北海道Tour22#9
2022/8/18(木) 中川→浜鬼志別-3

中川→雄信内 (以上#9-1)
→本流
(以上#9-2)
→沼川
(以下#9-4) →浜鬼志別   111km

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
ニューサイ写真 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 

 本流で道道84を越え、次はいよいよ豊富町大規模草地育成牧場へ。
 鬱蒼としてやや心細いような茂みを谷底から丘の裾へと巻き、道が次第に高度を上げ始めるとともに、周囲の茂みは笹原に変わり、空間が拡がり始める。道端の近い場所に熊が潜んでいそうな雰囲気はとりあえず薄れてほっとするものの、木陰が全く無くなって今度は路上の温度があきれるほど一気に上がる。そして行く手の丘に向かう直登の登りは壁みたいに見える。身体も視覚も心を折る要素で一杯だ。

 ここはもう何度か来て雰囲気は知っている。大丈夫だ。ゆっくりゆっくり、落ちついて落ちついて。と自分に言い聞かせて自分のペースで登ってゆくと、実際には登りはあまり長くはない。まあ、こんな登りすいすい登れれば何の問題も無い話ではある。さっきの幌延から北進への登りと共通した、自分の走りの問題だな。

   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 などという些細な葛藤は、見下ろす谷間、そして緩いカーブや登り下りなど道の変曲点での、伸びやかに拡がる展望の前に吹き飛んでしまう。丘の起伏や空間の展開が、適切なボリュームとリズムだからなのか、自分の動きと共に周囲の区間が推移し、3D的にドラマチックに変わってゆくのである。

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 

 ましてや笹原と牧草地。崖や谷底の小川、点在する森、向こうの丘に続く細道などが風景のディティールとして一望でき、見渡す地形をイメージしやすい。何だか見えない地形の裏側まで見えているように思えてしまうわかりやすさが、拡がり感に繋がっているのかもしれない。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 軽く登ったり下ったりしながら途中の広場を過ぎ、道は更に高度を上げてゆく。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 

 西側の丘の稜線上に、ところどころまたもや利尻富士が姿を見せてくれていることに気が付いた。ここでも見えたんだっけ、と思うほど、はっきりした姿である。その澄んだ眺めとは裏腹に、上空の空は全体的にうっすらと曇り、陽差しも薄い。

PENTAX K-1 MarkII HD PENTAX-D FA70-210mm1:4.0ED SDM WR
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 

 丘の上で合流する豊富からの道には、私的展望ポイントがある。少し立ち寄ってみるものの、もはや空は完全に薄い雲で覆われてしまい、陽差しが消えた牧草地と丘陵の展望は寒々しくすらある。形は全く同じでも、かつての訪問で眺めることができた開放的な緑の世界を思い出すと、空間ボリュームそのものが変わっちゃったのではないかと思われるほどだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 まあしかし風景の見える感じより、自分の時間を使って今年もここに来れたことが確かな事実であり、この場所を再訪できてこの空間に身を置けることはとても有り難く贅沢なことなのだ。

PENTAX K-1 MarkII HD PENTAX-D FA15-30mm1:2.8ED SDM WR

 それが実感できれば十分だ。次へ進もう。

  A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 丘の上から裾へと次第に道は高度を下げ、管理事務所前を通過して豊富町大規模草地育成牧場が終了、道道121に合流。

 道は牧場の農道から、幅広で平滑で丈夫なフェンスが続くローカル道道に変わった。今時のローカル道道の構成は、ほとんど国道に近いと言っていいかもしれない。

 森、牧草地が続く丘陵の起伏は緩やかになり、風景の抑揚はさすがに薄れていた。いつもの道道121、私的名称道北縦貫道道の雰囲気そのものである。

 そして道はそういう場所に通っているからか、再び空の雲が切れ、少し陽差しが出てくるようになってきた。再び暑くなったのみならず、向かい風が吹き始めている。

 有明からは再び道道121の迂回コース、農免農道で沼川へ。農道ではあるものの、沼川まで地図上では道道121経由と距離は変わらないように見えるし、登り標高差もあまり変わらないように見える。ツーリングお徳用農道なのである。

 「沼川まではこっちだよこっち」と思って農道に脚を向けてはいても、風景の登場順まで憶えている程この道を通り込んでいる訳ではない。デスクトップ写真で見慣れた風景が現れると、ここだったのか等と思わされるという程度の仲だ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 

 11:20、沼川着。天気は相変わらず冴えないものの、やや暑い。
 沼川にセイコーマートは無いものの、小さくはないA-COOPに飲食店がいくつかある。お昼前という時間を沼川で迎えるに当たり、持ち駒に不足は無い。そしてこの天気だと、この後急いで宗谷丘陵へ向かうという選択は無いような気がする。この先どこへ向かうにしても、半径20km以内に食事ができそうな場所はここ以外に無い。
 とりあえず、満を持して既知の食堂サングリーンへ。正直、ラーメンが食べたい気分だった。

 確か前回も頂いたチャーシュー麺は、濃い色の醤油スープがストレートながらこくがあり、麺もチャーシューもしっかりと味わい豊かで大変美味しい。店内が暑くてしばらく汗が止まらないものの、まあ道北でこれだけ暑い日だと建物は対応できる作りになっていないんだろうな。

 食べ終えてからとりあえずA-COOPで物資を仕入れ、今食べたばかりなのに軒下でパンなど食べてみる。少しうだうだしたいんだろう、等と我ながら他人事の様に思う。
 さあ、ここまで先延ばししてきた今日この先の身の振り方は、今決断しなければならない。宗谷丘陵へ向かうか、一つ手前の道道1077経由でオホーツク沿岸に出るか、それとも最短の道道138小石峠経由で直接浜鬼志別に向かうか。とはいえ、雲は低く空を埋め尽くしている。この先雨が降るような天気予報ではないものの、喜び勇んで走り始めるというよりもう少し軒下で座るか、という気分にさせられる空模様だ。
 宗谷丘陵に向かうと、薄暗い空の下乱気流に揉まれて浜鬼志別に向かうことになるのかもしれない。帰路がオホーツク沿岸の国道237ではなく宗谷丘陵の道道884だとすると、同じような天気で更にアップダウンが10km以上。しかしだからと言って国道237でオホーツク沿岸を経由しても、天気は余り変わらないだろうし、アップダウンの代わりにこちらは車が通る。ならば静かな道の方が好ましい。そして、宗谷丘陵まで行かずに道道1077で東浦へ向かっても、その先浜鬼志別まで曇り空の下、国道237を20km以上通る必要がある。
 結局考察は、天気で全部決まってしまうのだということを再確認しただけになった。宗谷丘陵で前回晴れたのは2019年。けっこう最近のことである。まだ奇跡の晴れを祈りつつ再訪するようなタイミングでもないように思われる。そういう大義名分が一杯ある。今日はおとなしく最短の小石峠経由で、もう宿に向かうことにした。まあ、道道137だと最短にも程がある位の最短だけどね。

 

 そこまで決めたところで、道路反対側の家から出てきたお婆さんが、プチトマト(とお饅頭)を持って行けと言う。さっきA-COOPで水を買い出しした時に、ちょうど要らないペットボトルを探しにA-COOPにやって来たお婆さんだ。私は水を自分のボトルに移したら元のペットボトルは要らないので、捨てるよりもそのままペットボトルをお譲りしたのだ。
 水をペットボトルから自分のボトルに移してとか言っているが、私の夏ボトルは20年近く前のセイコーマート謹製1.5lペットボトルである。元のボトルの方が余程グレードは高い。だから元のボトルを空になったというだけの理由で捨ててしまうのは残念だ。使って頂いてむしろ有り難いぐらいのものだ。それにこの先小石峠を越えて浜鬼志別に向かうだけの行程において、それまで全くイメージしていなかったプチトマトとお饅頭をどこでどのように食べるのか。自分のツーリングの中ですぐには位置づけられなかったのである。
 最初は荷物になるからと遠慮させていただいた。しかしお婆さんは、申し出を断られて露骨に悲しそうな表情をされた。これはご厚意をふいにしてはいけないと思い直し、頂くことにした。重いとか何とかあまり考えず、頂いてしまえばいいだけの話なのだ。歳を取ると、自分のイメージと現実が違う事で無駄にいらいらしてしまい、時に人を傷つけてしまうことがあるのを、自分で最近よく感じてはいる。反省せねば。

記 2023/2/19

#9-4へ進む    #9-2へ戻る    北海道Tour22 indexへ    北海道Tour indexへ    自転車ツーリングの記録へ    Topへ

Last Update 2023/4/16
ご意見などございましたら、E-Mailにてお寄せ下さい。
Copyright(c) 2002-23 Daisuke Takachi All rights reserved.