北海道Tour19#11
2019/9/20(金)旭川空港→朱鞠内湖-1

旭川空港→旭川 (以上#11-1)
(以下#11-2) →江丹別 (以上#11-2)
(以下#11-3) →幌加内 (以上#11-3)
(以下#11-4) →朱鞠内湖 (以上#11-4)  124km  RIDE WITH GPS

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
ニューサイ写真 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 4時25分都内某所発、近年の例に漏れずタクシー輪行で羽田空港へ20分。このタク輪羽田アクセスは、北海道への旅程中一番の難所を一気に楽にしてしまった。1980年代の上野地平ホーム6時間待ち、1990〜2000年代の会社とんずら18時過ぎ東京発&仙台での北斗星捕縛、近年の早朝東銀座路上輪行など、いつでも思い出せるものの、もう今となってはこのタク輪以外は自分からはやらないだろうな。

 
北海道Tour19#11 2019/9/20(金)旭川空港→朱鞠内湖 東京都大田区羽田空港 羽田空港搭乗待合室にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 
 

 羽田空港の荷物預かりでは1番前に並ぶことができた。4時台のロビーはまだがらがら、荷物受付の段階でもあまり人は増えない。9月晴天特異日の3連休とはいえ、特別に混雑しているということは無さそうだ。今回台風はまだ沖縄で停滞している。多分北海道には来なさそうだ、といいな。
 荷物を預けたら、もう搭乗口に入場してしまう。ちょうど掲示板の一番下に、6:55のエア・ドゥ旭川便が現れていた。これに乗るのだ、と俄然その気になってきた。宿や飛行機を予約した後、何となく流されるままに来てしまった当日みたいな気もしていたものの、もう飛行機に乗ったら3時間も経たずに旭川空港に、そして夕方には朱鞠内湖に着いてしまうのだ。

 今日の天気予報は雨後15時から曇り、18時からは確実に晴れ。何となく、あまり深刻な雨は降らないんじゃないかという気はするものの、根拠は無いし実際どうなのかはわからない。できることは、現地の雨が強そうなら、早めに深川か名寄へ列車で向かい、深名線区間はバス輪してしまうこと。そのためには、身の振り方について旭川で決断する必要がある。旭川市街より先に進んでしまったら、もう鉄道には乗れないからだ。

 8:45、旭川空港着。天気は何の問題も無さそうな晴れ。これなら最低限、旭川までは走れそうだ、とこの時はそう思えた。
 自転車受け取りは比較的スムーズに済ませたものの、組み立てる段階でGPSを持ってくるのを忘れてしまったことに気が付いた。全体的に今日のコースで迷うような箇所は少ない。間違わないとは言い切れないものの、自分で地図を眺めて計画したコースがまだ記憶に新しいので、あまり不安は無い。やや不安なのは明日の名寄盆地横断と、今日これから経由する旭川市内だ。どちらかと言えば旭川市街をどう通過するかが最大の難関だ。ただ、空港から東神楽の忠別川まで出ればその先旭川駅まで川沿いの自転車道だし、旭川駅から市内をアドリブで石狩川自転車道まで出てしまえば、その後毎度の江丹別ルートの道道915まで迷うような場所は無い。山裾が迫る神居古丹辺りで熊が出そうで怖い、というぐらいだ。一見旭川市内まっただ中のこの場所、過去に目撃情報があり、熊が出ても全然不思議じゃないのだ。
 まあそういうことより、普通に考えて絶対に持ってくるものを忘れてしまったことがややショックである。我ながらたるんどる。

 9:35、旭川空港発。美瑛の丘陵に続く台地上から段丘を降りて旭川盆地へ。まだ青空と陽差しが現れてはいたものの、空には低い雲がかなり速く動き始めていた。風はかなり強い。今のところは追い風の風向きではあるものの、旭川への進行方向には間違いなく向かい風であり、やや気が重い。

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 事前のGPSトラック計画を思い出しながら東神楽手前の信号で旭川方向へ向きを変え、幹線道道294の1本西に並行する裏道で北上してゆく。東神楽へ行けば、目出度く初セイコーマートできるのだが、まあセイコーマートは旭川市街で立ち寄ればいい。

 裏道に入った途端、空港からしばらく続いた強い追い風が、予想通り一気に向かい風に変わった。風が弱まったときに脚を回して少しペースを上げても、びゅーっと吹いた風にすぐ押し戻される。また、頭上に低い雲がいつの間にか押し寄せていて、時々ふわっと包まれるように雨が始まったり、また急に雲が去って青空が見えたりした。こういうのは新潟県の晩秋で時々体験する。要するに出発段階に比べ、明らかに天気全体の印象は変わりつつあった。むしろ旭川の天気予報「雨」そのものなのだった。

 道はポン川にぶつかり、うやむやになって住宅地の一街路に変わってしまった。もともとそういう計画だったので、ここで地図とアドリブを併用して忠別川沿いの北岸土手へ向かう。どうせあまり複雑な道じゃないし、道には記憶があった。とにかく旭川までの一番厄介な箇所を乗り切れたことで、この後も何とか行けそうな自信が出てきた。

 浄水場と河川施設がやや殺風景な土手から忠別川サイクリングロードは土手の中に降り、その後しばらく土手の中に続いた。こちら側も対岸も、土手やら河原の茂みと森のために外界が見えにくい。静かな道には散歩やランニングの人が時々現れた。やや高く、通常北海道なら野生動物が出てきそうな茂みとのギャップが何だか面白く、これが旭川という街の立ち位置であるように思えた。

 土手の中はいつの間にか茂みからやや公園っぽく小綺麗に推移していった。それと並行して、ツインハープ橋・緑東大橋・大正橋と現れては過ぎてゆく橋の名前を確認しつつ、時々土手の上に見える建物や森の向こうの対岸が次第に市街っぽく変わってゆくのを伺うことができた。

 一方、雲は次第に更に低くなり辺りは薄暗くなり始め、遠景は霞み、満を持して遂に雨が降り始めた。ちょうど神楽橋を渡って富良野線をくぐる前、土手を越えていきなり旭川駅裏手に出たところだった。

 10:10、旭川駅東の高架下で雨具を着込み、一息付く。一息というか時間調整である。時刻的に大変申し分無い。もちろん、夏、夏に店の前まで行ったのに長蛇の列に挫けた蜂屋の、10時半開店に合わせた訪問である。
 計画段階では、旭川で行きか帰りに蜂屋にも行きたいな、位に考えてはいた。それは時間的に余裕がありそうな最終日にすべきではないのか、という気がしていた。まさかこんなにばっちりの時間に、初日に訪れることができるだとは思っていなかった。しかも夏に諦めたわずか1ヶ月後。人生、こういう日も来るのだ。あの時知っていれば。
 一方、想定に比べて時刻がバッチリになった理由は、旭川空港の出発が多少遅れたせいだ。そして今後の予定が更に遅れてゆくことになる。まあしかし今できることを今しておく方が、結局後悔が少ないことは多い。そしてまだ気に病むほど行程は遅れてはいない、と思っていた。

 
 
北海道Tour19#11 2019/9/20(金)旭川空港→朱鞠内湖 北海道旭川市5条通 蜂屋にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
 

 一旦雨は弱くなっていたものの、市街では10分ぐらいの間に再び雨が強くなったり、また急にぱたっと止んだりしていた。辿りついた店の裏手、というより表通り側には、吹きさらしではあるものの、歩道上駐輪ラックが設けられていた。自転車はそこに停めることになっているのだ。
 自転車に鍵を掛けるとすぐ、またもや雨が降り始めた。許せ2号車よ、まあすぐ止むだろう。許してちょ。

 10分強程待って、10:30におもむろに店の引き戸が開いてのれんが掛かり、その段階で集まっていた3組のお客がぞろぞろと店内へ。私の他、1組はお一人様、時間通りにおもむろに車から出てきたのが常連さんっぽい。もう1組は道内観光客っぽい(知らんけど)カップル。
 着席し、すぐさま醤油チャーシューメン大盛りをお願いした。ツーリング中だからこれでいいのだ。あまり待たずに出てきたラーメンを一口、絶品とか空前絶後というよりは昔夜行列車待ちで旭川駅ビルの地下で食べた記憶通りの、優しい味わいなのが何より嬉しい。
 期待していたほど美味しくないのではない。夏に30分以上並んで食べるより、今落ちついて食べることができて、これで満足できたと思えた。帰りは寄らずに済まそう。またいつか、優しく懐かしい味わいに再会するために。


 10:50、蜂屋発。雨はすっかり止み路面が乾き始め、青空と陽差しが現れ始めていた。これなら旭川から先に進んでも悪くない、ようには思えた。

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 既に旭川到着から1時間が経ちつつあった。更に石狩川サイクリングロードまで、道がわからないというよりは、セイコーマートに寄ったり常盤公園でちょっと迷走したりではあったものの、思いの他時間が掛かった。

 石狩川へ出て、あとは土手の自転車道を道道915まで進むだけと思っていたら、近文の南で河川開閉施設設置の通行止めが登場。支流の橋そのものを一時撤去して、河川施設を造っているようなのだった。この段階で当初予定していた道道915ではなく、北回りの鷹栖経由で丘を一つ越えて江丹別に向かうしかなくなった。予め知っていれば、さっきの常盤公園から北上して、ずっと近道だったはず。

 その後、最短経路のつもりで入り込んだ近文駅南側に、函館本線を渡る踏切が無いことに気付くのに時間が掛かり、函館本線を渡るのに跨線橋担ぎとなってしまった。旭岡のセブンイレブンに辿りついた段階で11:20過ぎ。結局、GPSトラック無しだと旭川通過に1時間半近くも掛かってしまったことになる。うだうだしているうちに、旭川から名寄か深川へ向かい、朱鞠内湖までバス輪行するには手遅れになってしまっていた。そして日没は17時過ぎ。あと5時間で自走で朱鞠内湖まで行かなければならない。過去実績だとだいたい4時間強だったのではあるが、それだと雨宿りは時間に含まれていない。

 着々と脚を進めていかねば。まずは地形図頼りに旭岡の新興住宅地、地形図に載ってない新道でやはり地形図に無い高速道路をくぐり、鷹栖町で周囲の現実が地形図に復帰。

 山裾田んぼグリッドをじぐざぐに北上、道道72を目指す。行く手の共和方面の空中が霞んでいる。この先ろくな事が無さそうだ。旭川市内までのお気楽状態から、急に過酷なツーリングになってきたような気がした。おやじ人生もそういうものかもしれない。

 道道72は2002年以来17年振り。100m足らずの小さな丘が鷹栖町界、というより再び旭川市に戻ってきた。位置は確実に先に進んでいるし、この先で経由する江丹別が旭川市であることも、江丹別峠が旭川市・幌加内町境であることも知っている。しかし、何だか全く進んでいないような気にもなるというものだ。

 共和からはいつもの私的幌加内・江丹別コース、それでももう2014年以来5年振りの道道72。曲がりくねる谷を遡り、谷間が開けて農村が拡がるともう江丹別峠下の町、江丹別中央のすぐ手前だ。

 ここで遂に前方が霞み始めた。どうせ途中で降るだろうと思っていたので、来るぞ、と覚悟してそのまま進むと、あっけないほどすぐ本降りの雨になった。江丹別中央はもうすぐ先だ。農協か学校か、どこかに雨宿りできそうな庇があるだろう。頼む、どこかで雨宿りさせてくれ。

 

 12:30、江丹別中央着。案の上、まず農協に軒下で雨宿りぐらいはできそうな庇と自販機を発見。少し向こうに小中学校もあった。しかし何より、農協の庇の少し先に蕎麦屋を発見してしまった。江丹別の蕎麦屋には過去に2〜3度訪れたことがあるので、蕎麦屋があることはわかっていた。軒は50cmぐらいではあるものの、何とか最低限濡れていないぐらいの空間がある。時間も良すぎるし。旭川でラーメンを食べたので、江丹別でまたもや蕎麦を食べるとは思っていなかったものの、まずは何も考えずにお店へ。江丹別に寄ろうと思ってコースを組んでも、実際には寄れない年だってあったのだ。今日は有り難く再会の機会を大切にしよう。
 蕎麦処で有名な江丹別だけあり、店内には意外にお客さんがいてびっくり。とりあえず席だけ確保、暖かいたぬきそば\620を注文し、店の外で雨具を脱ぐ。蕎麦はしっかりした蕎麦で大変美味しかった。


 

 13:10、江丹別発。雨が止んでいたので雨具をしまい込んだものの、町外れ(と言ってもたかだか2〜300m向こう)で再びきっちり雨が降り始めたので、一旦町中に戻って再び雨具を着込む羽目になってしまった。
 その町外れから、道道72は標高478mの江丹別峠に向かって登り始める。標高差300m強とはいえ、峠が低い北海道では中規模の峠であり、一応本日最大の峠である。

 拓北ではしばし台地上に牧草地が続いた。ここにはソフトが美味しく心に残っている牧場売店がある。5年振りの再訪チャンスが、またもや私に訪れている。いや秋だし、と思っていたら、店の前に車が2台も停まっていた。まあしかし、雨で寒いし蕎麦屋の後だ。流石にソフトにまで立寄る選択は無い。
 心細い天気だろうが何だろうが、今日はもう朱鞠内湖まで走るしか無い。覚悟さえ決めれば、いつものように夜には暖かい風呂に入って美味しい夕食が食べられていることだろう。

北海道Tour19#11 2019/9/20(金)旭川空港→朱鞠内湖 北海道旭川市拓北 道道72 江丹別峠にて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 などとやや気を張って峠区間の木立に入ると、有り難いことに雨は止んだ。しかも雲は低いのに、途中では青空まで見え始めた。風が無いのは有り難いものの、寒いのでもう雨具は着っぱなしである。要するに、夏に何度か訪れた常識では判断できない、不安定な天気ということなのかもしれない。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 峠までの間は、雨が降り始めたり殆ど止みそうになったりしつつ、顔に水滴を感じるという以上の雨と呼べない僅かな雨傾向が続いた。一方、低い雲のせいで時々開けるはずの周囲の山々や谷間は暗く霞み気味であり、時々地形図を眺めて場所を確認しながら、ゆっくりとやや淡々と登ってゆく道程となった。

 峠付近では、斜面を切り崩して絶賛拡幅直線化工事中だった。そういえば4、5年前から峠の両側でこういう工事が始まっていたことを思い出した。その工事を見たときは、江丹別峠もトンネル化かと思っていたが、今日見かけた工事は、トンネルを掘ってもしょうがなさそうな中盤辺り、そして峠部分。どうも拡幅メインっぽい。

 峠でやっと旭川市から幌加内町となる。そして今日は、終着の朱鞠内湖までずっと幌加内町内だ。

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 峠を下りきると、下幌加内〜沼牛の見事な盆地一面のソバ畑は見事に刈り取り後で、枯色の茂みが倒れているだけ。知っていないとソバ畑には見えない。

北海道Tour19#11 2019/9/20(金)旭川空港→朱鞠内湖 北海道雨竜郡幌加内町下幌加内 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 あの一面真っ白な満開の花を知っていると、もう夏じゃないと知ってはいても視覚的に一抹の物足りなさは否めない。空は青空は出ていても、辺りに陽差しは当たっていない。薄暗く寒々しい風景である。内地なら晩秋に近い雰囲気かもしれない。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 行く手の沼牛方面に虹が出ていた。虹ということは水滴が空中に舞っているということ。あの中は雨なのかもしれない、と思いながら虹に向かって進むと、その通りに沼牛でまた雨が降り始めた。天気予報通りの展開、と言えばその通りではある。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
   

 14:55、幌加内着。
 もう15時前、水補給だけで町は通過してしまう。朱鞠内まで辿りつくのに時間がやや一杯一杯かもしれない。というより、旭川でてれてれしすぎたな。15時前にして、既に空と辺りはやや薄暗い。これが秋のツーリングというものだ。  この先もう宿まで何か食料を補給できそうな場所は無い。道の駅でソフトぐらいは食べられるかもしれない。しかしお昼時も完全に一段落して、幌加内にはセイコーマートも無く、今日の処は特に脚を停めたいようなネタなど無い。ちなみにセイコーマートについては、幌加内町内自体にセイコーマートが無い。こういう幌加内の補給状況はよくわかっているので、食料自体は明日の分まで持っている。どこかにちょっと立ち寄って、旅している気分になりたいだけかもしれない。


A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 幌加内から道は国道275だ。町中を過ぎ、農協の蕎麦粉工場を過ぎると、空が更に薄暗く、しかも薄ら寒い向かい風が吹き始めた。何だか早くお風呂に入りたい。そもそも、今日の行程は幌加内で留めときゃ良かったな、と思った。少しだけ、いや、結構。でも、暗くなるまでには朱鞠内には着けるだろうとも思う。あと2時間ぐらいか。

 雨煙内で盆地から谷間に入り、空気通の水分が再び雨っぽくなった。雨はすぐ止んだものの、路面はもはや黒々ぬらぬら。山が迫って空が狭いためか、辺りはますます暗い。その先しばらく、谷が少し狭くなると空気中の湿気はすぐ雨に変わった。国道275は夏より遙かに車は少ないものの、もう気分が何だか落ち着かなくて仕方が無い。それでも下るとじれったい単調な山間の道は、登り方向で自分で脚を回していると時間の経過が早く感じるのは助かる。ごろごろしてると1日長いけどサイクリングしているとすぐ時間が経って夕方になるもんね。

 走っている間にこういうことを考え始めるのは、道か行程が単調なときだ。単調というより、辺りがこんなに暗くて必要以上に気が急いて、焦っているかもしれない。

 雨煙内から続いた谷間が政和の盆地へ出たところで、15:25、道の駅ほろかない・政和温泉ルオント着。
 ちょうど降り始めた小雨から逃げ、道の駅の狭い軒下に自転車を停めて売店の中に入る。秋の15時半、中の蕎麦屋はもう終わっていて、客は私の他に1人だけだ。ここは宿まで最後の補給地点のはず。必要は無くてもソフトとコーヒーをいただいておく。いや、必要が無いわけじゃなくてコーヒーの温かさが有り難いいぐらい空気が肌寒い。肌寒いとは言え未だに下はレーパンいっちょで行けていて、ソフトが食べたくなるぐらいに汗をかいてもいる。さっき拓北でソフトを見送ったのも、ソフトを食べたい理由かもしれない。

 15:45、ルオント発。さっきの小雨はもう上がっていたものの、周囲は相変わらずやや薄暗い。空には青空がある程度見えているが、雲が低い部分もある。陽差しがその雲に隠れているために、全体的に風景の明るさは夕方そのものだ。それも、宿に着いてしまいたくて仕方無い、何だか心細い秋〜冬の夕方だ。

北海道Tour19#11 2019/9/20(金)旭川空港→朱鞠内湖 北海道雨竜郡幌加内町政和 国道275 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 焦る必要は無い。雨が降っても短いだろうし、もう政和まで辿り着けている。ここまで来たらあと20数km、1・2時間強脚を回すだけだ。2時間も掛からないだろう。

 政和では再び谷間に盆地が拡がり、弱いながらも向かい風が復活した。国道275沿いの集落には意外にも自販機がみられた。道の駅でコーヒーを飲んだばかりでも、手っ取り早く暖かいものにありつきたい。でもしかし深刻に寒いわけじゃない。結局立ち止まるには至らず、政和の盆地上手から蕎麦畑の展望台へ、淡々と脚を進めてゆく。

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 もう夏じゃないから展望台のお店は営業していない。そしてここでも、自販機に立ち寄るまでに至らない。結局、今自分は何となくどこかに着きたい気がしているだけで、実際にあまり差し迫った補給の必要は無いのである。

 添牛内の台地に上がると、急に路面が乾き始めた。空の雲が目立って切れ始め、澄んだ夕方の空が面積を増やし、辺りは多少明るくなり始めた。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 ただ、太陽は既に西側の山にすっかり隠れていて、澄んだ空により辺りは明るくなっているのであった。東側の羽幌奥地の山々をはじめ、風景が青い影に沈みつつある。前回この向きでこの道を通ったのは確か1999年。この辺は17時頃だったかもしれない。この辺の、夕陽が当たった白樺林を眺めながら焦っていたんだった。その日母子里に着いたのは19時半過ぎ、宿に迷惑を掛けたんだったな。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 添牛内で国道275は国道239に合流、3〜4km先の北星でまた国道239と離れ、雨竜川沿いの谷間を朱鞠内まであと8km。

★3D地図検討★

 突如夕陽が眩しく射し始めた。天気予報の夕方以降、晴れ予報の時間帯がやってきたのだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 陽差しは眩しいものの、辺りは少しづつ確実に薄暗くなってゆく。いつも国道275では朱鞠内湖沿いの森と添牛内・幌加内のソバ畑の印象が強く、その挟間のこの辺は、どちらかと言えば印象が薄い。だが8kmともなると、それなりに距離はある。

 「出る」と噂の朱鞠内手前のトンネルが、何だか今日は懐かしい。何かが出ても茂みからヒグマが出るほど怖くないだろう。それに自転車でこれだけ交通量が少ない道をずっと辿っていると、何だか誰かに会いたい気もする。わざわざ出てくるのは、きっと悪い奴じゃないよな。

 

 トンネルから意外に距離はあったものの、やっと朱鞠内の営みが見えてきた。こうして幌加内からずっと北上してくると、山間とはいえやはりさすがの集落である。
 17:00、朱鞠内着。自販機でコーヒーだけ飲んで、そのまま出発。もうすぐ宿だ。

 久しぶりの湖畔である。「湖畔」というのは、実際の朱鞠内湖畔よりずっと手前の、盆地の地名である。

 前回訪れたのがいつ頃だったかすぐ思い出せない程久しぶり(2004年だった)に丘を乗りこえ、昔建っていた円形小学校のイメージを継承して新築された宿泊研修施設「のどか」、元しゅまりの宿を横目に眺め、朱鞠内湖縁、低山の森へ。

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 17:15、レークハウスしゅまりない着。朱鞠内から意外に近い。明るい内に着くことができ、周囲の雰囲気はよくわかるのだが、ここは1986年の夏、1988年の冬以来の訪問である。その時は、湖畔にあったしゅまりの宿から車で連れてきて頂いたのだ。自転車で訪れるのは初めてであり、少なくともキャンプ場施設が大分今風の佇まいである。
 予約時に、自転車は別棟の倉庫に置く旨を聞いていたが、宿に入ると別グループのロードバイクが宿の中に何台か置かれていたので、こちらも大手を振って宿の中に停めさせて頂くことにした。この後知ったことだが、置いてあった自転車の持ち主は外人の団体さんだった。夕食地に隣り合わせたそのお客さんの構成は、外国人サイクリスト5人に日本人2人、更にアテンダント1人。どうもJTBのサイクリングツアーみたいだった。こういうツーリングもあるのだ。
荷物を置いてすぐ風呂に入ると、結構身体が冷えていたことに改めて気が付いた。というより、無事に到着できた安心感と共に身体がほどけてゆくのが、秋冬ツーリングならではの幸せである。

 夕食では予約時に勧められたダッチオーブン料理が、期待を超えた絶品だった。大きな鶏もも、フランクソーセージ、ごろんと大きな野菜が大変美味しい。調子に乗って生ジョッキも2杯。ちなみにサッポロクラシックの生である。

北海道Tour19#11 2019/9/20(金)旭川空港→朱鞠内湖 北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内湖 レークハウスしゅまりないにて #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 こうしていると、つくづく雨だった今日1日、いや、僅か数時間前を思い出す。寒くて薄暗かったものの、自走して到着できたお陰で、こんなにステキな夜が私を待っていてくれたのだった。

記 2020/1/27

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Last Update 2020/2/2
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