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赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路と航路 ルートラボ

五島列島Tour19#9 2019/5/5(日) 久賀島 田ノ浦→田ノ浦 田ノ浦→五輪→久賀→深浦→田ノ浦 ルートラボ 40km

 12:25、久賀島田ノ浦港着。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦 田ノ浦港フェリー桟橋 フェリーひさか到着 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 空は真っ青に晴れて、日差しが高く強い。やや暑くなってしまっている。空だけじゃなくて島の緑、岸の岩、白い砂浜に青緑と濃紺の海。全ての色彩が濃厚で鮮やかだ。港の静かな風景が更に魅力的になっている。
 帰りの船は17:10、往路と同じシーガルだ。余裕込みで久賀島の手持ち時間は4時間半、GPSトラックのコースは43km。余裕も充分だ。ただ、念には念を入れ、まずは一番遠くにある元五輪教会礼拝堂を最優先に、最初に訪れることにした。

 概略U字型の久賀島の中心は、田ノ浦からは山を越えたU字の凹みの一番奥、久賀湾沿いの久賀である。田ノ浦から久賀へは、田ノ浦から海岸沿いに少し南下した浜脇から県道167で島の背中を越えてゆく。登り始めの海岸には民家と自販機があった。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市田ノ浦町浜脇 県道167 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 自販機でコーヒーを飲んで、海岸袂の魅力的な船着き場で少し海を眺めてから、おもむろに登り開始。
 10%以上などもう珍しくもない。シーガルで一緒だったミニ教会ツアーっぽい団体さんが教会を見学中だった。こちらはこの際通過してしまう。教会の前はお客さんで一杯だし、いかにも鉄筋コンクリート造だし、元五輪教会礼拝堂最優先だし。
 峠部分は100m弱。下り始めるとすぐに谷間に降り、畑と田んぼが拡がって、もう少し下ると民家が現れ始めた。小学校前の信号は、久賀島唯一の信号である。通過しつつも忘れずに確認しておく。ここも「空から日本を見てみよう+」で知ったのだった。

 久賀湾東岸の県道167を北上してゆく。湾一番奥の山の懐に拡がる集落、大開を周回するトラックを引いてはいるものの、とりあえず旧五輪教会の後回しにしておく。見た感じだとのどかな農村風景が山をバックに続きそうで、心魅かれる。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市久賀町大関 県道167 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 今はとにかくまず旧五輪教会へ向かわねば。大開は帰りに落ちついて寄ればいい。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市久賀町 県道167 久賀湾を望む #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 久賀湾は山に囲まれた静かな内海だ。真上から日差しに照らされた明るい海の色と青い空、緑の山が印象的だ。途中の小さい丘越えを経て、海岸沿いに内幸泊へ。


 内幸泊から東岸の蕨へ向かう、久賀島の稜線を越える小さい峠へ。たかだか75mの登りだが、やはり斜度は10%超だった。
 下りはルートラボで選んだ、というより選べた実線の道へ。幅2m以下、荒れ気味のやや心許ないコンクリート舗装道が、茂みから山腹の畑を急降下。最後はいきなり漁村の裏道に着陸、民家裏手みたいな庭先みたいな土地利用の隙間のつながりみたいな空き地以上公道未満の細道を辿ってやっとまともな道に出た。この道、ルートラボでは一応新道とも県道167となってはいる。あまりの悪路に、下る途中で真っ青な海はちらっとしか見ていない。しかし五輪への道はあまり海岸に沿わず、内陸側の茂みへ続いてゆく。まあ、とりあえずまだ先へ進まねば。

 蕨で県道167は終わり、五輪への道は林道に変わった。
 畑から茂みの中へ、茂みから森へ、入り組んだ急斜面を巻きながら、急な登り下りがジェットコースターのように続いた。あまり延々と続く坂ではないものの、道が狭くて路面はやや荒れ気味、道の周囲はやや密に森が生い茂りブラインドコーナーだらけなので、登りも下りももう10km/h台ののろのろだ。
 でも路上は涼しい木陰の中だ。ところどころ周囲が開けて小さい畑が現れたり、濃い森の向こうに時々青く明るい海の色が見えたり、例によってトンボや蝶も多く、狭い路上空間とともに楽しい道だ。ただ、かなりののんびりペースのため、早崎を回り込むまで時間はやや長く感じられた。

 福見で道が一度海岸に降り、防波堤が切れた海岸に漁港が現れた。番屋に細いコンクリートの桟橋、岩場、明るい色の海に浮かぶ小さい漁船、遠くの岸辺。絵に描いたように鄙びた漁港である。海も森も空も、風景の色がお昼の高い陽差しでことごとく鮮やかで濃厚になっていたので、誘われるように細い桟橋の先端へ行って、青い海の真ん中にいる気分を味わってみたりもした。車だったらなかなかこういう所に立ち寄ったりはしないだろう。今日久賀島に来れて良かった、と思った。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成
五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市蕨町福見 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 つい長居してしまった。
 廃屋がやや目立つ福見の集落から五輪まで、登り返しがもう1回。ここでやや想定外の事態が発覚した。GPSトラックが、何と五輪まで描けていなくて福見の集落の中で止まっていたのだ。ということは、福見から五輪の往復は、計画の距離と標高差に含まれていないということだ。道がルートラボで拾えなかったのも気になる。車で通れない何かがあるのだ。それに地形図では、福見から五輪までが蕨から福見までと同じぐらい、いや、もう少し長いぐらい(結局たかだか3kmだった)、それに福見まで曲がりなりにも白道だった道が、福見から五輪までは単線のくねくね道に変わっていた。いかにこういう重要なことを何も知らずに、つまり五輪教会なんて知らずに計画していたかがよくわかる出来事だが、こうなったらもう先へ進んでしまえ。時間はまだあるし、天気だって申し分無い。


 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成
五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市蕨町福見 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 道は白道(幅員3〜5.5m)と単線(1.5〜3m)の違いぐらいに細くなったものの、幸いその後も路面と道の周りと線形はここまでとあまり変わらず、福見まで来てしまった身には淡々と感じられた。もう1回登り返した後、道は途中から短いダートに変わり、森の中の小さい駐車場に到着した。
 駐車場には「旧五輪教会堂まであと500m」と看板が立っていた。最後は徒歩なのだ、とこの時初めて知った。自転車を崖の斜面に立てかけ、フロントバッグだけ担いで遊歩道へ。つづら折れで遊歩道は海岸へ降り、やや幅の広い防波堤の上を歩いて小さい入り江に到達すると、入り江の向こうにやっと、やや古びた教会、その奥にやや風格が感じられる木造瓦葺きの建物が現れた。あれが目指す旧五輪教会礼拝堂に違いない。

 入り江の石浜をぐるっと回り、14:20、旧五輪教会礼拝堂着。
 私の到着とともに、手前の庫裏のような建物から、まるで新手のスタンド使いのように名札を着けた解説のお兄さんが出てきた。地元のNPOの方のようだ。お兄さんに従って、中へ入らせていただく。お話しを伺ううちに、この方は自転車乗りの方ということが判明した。
 内部には記憶があった。特にヴォールト天井に船大工の技術が応用されているという話が、事前予習した中でも印象に残っていた教会である。悲しいかな事前予習の段階ではどこがどこだかさっぱり記憶できなくて、今日この教会が現れるとは全く思っていなかったものの、やはりここまで来ることができて良かった。
 しかしそれ以上に、そういう技術を使って造られた空間自体が素晴らしいことが、とても嬉しく感動的だ。やはり建築は写真や映像じゃわからないと思い知らされるとともに、ずっとここまでやって来て、この空間に出会えたことの素晴らしさ。多分今回五島列島で訪れた教会の中で、一番来れて嬉しかった教会だと思う。

 時間を見ると、久賀島に着いてからそろそろ2時間半。何と手持ち時間が半分以上過ぎつつある。愕然とした。あれだけ余裕があると思っていたのに、日坂島での予定を全部予定をこなせない可能性が高い。思えば蕨から時間が掛かったからな。
 と思っていると、浜脇教会で追い抜いた教会ツアーの方が到着。さっきの駐車場に車を停められているようだ。浜脇教会以外にも回られているようで、やはり車は速い。教会ツアーには、私に説明して下さった方と同じNPOの方が着いて回られているとのこと。これからその方の解説が始まるところだし、そうでなくても礼拝堂の素晴らしい空間から去りがたいものの、久賀島での行程全体から考えるとかなり時間超過気味だ。解説開始のタイミングとともに、14:45、五輪教会発。
 入り江の向こうでもう一度、礼拝堂と入り江を振り返ってみる。まだ陽は高いものの陽差しはそろそろ赤みが混じり始めていて、彩りが増し始めた入り江が帰りを見送ってくれているような気になれた。明日の今頃はもう東京である。本当にここまで来て良かったと思う。

 帰路は福見、早崎、蕨と脚取りが早いように感じられた。しかし一方、17時までに予定コースの全部はもう回れないだろうとも思っていた。このため基本方針として、久賀湾西岸の深浦から浜泊、細石流までのピストン往復区間を、16時になった段階で折り返すことを決めておく。
 蕨からは再び県道167、往路と別の新道へ。新道と言っても幅4mちょっとの細道なのだった。久賀湾沿いもそのまま県道167で南下し、湾の西岸へ。往路に眺めた山裾懐の大開周回は、残念ながらもう省略せざるを得ない。
 久賀から海岸沿いを北上すると、道は途中の永里で幅が細くなり、海岸際から高度を上げて岸の森に続いた。時々東がんでさっき通った県道167が向こう岸に見えたりした。竹山から路面はコンクリート舗装に替わり、猪ノ木への分岐先で一旦岬越えとなる。もうこの辺りで、区切りの良い場所で折り返そうという気分になっていた。
 15:55、ちょうど深浦の集落に到着。16時まであと5分あるものの、5分進んでもうどうなるものでもない。ひっそりした集落の一番北、浜泊への、更に細道で激登りの登り返しの前で折り返すことにした。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 帰りは湾沿いの久賀ではなく、内陸の猪ノ木経由とした。コンクリート舗装にアスファルトを垂らしたような余り見かけない舗装の道を、山間の森から集落へ。盆地の縁を越え、久賀上手の田んぼの中で再び県道167に合流。田んぼがそろそろ夕方の赤い色に染まり始め、ウスバキトンボが飛び交っていた。


 再び浜脇へ急降下し、16:40過ぎ、田ノ浦港着。シーガル到着までもう少し時間があるので、この際田ノ浦の小さい湾を回り、港正面の道の先端まで往復しておく。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 16:50、田ノ浦港着。17:05のシーガル到着までもうあと15分。結局久賀島の予定は全部こなせなかった。しかし旧五輪礼拝堂と、五輪の美しい浜辺を訪れることができた。浜泊、細石流に訪れることができたら、更に感動は大きかったかもしれない。しかし、絶好調の晴れの日に久賀島を走れたこと、それだけでも満足できた(帰宅後、細石流の集落は1971年に集団移転済みと知り、やや残念な気持ちが少しは解消された)。
 などと充実した気分で、しばしシーガルを待つ。海が手前ではうっすら青く澄んでいて、遠くへ青い色が濃くなっている。陽射しは未だ東京での17時より高いものの、既に光は赤みを帯び、山と静かな海の色をますます濃く、景色に影を増やし、彫りを深くしていた。
 コンクリート防波堤から1mぐらいの高さにフジツボがびっしり着いているのに気が付いた。そう言えば、そこだけ石の色もちょっと黒ずんでいる。潮が昼に比べて更に引いたのだ。田ノ浦港のフェリー桟橋は浮桟橋なので、船の乗り降りには全く問題は無い事がありがたい。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦 田ノ浦港フェリー桟橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 などとぼうっと考えているうち原チャリが1台、軽自動車が何台か、福江島へ渡る乗客を運んできて、あっというまに17時頃には桟橋の上が賑やかになった。
 シーガルが着くと、何と原チャリは係員さんと客の3人掛かりで全く普通に持ち上げられ、手渡しでシーガルに乗り込んだのだった。やるね、五島旅客船。

 17:10、田ノ浦港発。
 相変わらず空は晴れていた。しかしお昼と比べて光の色がもうすっかり真っ赤っかで、島も海も濃厚で鮮やかな色彩だ。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦 田ノ浦港フェリー桟橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 最後の夕方が、こんなに鮮やかな風景だなんて。もう五島列島も明日でお別れ、少し寂しいような気はするものの、目の前の風景と時間は意外に淡々と過ぎ、そんなに何か深刻にショックを受けているわけでもない。いつもその時はこういう時間が過ぎ、それでも旅は旅だったのだと、今回も後で思い出すのだろう。

 17:30、福江港着。船から桟橋へ自転車を受け取り、最後の船行程が無事終了した。陸を問題無く走れるということは何と有り難いことなんだろう。などと思いながら、初日も泊まった富久屋旅館へ。風呂に入って、さあ望月だ。まだ明日、福江空港までの行程が残ってはいても、これが最後の晩餐である。ここは満を持して五島牛ヒレステーキ200g、超レアでお願いした。そしてデザートに五島豚串カツ、生ビールを2杯で、もうすっかり上機嫌だ。

記 2019/6/16

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Last Update 2019/6/30
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