計画されていたのは、放射性廃棄物埋め立て施設だった。北海道Tourの行程初日、当時の愛車片倉シルクのリアエンドが折れ、自転車を押してとぼとぼ歩いたのは1997年。既にここに埋め立て施設が計画されていたはずだ。それ以前から幌延にそういう計画があることを知っていたのに、その時そういう施設を見た記憶が全く無い。フレームが折れたショックが大きかったのかもしれない。それっぽい施設を意識し始めたのは比較的近年のことだと思う。

 等ということを考えるのは、近年この道が拡幅されて道の印象はがらっと変わってしまい、かつてエンドが折れた場所はどこだったか思い出せなくなりつつあるからだ。この辺だというのは線形で憶えてはいるものの。


 道道84を越え、次はいよいよ豊富町大規模草地育成牧場へ。

 鬱蒼としてやや心細いような茂みを谷底から丘の裾へと巻き、道が次第に高度を上げ始めるとともに、周囲の茂みは笹原に変わり、空間が拡がり始める。道端の近い場所に熊が潜んでいそうな雰囲気はとりあえず薄れてほっとするものの、木陰が全く無くなって今度は路上の温度があきれるほど一気に上がる。そして行く手の丘に向かう直登の登りは壁みたいに見える。身体も視覚も心を折る要素で一杯だ。

 ここはもう何度か来て雰囲気は知っている。大丈夫だ。ゆっくりゆっくり、落ちついて落ちついて。と自分に言い聞かせて自分のペースで登ってゆくと、実際には登りはあまり長くはない。まあ、こんな登りすいすい登れれば何の問題も無い話ではある。さっきの幌延から北進への登りと共通した、自分の走りの問題だな。

   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 などという些細な葛藤は、見下ろす谷間、そして緩いカーブや登り下りなど道の変曲点での、伸びやかに拡がる展望の前に吹き飛んでしまう。丘の起伏や空間の展開が、適切なボリュームとリズムだからなのか、自分の動きと共に周囲の区間が推移し、3D的にドラマチックに変わってゆくのである。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
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 ましてや笹原と牧草地。崖や谷底の小川、点在する森、向こうの丘に続く細道などが風景のディティールとして一望でき、見渡す地形をイメージしやすい。何だか見えない地形の裏側まで見えているように思えてしまうわかりやすさが、拡がり感に繋がっているのかもしれない。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 軽く登ったり下ったりしながら途中の広場を過ぎ、道は更に高度を上げてゆく。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
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 西側の丘の稜線上に、ところどころまたもや利尻富士が姿を見せてくれていることに気が付いた。ここでも見えたんだっけ、と思うほど、はっきりした姿である。その澄んだ眺めとは裏腹に、上空の空は全体的にうっすらと曇り、陽差しも薄い。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
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 丘の上で合流する豊富からの道には、私的展望ポイントがある。少し立ち寄ってみるものの、もはや空は完全に薄い雲で覆われてしまい、陽差しが消えた牧草地と丘陵の展望は寒々しくすらある。形は全く同じでも、かつての訪問で眺めることができた開放的な緑の世界を思い出すと、空間ボリュームそのものが変わっちゃったのではないかと思われるほどだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
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 まあしかし風景の見える感じより、自分の時間を使って今年もここに来れたことが確かな事実であり、この場所を再訪できてこの空間に身を置けることはとても有り難く贅沢なことなのだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 それが実感できれば十分だ。次へ進もう。

 丘の上から裾へと次第に道は高度を下げ、管理事務所前を通過して豊富町大規模草地育成牧場が終了、道道121に合流。

 道は牧場の農道から、幅広で平滑で丈夫なフェンスが続くローカル道道に変わった。今時のローカル道道の構成は、ほとんど国道に近いと言っていいかもしれない。

 森、牧草地が続く丘陵の起伏は緩やかになり、風景の抑揚はさすがに薄れていた。いつもの道道121、私的名称道北縦貫道道の雰囲気そのものである。

 そして道はそういう場所に通っているからか、再び空の雲が切れ、少し陽差しが出てくるようになってきた。再び暑くなったのみならず、向かい風が吹き始めている。

 有明からは再び道道121の迂回コース、農免農道で沼川へ。農道ではあるものの、沼川まで地図上では道道121経由と距離は変わらないように見えるし、登り標高差もあまり変わらないように見える。ツーリングお徳用農道なのである。

 「沼川まではこっちだよこっち」と思って農道に脚を向けてはいても、風景の登場順まで憶えている程この道を通り込んでいる訳ではない。デスクトップ写真で見慣れた風景が現れると、ここだったのか等と思わされるという程度の仲だ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
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 11:20、沼川着。天気は相変わらず冴えないものの、やや暑い。
 沼川にセイコーマートは無いものの、小さくはないA-COOPに飲食店がいくつかある。お昼前という時間を沼川で迎えるに当たり、持ち駒に不足は無い。そしてこの天気だと、この後急いで宗谷丘陵へ向かうという選択は無いような気がする。この先どこへ向かうにしても、半径20km以内に食事ができそうな場所はここ以外に無い。
 とりあえず、満を持して既知の食堂サングリーンへ。正直、ラーメンが食べたい気分だった。

 確か前回も頂いたチャーシュー麺は、濃い色の醤油スープがストレートながらこくがあり、麺もチャーシューもしっかりと味わい豊かで大変美味しい。店内が暑くてしばらく汗が止まらないものの、まあ道北でこれだけ暑い日だと建物は対応できる作りになっていないんだろうな。

 食べ終えてからとりあえずA-COOPで物資を仕入れ、今食べたばかりなのに軒下でパンなど食べてみる。少しうだうだしたいんだろう、等と我ながら他人事の様に思う。
 さあ、ここまで先延ばししてきた今日この先の身の振り方は、今決断しなければならない。宗谷丘陵へ向かうか、一つ手前の道道1077経由でオホーツク沿岸に出るか、それとも最短の道道138小石峠経由で直接浜鬼志別に向かうか。とはいえ、雲は低く空を埋め尽くしている。この先雨が降るような天気予報ではないものの、喜び勇んで走り始めるというよりもう少し軒下で座るか、という気分にさせられる空模様だ。
 宗谷丘陵に向かうと、薄暗い空の下乱気流に揉まれて浜鬼志別に向かうことになるのかもしれない。帰路がオホーツク沿岸の国道237ではなく宗谷丘陵の道道884だとすると、同じような天気で更にアップダウンが10km以上。しかしだからと言って国道237でオホーツク沿岸を経由しても、天気は余り変わらないだろうし、アップダウンの代わりにこちらは車が通る。ならば静かな道の方が好ましい。そして、宗谷丘陵まで行かずに道道1077で東浦へ向かっても、その先浜鬼志別まで曇り空の下、国道237を20km以上通る必要がある。
 結局考察は、天気で全部決まってしまうのだということを再確認しただけになった。宗谷丘陵で前回晴れたのは2019年。けっこう最近のことである。まだ奇跡の晴れを祈りつつ再訪するようなタイミングでもないように思われる。そういう大義名分が一杯ある。今日はおとなしく最短の小石峠経由で、もう宿に向かうことにした。まあ、道道137だと最短にも程がある位の最短だけどね。

 そこまで決めたところで、道路反対側の家から出てきたお婆さんが、プチトマト(とお饅頭)を持って行けと言う。さっきA-COOPで水を買い出しした時に、ちょうど要らないペットボトルを探しにA-COOPにやって来たお婆さんだ。私は水を自分のボトルに移したら元のペットボトルは要らないので、捨てるよりもそのままペットボトルをお譲りしたのだ。
 水をペットボトルから自分のボトルに移してとか言っているが、私の夏ボトルは20年近く前のセイコーマート謹製1.5lペットボトルである。元のボトルの方が余程グレードは高い。だから元のボトルを空になったというだけの理由で捨ててしまうのは残念だ。使って頂いてむしろ有り難いぐらいのものだ。それにこの先小石峠を越えて浜鬼志別に向かうだけの行程において、それまで全くイメージしていなかったプチトマトとお饅頭をどこでどのように食べるのか。自分のツーリングの中ですぐには位置づけられなかったのである。
 最初は荷物になるからと遠慮させていただいた。しかしお婆さんは、申し出を断られて露骨に悲しそうな表情をされた。これはご厚意をふいにしてはいけないと思い直し、いただくことにした。あまり考えずに食べてしまえばいいだけの話なのだ。


 12:00、沼川発。道道138へ。

 小石峠は今回も曇りの峠道だ。しかし前回のように雨じゃないのは有り難い。と思っていると、鉱業所を過ぎたあたりから空気中に水がぱらつき始めた。

 天気予報では雨にならないとのことだし、空の明るさ的にも本降りにはならないだろうとは思う。しかし、標高は低いのにやはり一筋縄ではいかない峠だ。さすがオホーツク沿岸の山中である。

 道端の森はかなり鬱蒼と山深いものの、何しろ峠部分で167mの低い峠なので、谷間から峠へ登り始めるとあっという間に鞍部へ到達してしまう。鞍部で欺し峠が1回あることも、欺し峠から小石峠まで少し距離があることもわかっているし、一昨年雨の中を通ったばかりの道だ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 

 谷間に残っていた天北線の痕跡は、近年木々と茂みに完全に覆い尽くされ、峠周辺からは伺いにくくなっている。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 峠から谷底へ下り、ほとんど平坦に近い下り基調の道を大分進み、軽い登り返しが現れ始めてやっと小石に着く。この距離感覚は一昨年登りで通ったときとは違う。登りの時の方が時間は掛かっているのに退屈していないから、時間と距離を短いように感じているのだ。
 とは言え、峠も低いが裾も長い、鬱蒼とした大森林とともに大変道北らしい峠であることに変わりは無い。

 小石でコーヒーを飲み、鬼志別でそのまま浜鬼志別を目指しかけ、思い直して牧草地の脇道へ。最短にも程があるというだけあり、この時点で何とまだ14時前。どうせ急ぐ行程ではない、と思って、国土宇237沿いの猿払漁協ホタテ売店への近道へ脚を向けることにした。こちらの方が確か海岸沿いの台地上で無駄にアップダウンがあるのだ。

 小石峠からの長い下りも近道の牧草地での無駄なアップダウンも海岸近くの強風も、夕方で薄暗いと何だか進行が遅いようないらいら感があって焦るのだが、急いでいなければどうと言うこと無くやり過ごし、すぐに通り過ぎてしまうのが我ながら可笑しい。

 台地の牧草地からオホーツク海へ向かって下り、14:15、浜鬼志別シネシンコで国道237に合流。
 やはりというか海岸にはかなり強い風が吹いている。そして宿方面へは向かい風だ。まあ、毎度の事だ。それにまだ14時台。全く支障無く、国道沿いの猿払漁協ホタテ売店へ向かうことにする。確かここからは宿方面だったはず。

 いつもお盆期間と重なってなかなか営業中に来れないこの売店、今回は目出度くお盆明けの営業中であった。まあお休みでも何でも通販という便利なものがあり、ホタテを買うだけなら全国どこでも可能だ。そしてお店には、今年は大きなサイズのものは無く、通販と同じサイズとのこと。それでもいいのだ、さすがは猿払のホタテで通販サイズでも十分以上に大きいし、訪問客としてはやっとこの店に来れてホタテを買える、そのことがとても嬉しい。

 お店を出ると国道237の路上では向かい風が強く、時速17km/hがせいぜい関の山だ。立ち止まるとそうでもないような気がする風なのに、走り始めるとまるで身を削るように吹き荒れているのだ。道端に立つ漁村の建物も、風を切り裂き高速で走り去る車も、凄いなと思う。
 こういう状況で4〜50kmも走ることを無駄な行為だとは思わないが、走りたいかそうでないかと言われれば、やはり走りたくない。つくづく宗谷丘陵へ脚を向けなくて良かったと思う。宗谷丘陵はまた晴れる日にでも。でも今回も2日前まで天気予報は晴れだったんだけどな。
 14:30、浜鬼志別着。宿まであと2kmぐらいだというのに、チェックイン開始まであと30分もある。明日の朝食物資を仕入れておく必要があるので、セイコーマートに立寄り、ついでに15時の間食も集中的にこなしておく。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 

 国道237が鬼志別川の谷間からオホーツク海沿岸の台地上に登ると、もう意外に近くにホテル猿払が見え始めた。何だ、浜鬼志別から2kmも無いんじゃないのか。

 14:55、ホテルさるふつ着。自転車を毎度の如く屋内のロビーに停めさせていただき、荷物を降ろしている間に15時になって、チェックインすることができた。
 さすがにここでは部屋内に自転車を置くことはできなかったものの、さっきまでの暴風が嘘のように静かな部屋は安堵感で一杯だ。明日の朝、この部屋を出るときには風は収まっているのだろうか。毎回そんな都合の良いことは起こらないので、望み薄ではあるものの、一応希望だけは持っておくことにする。それは毎日のことでもある。旅に飽きているわけじゃない。これこそ、11日行程ならではのたっぷり感である。
 とりあえず今この場所での人生として前向きに、温泉へ入って汗を流した後は一寝入り。起きてもまだ夕食まで1時間以上ある。未だ明るいものの夕方なりに多少は薄暗くなってきた。窓の外、国道237方面を少し伺い、この時間になっても宿を目指して走っているなどということになっていなくて有り難い、とまた心から思う。おやじの旅には安らぎが必要なのだ。

 夕食はアラカルト、宿泊のセット定食より何だか好きなものを集中的に食べた気分になれるのである。たとえ実際に注文するのはやっぱり定食だとしても。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 

 ところで、沼川でおばさんに頂いたプチトマトと千秋庵のお饅頭はあまりに美味しく、食後だったにも拘わらず瞬殺で、しかも有効にいただくことができた。「貴方にあげようと思って畑で今取ってきた」と仰ったプチトマトは濃厚なトマトっぽい味で素晴らしく美味しかったし、千秋庵のお饅頭もしっかりぽくぽくと密実な餡が大変美味しいお饅頭だった。次回沼川訪問時にはお礼にご挨拶せねば。

記 2023/2/19

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Last Update 2023/2/19
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