北海道Tour20#7-1
2020/8/12(水)浜鬼志別→中川

浜鬼志別→沼川 (以上#7-1)
(以下#7-2) →豊富 (以上#7-2)
(以下#7-3) →雄信内 (以上#7-3)
(以下#7-4) →中川
127km  RYDE WITH GPS

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
ニューサイ写真 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 起きようとすると腰が痛い。いてててて、などとそろそろと少しづつ身体を起こさなければならない程痛い。昨夜何となく感じていた腰痛が、パワーアップしてしまったようだ。
 2日続いた輪行の荷物が重かったのか、それとも疲れのせいか。歳で疲れが腰に来ちゃったのかもしれない。そうだとすると、来年以降北海道Tourで気を付けないと、今後旅程をどうるすのか、という話ではある。或いは阿武隈他でも感じている、温泉当りかもしれない。どうも私は温泉成分が効きすぎる傾向があると自分では思っている。温泉宿であまりのいい湯に一晩で温泉に何度も入り、温泉成分が効き過ぎて(?)腰痛になることがあるのだ。思えば、根釧台地や津別峠である程度疲れたところに、生田原のホテルノースキングで集中的に温泉に入っちゃあいて、更にその後2日連続で輪行だったから、全ての要因に可能性がある。
 こういう体調で、今日は一体どうしよう。ひょっとして中川まで3日連続で全輪行になってしまうのか。そんなまさか。いやしかし現実に、ちょっと身体を起こすのも一苦労だ。今日夕方までに、中川に向かうことそのものを諦めるべきなのではないか。
 しかし身体を起こすときに腰がかなり痛むものの、その後とりあえず朝食を食べたり荷造りしている間、一旦腰を動かした後は痛みがどんどん和らいでくることにも気が付いた。調子に乗って身体を動かすと、更に腰痛を強める原因になsる可能性はある。
 でもまあ、とりあえずこのまま準備を進めてみよう。

 5時までに身体は多少ましに動くようになり、まとめた荷物もなんとか1度に1階ロビーまで運ぶことができた。そして多少腰に気を遣いつつも、あまり難儀せずに自転車に荷物を取り付けることができた。
 ならばこのまま、出発できるのかもしれない。
 途中どっかーんと痛みが襲ってくる可能性はあるかもしれない。道北内陸の密林やサロベツ原野のまっただ中で途方に暮れる自分を想像してしまう。中川までの全区間を通し、標高はかなり低いとはいえ、一応曲がりなりにも峠越えだってある。朝っぱらから志賀直哉城之崎状態だ。これがおやじツーリングの実態というものかもしれない。
 でも志賀直哉だって、最後は大丈夫だった。志賀直哉は判断の根拠にはならないことはわかっちゃいるものの、今は良い方の可能性を信じて行動しようと思える。折角、北海道に来れているのだ。

 缶コーヒーを飲んで雨具を着込み、5:30、ホテルさるふつ発。
 今のところ、雲がかなり低くて霧っぽいものの、雨は降ってない。天気予報通りなら今は雨、この後6時台に雨が上がり、そのまま曇りから午後の晴れに推移するはず。そしてやはり、自転車で走っても腰の痛みは気にならないし、多少身体をひねったりしても大丈夫そうだ。出発してみれば天気も行程も不安は無く、自分もいつも通りである。出発して良かった。
 風向きは北西でかなり強い。ホテルさるふつから浜鬼志別の交差点までほんの短い間ではあっても、国道238を進む分には追い風なのが大変有り難い。ただ、出発してすぐ、さるふつ公園の北側に内陸へ向かう舗装細道を発見してしまった。というより、これは去年道道1089から通ってきた道だ。
 こちらへ向かえば、道道1089を経由し、この後小石峠から沼川へと向かう道道138に直接出ることができる。浜鬼志別の道道138交差点まで国道238で向かうのに比べ、鋭角二等辺三角形の長辺と長辺+底辺の関係に近い(やや無理はある)。というより、国道238で台地上から一度海岸の浜鬼志別へ下り、再び台地へ乗り上げるのを丸々回避できるのが有り難い。
 というわけで、あの何か出そうな雰囲気一杯の道道1089を、この早朝に通ることになるな、と思いながら他人事の様に農道細道へ向かってみた。

北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道宗谷郡猿払村鬼志別にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 牧草地では強めの横風に飛ばされそうだったものの、道道1089は去年通った区間ほど鬱蒼とした雰囲気は無く、早朝であっても時々通る乗用車に安心感があった。それに何と言っても元国鉄天北線。線形の優しさが朝一サイクリング向きだ。

 鬼志別には自販機があることを知っていた。自販機があるとわかっていると、何となくコーヒーが飲みたくなっていて、また立ち止まってコーヒーを飲む。
 やはり起きてすぐより腰痛は大分和らいでいる。身体を動かしたのが良かったのかもしれない。となると、腰痛の要因は寝過ぎなのかもしれない。何にせよ今のところはこのまましばらく、全く問題無く走れそうだ。少なくとも小石峠を越えて沼川、最悪でも駅があって宗谷本線で中川へ行ける豊富へショートカットするぐらいの最低限。このまま先へ進んでしまえ。

 鬼志別から谷を遡って小石へ。小石から鬼志別へ下ってきた時の印象より、時間の感覚が短いのが助かる。実際には下りより時間はかかっている。それに時間を短かく感じることそのものに何か実利がある訳ではない。単に気持ちが紛れるというだけの話だ。小石から小石峠までが本格的に山深く不安な区間であり、実際に距離が長いこともよくわかっている。

 極限まで低くなっていた雲は、内陸に入るとともに目に見えて低く、暗くなった。そして小石の集落の先、防災休憩所に辿りつく手前で、遂に限界を超えて雨に変わって落ちてきた。こういう時の常で、一気に辺りはびしょ濡れぬらぬらに変わってしまったので、もう上下雨具を着込んでしまう。これだけ雲が低いと、小石峠手前の丘陵には雨雲がみっちり溜まってるんだろうな。少なくとも曲淵に下りきるまで、我慢しなければならないかもしれない。上手くいけば小石峠手前からけろっと晴れるかもしれないが、まああまり期待しないでおこう。

 広葉樹も針葉樹も梢から足下の茂みまで密度が濃い道北っぽい密林が、進んでも進んでも高度を上げない平地に延々と続いた後、おもむろに7%位でちょっと高度を上げた途端、辺りは内地の高山帯みたいな雰囲気の開けた笹原に変わった。登りは早くも一段落し、道道138は波打つような笹原の背中を乗りこえてゆく。小石峠手前の欺し峠地帯へ移行したのだった。廻りの森が無くなるとともに、かなり強い向かい風が霧みたいな雨を吹き付け、心が折れそうになる。風景は堂々たる峠ではあるものの、ちょろい峠で大変に助かった。

北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道宗谷郡猿払村小石 小石峠にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 GPS画面の猿払村・稚内市界を通過するとともに、見覚えのある小石峠周辺の風景が過ぎてゆき、沼川側の欺し峠区間も思っていたより下り基調で終了。道道138は一旦勢いよく下り始めたものの、多少下っても沼川側はやはり雨なのだった。むしろ小石側より雨粒は目に見えて大きく、路面に水溜まりが現れ始めていた。
 それでも標高90mぐらいまで下った採掘所から、雨は多少弱くなってくれた。やっと天気予報通りの展開に近づいてきた。何とかこのまま沼川まで降りれば、雨も収まるだろう。
 気を良くして曲淵から地元車が多少増え始めた道道138を逸れ、少し北を経由する農道へ向かってみた。沼川まで同じ丘を越えるにしても、沼川に近づいてから丘があるこちらの方が、より早く雨が止むという期待もあったのだ。
 しかし農道に入り込むと、雨はむしろ強くなってしまった。そして丘に登ると、雨は更に強まった。もはや普通に本降りである。

北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道稚内市声問村沼川にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 そして沼川側へ下り始めても、一向に雨は止んでくれなかった。結局、農道経由で単純に登り総量を少し増やした結果に終わってしまったのであった。そして猿払村から稚内市に入ったからと言って、雨が全く止まないことも、そろそろ事実として認めざるを得なくなっていた。農道の方が道道138より車が少ないのだけは大変有り難い。


 雨の中牧草地の丘を越えると、道がおもむろに下り始め、民家が現れ始めた。8:05、沼川着。雨はやや霧っぽくなったものの、間違いなく弱まっちゃあいないのが現実である。
 A-Coopの軒に自転車を停め、降りてはみても腹は減っていない。A-Coopもまだ8時だと営業が始まっていないようだ。まあ、例によって何か切実に飲みたいわけではない。寒いというだけだ。カップ麺で温まれないのが残念だ、と思うほど寒いのである。こういう状況下、早朝あれだけ気を揉んだ腰痛が収まっているのは、有り難いことだ。どうやら身体を動かしていると腰も動かせるようだ。少なくとも旅を止めなければならない事態じゃないみたいで、まずはひと安心。

 自販機コーヒーをぐいっと一飲み、そして天気予報を確認してみる。天気予報の世界では、相変わらず稚内市は既に曇りの時間帯に入っているとのことだ。現実世界では雨上がりが遅れている、というだけなのかもしれない。この辺りは一見平地に見えても、天気予報対象のサロベツ原野に比べると山地みたいな場所だし。予定通りこのまま道北縦貫道道を幌延まで向かおう。幌延に向かう間に、天気はどこかで変わるはずだ。

 8:25、沼川発。沼川発で8時半前。道北縦貫道道の裏道農道で、沼川から幌延に向かって丘をいくつか越えてゆく。
 過去の沼川経由コースで思い出せない、時刻の早さが画期的だ。今まで浜鬼志別から出発する場合に、宗谷岬方面に向かうか南下するかしかしなかったからだ。過去に無いパターンだけに、サロベツ原野でも日本海沿岸でも知駒峠でもどんと来い!という大きな可能性が、私の行く手に拡がっている。はずだった。現実としては、今のところかなり雲が低くて周りの丘陵は霧っぽく霞んでいる。天気予報の終了予定を過ぎて未だに雨が一向に止まず、向かい風も吹き荒れている。一昨年霧雨の中、去年は晴れの明るい風景だったこの道、今年は順当に雨の番だ。

北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道稚内市声問村川南にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 丘を越えると、低地の牧草地の向こうに次の丘がすぐ現れた。別海辺りの丘陵に比べると、登りは緩く、丘の高さも低い。それに今日は暑くない。これだけなら丘が続いても、何か辛いようなものではない。

北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道稚内市声問村川にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 しかし今日は、もの凄い向かい風が吹き荒れている。牧草地の草原が波打ち、森の木も盛大に揺れ、時々ちぎれた葉っぱが飛んできたりもする。3連発で北海道にやって来た、熱帯低気圧由来の風なのかもしれない。身の危険を感じるほどの嵐である。

北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道稚内市声問村川南にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 有明に着くまでに、こりゃあもう避難すべきだと思った。有明からなら、セイコーマートがある豊富はそう遠くない。いざとなりゃあ宗谷本線へ逃げることもできる。腰痛で行程を断念する訳じゃないのだ、不可抗力なら仕方無いよね。うん。

 有明に下って谷間の農道を西へ。道の向きが変わるとともに、向かい風の嵐は横風に、それでも微妙な道の向きで時々追い風基調に変わったりした。横風で相殺されてほとんど関係無いものの、僅かに下り基調なのはやっぱり楽である。今日はそれが特に有り難い。サイクリングって本来辛いもんじゃないよな、と思ったりもする。

 追い越す車に豊富町役場という文字が見え、その車が少し先の橋で停まった。降りてきた作業服の人が小川をのぞき込み始めたので、私も橋から見下ろすと、川には溢れそうに濁流が迸っていた。初日と昨日の行程をパーにしやがった、熱帯低気圧の大雨によるものだろうと思った。2日間輪行の恩恵を受けて気付かなかった、過酷な大雨の実態を目の当たりにしたような気がした。

 高速道路もどきの国道40バイパス区間をアンダークロスし、国道40に合流すると、すぐに豊富の町外れである。

 セイコーマートを前方の景色とGPS画面で探して、店の軒下へ。10:30、豊富着。とりあえずひと安心、もう10時半だからお10時にしよう。
 Hotchefでビーフカレーを仕入れると、それは何年か前に美味しかったチキンマサラカレーの牛バラ肉版なのだった。カレーのみならずHotchefの弁当は、毎年少しづつ内容が変わっている。それが良くなる場合も、あれっと思う場合もある。今年のカレーは間違いなく当りだ。今年のセイコーマート休憩は、今後ビーフカレーで行こうと決めた。とはいえもう7日目。北海道でのセイコーマート休憩もそう多くはないこともわかっちゃあいる。いいのだ、私には茨城県が付いている。
 相変わらず嵐は吹き荒れているものの、雨は大分弱まっていた。さすがに豊富は市街地だけあるね。食べながらほっと一息ついた気分で、それにしてもついさっきまでの大変な嵐を思い出す。沼川からたかだか30kmぐらいで2時間かかってしまっていた。いや、まだ風が凄いんだが。

 天気予報を見直すと、6時までのはずだった雨マークが、何とお昼までに変わっていた。これなら、現況と比べて何の違いも無い。この通りならまだしばらく雨は続くだろう。そして天気予報では、風は終日北〜北西向きのままなので、予定コースのほぼ全区間で向かい風だ。また今日の終着中川では、16時から晴れることになっている。つまり走れる日中は雨、宿に着いたら晴れ始めるということだ。最悪の展開である。順当に天気が収まったら道北縦貫道道の後幌延から向かうはずだったサロベツ原野・日本海沿岸方面では、どう考えても雨と向かい風に悩まされるだけだろう。いや、夕方になっても晴れない可能性だってあるのだ。だって雨が止む予定の8時以降、まだ雨が残っているのだから。全く、我ながら何がどんと来いだ。
 もう今日はこのまま輪行で中川に向かうか。それとも、日本海沿岸道道110経由の大回りコースを止め、宗谷本線沿いに幌延経由で中川に向かえば、中川までは最低限自走で辿り着けるのかもしれない。幌延まで国道40主体になってしまうものの、幌延から先は毎度の宗谷本線沿い道道経由でのんびり過ごすこともできる。まあ雨には降られるかもしれないが。
 カレーを食べ終わって腰を上げようとすると、やはり腰が痛い。しかしゆっくりでも一旦動かすと、その後は随分楽になる。浜鬼志別からもう5時間、60km走って曲がりなりにも峠を越えている。運動して腰痛に影響があるようなら、既に動けないほど痛くなっていることだろう。しかし、痛みが増したかと言えば決してそんなことは無い。
 それなら、この後中川へ自走しても、腰は大丈夫に違いない。到着する頃に目出度く晴天となるかもしれない。しかしその時間に晴れても、私に取っては後の祭りだ。今日は(も)もうビールでも煽って早く寝てしまえ。


 11:00、豊富発。

 幌延までは20km弱、基本的に国道40を経由するしか無い。しかし、さあ国道だと腹を据えて走り始めると、交通量は意外な程少ない。山の中をばんばんトンネルで突き進むバイパスのお陰だろう。まあそれでも時々大型車は、轟音とともに通りすぎてゆくのである。

北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道天塩郡豊富町豊富大通9丁目 国道40号にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 幌延市街の少し南で、道が乾きはじめた。まだ空気中に水滴は漂っていて、雲もかなり低く薄暗いものの、これなら何とか天気予報通りの展開ではある。さすがは鉄道が通る谷間、山間と天気が全く違う。というより、今日は平地と山間で天気が全く違うぐらいに雲が低く、天気が不安定な日なのかもしれない。ならば今日は宗谷本線沿いで正解なのかもしれない、ということがやっと実感できた。考えてみると、毎年雨予報で輪行に切り替えた宗谷本線の車窓が意外に雨が降っていない状態なのがやや恨めしかったが、山間では天気予報通りに雨だったのかもしれない。

 途中、下沼で防風林の外側にサロベツ原野がちらちら見え始めたので、たまらずそちら方面へ脚を向けてみた。しかし防風林に囲まれた国道40と違って、開けた牧草地一杯に、真面目に吹き飛ばされそうなほど過酷な向かい風がびゅんびゅん吹き荒れていたのであった。まあそんな状態でも、車がいない方が快適である。

北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道天塩郡幌延町下沼にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道天塩郡幌延町下沼にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 牧草地が終わる辺りを見計らって裏道農道から退散、再び国道40へ。未だ雲は低く、向かい風の中に時々水滴が混じっては消え、天気が良くなるような様子は無い。

 幌延は天塩川西岸の国道40沿いではなく、天塩川東岸に町がある。しかし国道40から分岐して幌延へ向かう道の大半は国道40バイパスへの連絡道となっていて、今のところ国道40の一部ということになっているのがややこしい。そして元道道の連絡道では相変わらず強風は吹き荒れていた。

 12:10、幌延セイコーマート着。
 豊富でお10時を食べたせいか20kmしか走っていないせいか、お昼になってもまだ腹がそんなに減っていない。それでもこの先もう中川までセイコーマートは無い。ここで立ち寄っておかねば。たとえ差し迫った用事は無くても、セイコーマートへ立ち寄ることは行動中の区切りになっているのだ。
 軽食程度にいろいろ仕入れ、軒下の私的定位置に陣取り、自分の写真で見覚えがある店の前の景色を眺めて小休止とする。雨はほぼ止んで路面も水たまりを残しつつ乾いているものの、空は未だかなり雲が低く辺りは薄暗く、遠景は霧っぽい。強風も相変わらず吹き荒れている。
 見覚えがある風景の表情はかっと強い陽差しに照らされた晴天だった。今日の幌延はかなり表情が違う。今朝までの目論見では、今頃光り輝くサロベツ原野の牧草地から利尻がくっきり浮かぶ日本海沿岸を快走しているはずだったんだけどな、等と思う。
 まだお昼ではあるものの、どうせ夕方晴れても暴風は吹き荒れているだろうし、今日はもう迷うこと無くこのまま中川へ向かってしまおう。今から中川に向かうと、最短で中川まで2時間ぐらいだったか。それならのんびりして15時前後てな所だろう。それなら宿でゆっくりできる。そういうのも50台の癒やし系ツーリングでいいじゃないか。

 12:45、幌延発。

 幌延・中川間の私的メインルート、宗谷本線沿いの道道256へ。こちら向きにも逆向きにも何度か通っている、安心できる道だ。しかしもともと強めの風が吹く場合が多い道ではあるものの、今日ほど風が吹き荒れる日は過去の訪問で記憶が無い。いや、私に記憶が無いというだけで、もともと北の大地は過酷なのだ。

 とにかく牧草地に吹き荒れる強い向かい風にひたすら耐え、無理の無い負荷で脚を回し続ける。輪行すれば良かったと思ったものの、いや、やはり自転車の解体組立の方が億劫だ。通常よりかなりペースが落ちた行程ではあっても。

 路面は幌延に引き続き、ずっとほぼ完全に乾いている。少しづつではあっても、雨は止む方向に進んではいるのだ。しかし、今日晴れるのはやはり夕方からであり、それまでは曇りなのかもしれない。晴れると開放的な風景が続くはずの道も、今日は雲の低さと暗さのためにやや重い表情の風景となっている。勢い思考が自分の中でぐるぐる迷走しがちである。


 14:30、雄信内着。国府まで10km弱、しばし我慢の国道40へ。

 意外にすぐ雄信内トンネルが現れ、その後がやや間延びする感覚がある。途中山裾に近づいて水滴がぱらつき始めたりもした。まだ気を抜けない天気状況なのかもしれない。

 国府の地名が道端に現れ始めた国道40区間終盤、今まで訪れたことが無かった国道西側の農地を経由してみた。もともと天塩方面からの帰りに経由しようと思っていたので、GPSトラックにコースが入っている。回り道ではあり、しかもほんの短い区間ではあるものの、少しでも国道40の裏道を開発しておくことは私にとって大変意義のあることだ。ましてや今日のように時間に余裕がある日には。

北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道中川郡中川町国府にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 広々とした牧草地に細道がとぼとぼ続く。空は相変わらず、雲がかなり低い。暴風も相変わらず吹き荒れている。しかし、やや離れた東側の防風林が国道40と、車の通過音を隠してくれていた。農道細道ののんびり落ちついた雰囲気に、ツーリングの時間が自分に戻ってきてくれた気になる。西側にも、低い雲の下の霞んだ遠景ではあっても、谷間に続いてゆく牧草地を時々眺めることもできた。時々風に吹き飛ばされそうになりながら、天塩方面から裏道を辿ってこの道に向かうはずだった、計画時にはそんな夢を膨らませていたことを、他人事の様に思い出す。

 少し脚を停めて写真を撮っていると、雨がぱらぱらっと降り始めた。もうあまり降らないだろうとは思うものの、再び向かい風の中へ。

 歌内へは国道40を渡って天塩川土手の農道へ。

 牧草地に沿ってカーブする土手の上下、並行して幅4m位の道が続く、詩でも浮かんできそうな道である。雄信内・歌内間は宗谷本線沿いに道道が無くなってしまう。このため国道40を通らなくてはならない代わりに、この楽しい道も通れるのが楽しみになっている。

 
北海道Tour20#7 2020/8/12(水)浜鬼志別→中川■ 北海道中川郡中川町国府にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 土手の上だけじゃなく、土手下の開けた牧草地にも強い風が吹き荒れているのはもうわかりきっている。この際半分やけで土手の上を通ることにした。当たり前のように風は更に強まるものの、この期に及んで何か工夫すれば何かが楽になるとは全く思っていない。それより、細道の足下まで開けた緑の空間がとても楽しい。

 歌内大橋を渡って歌内から道道541へ。

 中川まで残りあと10kmちょっと。削り取られそうな向かい風の中、気が遠くなりつつも、途中それでも去年印象に残った天塩川の土手を回ろうと思っていた。しかし現地の分岐には、通行止めのA型バリケードが立っていた。崩落出通行止めとのことだった。

 最後にやっと少しだけ陽差しと青空がちらっと現れ、再び厚い雲に隠れた。

 15:10、中川着。

 セイコーマートで腹の足しと明日の朝食物資を仕入れてから、町の南側へ。中川の町中でも相変わらずまともに強い向かい風だ。天塩中川駅から宿まで3kmも無かったはず。今日はもう晴れようが陽差しが出て景色が鮮やかになろうが、早くこの向かい風から逃げてしまいたい。

 15:35、ポンピラアクアリズイング着。起きた時にはあれだけ今日の行程が危ぶまれたのに、曲がりなりにも自走で中川に到着できた。そして、自転車を降りると腰は痛まない。やはり、適度に動かしている方が楽なのだ。
 部屋に荷物を置いて、まずは温泉へ。しかし過去の経験から言って、温泉は私の腰痛に影響がありそうなのであまり長居せず、その後すぐ一寝入りした。起きると、起き上がるために身体の向きを変える必要がある程度に相変わらず腰が痛い。そして動き始めるとそこそこ動ける。つまり、早朝とあまり変わらない状態なのだった。程度は少し軽くなっているかもしれない。

 夕食は生田原、浜鬼志別に引き続き、毎度のホテル宿泊セットではなくレストランアラカルトのつもりだった。実際にはレストランのメニューがコロナ対策で縮小版となっていて、あまり道北っぽいものは無かった。それでもトンカツ定食があれば、充分お腹いっぱいで幸せになれる。

 明日の宿は仁宇布のファームイントント。計画としては道北仁宇布リターン日恒例の道北縦貫道道を予定しているものの、経由地の天気予報はこととごく、ここ数日と同じく朝のうち雨、午前中降水確率100%の曇りマークが付いている。この予報では内陸の山中へ向かうわけにはいかない。拡張選択メニューの知駒峠など以ての外だ。
 最近は毎回の北海道Tour後半、道北周回パートかファームイントントに向かう日がこんな天気予報であることが多く、そういう場合にはいつも思い切って全輪行していた。しかしいざ輪行してみると、宗谷本線沿いの谷底だけは雨じゃないどころか時々晴れたりもしていて、山は裾の上から完全に濃厚な黒っぽい雲に隠れている、というのが毎度の出来事だった。そして、今日も豊富から中川まで、宗谷本線沿いでは意外に降られることが少なかった。いつもの通り、とも言える。
 明日も同じパターンなら、中川から美深まで天塩川沿いの谷底を音威子府、美深経由で仁宇布まで自走できるかもしれない。それに輪行しない方が、重い荷物を運ばずに済むので、腰痛にも楽だろう。

記 2020/12/26

記 2020/

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Last Update 2021/3/2
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